アルファ・ファイナンシャルプラナーズ

住宅取得資金贈与で贈与税を非課税にするには?要件や税法改正を解説

公開日:2022/10/20 最終更新日:2023/05/29
住宅

こちらの記事をお読みの方の中に、住宅取得資金の贈与を検討されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

財産を誰かに無償で与えることを贈与と言います。贈与を行うと、「贈与税」が発生するのが一般的です。しかし、贈与税には「非課税枠」が設けられており、この制度を利用することで贈与税を支払う経済的な負担を軽減することが可能になります。

その制度の中の一つに「住宅取得等資金の非課税の特例」という制度が設けられています。マイホームの購入の際に最大で1,000万円が非課税となる制度です。

本記事では、マイホーム購入を考えている方に、ぜひとも押さえておいて欲しい「住宅取得等資金の非課税の特例」ついて詳しく解説します。

住宅資金取得贈与で贈与税を非課税にするには?

祖父母

マイホームを購入する際に、父母や祖父母がその資金を援助するというケースは多いのではないでしょうか。

そのような場合に、一定の要件を満たすと最大1,000万円まで非課税となる制度があります。それが「住宅取得等資金の非課税の特例」です。

ここでは、住宅資金取得のために贈与された資金について、贈与税を非課税にするための要件を紹介していきます。

(1)非課税限度額

贈与税には非課税枠が設けられており、一定の額であれば贈与をした場合でも税金がかからないことになっています。

一般的に知られているのは、「暦年課税」と呼ばれる課税制度でしょう。暦年課税の場合、年間で110万円までの贈与は非課税となります。

一方、住宅資金取得贈与についての非課税制度である「住宅取得等資金の非課税の特例」を利用する際の非課税限度額はどれくらいなのでしょうか。

住宅取得等資金の非課税の特例は、住宅購入の他、リフォームについても適用されます。住宅については、一戸建てでもマンションでも、新築住宅でも中古住宅でもかまいません。

住宅購入の場合の非課税限度額は、後で説明しますが一定の条件を満たした住宅である場合には1,000万円、その他の住宅の場合には500万円です。

(2)贈与を受ける人の要件

住宅取得等資金の非課税の特例を受けるには、贈与を受ける人(以下、受贈者)が一定の要件を満たす必要があります。その要件を以下に解説していきましょう。

贈与をする人(贈与者)の直系卑属である

1つ目は、受贈者が、贈与をする人(贈与者)の直系卑属であることが必要になります。直系卑属とは贈与者自身の「子供や孫」のことです。受贈者自身の父母や祖父母から贈与された住宅資金は非課税となりますが、配偶者の父母や祖父母から贈与された場合には、対象外となるので注意が必要です。

贈与を受ける人(受贈者)は満18歳以上

2つ目は、贈与を受けた年の1月1日時点で、満18歳以上(2022年3月31日以前の贈与の場合は満20歳以上)であることとされています。

合計所得金額が2,000万円以下

3つ目は、贈与を受けた年の合計所得金額が2,000万円以下(床面積が40㎡以上50㎡以下の場合、1,000万円以下)であることが必要です。

贈与を受けた翌年の3月15日までに居住を開始すること

4つ目は、贈与を受けた翌年の3月15日までに、贈与された住宅取得資金で住居を購入して居住を開始することが必要になります。

特に、4つ目は見落としがちですので注意しておいてください。

なお、上記は主要な要件と考えられるものを列挙させていただいております。詳しい要件は、国税局のホームページで確認することができます。

出典:国税庁「No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

(3)対象となる住宅の要件

次に、対象となる住宅についての要件を確認しておきましょう。大前提として、対象となる住居は日本国内にあるものに限られています。

新築や中古で住宅を購入した場合には、新築または取得した住居の登記簿上の床面積(マンションなどの場合は占有部分の床面積)が40㎡以上240㎡以下で、その1/2以上が受贈者の居住の用に供されることが必要です。

取得した建物も、

  1. ☑建築後に使用されたことがない家屋
  2. ☑使用された家屋でも昭和57年1月1日以後に建築されたもの
  3. ☑使用された家屋でも地震に対する安全性基準に適合するものであること

耐震基準適合証明書など一定の書類によって証明されたものであることが求められます。

増改築を行なった場合の条件を見てみましょう。床面積等の要件については上記と同様ですが、増改築の場合は「確認済証の写し」「検査済証の写し」または「増改築等工事証明書」などの証明書が必要となってきます。それに加えて、増改築に要した費用が100万円以上であることが必要です。

なお、詳しく要件を確認したいという方は、国税局のホームページで確認することができます。

出典:国税庁「No.4508直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」

2022年の住宅取得など資金に関わる贈与税非課税の改正

2021年12月10日に発表された「令和4年度税制改正大綱」によって、住宅取得等資金の非課税の特例についても改正が行われました。

ここでは、住宅取得等資金の非課税の特例について改正された内容を解説していきます。

(1)適用される期間

今回の税制改革を受けて、本来は「令和3年(2021年)12月31日」までとされていた適用期間が2年間延長されました。

住宅取得等資金の非課税の特例が適用される期間は、「令和5年(2023年)12月31日」までに延長されています。

(2)年齢に対する要件

本税制改革以前は、令和4年3月31日までの贈与については年齢が満20歳以上でした。今回の改正によって、受贈者の年齢に対する要件が引き下げられ、満18歳以上になっています。これは、民法の改正により成年年齢が18歳とされたこと受けて改正されました。

ここで注意が必要なのは、令和4年(2022年)1月1日時点で19歳の方が3月31日以前に贈与を受けた場合です。この場合、改正前の要件が適用されるため、住宅取得等資金の非課税の特例を利用することができません。しかし、4月1日以降に贈与を受けた場合には、住宅取得等資金の非課税の特例を利用することができます。年齢に対する要件の改正については、少々複雑に感じると思いますが、しっかりと理解しておきましょう。

(3)住宅の要件

今回の改正において、住宅の種類によって非課税限度額が改正されました。改正前は最大1,500万円とされていた非課税限度額が、一定の条件を満たすことで非課税限度額が1,000万円に引き下げられています。

その一定の条件とは、「省エネ等住宅」であることです。購入した住居が省エネ等住宅に該当している場合、非課税限度額が1,000万円となります。

それでは、省エネ等住宅と認められるためには、どのような要件を満たす必要があるのでしょうか。省エネ等住宅と認められるための要件は、以下の3つです。

  • 省エネルギー性の高い住宅(断熱等性能要求4または一次エネルギー消費量等級4以上)
  • 耐震性の高い住宅(耐震等級2以上または免震建築物)
  • バリアフリー性が高い住宅(高齢者等配慮対策等級3、4または5)

これらの要件のうち、いずれかを満たした場合に省エネ等住宅と認められます。その他の住宅については、非課税限度額は500万円までです。

本改正前までは、住宅取得契約を締結した時期に応じて非課税枠が定められていましたが、契約時期については今回の改正で条件から外されました。

実際に住宅取得資金の贈与税を非課税にする手続き

女性

ここからは、実際に住宅取得資金として贈与を受けた際に、住宅取得等資金の非課税の特例を受けるための手続きについて解説します。

(1)確定申告書を用意する

住宅取得等資金の非課税の特例を受けようと考えた場合、確定申告を行うことが必要になります。贈与税申告書をお近くの税務署に取りに行くか、国税局のホームページからダウンロードすることが可能です。国税局のホームページ上では、PDFで書き方が詳しく解説されているだけでなく、住宅取得等資金の非課税の特例に関連した「チェックシート」が用意されていますので、それを活用することもできます。

確定申告には、一般的な書類として以下のものが必要になります。

  1. ☑戸籍謄本(贈与者と受贈者の関係が確認できるもの)
  2. ☑源泉徴収票
  3. ☑新築または購入した家屋や増改築した家屋の登記事項証明書
  4. ☑新築または購入した際の売買契約書や建築請負書の写し

これらの必要書類を用意し、贈与税申告書に記入して期日内に税務署に郵送または直接提出、e-Taxで申請しましょう。

(2)贈与税額がゼロでも申告が必要

ここで、注意していただきたいことがあります。住宅取得等資金の非課税の特例を利用すると、一定の条件を満たした場合、最大1,000万円が非課税、つまり税金がかからなくなります。「税金がかからないのだから、申告する必要はないのではないか」と考えてしまう方がいるようです。しかし、この場合でも必ず贈与税申告をするとなります。申告を行わなかった場合には、住宅取得等資金の非課税の特例は受けられなくなってしまいます。特例を受けようと考えている方は、必ず期日内に申告することを忘れないようにしてください。

住宅取得資金を受ける時のコツ

ここまでは、住宅取得資金を受け取る際に贈与税が非課税になる特例について解説してきました。しかし、住宅購入にはかなり大きな額が必要になるものです。

ここからはマイホーム購入を考えた場合に、更にメリットを受けながら住宅取得資金を取得する方法がないかを考えてみましょう。

(1)夫婦で別々に特例を利用すれば非課税枠は2倍になる

夫婦別々で住宅取得等資金の非課税の特例を利用することで、非課税枠が2倍になるのです。

この特例の非課税限度額は、受贈者一人当たりのものですので、夫婦がそれぞれ住宅取得資金として贈与を受ければ非課税枠は2倍になるのです。

なお、この場合に注意しておくべきことは、家屋の名義人についてです。名義人が夫婦どちらか一方になっていると、特例を受けられるのは1人だけになってしまいます。非課税枠を2倍にして特例を受けたいと考えている場合は、必ず「家屋」の名義を共有にしておきましょう。

ただし、共有名義にしておくと、離婚や別居などの問題が起こった場合に家の処分には両者の同意が必要となるため、家が処分しにくいなどのデメリットもあることを考慮しておくことが必要です。

(2)親からお金を借りることにする

親からお金を借りたことにして、住宅取得資金を受け取る方法もあります。しかし、この方法は金銭貸借を証明する契約書などがなく、口約束の場合が多いため贈与とみなされる可能性があります。高額なお金を借りた場合、その可能性は更に高くなります。

そこで、利用したいのが「暦年課税」です。暦年課税には基礎控除額があり、贈与額が年間に110万円以下であれば贈与税がかからないことになっています。そこで、親からお金を借りる場合には、この暦年課税の方式を利用すると良いでしょう。

ただし、この暦年課税を利用した場合でも、長期にわたって毎年110万円ずつ借りていると「連年贈与」として扱われ、贈与税が発生する可能性があります。そこで、親からお金を借りたことにして住宅取得資金を受け取る場合には、しっかりと借用書を作成し、口座振替で返済するなどの方法で贈与ではないという証拠を残しておくことが必要です。住宅ローンなどを利用した際に発生する金利の返済がなくなりますので、メリットが大きいと言えるでしょう。

(3)相続時精算課税制度も適用される

住宅取得資金を受け取る場合、相続時精算課税制度を利用することも考えてみましょう。相続時精算課税制度とは、この制度を利用する旨を税務署に届け出た場合に、60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子や孫に対して累計2,500万円までの贈与について、贈与税がかからないという制度です。2,500万円を超える場合は、一律20%の税率で贈与税がかかることになります。

この制度の特徴としては、贈与した場合には贈与税がかからないものの、相続時に相続税が発生することになります。また、一度この制度を利用することを選択すると撤回することができなくなり、暦年課税制度に戻ることができなくなりますので注意が必要です。

この制度は、住宅取得等資金の非課税の特例とも併用が可能なので、最大で3,500万円の贈与について贈与税が非課税となります。

住宅取得資金の贈与のデメリット

お金

住宅取得資金の贈与について、ここまでは住宅取得等資金の非課税の特例を利用することのメリットなどを解説してきました。

しかし、この特例を利用することで生じるデメリットもあります。ここでは、特例を利用するかどうかの判断材料として、そのデメリットについて紹介していきましょう。

(1)小規模宅地などの特例は適用されない

住宅取得等資金の非課税の特例を利用すると、贈与税が非課税となりますが、将来相続をする際に発生する相続税が高額になる可能性があります。

相続税には、小規模宅地等の評価減の特例という相続税額を軽減するための特例が設けられています。この特例は、一定の条件を満たした場合には土地の評価額を80%減額した金額で、相続財産として相続できるというものです。

例えば、8,000万円の土地を相続する場合、この特例を利用すれば1,600万円として評価されるので相続税の負担がかなり軽減されます。

住宅取得等資金の非課税の特例を受けると、小規模宅地等の評価減の特例を利用するための条件を満たすことができなくなり、この特例の利用はできなくなります。

(2)相続争いの原因になる可能性がある

住宅取得資金を贈与された場合に問題となるのは、相続税の計算の際に減額ができるかどうかだけではありません。特に、兄弟が多い場合には相続自体で問題になる可能性があります。

贈与は受けた分は、原則として遺産の前渡しとして扱われることになるので、それを考慮して遺産分割を行う必要があります。

しかし、過去に贈与された分を実際には受け取っているのに、受け取っていないとうやむやにされるケースも見られます。このような場合、遺産分割でトラブルになってしまい、相続争いに発展する可能性は否めません。贈与を受ける際には、相続時のデメリットも考慮しておくことが重要になります。

スムーズに進めるには事前にFPに相談

プロフェッショナル

税金のことだからもっと詳しく知っておきたいという方や、申告書の書き方や書類について不安があるという方もいると思います。

そんな時に、ファイナンシャルプランナー(FP)が非常にお役に立てると言えます。FPは一般的な税金対策についてはアドバイスをすることができますし、中には税理士資格を持っているFPもいますので、具体的な事情を聞いた上でさまざまな提案をすることができます。

住宅取得のための資金について、どのような方法があるのか悩んでいる方は、ぜひ一度FPに相談してみてはいかがでしょうか。あなたの悩みを解決に導くことができるでしょう。

まとめ

親子

住宅取得資金は高額になるため、親や祖父母からの資金援助を受けたいと考える方は多いと思います。親や祖父母も、高額な住宅購入の費用を少しでも援助できればと考えていることでしょう。

大きな金額の贈与を行なった場合に、贈与税がかかることは当然のことですが、その贈与税が非課税になれば経済的負担は軽減されることでしょう。本記事が住宅購入の際の一助となれば幸いです。

著者

代表取締役 田中佑輝
代表取締役 田中佑輝株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ
AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。

初回無料相談

あなたにとって本当に良いマネープランが分かる
漠然とした将来不安を見える化しよう。

初回無料相談はこちら

会員企業従業員様向け相談予約

ベネフィットステーション、リロクラブなど
企業会員勤務の方は15,000円/回が3回まで無料

会員企業従業員様向け相談予約の方はこちら