家を買う時の年収はいくら必要?年収別借入れ可能額も分りやすく解説
マイホームの購入を検討している人の中には、次のような悩みを持っている方もいるでしょう。
- ✅住宅購入時の年収相場はどれくらい?
- ✅現在の年収で購入できる物件価格は?
- ✅500万円の年収ならいくらの家購入できるの?
- ✅住宅購入に最適なタイミングは何歳?
本記事では、住宅購入時の平均年収や年収別返済シミュレーション、物件価格が予算オーバーしそうな場合のコツや対策について解説しています。
各年代による住宅購入のメリット・デメリットや、借り入れ時に必要な費用などについても紹介していますので、マイホームの購入を検討している方はぜひ、本記事をチェックしてください。
家購入時の平均年収はいくら?
国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査報告書」のデータをもとに、マイホーム購入時の平均世帯年収を物件別に表にしました。
建物種別 | 平均世帯年収 |
注文住宅(全国) | 779万円 |
注文住宅(三大都市圏) | 909万円 |
分譲戸建住宅 | 719万円 |
分譲マンション | 912万円 |
中古戸建住宅 | 687万円 |
民間賃貸住宅 | 516万円 |
リフォーム住宅 | 640万円 |
調査内容によると、世帯年収が最も高い物件は分譲マンションの912万円、次いで注文住宅(三大都市圏)の909万円となっており、首都圏周辺で新築マンションや新築一戸建てを購入する際は、900万円程度の世帯年収が必要ということが分かります。
また、中古一戸建てやリフォーム住宅の場合は、600万円程度の世帯年収があると安心といえるでしょう。
家購入時の平均年齢はいくつ?
マイホームを購入している人は何歳が多いのでしょうか。
国土交通省「令和3年度住宅市場動向調査報告書」のデータをもとに、住宅購入時の世帯主の平均年齢を見ていきましょう。
なお、ここでは初めてマイホームを購入する世帯主の年齢を記載しています。
建物種別 | 世帯主の平均年齢 |
注文住宅 | 40歳 |
分譲戸建住宅 | 37.2歳 |
分譲マンション | 39.5歳 |
中古戸建住宅 | 43.2歳 |
中古マンション | 43.6歳 |
表を見ると、マイホーム購入は平均的に30歳後半から40歳前半の頃に多いことが分かります。
30代や40代は結婚や出産などで家族構成が変化する年代です。子どもの教育費など出費が大きくなる年代でもあります。
収入も安定して住宅ローンが組みやすくなるため、この年代での購入者が多いのもうなずけます。
年代ごとの家購入のメリットとデメリット
先ほどご紹介した平均年齢はあくまで目安ですので、平均年齢とずれているからといって焦る必要はありません。
マイホーム購入におすすめのタイミングは、家族構成やライフスタイルなどによって異なります。
ここでは、マイホーム購入のメリット・デメリットを年代別でご紹介します。
(1)20代
①メリット
20代でマイホームを購入するメリットは、早い年齢で住宅ローン返済が終わる可能性がある点です。
定年後もローン返済が続くと老後の生活が苦しくなる可能性がありますが、20代で借り入れを行うと定年前に完済できるケースが多いので、安心して老後生活を送れます。
②デメリット
デメリットとしてはライフスタイルや家族構成が不明確なため、後悔しやすい点が挙げられます。
例えば、もともと夫婦2人での住まいを想定して家を購入したものの、後々気が変わって子どもが欲しくなった場合は家が窮屈だと感じるかもしれません。
また、20代は年収が低い傾向にあるため、住宅ローンの借り入れ金額も少なくなります。
自己資金によっては物件価格を下げなければならなくなるのはデメリットといえるでしょう。
よって、家を購入する前にある程度のライフプランを立てるといいでしょう。
(2)30代
①メリット
30代は20代と比べて収入が安定しやすいため、希望する物件価格の家を購入しやすいのがメリットです。
また、物件価格や借り入れ金額によっては老後までにローン返済を終えることができます。
②デメリット
30代も20代と同じくライフスタイルや家族構成が安定しておらず将来的な見通しを持ちづらいため、購入後に後悔する可能性があります。
また、子どもの教育費などで支出が多く、貯蓄が安定しないのもこの年代です。
まだライフプランが未確定な部分も多く、ローンを組むタイミングや購入資金、物件価格によっては、30代でマイホームを購入したとしても完済時期が老後になる場合がありますので注意しましょう。
(3)40代
①メリット
40代はライフプランが確立し始めるので、希望のエリアや間取りなど住まいの条件を具体的に決めてからマイホームの購入ができます。
また、40代はキャリアアップによって自己資金が多い方も増えてくるので、新築マンションや中古一戸建てなど自身の希望に合う物件を選択できるのもメリットのひとつです。注文住宅も40歳というデータが出ていました。
ただし、40代でもまだまだ子どもの教育費がかさむ年代ではあります。これからかかるであろう教育費も視野に入れて、購入予算を決めるといいでしょう。
②デメリット
デメリットとしては、健康面でローン審査に落ちる可能性がある点です。
住宅ローンを申し込む際は、万が一ローンの支払いができなくなる場合に備えて、団信(団体信用生命保険)に加入するのが一般的です。
団信はローン申請者の健康状態によって加入できない場合があるため、健康面に不安がある方にとってはデメリットといえるでしょう。
(4)50代
①メリット
50代はライフプランの変化が少なくなったり、家計が安定したりする年代なので、将来の生活を見据えた住まいが望めます。
例えば子どもが独立しているなら、夫婦2人だけで住むためのコンパクトな新築一戸建てや、リノベーションを楽しめる中古一戸建てなど、理想の老後生活にぴったりの住まいを購入できるでしょう。
②デメリット
50代で家を購入するデメリットは、住宅ローンを組むのが簡単ではない点です。
金融機関では、住宅ローンの完済時年齢を80歳未満としているケースが多く、住宅の購入金額や予算、購入資金などによっては住宅ローンを組めない可能性があります。
また、住宅ローンが通ったとしても退職後までローン返済が続くなら、老後の生活が苦しくなるかもしれません。
購入後に後悔しないよう購入資金を貯めておき、無理のない返済計画を立てる必要があります。
年収別!いくらの物件買える?住宅ローン借入額をシミュレーション
現在の自身の年収で買える物件価格はいくらなのか、気になっている方もいるでしょう。
ここでは三井住友銀行のシミュレーターを使用し、年収別に住宅ローンの返済シミュレーションを行っています。
なお、前提条件として下記のルールを設けました。
- ✅返済負担率:手取り金額の25%
- ✅金利:0.475%(変動金利)
- ✅借入期間:35年間
- ✅手取り金額:額面年収の8割
- ✅頭金:なし
「返済負担率」とは年収に占める年間返済額の割合を表し、数字の比率が大きいほど、毎月の返済負担が大きくなり生活に余裕がなくなります。
なお、理想の返済負担率は「手取り金額の20%~25%」なので、今回のシミュレーションでは「25%」を目安として算出しています。
また、金利は変動金利、借入期間は35年をそれぞれ設定しました。今回頭金は考慮していません。
(1)年収300万円のケース
額面年収 | 300万円 |
手取り金額 | 240万円 |
毎月返済額 | 5万円 |
年間返済額 | 60万円 |
金利(変動金利) | 年0.475% |
借入期間 | 35年間 |
借入金額の目安 | 1,930万円 |
年収300万円の手取りを240万円と考え、返済負担率25%で試算したところ、毎月の返済額は5万円です。
借入金額の目安は1,930万円と年収の約6倍ですので、物件の購入金額は2,000万円前後を目安にするとよいでしょう。
毎月5万円の返済額を多いと感じた場合は、返済負担率を20%に下げて計算するのもひとつの方法です。
この場合、年間返済額は48万円となり毎月の返済額は4万円に抑えられますが、一方で借入金額の目安は1,540万円と約400万円下がりますのでご注意ください。
下記の関連記事でも、年収300万円の人が住宅ローンを利用する際の注意点や期間別の返済シミュレーションを行っていますので、興味がある人は参考にしてください。
(2)年収500万円のケース
額面年収 | 500万円 |
手取り金額 | 400万円 |
毎月返済額 | 8万円 |
年間返済額 | 100万円 |
金利(変動金利) | 年0.475% |
借入期間 | 35年間 |
借入金額の目安 | 3,090万円 |
年収の条件を変えて先ほどと同じように試算した場合、年収500万円の年間返済額は100万円、毎月の返済額は約8万円です。
借入金額は約3000万円と年収300万円より約1000万円多く、額面年収のおよそ6倍の借り入れが可能という結果になりました。
(3)年収700万円のケース
額面年収 | 700万円 |
手取り金額 | 560万円 |
毎月返済額 | 11万円 |
年間返済額 | 140万円 |
金利(変動金利) | 年0.475% |
借入期間 | 35年間 |
借入金額の目安 | 4250万円 |
同じ方法で年収700万円の場合を試算すると、年間返済額は140万円、毎月の返済額は約11万円となりました。
なお、借入金額の目安は4,250万円で年収の約6倍にあたる物件価格がおすすめといえます。
また、下記の関連記事では年収700万円の人が住宅ローンを利用する際の注意点や、負担率別の返済シミュレーションを行っていますので、ぜひ合せて参考にしてください。
(4)年収800万円のケース
額面年収 | 800万円 |
手取り金額 | 640万円 |
毎月返済額 | 13万円 |
年間返済額 | 160万円 |
金利(変動金利) | 年0.475% |
借入期間 | 35年間 |
借入金額の目安 | 6230万円 |
年収800万円の場合、手取り額を額面年収の8割で考えると640万円です。
そこから返済負担率25%で計算した場合の年間返済額は160万円、毎月の返済額は約13万円となります。
借入金額の目安は6,230万円と、年収の7倍以上の物件価格でも住宅を購入できる可能性があるので、新築マンションや新築一戸建てなど購入できる物件価格の範囲が広がるでしょう。
下の関連記事でも、年収800万円の人が住宅ローンを利用する際の注意点や、期間別の返済シミュレーションを行っていますので、参考にしてください。
今都内のマンションが非常に高騰しています。これから購入する場合はどこのエリアに購入すべきなのでしょうか。
最近不動産市場の動きについて下記動画にて解説していますので、これから家を購入する方はぜひチェックしてみてください。
家の購入で年収以外にも考えるべきポイント
(1)頭金を用意する
頭金とは、住宅価格から住宅ローンの借入額を除いた自己資金です。
一般的に、頭金は住宅購入金額の2割程度が適正といわれています。
それ以上に多めの金額でも購入可能ですが、急な出費があったときにローン返済が滞る原因にもなりかねませんので、無理のない範囲で頭金を用意しましょう。
なお、頭金を出すメリットとしては次の3点が挙げられます。
- ✅月々の返済額や利息の総額を抑えられる
- ✅金融機関によっては金利が抑えられる
- ✅ローン審査に通りやすくなる
頭金があると住宅ローンの借入額を減らせるため、月々の返済額や利息としてはらう費用の総額を抑えられます。
完済時の年齢を早めることにも繋がりますので、資金計画も立てやすくなるでしょう。
また、フラット35のように、自己資金を物件価格の10%以上用意できる場合は金利が下がるケースもあります。
借入金額が少なくなることで住宅ローン審査に通りやすくなるのも、頭金のメリットです。
借入額が少なければ年収が少なくても審査に通りやすくなりますので、無理のない範囲で頭金を用意しておきましょう。
頭金の考え方については、下記の関連記事を参考にしてください。
(2)諸費用も考慮する
住宅を購入する際は、物件価格の他にも登記費用や仲介手数料といった諸費用がかかります。
諸費用は一般的に物件価格の5%~10%が目安です。
ここでは、物件の購入時と所有時にかかる諸費用を見ていきましょう。
①購入時
家購入時にかかる諸費用には次のものがあります。
- ✅手付金
- ✅仲介手数料
- ✅住宅ローンの借り入れでかかる費用
- ✅司法書士への報酬
- ✅印紙代
- ✅登録免許税 など
手付金とは、売買契約が成立した証として買主が売主に対して支払う金額です。
相場は、物件価格の5%~20%とされています。
また、仲介手数料は中古マンションなどを購入する際、仲介業務を行う不動産会社に支払う報酬です。
例えば、4000万円の中古マンションを購入した際は「4000万円×3%+6万円+税金=138万6000円」が仲介手数料になります。
②所有時
次に物件の所有時にかかる諸費用を紹介します。
- ✅不動産取得税
- ✅固定資産税・都市計画税
- ✅管理費・修繕積立金 など
不動産取得税は、土地や建物を購入した際にかかる地方税です。
土地や住宅に対しては3%、住宅以外の家屋には4%の税率が適用されます。
また新築マンションや中古マンションを購入すると、管理費や修繕積立金の支払いが毎月必要です。
人によっては駐車場代が発生する可能性もあるでしょう。
下記の関連記事ではマンション購入時の初期費用の詳細や、不動産購入時の諸費用の目安などを解説していますので、合せて参考にしてください。
家の購入で年収に不安があるときの対策
マイホームの購入を検討しているものの、今の年収では予算オーバーしそうで不安を感じている方もいるでしょう。
年収に不安があるときのコツや対処法を4つ紹介しますので、参考にしてみてください。
(1)親や祖父母から援助を受ける
年収に不安がある場合、親や祖父母から資金援助(住宅資金贈与の特例)を受ける方法があります。
「住宅資金贈与の特例」を活用すると、贈与税の基礎控除である年間110万円とは別に最大1,000万円までの金額が援助として非課税で受け取れます。
なお、非課税となる条件と金額は省エネ等住宅で1,000万円、その他の住宅で500万円となっています。
出典:国税庁「No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税」
(2)賃貸併用住宅を検討する
自宅と賃貸を併せ持つ「賃貸併用住宅」を検討するのも一つの方法です。
賃貸併用住宅は購入費用を住宅ローンとして借り入れられるのが特徴で、不動産投資ローンよりも金利が抑えられます。
ただし、借り入れる際は「住宅の面積のうち、自身の居住用部分が50%以上」の条件を満たす必要がありますのでご注意ください。
また、賃貸併用住宅は家賃収入でローン返済ができるのもメリットのひとつです。
設計プランの内容や相場によっては、家賃収入だけで住宅ローン返済ができる可能性も十分あります。
住宅ローンの負担を軽くしたい方や、老後に備えて貯金を増やしたい方は利用を検討してみてはいかがでしょうか。
(3)物件の予算をおさえる
自分の年収では予算オーバーしそうで不安な場合は、物件の予算を抑えるのもコツのひとつです。
例えば「新築マンションではなく、中古マンションを購入する」「新築一戸建てではなく、中古の一戸建てを購入する」など新築にこだわらない方であれば、中古物件にすることで購入価格が下がり、ローンに審査に通りやすくなるでしょう。
余剰金があるようならリフォームやリノベーションを行うのもオススメです。
ハウスメーカーを上手に活用すれば、自分の理想とする住まいを格安で手に入れられます。
ただし、予算を抑えすぎると暮らしはじめは大丈夫でも、土地の条件や場所などで失敗し、後悔するケースが多々あります。
予算のみを重視しすぎるのではなく「駅の近くがいい」「子ども部屋は作りたい」など、自身や家族が理想とする住まいの条件を加味し、予算とのバランスを考えることも重要です。
(4)フラット35を検討する
年収に不安があるなら「フラット35」を利用するのも選択肢の一つです。
フラット35とは、民間金融機関および住宅金融支援機構が提携して提供している全期間固定金利の住宅ローンです。
返済終了まで金利が変化しない固定金利制なので資金計画が立てやすく、仮に物価が上昇したとしても安定して返済できます。
住宅ローンの借り入れに必要な年収の最低基準がないのもフラット35の特徴です。
一般的に住宅ローン審査には年収の最低基準が定められていますが、フラット35には最低基準がないためローン審査に通りやすいといえます。
また、自営業者が住宅ローンを申し込む際は通常3期分の所得が連続して黒字である必要がありますが、フラット35なら直近1期分で済むのもメリットです。
自営業で住宅ローンを組みたい方は、下記の関連記事を参考にしてください。
はじめての人はFPなどの専門家に相談する
マイホーム購入は、人生における大きな買い物のひとつです。
初めての方も多く、自分1人ではタイミングや選び方の判断が難しい方もいるでしょう。
そのような場合は、お金の専門家であり不動産の専門知識を持つアドバイザー、我々FP(ファイナンシャルプランナー)に相談ください。
年収や予算、ライフスタイルなどから、最適な資金計画をご提案いたします。実際に弊社にあった相談事例を公開していますので、ぜひチェックしてみてください。
また、将来の資産運用に関するご相談も可能ですので、ぜひご利用ください。
まとめ
本記事では、物件購入時の平均年収をはじめ、年収別の返済シミュレーションや予算オーバーしそうな場合の対策について解説してきました。
マイホーム購入は人生の中で特に大きな買い物なので、なかなか購入までの一歩が踏み出せない方も少なくありません。
もし物件購入でお悩みなら、ぜひ弊社FP(ファイナンシャルプランナー)にご相談ください。
無理のない返済シミュレーションや購入の適切なタイミング、購入金額など、あなたに最適なプランを具体的にアドバイスいたしますので、お気軽にご相談ください。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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