資産運用の必要性は?FPがその7つの理由と失敗しないコツを解説!
- ☑「よく資産運用が必要といわれるけれど、なぜ?」
- ☑「そもそも資産運用とは、どういうもの?」
このような疑問をお持ちの方は、少なくないでしょう。
実は、近年のさまざまな要因により、資産運用は生きていく上で欠かせないものとなっています。
この記事では、資産運用の必要性が分かる7つの理由を、FP(ファイナンシャルプランナー)が解説します。
合わせて資産運用で失敗しないコツもご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
資産運用が必要な7つの理由
まず初めに、資産運用が必要な背景について説明します。
(1)平均寿命が延びたことにより老後生活に必要なお金が増える
厚生労働省の「令和2年版 厚生労働白書」によると、日本人の平均寿命は1955年以降、延び続けています。
年 | 男性 | 女性 |
1955 | 63.6歳 | 67.75歳 |
1990 | 75.92歳 | 81.9歳 |
2019 | 81.41歳 | 87.45歳 |
2040(推計) | 83.27歳 | 89.63歳 |
一方で定年年齢については、1998年に60歳定年が義務化され、2013年に希望者全員の65歳までの雇用が義務化されています。
出典:厚生労働省「高年齢者雇用の現状等について」5ページ、6ページ
平均寿命が延びているにも関わらず、定年年齢はそれほど変わっておらず、老後生活に必要なお金が増えると予想されます。
(2)給与水準が上がらない
厚生労働省の「民間給与の実態調査」によると、30年前と比較して、給与水準は上がっていません。
1989年から2021年まで、約400万円~450万円の水準が続いています。
年 | 平均給与 |
1989 | 402万円 |
1997 | 467万円 |
2005 | 437万円 |
2013 | 414万円 |
2021 | 443万円 |
物価は上昇傾向であることを考慮すると、実質的な給与水準は以前より下がっていると考えられます。
(3)退職金は減少傾向にある
サラリーマンの方は、退職金で老後の生活費を賄おうと考えている人も多いでしょう。しかし、退職金も最近は減少傾向にあります。
厚生労働省の就労条件総合調査によると、大学・大学院卒で勤続35年以上の人の平均退職金は、10年間で約300万円減少しています。
西暦 | 2008年 | 2018年 |
平均退職金 | 2,491万円 | 2,173万円 |
退職金は1997年から減少を続けており、今後増える見通しは立っていません。退職金を当てにせず、自助努力による資産形成を行っておく必要があるでしょう。
(4)インフレが進むことによりお金の実質の価値が下がっている
近年は、エネルギー価格の高騰や資源・食料価格の上昇によりインフレが進んでいます。
物価が上がることによって、同じお金の金額でも、実質的な資産価値は目減りしてしまします。
今後もインフレが進む可能性を考えると、貯金だけでなく、資産運用を組み合わせて効率的に資産を増やす必要があるでしょう。
(5)少子高齢化により現役世代の負担が増えている
少子高齢化により現役世代の負担が増えているという背景もあります。内閣府の資料によれば、高齢者1人を支える現役世代の人数は、今後も減少傾向です。
西暦 | 1960年 | 2014年 | 2060年 | 2110年 |
高齢者1人を支える現役世代の人数 | 11.2人 | 2.4人 | 1.3人 | 1.2人 |
1960年には高齢者1人を11.2人で支えていましたが、2014年には2.4人まで減っています。
現状のままでは、2110年には1.2人にまで減る見込みであり、若年層ほど負担が増大していくと予想されます。
(6)年金の受給金額が減少傾向にある
年金の受給金額も減少傾向にあります。厚生労働省のデータによると、現在の収入に対する年金受給額を表した「所得代替率」は減少していくと予測されています。
西暦 | 2014年 | 2043年 |
所得代替率 | 62.7% | 50.6%~51.0% |
今後、年金だけで安心した老後生活が送れるとは言えないでしょう。
(7)低金利により預金ではお金が増えない
近年、日本は低金利が続いており、預金ではお金が増えません。
日本銀行の時系列統計データによると、定期預金の平均年利は15年間で0.401%から0.003%まで下がっています。
西暦 | 平均年利 |
2007年 | 0.401% |
2014年 | 0.027% |
2022年 | 0.003% |
預金金利が0.003%の場合、100万円預けても、利息は1年間で30円しか得られないということになります。
資産運用の目標を明確にする
資産運用において大切なことは、目標を明確にすることです。
(1)人生の三大支出を把握する
資産運用は、マイホーム購入や教育資金など、大きな支出を見据えてスタートすることが多いでしょう。
ここでは人生の三大支出と呼ばれる、ライフイベントの費用を紹介します。
①マイホームの購入資金
国土交通省の調査によると、物件ごとの購入資金は約3,000万円~5,000万円です。
物件種類 | 購入資金 |
新築注文住宅(土地を含む) | 5,112万円 |
分譲戸建住宅 | 4,250万円 |
分譲マンション | 4,929万円 |
中古戸建住宅 | 2,959万円 |
中古マンション | 2,990万円 |
マイホームは住宅ローンを組んで購入できるため、全額を用意する必要はありません。
しかしローンの頭金や仲介手数料、税金なども掛かるため、物件価格の20%~30%程度の資金は必要です。
マイホームを購入する時に必要な諸経費やシミュレーションなどについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
②子供の教育資金
教育資金は進路によっても異なりますが、子供一人あたり1,000万円~2,000万円程度です。
文部科学省「平成30年度子供の学習費調査」によると、幼稚園から高校までにかかる費用は、公立の場合543万5,958円、私立では1,830万4,926円です。
幼稚園 | 小学校 | 中学校 | 高等学校 | 合計 | |
1年間(公立) | 223,647円 | 321,281円 | 488,397円 | 457,380円 | 1,490,705円 |
総額(公立) | 670,941円 | 1,927,686円 | 1,465,191円 | 1,372,140円 | 5,435,958円 |
1年間(私立) | 527,916円 | 1,598,691円 | 1,406,433円 | 969,911円 | 4,502,951円 |
総額(私立) | 1,583,748円 | 9,592,146円 | 4,219,299円 | 2,909,733円 | 18,304,926円 |
大学にかかる費用は、私立医薬系学部を除けば250万円~550万円程度となっています。
国公立 | 2,425,200円 |
私立文系 | 4,079,014円 |
私立理系 | 5,511,961円 |
私立医薬系学部 | 16,333,322円 |
教育資金は準備できる期間が短いので、早めに進路を決めて、資金計画を立てることが大切です。
効率よく教育資金の積み立て方を知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
③老後資金
老後資金は約1,000万円~2,000万円が必要です。
総務省統計局の「令和3年 家計調査年報(家計収支編)」によると、65歳以上の夫婦のみ無職世帯の、毎月の収入は236,576円、支出は255,100円であり、毎月18,524円が不足します。
出典:総務省統計局「令和3年(2021年)家計調査年報(家計収支編)」18ページ
1年間で考えると、不足額は約23万円(18,524円×12カ月)です。
65歳に退職して90歳までに生きると仮定した場合、1,150万円が足りないことになります。
ただし、これは生活費のみであるため、医療費などは考慮していません。
余裕を持って2,000万円程度用意しておくべきでしょう。
老後資金は具体的にいくら必要なのか、老後資金の作り方について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(2)いつまでにいくらを貯めるかを決める
達成したい目的に対して、いつまでにいくら貯めるかを決めて、目標を明確にしましょう。
ここで大切なことは、無理のない目標を立てることです。
設定に無理のある目標を立ててしまうと、生活が苦しくなったり、心に余裕がなくなったりすることも考えられます。
無理のない範囲で資産運用を行い、少しずつ資産を増やしていきましょう。
ライフプランの立て方について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
初心者にオススメしたい投資商品6選
これから資産運用を始める場合、どのような商品を選ぶべきなのでしょうか。ここでは、初心者にオススメしたい投資商品6選をご紹介します。
(1)投資信託
投資信託は、運用会社が資金を運用して、運用益が投資家に分配される商品です。運用の専門家が、さまざまな株式や債券を選んで、代わりに運用してくれます。
①メリット
一口1万円程度の少額から投資できるため、初心者でもリスクを抑えて投資ができます。
投資する銘柄を自分で選ぶ必要がないので、知識がない人でも安心です。
②デメリット
運用を委託しているため、保有期間中は信託報酬などの手数料がかかります。
1日に1回基準価格が公表されるだけであるため、株価のように常に値動きが確認できず、リアルタイムでの売買ができない点もデメリットと言えるでしょう。
投資信託について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(2)不動産投資
不動産投資とは、アパートやマンションを購入し、家賃収入を得る投資方法です。
他の投資方法と異なり、ローンを組むことで、他人からお金を借りて投資できるという特徴があります。
①メリット
他人に物件を貸しているだけで、毎月まとまった収入が得られます。
一度入居すると2年程度は住み続ける入居者が多いため、長期間の安定した収益性がある点もメリットです。
また、物件の運営は管理会社に委託できるため、資産運用に時間が割けないサラリーマンや公務員にも向いています。
②デメリット
入居者が入らなければ、収入がゼロになってしまいます。
他の投資方法と比較して、投資金額が多いため、失敗したときの損失も大きくなる点も注意が必要です。
不動産投資のリストや回避策について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(3)金(ゴールド)投資
金投資とは、その名の通り金に投資することです。
金貨やインゴットなど金の実物を購入する方法や、金に投資する投資信託を購入する方法があります。
①メリット
金は戦争や大災害など有事の時に値上がりしやすい傾向があります。株や投資信託のリスクヘッジとして有効な資産です。
②デメリット
金は保有しているだけでは利益が得られず、配当金や利息などがありません。また実物で金を保有していると、盗難リスクがある点もデメリットです。
金(ゴールド)投資について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(4)外貨預金
外貨預金とは、外貨で預金する投資方法です。外貨であること以外は、一般的な日本円の預金と同じ仕組みであるため、初心者でも分かりやすいでしょう。
①メリット
外貨は日本円よりも金利が高いことが多く、より多くの金利が受け取れる可能性があります。また円安になると、為替差益による利益が狙えることも利点です。
例えば、1ドル=100円で100万円を預け入れ、1ドル=110万円で払い戻した場合、10万円の為替差益が得られます。
②デメリット
預入時と払戻時のタイミングによっては、損失が発生する為替変動リスクがあります。また円預金とは異なり、預金保険制度の対象外であるため、預金が返ってこない可能性もあります。
(5)つみたてNISA
つみたてNISAとは、年間40万円までの投資金を、最長20年間非課税で運用できる制度です。
投資対象は金融庁が認めた、長期的な積立・分散投資に適した商品のみであるため、初心者でもチャレンジしやすいでしょう。
①メリット
投資で得た利益が非課税となるため、お得に資産運用ができます。例えば50万円の利益が出た場合、通常なら10万円の税金がかかりますが、つみたてNISAなら0円です。
②デメリット
国が作った非課税制度であるため、対象となる商品が限られています。一般株式などは、つみたてNISAの対象外です。
2024年1月からはつみたてNISAが新しくなります。より詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
また、私が講師を務める「新NISA制度丸わかりセミナー」の動画をLINE友達限定にて公開しています。
- つみたてNISAの落とし穴
- 新NISAの注意点
- 実際に私が実践している投資商品
- 成功するための鉄則
などリアルな情報がたくさんです。つみたてNISAで損をしている方、これからNISAを検討している方は、ぜひご覧ください。
(6)iDeCo(イデコ)
iDeCoは正式名称を個人型確定拠出年金といい、公的年金の上乗せ制度です。拠出した掛金を、自分の選んだ商品で運用できます。
掛金および運用益は、60歳以降に受け取り可能です。
①メリット
掛金が所得控除の対象になるため、所得税・住民税の軽減につながります。期間中の運用益は非課税扱いとなり、受取時も税制上の控除が使えます。
②デメリット
掛金や運用益を原則60歳になるまで引き出せない点がデメリットです。掛金を多くしすぎると、60歳まで掛金を引き出せないことになってしまいます。
長期的に見て問題がないか検討した上で、掛金を決めましょう。iDeCo(イデコ)について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
資産運用で失敗しないようにするには?
資産運用にリスクはつきものですが、できるだけ失敗は避けたいものです。資産運用で失敗しないためのポイントについて解説します。
(1)リスク分散をする
まずはリスクを分散することが大切です。投資商品や地域、時期などをずらして投資する方法を「分散投資」といい、リスク分散効果が期待できます。
例えば、国内株式と米国株式、新興国株式など銘柄を分散したり、毎月決まった日付に購入して時期を分散したりすることで、リスクが分散できるでしょう。
もし一度で1つの商品にまとめて投資した場合、その商品が値下がりしたときに、資産が大きく減ってしまいます。
失敗しないためには、リスク分散を意識することが重要です。
(2)少額からスタートする
資産運用初心者は、少額からスタートしましょう。投資は元本割れするリスクもあるため、手持ちの資金をすべて資産運用に回すことは避けるべきです。
また、急にまとまったお金が必要になるケースを想定して、一定程度は現金で持っておきましょう。
まずは少額からスタートして、慣れてきたら投資金額を増やしていくことが大切です。
(3)一括と積立を分ける
一括投資と積立投資を使い分けることも大切です。
まとまった金額を一度に投資する方法が「一括投資」、少額を複数回に分けて投資するのが「積立投資」です。
基本的には積立投資の方がリスクは少ないと言えますが、商品価格が上昇しているタイミングでは、一括投資が向いています。
比較的リスクの少ない商品が上昇局面の場合は、一括投資を検討してもよいでしょう。
一括と積立をうまく使い分けて、効率的に運用しましょう。
(4)投資ポートフォリオを作る
資産運用の目的に合わせて、投資ポートフォリオを作りましょう。ポートフォリオとは、投資商品の組み合わせのことです。
運用目的ごとに適した商品として、以下のようなものが挙げられます。
資産運用の目的 | 運用に適した商品 |
日常で使うお金を貯めたい | 貯金 |
しばらく使う予定がないお金を運用したい | 投資信託、外貨預金、不動産投資、金投資 |
将来使う予定のお金を運用したい | つみたてNISA、iDeCo |
商品の組み合わせが決まったら、ポートフォリオを作成します。
時間が経つと投資商品の割合が変わってくるため、定期的にリバランスを行うことが大切です。
ポートフォリオの作り方について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(5)FPなど信頼できる専門家に相談する
FPなどプロの力を借りることも大切です。
FPとは、住まいやお金の専門家であり、資産運用や投資、ライフプランニングなど幅広い知識を持っています。
我々FPに相談すれば、投資目標を達成するために適した商品や投資方法についてアドバイスをさせて頂きます。
特に初心者の方は、失敗を回避するための方法として、FPなど専門家を活用するのがおすすめです。
まとめ
現代において、資産運用は次の7つの理由から、必要性が高いと言えます。
- (1) 平均寿命が伸びたことにより老後生活に必要なお金が増える
- (2) 給与水準が上がらない
- (3) 退職金は減少傾向にある
- (4) インフレが進むによりお金の実質の価値が下がっている
- (5) 少子高齢化により現役世代の負担が増えている
- (6) 年金の受給金額が減少傾向にある
- (7) 低金利により預金ではお金が増えない
特に投資初心者の方は、少額から資産を運用して、リスク分散を心がけましょう。
資産形成に関して不安のある方は、FPに相談するのがおすすめです。
お金の専門家である我々FPなら、あなたのライフプランに合った資産運用方法を提案させて頂きます。
1日も早く資産運用をスタートして、将来の資産づくりを進めましょう。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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