円安の時にすること7選|FPが資産運用の注意点も合わせて解説!
2023年10月に入りまた急激な円安が進み、老後に備えて早いうちから資産形成を考える人が増えています。
そんな中、
- ✅「今は投資に適しているの?」
- ✅「円安のときはどのような投資商品を選ぶべきなの?」
などの疑問を持たれている人も多いのではないでしょうか。
本記事では、円安とはそもそもどういう状態なのか、円安のメリット・デメリット、そして円安の時にオススメの資産運用方法を投資初心者でも分かるように徹底解説します。
円安時に投資する注意点も合せて紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそも円安・円高とは?
「円安」とは、ドルなどの海外通貨に対して円の価値が低くなることです。例えば、ドル/円に関して「100円=1ドル」という状況が「200円=1ドル」となった場合は円安です。
為替手数料を無視すると、これまで100円を出せば1ドルの商品が買えていたのに対して、円安で価値が下がることで200円必要になります。
一方「円高」とは「100円=1ドル」といった状況が、例えば「80円=1ドル」となるようなケースです。
これまで、100円を出せば1ドルの商品が購入できていたのに対し、80円を出せば購入できるといった状況です。
円高より円安の方がデメリットだと感じる方が多いかもしれませんが、実は全てがマイナスということではないです。
円安になった原因
2022年の11月に、一時1ドル=150円台まで価値が値下がりし「1990年以来の約32年ぶりの円安水準」といったニュースが話題となりました。
円安が進む背景には日米の金利差があります。記録的なインフレを抑え込みたいアメリカは、金融引き締めによる急速な利上げ政策を実行しています。
一方で最近の日本は継続的な金融緩和、つまり金利の引き下げを行っている状況です。投資家にとって、相対的により多くの利息が付く通貨の方が魅力的な投資対象であるのは当然です。
その影響下で米ドルを買う動きが世界中で広がり、一方金利が低いままの日本円は売られ、それを要因とした円安が続いています。
円安時のメリット・デメリット
ネガティブな印象を受ける円安ですが、一方でポジティブな側面がないわけではありません。ここではそれぞれ、円安時のメリット・デメリットを具体的に解説します。
(1)円安のメリットは?
①円安が「企業」に与えるメリット
円安だと、海外で日本製品が売れやすくなります。つまり、輸出企業が海外で稼いだ外貨を、より多くの日本円に交換できるようになるため、その点でメリットです
また、円安により輸出製品が価格低下すれば、国際競争力が高まり、需要が増え貿易収支の好転にもつながります。需要で売上が伸びれば景気回復も期待できます。
さらに外国人の観光客増加が見込めるため、観光地の施設や旅行会社などインバウンド関連の企業にはメリットが大きいと言えます。
②円安が「個人」に与えるメリット
この他、例えば米国株などの海外資産に投資している人なら、円資産より利益を生み出しやすく、また円換算後のドル資産が上昇する、といった面でも恩恵を得られます。
(2)円安のデメリットは?
①円安が「企業」に与えるデメリット
円安だと、相対的に海外の製品が高くなってしまうのがデメリットです。その影響で輸入企業は収益が下がる可能性があります。
日本は、食品をはじめエネルギー資源や機械など、さまざまなモノを輸入に頼っているため、それらの値上げリスクがあります。
②円安が「個人」に与えるデメリット
円安時には、輸入商品の価格やエネルギー価格の高騰により、生活に必要な様々なモノの価格が上がります。
賃金が上がらないままモノが物価上昇することで、家計を圧迫し生活が苦しいと感じる人も増えるでしょう。
また、輸入企業が不利になる影響で、輸出による恩恵が十分でなければ、景気も悪くなります。
円安時にすること「おすすめの7選」
ここでは円安対策になりうる、円安時の資産運用におすすめの投資商品を7つ紹介します。
- 「外貨立て投資信託」に投資する
- 「外国債権」に投資する
- 「外国株」に投資する
- 「ドル円のFX」に投資する
- 「外貨預金」で外貨を保有する
- 「輸出関連企業」への投資
- 「割安な国内株」に投資
(1)「外貨立て投資信託」に投資する
外貨建て投資信託は、円安時の資産運用におすすめです。
投資信託とは、資産運用のプロが多くの投資家から集めたお金をまとめて運用し、必要に応じて、配当金などの得られた成果を分配金として投資家に還元する金融商品のことです。
外貨建て投資信託は、外貨で取引される投資信託のことで、為替差益が生じることから、円安時には有利です。
例えば、ドル/円に関して、1ドル100円である時よりも1ドル110円である時の方が、分配金を円に換金した際に受け取れる金額が多くなります。
(2)「外国債権」に投資する
円安時の資産運用には、外国債券も有効です
債券とは、国や企業などが投資家から資金を借りた際に発行する借用証書です。
一般的に、債券は満期まで発行体に保有され、その間、投資家は定期的に利息を受け取ることができます。また満期を迎えると元本が全額返金されます。
外国債券とは、発行体、発行市場、発行通貨のいずれかが海外のものである債券を指します。
国内の債券より金利が高い傾向があること、また、外貨建て投資信託と同様に、換金時に為替差益の恩恵を得られることから、円安時に有利と言えます。
(3)「外国株」に投資する
株式投資とは、企業などの株式を売買することで、株式の売却益や配当金を得る投資のことです。
外国株は海外の株式のことで、外貨で取引を行うため、円安時には売却時の利益が増える可能性があります。
また、配当金の支払いも外貨で行わるため、円安の方がリターンを円に交換したときに多くの金額をもらえます。
日本株だけでなく、外国株にも投資することで、分散投資につながり、リスクを抑えて安定したリターンが期待できる点でもおすすめです。
(4)「ドル円のFX」に投資する
ドル/円の為替レート変動による損益を「為替差益」と呼びますが、FXとは、この為替差益を受け取る取引のことです。
ドル購入後に、為替レートの相場が円安に値動きすると日本円に交換したときに利益がもらえます。
一方で円高に値動きしたときには、損失が発生します。
またFXは、売買価格差によって決済する「差金決済取引」の仕組みを利用しているため、売りから始めることも可能です。
円安傾向の場合には円売り・ドル買い、円高傾向の場合には円買い・ドル売りと切り替えるのもおすすめです。
(5)「外貨預金」で外貨を保有する
円安時にオススメの資産運用には「外貨預金」も挙げられます。
外貨預金とは、日本円ではなく外国の通貨で預金することです。円建てで口座に預金するよりも、高い金利が期待できます。
例えば外貨預金なら、4%や5%といった高金利も珍しくありません。超低金利の円預金と比較し、より大きな利益が見込めます。
ぜひ外貨預金の口座開設を検討してみてください。
(6)「輸出関連企業」への投資
円安時は、輸入企業ではなく「国内の輸出企業」に投資するのがオススメです。というのも、円安の影響で輸出産業に関わる企業の業績が上がる傾向にあるからです。
海外からすると、円安により良質な日本製品が安く購入できるため、つまりよく売れるようになります。そうなれば、価格競争力が高まり収益が増え業績アップにつながります。
同じ理由でインバウンド関連企業もオススメです。
(7)「割安な国内株」に投資
「割安な日本株投資」も、円安時の資産運用としてオススメです。世界的なインフレに伴う株価の下落が懸念される中、現在バリュー株への関心が高まっています。
バリュー株とは、財務や業績が好調である一方、本来の価値に対して株価が相対的に低い銘柄です。日本円が安い現在、日本のバリュー株に対する世界の期間投資家の注目は高まっています。
そこで、バリュー株が割安なときに投資しておけば、後々価値が上がったときに、値上がり益(キャピタルゲイン)や、配当金(インカムゲイン)を狙える可能性があります。
円安時の資産運用で注意すべき4つのこと
ここでは、円安時の資産運用で注意点と対策方法を解説します。例えば、資産をすべて米ドルに換えるのは避けるべきです。
正しい知識を得ておくことで、予想外の不利益を防ぐことができます。4つの注意すべきポイントを見ていきましょう。
(1)すべての資産を米ドルに換えるのは避ける
円安時の資産運用で注意すべき点は、すべての資産を米ドルに換えないということです。
円安時に、円だけでなく米ドルを保有したいという考えはわかりますが、ドル高・円安の状況が今後いつまで続くかは判断できません。
つまり、今後円高・ドル安となってしまった場合、極端に米ドルだけで保有していると資産が減ってしまうリスクがあります。
そのため、例えば円と米ドルを半分ずつ持つなど、バランスを考えるべきです。
(2)長期積立投資を途中でやめない
現在、例えばつみたてNISAやiDeCoを活用して、米国株式に長期積立投資している人もいるでしょう。そんな中、下落局面にある今、投資するのに対し不安に感じている人も少なくありません。
ですが、長期投資を途中で止めるのは避けましょう。というのも、積み立て投資では購入するタイミングを分散できるのがメリットだからです。
毎月コツコツと一定額購入していくことで、ドルコスト平均法の効果が得られます。
ドルコスト平均法とは、価格が安いときに多く購入し、反対に高いときは少額で購入するというもので、平均購入単価を平均化できるのがメリットです。
つまり、円安・円高といった為替レートの局面に関係なく、S&P500など長期的に右肩上がりしている投資は、継続して積み立てていくべきです。
長期積立投資は、得た利息もプラスして再投資するため、長期になるほど利益が大きくなる複利効果と呼ばれる仕組みがあります。中断で複利効果がなくなってしまうこともデメリットと言えます。
(3)国内外の地域分散など外貨投資のリスクヘッジをする
円安のリスクに対抗するには、国内だけでなく国外への国際分散投資といった、外貨投資のリスクヘッジも考えましょう。
特に「分散投資」は円安による打撃を抑えるために重要な考え方です。
分散投資とは、投資先やタイミングを1つに絞るのではなく、いくつかに分けて投資することです。
例えば、外貨預金・日本株・米国株式・不動産や金など、国際分散投資をすることでリスクを低減します。
また、さまざまな国や地域の株式や通貨に投資するのもリスクヘッジとして大切です。
他にも、例えば1日で投資するのではなく時間を分散して投資するのも、ドルコスト平均法によるメリットが得られます。
「長期投資・分散投資・積立投資」というのは、投資初心者に関係なく投資における基礎知識として必要なことです。失敗を減らすためにも、ぜひ覚えておいてください。
(4)円安の期間で投資手法を変える
「円安の期間によって投資手法を変える」というのも、円安時の資産運用で覚えておきたいポイントです。
つまり、円安トレンドが長く続きそうか、またそうでないかで投資戦略を変化させるということです。
もし円安が今後も長く続くと考えるなら、中期・長期運用を前提とした商品をオススメします。
例えば、長期的に右肩上がりで成長している、米国のS&P500指数に連動したインデックスファンドは人気です。
SBI証券や楽天証券、松井証券といったネット証券で購入できるので、興味がある場合はチェックしてみてください。
なお、もうじき円高傾向になりそうだと考えるなら、早いうちに外貨預金を引き出したり、短期運用など最短で利益を狙える取引が選択肢に入ります。
円安時の資産運用でよくあるFAQ
ここでは、円安時の資産運用に関するよくある質問について理由と共に回答します。例えば、円安時にドルを買うのはありか、など解説しているので確認してみてください。
(1)円安になると投資信託への影響はどうなる?
為替レートが円安に進むと、外貨建て投資信託の資産価値が高まります。
例えばS&P500といった、指数に連動した米国株式インデックス・ファンドを、1ドル100円のときに1万ドル分(100万円分)購入したとしましょう。
その後為替レートが円安に進み、1ドル120円になったとします。
この時点で売却した場合、1万ドルが120万円の金額となるため、20万円の為替差益が得られます。(為替手数料などは考慮していません)
例え、銘柄自体のパフォーマンスが優れなかったとしても、円安が進行することで外貨建て商品の価値が増加するわけです。
ただし、銘柄自体の日々のパフォーマンスも影響するので、円安だからといって確実に利益が出る保証はありません。
(2)円安時にドルを買うのはアリ?
今後円安トレンドが続くのか、一方円高に転換するのかは予測できません。そのため、円安時にドルを購入しても確実に利益を出せるとはいえません。
例えば円安時に外貨預金にお金を預け、その後円高が進んでしまうと、円で引き出した際に為替差損が発生してしまいます。
金融商品は絶対に儲かるというものではありません。常に為替変動リスクは付きものだ、という認識を持つようにしてください。
ただし、今後さらに円安が進むと輸入品が高騰する懸念もあるため、ある程度ドルを持っておくのはよい試みと言えます。
(3)個人にとってマイナスなのは円安・円高どっち?
多くの個人にとってマイナスなのは円安です。円安になると輸入品が高騰するため、日用品など生活に必要なモノの価格が上がってしまいます。
また海外旅行に行くにしても、現地の物価が通常よりも高く感じてしまうため、ショッピングや飲食にしても円高時と比較して割高になってしまいます。
一方で、輸入関連やインバウンド関連の企業で働いている人は、賃金が上がるなどで景気が良くなる可能性があります。
(4)投資信託の為替ヘッジありと為替ヘッジなしはどちらが最適?
外貨建ての投資信託で目にする為替ヘッジですが、円安時にメリットがあるのは、結論からいって円安による値上がりを享受できる「為替ヘッジなし」です。
為替相場の変動に影響を受けない為替ヘッジありだと、円高傾向のときに損失を避けられる点ではメリットですが、一方で円安による利益を受けられません。
また、為替ヘッジありのヘッジの費用は無料ではありませんので、円安時のメリットを優先するなら為替ヘッジなしをオススメします。
円安時の資産運用で不安な方は専門家に相談する
ここまで、円安時にオススメの資産運用や注意点などを説明してきましたが、始め方ややり方が分からず、まだ不安を感じている方もいらっしゃるかもしれません。
もしかしたら知識が間違っているのではと悩むこともあるでしょう。
そのような場合は専門家に相談してみましょう。弊社には、お金に関する専門知識を有するFP(ファイナンシャルプランナー)が多数在籍しています。
年間2,000件の相談実績を持つ我々FP(ファイナンシャルプランナー)なら、あなたのライフプランに合わせた最適な資産運用を詳細にご提案させていただきます。
ぜひ気軽に相談してみてください。
まとめ
今回は円安の特徴や要因、そして円安のメリット・デメリットの他、オススメの資産運用について解説しました。
個人にとってはデメリットとなる円安ですが、紹介した資産運用や注意点を参考に、資産形成をシミュレーションしてチャンスに変えていきましょう。 少しでも不安や悩みを感じている方は、お金の専門家である弊社FP(ファイナンシャルプランナー)に相談してみてください。あなたのライフプランに最適な資産運用をご提案します。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
最新の投稿
- 税金2024年2月27日不動産を相続したら相続税はいくら?手続き、計算方法や活用方法を解説
- 不動産投資2024年2月24日不動産所得がある場合は確定申告が必要!計算方法や申請手順を解説
- 税金2024年2月23日不動産の生前贈与はした方がいい?メリット、手続きや注意点を解説
- 不動産投資2024年2月21日不動産投資クラウドファンディングとは?おすすめ商品も合わせて紹介