老後2,000万円問題とは?老後資金の計算方法や足りない時の対策
近年、「老後2,000万円問題」という言葉を耳にする機会が多くなり、老後について考え始めた人は多いのではないでしょうか。
本記事では、老後2,000万円問題を、問題となっている理由や老後資金を貯めるポイントとともに徹底解説しています。
老後に向けた資金づくりに興味のある方はぜひ、この記事を参考にしてください。
そもそも老後2,000万円問題とは
「老後2,000万円問題」とは、男性が65歳以上で女性が60歳以上となった無職世帯の夫婦が平均寿命(男性約81歳、女性約87歳)まで生きた場合、収入から老後生活にかかる費用を差し引いた金額がマイナス1,300万円~2,000万円になる問題のことです。
高齢社会となり人生100年時代といわれる中、定年退職後の30年間以上、退職金や年金などを切り崩して生活しなければならないのです。
少子高齢化が進んだことで年金支給額は毎年減少傾向にあり、年金のみで老後の生活費をまかなうことが難しくなっている中、リタイア後の生活資金を若いうちから自分で蓄えておく動きが近年注目されています。
実際に高齢者世帯の貯金額は?
では、実際に高齢者世帯の貯金額はいくらになるのでしょうか。
- ✅2人以上世帯の貯蓄額
2人以上世帯全体 | 共働き世帯のみ | |
60歳~69歳 | 2,458万円 | 2,180万円 |
70歳~ | 2,411万円 | 2,191万円 |
- ✅単身世帯の貯蓄額
男性 | 女性 | |
60歳代 | 1,791万円 | 1,423万円 |
70歳代 | 1,427万円 | 1,217万円 |
80歳代 | 1,750万円 | 1,083万円 |
上記家計調査報告書によると、年齢や世帯によって資金額はさまざまですが、全体的に高齢夫婦よりも単身の高齢者の方が、1人あたりの貯蓄額が多い傾向にあります。
また、男女別の平均額で比較してみると、女性より男性の方が資産に余裕があるという結果になっています。
人によって老後の不足金額が違う
老後2,000万円問題を聞き、「老後までに2,000万円を急いで貯めなければ!」と焦る人がいるかもしれませんが、人によって老後の不足額は異なります。
「出費が多い」「老後収入が多い」などの生活水準によって「2,000万円あれば十分」という人もいれば、「2,000万円溜めても足りない」というケースもあるのです。
そのため、2,000万円を目標にするのではなく、どれだけの貯蓄があれば将来安心して暮らせるのかを前もって計算して用意しておくことが重要です。
老後に考えられる収入
老後の生活資金について考える前に、まずは老後の収入について把握しておきましょう。
老後の収入として考えられるのは、主に年金・退職金・投資の利益の3つです。
(1)年金
老後の収入と聞いて、まず思い浮かぶのが公的年金制度による年金収入です。
退職後に年金として受け取る場合は、老齢基礎年金と老齢厚生年金の2種類が受給できます。
- ✅老齢基礎年金…国民年金や厚生年金に加入していた場合、加入期間に応じた年金給付がある
- ✅老齢厚生年金…企業に勤めて厚生年金に加入していた人がもらえる年金で、年金受給額は給与や賞与の額などによって変わる
厚生年金は企業に勤めている人が加入できるため、現在フリーランスの方は厚生年金分を多めに見積もって将来的な貯蓄額を決める必要があります。
(2)退職金
会社を退職する人が一定の金額をもらえる退職金制度も、老後収入のひとつです。
ただし、個人事業主の場合は退職金がありませんので、その分必要となる老後資金は高くなる可能性があります。
また、勤め先の企業に退職金制度がない場合は自分自身で老後の生活資金を確保しておく必要がありますので、早いうちから無理のない範囲で資金を用意しておきましょう。
(3)株の配当など投資での収入
投資での収入も、老後収入となり得ます。
具体的には、資産の一部を高配当の株式に投資しておくことで、年金と退職金に加えて配当金として収入を得られます。
ただし、配当を受け取る際には20.315%の税金がかかることを理解した上で、どの商品に投資するかを判断しましょう。
老後に考えられる支出
一方で、老後で生活費の他にどんな支出が考えられるのでしょうか。
(1)生活費
- ✅高齢世帯 1ヶ月の生活費
60~69歳 | 70歳~ | |
食費 | 67,795円 | 56,741円 |
住居費(住宅ローン含む) | 18,422円 | 14,633円 |
光熱費 | 19,930円 | 17,822円 |
合計 | 106,147円 | 89,196円 |
上記表の数値をもとに年間の生活費を求めると、60歳代で約120万円、70歳以上で約100万円が必要となります。
(2)旅行などの娯楽費
- ✅高齢世帯 1ヶ月の娯楽費
60~69歳 | 70歳 | |
教育娯楽 | 22,336円 | 16,395円 |
趣味 | 16,812円 | 17,121円 |
合計 | 39,148円 | 33,516円 |
上記表の情報をもとに年間の娯楽費を計算すると、60歳代で約47万円、70歳以上で約40万円が必要となります。
(3)冠婚葬祭などの出費
子どもがいる高齢夫婦の場合、子どもの結婚や出産、教育資金の援助など親や祖父母としての出費は増加します。
起こりうるライフイベントに備えて資金を準備しておくことが大切です。
また、自分が亡くなったときに家族の負担を減らすために自分で葬儀費用を用意しておく人もいます。
その場合の葬儀平均額は約300万円となっています。
(4)老人ホームなどの介護費用
厚生労働省のデータによると、「75歳以上のうち約30%の人が要支援・要介護の認定を受けている」という結果が出ており、病気になって介護サービスを受ける可能性も少なくありません。
また、月々の介護費用は約8万円となっており、支出の中でも大きな割合を占めていることになります。
参考:生命保険文化センター「令和3年度生命保険に関する全国実態調査」
自分にあった老後資金の計算方法
先ほど、将来必要な費用は老後の収入やライフスタイルによって異なると説明しましたが、自分に必要な老後資金を求めるにはどうすればいいのでしょうか。
シミュレーションの仕方をご紹介します。
(1)もらえる年金額を算出する
まずは、将来もらえる年金額を確認しましょう。
厚生年金の金額は「ねんきん定期便」から確認できますが、企業年金や私的年金については年金窓口に直接確認する必要があります。
(2)理想となる老後生活に必要な費用を算出する
年金額が確認できたら次は老後のライフプランを立てましょう。
家計簿をつけている人は家計収支を参考にしながら、消費支出額を算出します。
その際、理想とする老後生活をなるべく具体的にイメージすると老後に必要な費用の目安が分かりやすくなります。
(3)実際に不足となる金額を算出する
老後に必要な費用と老後の収入が分かったら、実際に不足額を求めてみましょう。
「老後収入-老後支出」の差額が不足金額となります。
不足金額が出るようなら、老後までに不足分を補えるように対策を立てましょう。
老後資金の計算方法についてより詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
老後資金が不足している場合の対策
老後資金を計算すると、老後までに資金の準備が間に合わない人がいるかもしれません。
資金不足の場合、貯金はもちろん資産運用なども積極的に行うのが大切です。
ここでは、老後資金の準備方法と資産運用におすすめの金融商品をご紹介します。
(1)給与天引きなどの先取り貯金
月末に残ったお金を貯金しようと思うと、なかなかお金は貯まらないものです。
貯金が苦手な方は、財形貯蓄などを活用して先取り貯金をするのがおすすめです。
財形貯蓄とは、給与収入の一部を銀行に直接預金する制度で、勤め先の会社が導入している場合は利用ができます。
財形貯蓄について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(2)NISAやiDeCoなど国の税制優遇制度
日本の預金金利はかなり低く、お金を預けていてもほとんど増えません。
預金などの金融資産だけで老後に備えるのが心配な方は、持っている資産を運用するのも選択肢のひとつです。
初めて資産運用をするなら、NISAやiDeCoなどの税制優遇制度を利用するのがよいでしょう。
NISAには一般NISAと積み立てNISAの2つがあり、どちらも利益全額が所得控除となるのが特徴の積立投資です。
一般NISAと積み立てNISAの違いは下記の通りです。
一般NISA | 積み立てNISA | |
年間積立金額 | 120万円 | 40万円 |
非課税期間 | 5年間 | 20年間 |
投資対象 | 上場株式・投資信託 | 投資信託 |
口座開設費用 | 無料 |
NISAについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
また、私が講師を務める「新NISA制度丸わかりセミナー」の動画をLINE友達限定にて公開しています。
- ✅つみたてNISAの落とし穴
- ✅新NISAの注意点
- ✅実際に私が実践している投資商品
- ✅成功するための鉄則
などリアルな情報がたくさんです。つみたてNISAで損をしている方、これからNISAを検討している方は、ぜひご覧ください。
iDeCoは個人型確定拠出年金ともよばれる非課税制度です。
掛金が全額非課税になるため、お得に資産運用ができます。
iDeCo(イデコ)について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
NISAもiDeCoも一定金額を積み立てるため、長期的な運用を目的とする金融商品です。
運用益に税金がかからないのはメリットですが、一方ですぐに利益が出ないのはデメリットといえます。
また、購入できる銘柄は金融機関によって異なりますので、自分に合った商品を選びましょう。
(3)投資信託など複利効果を活用した資産運用
投資信託で資産運用するのもひとつの方法です。
投資信託とは、投資のプロに資産を預けて代わりに運用してもらう運用方法です。
さまざまな国の株式や債券などに少額で分散投資ができるため、リスクを抑えながら投資ができます。
ただし、少額投資とはいえ為替が変動すると元本割れするリスクはありますので、投資信託の仕組みをきちんと理解してから運用するのがおすすめです。
また、商品によって信託報酬が異なりますのでご注意ください。
投資信託について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(4)不動産投資など安定した家賃収入を得る投資
不動産に投資し、賃貸として貸し出すことで毎月家賃収入を得るのも資産運用のひとつの考え方です。
不動産投資と聞くと多額の資金が必要なイメージがありますが、中には少額から不動産投資ができる不動産投資信託や不動産クラウドファンディングもあるので、興味のある方は不動産投資も検討してみてはいかがでしょうか。
不動産投資をする際のリスクや回避策について詳しく知りたい方は、下記記事を参考にしてみてください。
老後資金に不安な方はFPに相談
自分の老後資金について不安がある方は、FPへの相談がおすすめです。
FPとはファイナンシャルプランナーともよばれるお金の専門家を指し、お金に関する悩みを解消してくれます。
(1)FPに何が相談できる
FPは基本的にお金に関することなら何でも相談が可能です。
主に下記のような内容を相談できます。
- ✅資産形成のアドバイスや運用商品の一般的な説明
- ✅貯金の増やし方や節約方法
- ✅保険の見直し
- ✅住宅ローン
- ✅相続 など
(2)FPに相談するメリット
お金に関する悩みごとがあったとしても、なかなか他人には相談しにくいものです。
加えて、保険は保険会社、投資は金融機関や証券会社など、相談する項目によってさまざまな機関に相談しなければなりません。
一方、FPに相談した場合はお金に関する相談が1社のみで完結します。
複数の機関に相談する手間が省けるのが、FPに相談するメリットといえるでしょう。
実際に弊社にあった相談事例を公開していますので、ぜひチェックしてみてください。
まとめ
この記事では、老後に備えた老後資金の計算方法や資金を準備するコツを紹介してきました。
長寿化している現代において、老後2000万円問題は今後どんどん深刻化することが示唆されています。
100歳まで安心して長生きするためには、早い段階から老後資金がいくら必要なのかを把握し、逆算して資金を用意しておく必要があります。
また、資金準備には貯蓄だけでなく資産運用も大切です。
お金を貯めるだけでなく運用することも考えながら、正しい知識と確かな情報で老後に備えてお金を増やしておきましょう。
本記事が、老後の生活について考えるきっかけになりましたら幸いです。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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