不動産登記とは?FPが登記に必要な書類、申請流れや費用を徹底解説
不動産の売買や相続、住所変更などの際には、不動産登記手続きが必要です。
しかし、不動産登記についての理解が不十分な場合があるかもしれません。
不動産登記は自宅購入や相続などで必要な手続きのため、基本的な仕組みを把握しておくことが必要です。
そこで、本記事では不動産登記の概要、登記簿謄本(登記事項証明書)の見方から、登記が必要なケース、必要書類、手続きの流れ、費用までわかりやすく解説します。
不動産登記とは
不動産登記は、土地や建物などに関する情報について、場所、広さ、所有者などをコンピュータに記録する手続きです。
この一連の作業は、法務省法務局の登記官が専門的な判断をもとに行います。
以下のような事項が不動産登記法に基づき記録され、法務局に保管されています。
- ✅土地や建物の所在地、構造、種類
- ✅不動産の所有者歴
- ✅不動産に設定された権利
- ✅金融機関の借入金額や利率
つまり、不動産登記を調べれば、不動産の所在地や所有者、所有権の詳細な情報が分かります。
このような情報は一般公開されていて、手数料を払えば誰でも閲覧でき、登記簿謄本(登記事項証明書)の交付も受けられます。
登記簿謄本は登記事項証明書に名称が変更されましたが、これは情報の記録方法が紙からデータへと移行されたためです。
証明内容には変更はないため、今でも登記簿謄本として言及されることがあります。
種類としては、全部事項証明書、現在事項証明書、一部事項証明書、閉鎖事項証明書の4つがあります。
登記簿謄本(登記事項証明書)を正しく取得するためには、「不動産を売却する際に所有権を明確にしたい」「住宅ローンの申請のために抵当権の状況を金融機関に提示したい」といった明確な理由が必要です。
どの証明書を取得すればよいか分からない場合は、法務局の窓口または不動産会社で相談することをおすすめします。
以前は登記簿謄本(登記事項証明書)を取得するには、法務局(登記所)に出向くか郵送で手続きを行う必要がありました。
しかし、最近は登記情報がオンライン化され、法務局(登記所)の「登記・供託オンライン申請システム」にある「かんたん証明書請求」を通じてインターネットで交付請求ができ、最寄りの登記所の窓口または郵送で受け取ることが可能です。
登記簿謄本の取得方法が登記所窓口、郵送、オンライン申請と3通りあり便利です。
また、登記簿謄本(登記事項証明書)の内容を確認するだけであれば、「登記情報提供サービス」を利用して閲覧できます。
公的な証明書としては使うことができませんが、PDFでダウンロードすることもでき、便利です。
登記簿謄本(登記事項証明書)の見方
「登記簿謄本(登記事項証明書)」は、1つの不動産(土地または建物)ごとに作成され、以下の4つに区分されています。
- 表題部
- 権利部(甲区)
- 権利部(乙区)
- 共同担保目録
それぞれどのような情報がわかるのか詳しく説明します。
(1)表題部
不動産登記簿謄本(登記事項証明書)の表題部では、不動産の所在地、面積、建物の種類・構造などが詳細に表示されています。
つまり表題部を見れば「どのような不動産であるのか」がわかります。
不動産がどこにあるのか、どのような特性を持つのかを知りたい場合には、表題部を参照してください。
表題部に表示される主な情報は、以下のとおりです。
- ✅土地に関する登記記録:所在、地番、地目、地積(面積)など
- ✅建物に関する登記記録:所在、家屋番号、種類、構造、床面積など
※マンションの場合は、建物の敷地権を記録することもあります。
(2)権利部(甲区)
不動産登記簿謄本(登記事項証明書)の権利部(甲区)には、所有者の氏名・住所、不動産を入手した日付や方法(売買、相続など)など、所有権に関する情報が記録されています。
権利部(甲区)を参照すれば、「10年前にOOさんが△△さんから相続した」といった不動産の入手経緯が一目瞭然です。
また、ローンの支払いが滞り、差押えを受けた場合などは、その詳細も権利部(甲区)に記載されます。
差し押さえられた不動産の流通は少ないですが、購入を考える際には、念のために権利部(甲区)を確認しておくとよいでしょう。
(3)権利部(乙区)
不動産登記簿謄本(登記事項証明書)の権利部(乙区)には、所有権以外の権利である抵当権や地上権、地役権などの情報が記載されています。
たとえば、住宅ローンを利用している場合は、金融機関の名称やローンの金額、金利が記載されます。
権利部(乙区)の部分に何らかの権利が記載されている場合、不動産を購入してもその利用が制限されることがあるため、不動産の購入を考えているときは、権利部(乙区)に登記されている権利を確認しておくことが重要です。
(4)共同担保目録
通常、担保は1つの債権に1つの不動産を対応させますが、不動産売却の場合などには、「共同担保目録」が必要になることがあります。
共同担保は1つの債権に対して複数の不動産を抵当に入れることで、共同担保の情報をまとめた表が共同担保目録です。
不動産を担保とする際、一般的には隣接する私道の共有権も共同担保に含まれます。
なぜなら、隣接する私道が利用できなければ交通が不便になり、不動産の価値が低下する可能性があるからです。
もし所有している不動産に共同担保が設定されている場合は、共同担保目録を取得し、状況を確認することをおすすめします。
不動産登記が必要になる5つのケース
不動産登記は、不動産を取得したときだけではありません。
登記内容に変更があったときにも手続きが必要です。具体的な場面は以下の通りです。
- ✅不動産を購入した場合
- ✅所有者の住所や氏名が変更された場合
- ✅不動産相続した場合
- ✅住宅ローンを完済した場合
- ✅建物を取り壊した場合
それぞれのケースについて詳しく説明します。
(1)不動産を取得した時
不動産を購入した場合、所有者が売主から買主に変わるため、「所有権移転登記」を行い、不動産の名義を新しい所有者に変更します。
家を新築した場合、建物に関する情報はまだ登記簿に登録されていません。
そのため、「建物表題登記」を先に行い、建物の情報を登録し、その後、「所有権保存登記」を行い所有者などの権利関係を登録します。
中古の場合、所有権が売主から買主へ移ったことを示すために、「所有権移転登記」を行います。
相続で取得した場合も同様です。所有者が被相続人から相続人に変わるため、「所有権移転登記」を行い、不動産の登記名義を変更する手続きをします。
(2)名義変更、住所変更などがあった時
所有者の引っ越しや結婚によって住所や氏名が変わった場合は、それぞれ住所変更登記や氏名変更登記を行う必要があります。
不動産の名義変更は、新しい所有者(登記権利者)と前の所有者(登記義務者)が共同で登記申請をするのが基本です。
これらの登記を怠ると、登記簿上の情報が実際の住民票と一致せず、所有者の正確性が確認できません。
その結果、不動産の売買や抵当権設定などの取引に不動産会社や金融機関が対応してくれないなどの支障が生じる可能性があります。
(3)不動産の相続が発生した時
「(1)不動産を取得した時」でも説明しましたが、不動産の所有者が亡くなり、その不動産を相続で取得した場合は、「所有権移転登記」が必要です。
所有権が被相続人から相続人に移るため、不動産の登記名義を新たな所有者に変更するために「所有権移転登記」を行います。
(4)住宅ローンが完済できた時
住宅ローンを完済しても、金融機関は自動的に抵当権を抹消してくれません。
住宅ローンの完済時に、金融機関からローンの支払いが終了したことを証明する書類が送付されてきますので、この書類を利用して、「抵当権の抹消登記」を行い、設定されている抵当権を抹消します。
なお、抵当権の設定登記を行うのは、購入者ではなく、融資を行った金融機関です。
(5)建物を取り壊した時
建物が解体や災害によって消失した場合は、「建物滅失登記」が必要です。
滅失登記を行わないと、登記簿上では建物が引き続き存在していることになります。
そのため、更地を売りたい場合でも買主が応じてくれなかったり、固定資産税が発生したりする可能性があるため、注意しましょう。
なお、建物滅失登記は、解体後1か月以内に行う必要があります。
不動産登記に必要な書類
不動産登記を申請するには、申請書と添付書類の準備が必要です。
添付書類は登記の種類によって異なるため、注意が必要です。
以下にその違いをまとめましたので、ご参照ください。
- ■登記の内容にかかわらず必要な書類
委任状や本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証やなど)
- ■登記の際に共通して必要になる書類
- ✅委任状(※司法書士などに委任する場合に必要、自分で不動産登記をする場合は不要)
- ✅登記申請書(※登記内容によって記載内容が異なります。法務局のホームページからダウンロード可)
- ✅本人確認書類
登記申請書のほかに必要な主な書類は、以下の通りです。
(1)建物表題登記の場合
建物の建築確認証などの書類を施工会社からもらいましょう。
- ✅建築確認申請書
- ✅建築確認済証+検査済証または工事完了引渡証明書
- ✅委任状(自分で手続をする場合は不要)
※必要書類は状況によって変わります。
(2)所有権の保存登記の場合
- ✅建物の所有者全員の住民票
- ✅住宅用家屋証明書
- ✅長期優良住宅建築等計画の認定通知書の写し
- ✅委任状(自分で手続きする場合は不要)
(3)所有権移転登記の場合
所有権移転登記の売買、相続の場合について紹介します。
(4)売買の場合
<売主>
- ✅登記識別情報、または登記済証(権利証)
- ✅印鑑証明書(発効後3か月のもの)
- ✅固定資産評価証明書
- ✅委任状(自分で手続きする場合は不要)
<買主>
- ✅身分証明書(原則、顔写真付きのもの)
- ✅印鑑証明書(住宅ローンの利用で抵当権を設定する場合)
(5)相続の場合
- ✅住民票(被相続人の住民票の除票と相続人全員の住民票)
- ✅固定資産評価証明書(または課税明細書)
- ✅戸籍謄本(被相続人と法定相続人のもの)
- ✅委任状(自分で手続きする場合は不要)
※ケースに応じて、以下の書類が必要になります。
- ✅遺産分割協議書
- ✅相続人全員の印鑑証明書
- ✅遺言書、相続関係図など
- ✅委任状(依頼先の司法書士が用意)
以上、主な書類を紹介しましたが、必要書類は状況によって異なりますので、司法書士や不動産会社の案内に従い、十分な余裕をもって書類を準備しましょう。
不動産登記をする時の流れ
不動産登記手続きは、基本的に以下の手順で進めます。手続きが複雑な場合は、司法書士に依頼することもできます。
- 1.必要書類の用意
不動産登記を申請するには、記載事項を含む登記申請書と添付書類を用意します。
登記申請書は、法務局ホームページから入手できます。添付書類は登記原因によって異なるため、注意が必要です。
- 2.法務局へ書類を提出
法務局は管轄区域が定められているため、書類を提出する法務局(登記所)を確認する必要があります。
管轄区域は法務局ホームページで確認できます。
- 3.登記識別情報と登録完了証の受け取り
必要書類が受理されたら、法務局(登記所)で審査が行われ、手続きが完了すると、登記識別情報と登録完了証が発行されます。
登記申請書に使用した印鑑を持参し、法務局(登記所)を訪れると受け取ることができます。
「建物の表題登記」と「相続登記」に登記する期限がある
法律では、新築物件の所有権を取得した人は、取得日から1か月以内に表題登記を行う義務があります(不動産登記法47条)。
建物表題登記の申請を怠ると、最大で10万円以下の罰金が科されます(不動産登記法164条)。
相続登記には罰則だけでなく、時間が経つと新たな相続人が現れ、必要な書類の収集が難しくなることがあります。
また、遺産分割協議には時間と費用がかかることもありますので、不動産を相続した際には、できるだけ早く登記を完了させるよう心がけましょう。
2024年(令和6年)4月1日から、相続登記の義務化が始まります。
改正後の法律では、相続が始まった日または所有権の取得を知った日から3年以内の登記が義務付けられます。
不動産登記をする時にかかる費用
不動産登記にかかる費用を事前にチェックし、支払いに必要な資金を用意する必要があります。
以下では、登記費用の種類・金額の目安を紹介します。
(1)不動産登記に必要な登録免許税
登録免許税は、登記原因によって税率が異なります。
- ✅売買時の所有権移転登記時の登録免許税
土地:評価額の1.5%(2023年3月31日までに登記を受ける場合)
建物:評価額の2%ですが、一定の条件を満たす住宅用家屋の場合、0.3%などの軽減税率適用あり。長期優良住宅の場合は、0.1%
- ✅相続時の所有権移転登記時の登録免許税
土地、建物ともに、評価額の0.4%
- ✅贈与時の所有権移転登記時の登録免許税
土地、建物ともに、評価額の2%
- ✅抵当権抹消登記時の登録免許税
建物と土地それぞれ一つにつき1,000円
(2)司法書士、土地家屋調査士に依頼した場合の報酬
不動産登記に関する手続き方法は、登記の内容によって異なります。
通常、表示の登記は土地家屋調査士に依頼し、その他の登記手続きは司法書士に委託します。
各事務所では、登記の内容や規模に応じて報酬額を設定しています。
したがって、不動産登記費用は地域や事務所によって大きく異なります。
以下は、司法書士報酬の費用のおよその目安です。
- ✅所有権移転登記:相続の場合 60,000円~80,000円
- ✅所有権移転登記:売買の場合 45,0000円~65,000円
- ✅所有権保存登記:20,000円~30,000円
- ✅抵当権抹消登記:15,000円~20,000円
- ✅住所・氏名の変更登記:12,000円程度
さらに、司法書士が金融機関などで代金の決済に立ち会う場合や、売主の本人確認情報の作成が必要な場合には、交通費や関連費用が別途必要になります。
司法書士によって報酬額が異なるため、事前にホームページなどで料金をチェックし、依頼するとよいでしょう。
不動産登記は自分でもできる?
不動産登記について、一般的には司法書士や土地家屋調査士に頼む必要があると考えられがちですが、実際には登記所に直接行って自分で手続きを行うことができます。
自分で不動産登記を行うと、専門家への報酬が不要になるため、費用を大幅に節約できます。
登記にはさまざまな種類があり、専門知識がかなり必要な場合もありますが、しっかりと準備をしてチャレンジすることで、成功する可能性はあります。
ただし、自分で不動産登記を行うときは、以下の注意点を確認して下さい。
- ✅自分で不動産登記をすると、不正な取引や地面士(不動産所有者を装う詐欺師)による詐欺などのリスクを見逃す可能性があるため、司法書士に依頼する方が安心です。
- ✅不動産取引にローンを利用する場合は、金融機関が安全性を確保するために司法書士の関与を求めることが一般的です。
そのため、自分で不動産登記を行う場合には、金融機関などに事前に相談しておくことをおすすめします。
- ✅建物表題登記をする場合には、専門的な知識が必要であり、建物図面や各階平面図などの書類が必要です。
作成には専門的な知識が必要なため、建物表題登記を自分で行うのは難易度が高いでしょう。
まとめ
不動産の所有権を法的に確保するには、不動産登記が必要です。
登記を怠ると、不利益を被るリスクがあるため、登記が必要な場合は迅速に手続きを行うことが重要です。
不動産登記に関する疑問や問題点がある場合は、司法書士などに相談してみましょう。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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