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住宅ローンの繰り上げ返済が早すぎると損?注意点を分かりやすく解説

公開日:2023/06/13
返済

念願のマイホームを手に入れて住宅ローン返済中のほとんどの人は、将来を考えて早めにローンを完済したいと希望しているでしょう。

しかし、いざ住宅ローンの繰り上げ返済の手続きをしようと思っても

  1. ✅「繰り上げ返済が2種類あるのは本当?」
  2. ✅「繰り上げ返済は本当にお得?」

などと迷っている人も多いのではないでしょうか。

本記事では、そのような疑問が解決できるよう、繰り上げ返済の方法やそれぞれのメリット・デメリットを徹底解説します。

さらに、最近質問が多い「繰り上げ返済よりも投資をした方が良いの?」という悩みに対しても解説しますので、住宅ローン返済についての疑問は本記事で解決するでしょう。

ぜひ最後までお読みください。

住宅ローンの繰り上げ返済とは?

ローン

住宅ローンの繰り上げ返済には2つの方法があります。

まずは住宅ローンの繰り上げ返済の用語を理解しましょう。

(1)住宅ローンの繰り上げ返済とは?

住宅ローンの繰り上げ返済とは、毎月の返済額とは別に、借入額の一部または全額を返済することです。

毎月の返済額の中には利息分が含まれていますが、繰り上げ返済の場合は返済が全て元金のみに充てられます。

そのため、その分の支払い利息がなくなり、総支払額も減らすことができます。

(2)住宅ローンの繰り上げ返済には2つのタイプがある

住宅ローンの繰り上げ返済には「期間短縮型」「返済(額)軽減型」があります。

この項では、それぞれの用語を理解しましょう。

➀期間短縮型

期間短縮型とは、毎月の返済額は変えずに、返済期間を短くする方法です。

繰り上げ返済する分は元金の返済に充当します。

減額された元金は、毎月の返済額を変えずに元利均等で返済を続けます。

結果として、返済にかかる期間が繰り上げ返済前より短くなります。

同じ金額を繰り上げ返済する場合、利息軽減効果は返済軽減型よりも大きくなります。

返済(額)軽減型

返済(額)軽減型とは、返済期間は変更せずに、毎月の返済額を引き下げる方法です。

繰り上げ返済する分は元金の返済に充てますので毎月の支払利息も軽減され、月々の返済額が減ります。

同じ金額を繰り上げ返済する場合、利息軽減効果は期間短縮型の方が大きくなります。

「期間短縮型」の繰り上げ返済をする時のメリット・デメリット

期間短縮型は返済軽減型に比べて利息軽減効果が高いので、コストパフォーマンスを重視して、早く返済を終わらせたい人に向いていると言えます。

特に、借入時の金利が高い・返済期間が長い・借りている額が大きいなどの場合は、期間短縮型のメリットはより大きくなります。

(1)期間短縮型のメリット

主なメリットは以下の通りです。

  1. ✅返済期間が短くなるので、早く完済できる
  2. ✅利息軽減効果が高い
  3. ✅保証料を一括前払いしている場合は一部返金されることがある

(2)期間短縮型のデメリット

主なデメリットは以下の通りです。

  1. ✅毎月の返済額負担は変わらない
  2. ✅教育費のピークなどと重なると、毎月の返済額が負担になる

「返済(額)軽減型」の繰り上げ返済をする時のメリット・デメリット

女性

返済軽減型より期間短縮型の方が利息軽減効果は大きいですが、返済軽減型は毎月の固定費を軽減できるので、家計の負担が減らせます。

子どもの教育費などで支出が増えてきたり、共働きの家庭で一方が仕事を一時的に辞めたりする場合で、住宅ローンが負担になってきたときなどに有効です。

(1)期間短縮型のメリット

主なメリットは以下の通りです。

  1. ✅毎月の返済額が軽減できるので、家計の負担を減らせる
  2. ✅団信の保険期間を長く保てる

(2)期間短縮型のメリット

主なデメリットは以下の通りです。

  1. ✅期間短縮型と比較すると利息軽減効果は小さい
  2. ✅返済期間は変わらないので、定年後の負担になることがある

住宅ローンの繰り上げ返済するタイミングが早いと損をする?

支払い

住宅ローンの繰り上げ返済には利息軽減効果がありますが、繰り上げ返済するタイミングによっては損をしてしまうことがあります。

この項では繰り上げ返済のデメリットについて解説します。

(1)手元の資金が減少する

繰り上げ返済をすると短期的には手元の資金や貯蓄が減ってしまいます。

特に期間短縮型で繰り上げ返済した場合は毎月の返済額は変わらないため、生活費や教育ローンなどの資金が不足してしまう場合があります。

また、手元資金が少ないと、病気や事故など急な出費に対応できない場合がありますので、生活防衛資金は必ず確保しましょう。

(2)手数料がかかる

繰り上げ返済時には繰り上げ返済手数料がかかる場合もあります。

繰り上げ返済を繰り返すと、そのぶん手数料もかかってしまうので、可能な限りまとめて返済するのが良いでしょう。

なお、インターネットバンキング経由で返済する場合など、手数料無料の金融機関もあります。

(3)住宅ローン控除の適用が受けられない

住宅ローン控除を利用中の場合も繰り上げ返済にご注意ください。

住宅ローン控除の金額は年末時点の借入残高で決定しますので、一部繰り上げ返済を行うと借入残高が減り、住宅ローン控除額も減少することになります。

また、期間短縮型で繰り上げ返済を行い、結果として返済期間が10年未満となった場合は住宅ローン控除の適用がなくなります。

(4)団信の保険金額が減少する

繰り上げ返済をすると、団信の保険金額が減ってしまいます。

団信とは団体信用生命保険のことで、住宅ローン返済中に万が一のことがあった場合、保険金によって残りの住宅ローンがゼロになる生命保険です。

団信の保険金額は住宅ローン残高と同額と考えられますので、繰り上げ返済後にもし契約者が亡くなった場合はその分の金額は戻ってきません。

また、がん団信に入っている場合はがんと診断されたときに住宅ローン返済が免除になりますので、期間短縮型の繰り上げ返済をすると、がん団信の期間も短くなります。

繰り上げ返済する前にまずFPに相談

相談

ここまで本記事を読んで、繰り上げ返済の方法やメリット・デメリットをご理解いただけたことと思います。

しかし、本当に繰り上げ返済がベストな選択肢かどうかは、住宅の築年数や家族構成、今後のライフプランによって回答が異なります。

繰り上げ返済が必要かどうか迷ったときは、我々お金の専門家であるFP(ファイナンシャルプランナー)相談することをおすすめします。

FPとはお金に対する豊富な知識と多数の相談経験を持つお金の専門家で、住まいの問題や資金計画に関しても親切かつ具体的にアドバイスをしてくれます。弊社では累計2万件以上の相談実績があります。

次の項で繰り上げ返済と投資の関係について解説しますが、投資に関しても相談可能です。

投資が気になっている人、資産運用・資産形成に興味がある人も、この機会に当社のFPにぜひお問い合わせください。

繰り上げ返済するより投資をすべき?

お金

繰り上げ返済をするよりも投資をした方が良いという意見もあります。

この項では、繰り上げ返済をしたケースと、投資をしたケースを両方見ていきましょう。

今回の設定は以下の通りです。

Aさん(40歳)会社員

  1. ✅借入金額:4,000万円
  2. ✅借入期間:35年※ボーナス払いなし
  3. ✅返済済期間:10年
  4. ✅返済方法:元利金等返済
  5. ✅借入金利:1%

以下の条件にて計算してみます。

(1)繰り上げ返済するシミュレーション

まずはAさんが繰り上げ返済を選択した場合です。

金融広報中央委員会「知るぽると」の資金プランしっかりシミュレーションにて試算した結果は以下の通りです。

  1. ✅繰り上げ前元金残高:29,960,841円
  2. ✅毎月返済額:112,914万円
  3. ✅残り返済期間:20年5ヶ月
  4. ✅減少する利息額:1,269,480万円

期間短縮型ですので、毎月返済額は変わりません。

返済シミュレーションの結果、返済期間は約4年7ヶ月短くなり、利息はトータルで約130万円少なくなりました。

(2)投資するシミュレーション

次にAさんが投資をした場合です。

金融庁「資産形成シミュレーター」にて試算した結果は以下の通りです。

  1. ✅500万円を金利3%で運用した場合は20年後:約903万円
  2. ✅500万円を金利5%で運用した場合は20年後:約1,326万円

さらに、500万円を一括投資する方法ではなく、毎月2万円の積立投資も試算しました。

金融庁「資産運用シミュレーション」にて試算した結果は以下の通りです。

  1. ✅毎月2万円を積立投資して金利3%で運用した場合は20年後:約656万円
  2. ✅毎月2万円を積立投資して金利5%で運用した場合は20年後:約822万円

投資した場合は一括投資でも積立投資でも、繰り上げ返済するよりも資産が増えるという結果となりました。

しかし、投資である以上はリスクも伴います。

今回の例を参考に、繰り上げ返済か投資か慎重に判断しましょう。

(3)初心者にオススメな投資商品

この項では、初心者にオススメな投資商品についてポイントを絞って紹介します。

なお、投資である以上元本割れのリスクは伴いますので、無理せず余裕資金で行いましょう。

投資信託

投資信託とは、投資家から集めたお金を資金としてファンドマネージャーが運用し、運用で得た利益を投資家に還元するという金融商品です。

メリットとして、運用のプロであるファンドマネージャーに任せられること、1万円など少額から始められることがあります。

投資信託は比較的リスクが少なく、投資初心者にもおすすめです。

一方で投資商品の中には絶対に損をする商品もあります。下記動画ではそのような商品の特徴を解説していますので、損をしたくない方はぜひご覧ください。

金(ゴールド)投資

金投資とは、文字通り、金に投資することです。

投資方法として、ゴールドバーなどの現物を購入する方法から投資信託やETFで積み立て投資する方法まで、さまざまなやり方があります。

金はインフレに強く、「有事の金」として資産を守ることができる、と言われていますので、興味のある人は挑戦してみても良いでしょう。

金(ゴールド)投資について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。

外貨預金

「外貨預金で投資する」とは、日本通貨の円を海外通貨のドルや豪ドルなどに換金し、預金することです。

外貨預金の一番のメリットは「金利と為替のダブル」で利益を得られることです。

また、円の価値が下がったときに経済的ダメージが減らせる可能性があります。

基本的には預金ですので、初心者の人も比較的取り組みやすい投資と言えるでしょう。

一方で外貨預金にはデメリットもあります。詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。

つみたてNISA

つみたてNISAとは、「少額投資非課税制度」の愛称で、少額からの長期・積立・分散投資を支援するために2018年にスタートし、2024年には新NISAが導入されます。

最大のメリットは、投資から得られる利益が最長20年間非課税になることですが、新NISAは非課税期間が無期限となります。

新NISAによって年間投資枠も拡大されますので、投資初心者の人はまずはつみたてNISAを始めることがおすすめです。

NISAについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。

また、私が講師を務める「新NISA制度丸わかりセミナー」の動画をLINE友達限定にて公開しています。

  1. ✅つみたてNISAの落とし穴
  2. ✅新NISAの注意点
  3. ✅実際に私が実践している投資商品
  4. ✅成功するための鉄則

などリアルな情報がたくさんです。つみたてNISAで損をしている方、これからNISAを検討している方は、ぜひご覧ください。

セミナー

iDeCo

iDeCoとは、「個人型確定拠出年金」の愛称で、自身で拠出した掛金を運用して60歳以降に受け取る私的年金制度です。

メリットとして、掛金から住民税や所得税が全額控除されるので節税効果が高いこと、配当金などが非課税で再投資されることが挙げられます。

以上の理由から、退職金制度がない個人事業主やフリーランスの人にも向いているでしょう。

注意点は、原則として60歳になるまで拠出した資金は一切引き出せないという点です。

iDeCo(イデコ)について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。

また、つみたてNISAとの違いなども把握しておきたい方は、下記記事を合わせてお読みください。

住宅ローンの借り換えという選択肢もある

住宅ローン

住宅ローンの借り換えとは、新しい金融機関で住宅ローンを組み直し、現在借りているローンは一括で返済することです。

住宅ローンの借換えには以下のメリットがあります。

(1)総返済額・月々の返済額が減らせる

一般的に以下の3つに当てはまる人は、借り換えのメリットが高いと言われています。

  1. ✅住宅ローン残高1,000万円以上
  2. ✅残りの返済期間10年以上
  3. ✅借り換え後の金利差1%以上

※上記はあくまで目安ですので、当てはまらない場合でも、住宅ローン借り換えをした方が有利なケースもあります。

住宅ローンを借り換えるときは金利の低いローンに借り換えるため、総返済額を減らせます。

総返済額を減らせると毎月の返済額も減らせるので、毎回の家計の負担も軽減できます。

(2)新しい保険で保障を手厚くできる

通常は、住宅ローン借入れ後に団信や保障を変更することはできませんが、借り換えによって、より保障が充実した保険に加入することができます。

例えば、万が一のときと高度障害状態のときに保障される団信だけではなく、3大疾病(がん・脳卒中・急性心筋梗塞)や7大疾病(3大疾病+高血圧症疾患・糖尿病・慢性腎不全・肝硬変)に備えられる保険に入るという選択肢もあります。

保険に加入するときは、保障と金利のバランスを考慮して申し込みをしましょう。

(3)金利タイプを変更することができる

住宅ローンの借り換えによって、現在の住宅ローンの金利タイプを変更することができます。

例えば、今後の金利上昇リスクを避けるため、金利が低いうちに変動金利から固定金利に借り換えるという方法です。

しかし、固定金利は変動金利よりも金利が高いため、通常は返済金額が増加します。

一方、今後も低金利が続くと想定し、長期固定金利から変動金利に借り換える方法もあります。

この場合は通常、返済額が減額します。

金利の情勢をはっきりと予想することはできませんが、まずは2023年現在の住宅ローンの金利をよく確認した上で、借り換えた方が効果的かどうか検討するのが良いでしょう。

ご自身で判断つかない方は、ぜひFP相談してみてください。様々なシミュレーションをしながら、最適な提案をさせて頂きます。

まとめ

カップル

住宅ローンの繰り上げ返済を行うと利息が減らせるので、総支払額を減らすことができます。

ローン=借金と考えると、早くローンを完済したい気持ちは理解できます。

しかし、住宅ローン金利は低金利が続いており、団信など保障も充実しています。

手持ちの現金が減少することや、投資のメリットを考えると、繰り上げ返済が必ずしも第一の選択肢と言えないかもしれません。

状況によってベストな選択肢は異なりますので、不安なことがありましたら弊社のFPにお気軽にご相談ください。

ライフプラン・ライフイベントなどとあわせて、あなたに最適な住宅ローン返済を提案させていただきます。

著者

代表取締役 田中佑輝
代表取締役 田中佑輝株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ
AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。

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