貯金と投資の割合はどう決める?決める時のコツや事例も合せてご紹介
- ✅「貯金と投資の理想的な割合は、どれくらいなのだろう?」
このような疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
最近は低金利が続いており、投資をしなければお金が増えにくいですが、一定程度貯金しておくことも大切です。
この記事では、貯金と投資の割合を決める時のコツや事例をご紹介します。これから投資を始めようと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
日本人の投資割合はいくつ?
まずは日本人の投資割合について見てみましょう。
(1)日本人の投資割合はいくつ?
日本銀行の統計によると、日本人の金融資産割合は次のとおりです。
現金・預金が54.3%を占めるのに対し、投資信託・株式は合計約15%であり、保有資産の中で現金・貯金の割合が高いことが分かります。
金融資産 | 割合 |
現金・預金 | 54.3% |
債券証券 | 1.3% |
投資信託 | 4.5% |
株式等 | 10.2% |
保険・年金・定型保障 | 26.9% |
その他 | 2.8% |
(2)世界から見る投資の割合は?
次に世界における投資の割合を見てみましょう。米国の投資割合は、株式が39.8%と最も多く、次いで保険・年金・定型保障が28.6%、現金・預金は13.7%です。
■米国の投資割合
金融資産 | 割合 |
現金・預金 | 13.7% |
債券証券 | 2.6% |
投資信託 | 12.6% |
株式等 | 39.8% |
保険・年金・定型保障 | 28.6% |
その他 | 2.8% |
ユーロエリアは日本と同じく現金・預金の割合が最も高いです。しかし全体に占める比率は34.5%と、日本より約20%も低くなっています。
■ユーロエリアの投資割合
金融資産 | 割合 |
現金・預金 | 34.5% |
債券証券 | 1.6% |
投資信託 | 10.4% |
株式等 | 19.5% |
保険・年金・定型保障 | 31.9% |
その他 | 2.1% |
米国やユーロエリアは、日本よりも現金・貯金の保有率が低く、投資比率が高いことが分かります。
世代別!投資する割合はいくつ?
次に世代別の投資割合を見てみましょう。
(1)20代
20代は預貯金が51.4%と最も多く、株式は11.9%、投資信託は8.1%です。社会人になって間もない20代は、投資にお金を回す余裕がなく、預貯金の割合が特に多くなっています。
預貯金 | 金銭信託 | 生命保険 | 損害保険 | 個人年金保険 | 債券 | 株式 | 投資信託 | 財形貯蓄 | その他金融商品 |
51.4% | 2.7% | 5.9% | 1.6% | 5.9% | 3.8% | 11.9% | 8.1% | 7.0% | 1.6% |
(2)30代
30代は20代と比較して、預貯金の割合が減り、株式・投資信託の割合が増えています。
20代より貯蓄に余裕が出てきて、投資割合が増えていると考えられます。
預貯金 | 金銭信託 | 生命保険 | 損害保険 | 個人年金保険 | 債券 | 株式 | 投資信託 | 財形貯蓄 | その他金融商品 |
46.0% | 1.4% | 10.1% | 1.0% | 5.0% | 1.0% | 18.4% | 12.4% | 2.5% | 1.9% |
(3)40代
40代は30代と比較して、預貯金の割合が約4%減り、代わりに債券や株式の割合が増えています。
預貯金 | 金銭信託 | 生命保険 | 損害保険 | 個人年金保険 | 債券 | 株式 | 投資信託 | 財形貯蓄 | その他金融商品 |
42.2% | 1.3% | 11.2% | 1.4% | 5.9% | 3.2% | 19.2% | 9.3% | 4.7% | 1.5% |
(4)50代
50代は他の年代よりも、さらに預貯金の割合が減り、他の金融資産の割合が増加しています。
預貯金 | 金銭信託 | 生命保険 | 損害保険 | 個人年金保険 | 債券 | 株式 | 投資信託 | 財形貯蓄 | その他金融商品 |
39.4% | 1.2% | 12.8% | 1.6% | 8.3% | 1.5% | 21.1% | 7.8% | 4.1% | 2.1% |
「貯金」と「投資」の割合から考えるお金の分け方
貯金と投資の割合を決めるにあたり、お金を目的ごとに分けて考えましょう。ここでは5種類のお金の分け方について解説します。
(1)日常生活に必要なお金
日常生活に必要なお金とは、生活に必要な最低限必要な費用のことです。具体的には食費や水道光熱費、住居費、交際費、教育費などを指します。
生活費の目安は、毎月の収入と支出を項目ごとに記録して把握しましょう。家計簿アプリなどを利用すると、簡単に管理できて便利です。
日常生活費は引き出しやすいように、普通預金口座に預け入れておくとよいでしょう。
弊社はお金の管理アプリ「マネソル」(特許あり)を開発しました。簡単な家計簿機能から資産管理機能まであります。ご興味がある方はぜひ活用してみてください。
(2)病気や事故など万が一のときに備えるお金
万が一に備えるお金は、想定外の出来事に対応するための費用です。病気で入院した場合の医療費や、事故で働けない期間の生活費などが該当します。
上記の費用は公的な雇用保険や、民間の医療保険で補うこともできますが、保険金が支払われるまでに時間がかかることも想定されます。
不測の事態が発生しても、当面は生活ができるように、6か月~1年分の日常生活費を手元に用意しておきましょう。
必要な時にすぐに引き出せるように、万が一に備えるお金も普通預金口座に預けておくことが大切です。
(3)結婚、出産などのライフイベントに備えるお金
ライフイベントに備えるお金は、人生における大きな出来事で必要になる費用です。
例えば結婚費用や出産費用、マイホーム購入資金などを指し、まとまったお金が必要になります。
近い将来にライフイベントを予定している場合は、現金化しやすいように、貯金で蓄えましょう。
ライフイベントまでに時間がある場合は、低リスクな金融商品で運用するのも選択肢の一つです。
(4)老後生活に備えるお金
老後生活に備えるお金は、年金だけでは足りない老後の生活費のことです。少子高齢化などにより年金受給額は年々減っているため、老後資金はしっかり準備しましょう。
老後に必要な生活資金は、退職金の額や貯蓄状況、老後の生活水準によって異なります。
自分が必要な老後資金をシミュレーションして、早めに貯めはじめることが大切です。
(5)余剰資金から投資に回すお金
これまで説明した4種類のお金を除いた部分が、余剰資金になります。
余剰資金は当面の間使わないお金のことを指し、この余剰資金から投資を行うことが重要です。
余剰資金の全額をハイリスクな商品に注ぎ込むと、自由に使えるお金がなくなってしまいます。
投資に回すお金は、自分の収支や貯蓄状況から、余裕を持って投資できる金額にしましょう。
「貯金」と「投資」の割合を決める時のポイント
貯金と投資をどのくらいの割合にすべきか、迷う方もおられるでしょう。割合を決める時の4つのポイントについて解説します。
(1)いつまでにいくら貯めたいかの目標を決める
まずは投資の目標を明確にしましょう。
なぜなら「いつまでにいくら貯めたいか」が決まらなければ、投資商品や運用期間が設定できないためです。
例えば30年後に2,000万円を貯めたい場合は、低リスクの金融商品に毎月3万円投資して利回り4%で積立運用できれば、達成できます。
一方で5年後に500万円を目標額とする場合、ハイリスクハイリターンの商品に投資する必要があるでしょう。
そのため、自分に合った投資をするには、まず初めに投資目標を決めることが大切です。
(2)余剰資金がいくらなのかを明確にする
次に自分のライフプランや貯蓄状況から、余剰資金がいくらなのかを明確にします。保有しているお金のうち、以下の費用を除いたものが余剰資金です。
- ✅日常生活に必要なお金
- ✅病気や事故など万が一のときに備えるお金
- ✅ライフイベントに備えるお金
- ✅老後生活に備えるお金
余剰資金のうち投資に回すお金は、投資商品のリスク度合いや、投資で得たいリターンなどを考慮して検討することになります。
(3)余剰資金でムリのない投資商品を選ぶ
余剰資金を投資する際、無理のない投資商品を選ぶことが大切です。
商品を選ぶ際に参考になるのが、「どれくらいの損失なら耐えられるか」という、自分のリスク許容度です。
次のようなポイントから、リスク許容度を計ることができます。
年齢 | 年齢が若いと時間があるので、損失が出てもカバーしやすく、リスク許容度は大きい傾向にある。 |
性格 | 損失が出ることに抵抗のある人はリスク許容度が小さい傾向にある。 |
家族構成 | 家族が少ない人は、投資に回せるお金が多いため、リスク許容度が大きい傾向にある。 |
年収 | 年収が高い人は、投資に回せるお金が多いため、リスク許容度が大きい傾向にある。 |
貯蓄 | ある程度貯蓄がある人は、投資に回せるお金が多く、リスク許容度が大きい傾向にある。 |
一般的に、リターンの大きな商品ほどリスクも高くなります。
投資で大きなリターンを得たい場合、高リスクな商品を選ぶことも可能ですが、リスク許容度を超えた投資はおすすめできません。
投資を無理なく続けるためには、自分自身のリスク許容度を確認した上で、投資商品を選びましょう。
(4)投資で失敗しても生活に影響のないようにする
もし投資で失敗しても、生活に影響しないようにすることも重要です。
投資はあくまで余裕資金の範囲内で行うべきであるため、生活費を切り崩してまで投資すべきではありません。
短期的な投資結果に一喜一憂して、生活に影響が出るほどの資金を投資しないようにしましょう。
レバレッジをかけるなど、自分の手持ち資金以上の投資をすることも、避けるべきです。
手持ち資金を超える損失が出ると、元本を失うだけでなく、借金をかかえることになってしまいます。
仮に全ての資金を失ったとしても、生活に支障が出ない範囲で投資を行いましょう。
初心者にオススメしたい投資商品5選
ここからは初心者におすすめの投資商品5選について、ご紹介します。
(1)投資信託
投資信託は投資家から集めた資金を、運用会社が代わりに運用して、運用益が分配される仕組みです。
投資先を自分で検討する必要がないため、投資経験のない人でも投資を始めやすいでしょう。
一口1万円程度から購入できるため、リスクを抑えた少額投資が可能です。ただし、保有期間中は運用会社に信託報酬という手数料を支払う必要があります。
投資信託について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(2)不動産クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングは、投資家からの資金を元に、運用会社が不動産を購入・運用する投資商品です。
物件の売却益や家賃収入は、分配金として投資家に還元されます。
実物不動産投資と違い、1万円という少額から投資ができて、物件管理の手間や出費がいらず、不動産投資の知識がなくても投資しやすい点が特徴です。
ただし運用期間中は途中で売却することができないため、注意しましょう。
(3)外貨預金
外貨預金とは海外通貨で預金する投資方法です。一般的な円預金よりも金利が高いケースが多く、より多くの利息が期待できます。
また預入時よりも円安が進めば、払戻時に為替差益を得ることも可能です。注意点として、預入時より円高になると預金が目減りするリスクが挙げられます。
(4)金(ゴールド)投資
金投資とは、ゴールドバーなど金実物を購入したり、金に連動する投資信託に投資したりする運用方法です。
金は世界的に価値が認められており、戦争や災害など有事の際に値上がりする傾向があります。
株式や投資信託など、一般的な金融商品のリスクヘッジとして活用できます。
金は保有している間に利益が得られず、配当金や利息がない点がデメリットです。
金(ゴールド)投資について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(5)つみたてNISA
つみたてNISAは長期の積立・分散投資を促進するために、国が作った非課税制度です。年間40万円までの投資額が、最長20年間非課税で運用できます。
通常は、投資による利益の20%を税金として支払う必要がありますが、つみたてNISAなら税金がゼロになります。
対象商品は金融庁が認めた投資信託のみであるため、株式投資などは対象外です。
しかし、手数料の少ない優良な商品が選ばれているため、投資初心者でも安心して投資できるでしょう。
2024年1月からNISAが新しくなります。より詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(6)iDeCo(イデコ)
iDeCoは正式名称を個人型確定拠出年金といい、国民年金に上乗せる私的年金制度です。拠出時・運用期間中・受取時に税制上の優遇が受けられます。
拠出時 | 掛金は全額社会保険料控除の対象となるため、所得税・住民税が軽減される。 |
運用期間中 | 運用期間中の運用益は非課税扱いである。 |
掛金・運用益の受取時 | 一時金で受け取る場合は、退職所得として取り扱う。 年金として受け取る場合は、雑所得として扱われ、公的年金等控除が利用できる。 |
高い節税効果が魅力のiDeCoですが、掛金および運用益は原則60歳になるまで引き出せないため、無理のない範囲で掛金を設定しましょう。
iDeCo(イデコ)について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
「貯金」と「投資」の割合を決める事例3選
では貯金と投資の割合を決める事例を、年代別に見てみましょう。
(1)20代独身
20代独身の場合は、運用期間が長い分、失敗してもリカバリーしやすいことが特徴です。貯金の割合は20%程度に抑えて、残り80%を比較的リスクの高い商品に投資しています。
国内外株式のリスクヘッジとして、10%金投資を組み込んでいます。
資産の種類 | 割合 |
国内株式 | 20% |
先進国株式 | 40% |
新興国株式 | 10% |
金投資 | 10% |
貯金 | 20% |
(2)30代既婚
30代既婚者の場合は、これから子育てを行うことを考慮し、20代よりもリスクを抑えた方法で運用していくべきでしょう。
資産のうち30%を貯金して、残り70%を株式や債券、金に投資しています。
資産の種類 | 割合 |
国内株式 | 20% |
先進国株式 | 30% |
先進国債券 | 10% |
金投資 | 10% |
貯金 | 30% |
(3)40代子ども2人
40代子ども2人の家庭では、教育資金がかかることが予想され、より堅実な資産運用が求められます。
30代既婚者と比べて、さらにリスクの低い投資商品で資産配分を作成しました。
資産の40%を貯金にして、残りの60%を国内株式や国内債券を中心に投資して、安定的な利回りを目指します。
資産の種類 | 割合 |
国内株式 | 20% |
先進国株式 | 10% |
国内債券 | 20% |
金投資 | 10% |
貯金 | 40% |
不安な方はFPに相談がおすすめ
貯金と投資の割合について解説してきましたが、投資は不安という方もおられるでしょう。
そのような場合、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談するのがおすすめです。
我々FPは暮らしやお金の専門家で、金融に関する総合的なアドバイザーです。
あなたのライフスタイルや貯蓄状況に合った、投資プランを提案してくれるでしょう。
まとめ
貯金と投資の割合を考える上で、以下のようにお金を目的ごとに分けて考えることが大切です。
- ✅日常生活に必要なお金
- ✅病気や事故など万が一のときに備えるお金
- ✅ライフイベントに備えるお金
- ✅老後生活に備えるお金
- ✅余剰資金から投資に回すお金
投資は元本を失うリスクもあるため、余剰資金から投資を行いましょう。
自分の投資目標を立てて、無理のない投資商品を選ぶことが重要ですが、判断に迷う場合はFPなどの専門家に相談することをおすすめします。
FPは金融のプロであるため、個人の状況に応じた適切な投資プランを立ててくれるでしょう。
この記事を参考に、貯金と投資の最適なバランスを見つけてもらえると幸いです。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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