つみたてNISAとiDeCoの違い6つ!適している人の特徴も解説
少子高齢化が進み、将来生活していけるだけの年金をもらえるか心配になる方もいるのではないでしょうか。
「退職後は2,000万円必要」などのニュースが流れると特に心配になります。将来の不確実性が高まる現代社会において、自分の将来は自分で備えなければなりません。つみたてNISAとiDeCoを利用すれば、将来に備えた資産形成や年金受給額の確保・安心の享受が可能になります。
そこでこの記事ではつみたてNISAとiDeCoのメリットとデメリット・両者の違い・共通点・向いている人の特徴などについて徹底解説します。
つみたてNISAとは?メリットとデメリット
つみたてNISAとはどのようなもので、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
(1)つみたてNISAとは?
つみたてNISAは、個人投資家が気軽に資金を拠出し、長期にわたって定期的に積立投資をおこない資産形成する制度です。
この制度は2014年から始まり、毎年最大40万円までの投資が非課税になります。投資期間は最低5年間必要で、上限額を超えた分については、税制上の優遇措置が受けられないなど注意点があります。
NISAを始めるには、銀行や証券会社で証券口座を開設し、取扱商品の中からご自身に合った商品をえらびます。毎月継続的に投資し、拠出時には元本割れすることは原則的にはありません。口座内に現金を保有することもでき、投資先は個別株や厳選された投資信託など、幅広く選択できます。公式サイトでは、最新情報や効果的な投資方法についても紹介されています。また運用期間中は株式投資等により、株価に上乗せして利益獲得を狙うことも可能です。
(2)メリットとデメリット
つみたてNISAのメリットとデメリットについて説明します。
①つみたてNISAのメリット
- ✅運用益および分配金が非課税
つみたてNISAは、最大40万円までの申込上限額内で投資を行い、5年間保有することで、運用益および分配金が最長20年間非課税になります。つみたてNISAは、他の一般的な投資では運用益や分配金に20.315%の税金がかかります。しかしつみたてNISAでは税金がかからないため、節税効果は高いといえるでしょう。
また、つみたてNISAでの投資は所得控除の対象となるため、税金の負担を軽減できます。
- ✅少額から積み立てられる
つみたてNISAは、最低1,000円から最大33,333円まで積立が可能です。生活に支障のない少額から長期的に積み立てることで、資産形成ができます。なおほかの金融機関に口座を移換する場合や解約時には、一定期間内であれば円単位での引き落としが可能です。
- ✅分散投資が容易
つみたてNISAは、金融庁が定めた基準を満たす投資信託やETFなどの投資商品が対象です。複数の商品に分散投資することで、リスク分散が可能になります。
また、個別株や海外の外国株式も加入可能であり、投資の幅が広がります。
- ✅管理費用を安く抑えられる
つみたてNISAで取り扱われている投資信託の中には、運用管理費用が比較的安いものがあります。また、日本証券業協会が一定額を補填する制度があるため、運用管理費用の負担を抑えることができます。
- ✅初心者でも始められる
つみたてNISAは、申込上限額が決まっているため、大きな失敗をするリスクが少なく、投資初心者にも取り組みやすい仕組みです。また投資信託などの投資商品も、自分で選ぶ必要がなく、金融機関が提供する商品の中から選べます。
- ✅安心して運用できる
つみたてNISAは、日本証券業協会が運営管理機関となっているため、信頼性が高いといえるでしょう。また投資商品も金融庁が認可したものを選ぶため、安心して運用できます。
②つみたてNISAのデメリット
- ✅上限内でしか投資ができない
つみたてNISAには、毎年の申込上限額や一括掛金額の上限が決まっており、その上限内でしか投資ができない制限があります。またつみたてNISA口座を開設できる金融機関によっては、取り扱う投資商品やサービスが異なるため、選択肢が限られるでしょう。
- ✅市場変動の影響を受ける
投資商品の価格は、市場の変動や企業業績などによって影響を受けます。そのため、投資商品の価値が下がった場合には、損失が発生する可能性があります。
また損益は全て非課税になるため、他の投資では認められている損益通算(他の運用益と相殺すること)や繰越控除(次年度に損失を繰り越すこと)ができません。
- ✅長期間の縛りがある
つみたてNISAは5年間の縛りがあるため、口座開設から5年以内に解約すると、得た利益に課税される可能性があります。また5年間の縛りがあるため、急な資金需要に対応できない恐れがあるでしょう。
- ✅積立投資のみ利用できる
つみたてNISAは積立投資に特化した制度なので、値下がりをした場合に追加して買い付けできません。
- ✅運用管理費用がかかる
投資信託などの投資商品を運用する場合、運用会社に支払う運用管理費用がかかります。つみたてNISAでは、一定額が補填されることがありますが、全ての投資商品に適用されるわけではないため注意が必要です。
- ✅投資先が限定される
つみたてNISAで運用できる商品には限定があり、国内株式・国内債券・海外ETF(上場投資信託)などです。したがってつみたてNISAでは、運用できない株式投資や不動産投資などにも資金を分散し、リスクを低減する必要があるでしょう。
つみたてNISAについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
また、私が講師を務める「新NISA制度丸わかりセミナー」の動画をLINE友達限定にて公開しています。
- つみたてNISAの落とし穴
- 新NISAの注意点
- 実際に私が実践している投資商品
- 成功するための鉄則
などリアルな情報がたくさんです。つみたてNISAで損をしている方、これからNISAを検討している方は、ぜひご覧ください。
iDeCo(イデコ)とは?メリットとデメリット
iDeCoはどのようなもので、どんなメリットとデメリットがあるのでしょうか。
(1)iDeCo(イデコ)とは?
iDeCoは、厚生年金と国民年金に加入している会社員や自営業者などが利用でき、老後資金や教育資金を自分で積み立てていく個人型確定拠出年金制度です。企業年金の一種であり、口座数や口座内の資産設計ができます。
iDeCoには企業型と個人型があり、企業型は、企業が従業員のために設立し運営するため、従業員が特に手続きを行う必要はありません。個人型では自分で口座を開設し、購入時に基は準価額で投資できます。口座内の資産は効率的に運用され、将来の資産形成に繋がります。口座数や合計の金額に応じて、金利が上乗せされ享受できます。
(2)メリットとデメリット
iDeCoのメリットとデメリットについて説明します。
①iDeCoのメリット
- ✅積立期間中の掛け金の税金が安くなる
支払った月々の掛金は、全額が所得控除の対象になるので、所得税や住民税の負担を軽減できます。掛金額を月額で支払うため家計の負担が軽減され、公務員や自営業者などの人も加入し、効率的な運用が可能です。投資信託の信託報酬や、口座内の資産運用状況によって上乗せされる金利など、最新の詳細情報や再利用などについても公式サイトで確認できます。
投資信託の利益や定期預金の利息には20.315%の税金がかかります。しかしiDeCoを通して購入した投資信託や、定期預金の利益には税金がかからないため、節税できます。
- ✅積立額を受領する際には大きな控除枠を使える
積立額をまとめて受け取る際には「退職所得控除」、分割で受け取るときは「公的年金等控除」を適用されるため税負担を軽くできます。また受け取り時には住宅ローンの返済など、所定の方法で受け取ることも可能です。
- ✅運用商品は幅広い選択肢がある
上場株なども取り扱っており、投資家にとって幅広い選択肢があります。
運用商品には、定期預金や保険・投信があって、個人の運用の功劣により老後に受けとれるお金が変わります。
- ✅長期的な運用が可能
decoは、年金受給開始年齢まで長期的に運用することが可能です。そのため住宅購入や子どもの教育費用など、ご自身の将来に必要な資金を充実できます。また年金資産を効果的に活用することもでき、運用期間中は、楽天カードや楽天ポイントなどと連動して還元率を高くできることもあるでしょう。
- ✅運用コストが安い
iDeCoでは、運用コストが比較的安い商品を選ぶことができます。また、複数の金融機関から商品を選べるため、自分に合った商品の選択が可能です。
②iDeCoのデメリット
- ✅60歳になるまで引き出せない
加入資格には制限があり、積み立てたお金は60歳まで引き出せません。そのため老後の生活費以外の目的での活用は難しいといえるでしょう。
- ✅運用によっては損をすることがある
自分の判断で投資しなければならないため、運用によっては支払った掛け金より年金額が少なくなる場合もあります。また市場変動の影響を受けるため、解約時には元本割れする可能性があることも覚えておきましょう
- ✅手数料が必要
iDeCoへの加入時や運用・ほかの金融機関に口座を移す際には手数料が発生します。
- ✅一部の商品しか選べない
iDeCoに加入する際に、選べる商品には限りがあります。そのため、自分にとって最適な商品を選ぶことができないこともあるでしょう。
iDeCo(イデコ)について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
つみたてNISAとiDeCoの違い6つ
つみたてNISAとiDeCoとはどんな点が異なるのか徹底比較して説明しましょう。
(1)運用できる最低金額が違う
運用できる最低金額はつみたてNISAは最低100円の少額投資より、iDeCoは5,000円から投資ができます。
(2)加入できる年齢制限が違う
つみたてNISAは20歳以上、iDeCoは2022年に行われた税制改正により20歳から65歳未満までの人が加入できるようになりました。
(3)投資金額を引き出せる期限が違う
つみたてNISAは引き出したいときには、いつでも自由に資金を引き出せます。iDeCoは原則60歳になるまで投資資金を引き出せません。そのためiDeCoは老後の資金を貯めやすいといえるでしょう。
(4)税金の優遇措置の条件が違う
両者とも共に運用益に対して税金がかからず、税制優遇措置がなされています。つみたてNISAは、最大で20年間、非課税で運用できます。iDeCoについては投資額も全額所得控除の対象になり、将来運用益を受領する際には「公的年金等控除」の対象になります。
(5)年間運用上限額が違う
年間投資可能上限金額は、つみたてNISAは40万円、iDeCoは加入者の職業により14万4,000円から81万6,000円まで拠出できます。
(6)運用目的が違う
つみたてNISAは、長期投資して将来の資産形成を目的とする制度です。
一方iDeCoは、老後の生活に備えて年金受給額を増やすための制度です。
つみたてNISAとiDeCoの共通点は?
つみたてNISAとiDeCo共通点について説明します。
(1)運用益は非課税になる
共に運用益は非課税になり、つみたてNISAは最長20年間の非課税期間があります。iDeCoは個人年金制度のため、掛け金全額が所得税控除の対象になります。ともに非課税のメリットがあるため、長期運用に適しているといえるでしょう。
(2)ネット証券で運用することができる
共にネット証券で口座を開設でき、簡単に運用が可能です。iDeCoは企業年金制度として企業が提供することが多く、ネットですべての手続きができるため、忙しい人にとっては始めやすいといえます。なおネット証券会社には楽天証券や松井証券・SBI証券・マネックス証券などがあります。
(3)決められた商品から選ぶ
つみたてNISAは、金融庁が指定する200本程度の投資信託の中から投資先を選びます。
一方、iDeCoは、運用先の資産運用方針に従って、株式や債券・不動産投資信託・投資信託などから複数の運用商品を選びます。
つみたてNISAとiDeCoは併用可能
つみたてNISAとiDeCoは併用でき、それぞれの口座を持ち投資できます。
両者は商品や運用方法が異なりますので、併用することで投資対象を広げリスク分散ができるでしょう。
つみたてNISAは、株式や投資信託・ETFなど、自由度が高くリスクの高い投資も可能です。一方iDeCoは、厚労省が定めた運用方針に基づき、分散投資やリスクの低い商品への投資ができます。
どっちが適している?それぞれに向いている人の特徴
60歳前後の人は、どちらの投資方法を活用した方が良いのでしょうか。
(1)60歳前に自由に使いたい人は「つみたてNISA」
iDeCoは60歳になるまで資金を引き出せませんが、つみたてNISAはいつでも資金を引き出せます。したがって60歳前に資金が必要になる可能性のある人は、つみたてNISAを利用するとよいでしょう
(2)60歳以後老後資金を貯めたい人は「iDeCo(イデコ)」
iDeCoの最長積立期間は20年間のため、長期的な資産形成に適しています。また60歳になるまでは資金を引き出せないため、老後の資金を貯めたい人向けの資産形成方法といえるでしょう。また年間120万円までの掛け金が全額所得税や住民税の控除対象になるため税負担を軽減できます。
2024年にスタートする新NISAも知っておこう
2023年末で一般NISA・つみたてNISAともに終了となり、2024年に新NISAがスタートします。
新NISAの導入により、一層多くの人が投資する機会が増えるでしょう。また長期間保有することによるリターンと、投資商品の選択肢が広がることが期待されています。
新NISAの特徴と仕組みを知っておきましょう。
(1)積立投資枠と成長投資枠を併用できる
従来はつみたてNISAと一般NISAの併用ができませんでした。しかし新NISAではつみたてNISAが「つみたて投資枠」、一般NISAが「成長投資枠」という名称になり併用が可能になります。
(2)口座開設期間が恒久化し非課税保有期間が無期限化
いままでのNISAは、口座開設期間および非課税期間が定められていました。新NISAでは口座開設期間は恒久化し、非課税保有期間の無期限化されます。
(3)年間投資枠が拡充
つみたてNISAは年間40万円、一般NISAは年間120万円に上限が定められていました。新NISAではつみたて投資枠は年間120万円、成長投資枠は年間240万円、合わせて360万円と大幅に引き上げられます。
(4)非課税保有限度額の引き上げ
非課税保有限度額は、つみたてNISAは20年で800万円、一般NISAは5年間で600万円と定められていました。新NISAでは積み立て投資枠で1,800万円、そのうち成長枠投資枠で投資できるのは1,200万円に引き上げられます。
(5)売却分の投資枠
いままでのNISAは、一度売却すると非課税保有限度額は利用できませんでした。しかし新NISAでは売却した積立金額の枠は、年間投資枠範囲内で再投資が可能です。
私が講師を務めるNISAセミナーの動画をLINE友達限定にて公開しております。つみたてNISAの落とし穴、新NISAについての注意点を解説しています。私自身のNISA運用実績も公開していますので、商品選びなどのコツを知りたい方は、ぜひご覧ください。
悩まれている方はFPに相談する
つみたてNISAやiDeCoは魅力的な制度ですが、投資なので適切な判断とリスク管理が必要です。両者は目的や特徴がそれぞれ異なりますので、ご自身の状況や目的に合わせて選択することが大切です。
またうまく運用するには、金融商品や投資リスク・税金などの経験と知識が必要です。具体的な商品選びや資産設計、運用時の留意点などを調べ、活用術を学ぶようにしましょう。
投資初心者や悩まれている方は、FP(ファイナンシャルプランナー)に相談することをおススメします。FPは資産運用や保険・税金などの知識を持つ専門家で、各個人のライフスタイルや家族構成・収入などに合わせた投資アドバイスをしてくれるでしょう。
まとめ
つみたてNISAやiDeCoはうまく利用すれば、将来に備えた資産形成や年金受給額を確保できます。 しかし投資には通常リスクがつきもので投資元本は保証されないため、ご自分に合った投資スタイルを見つけ、リスク管理をしっかりと行わなければなりません。投資に失敗しないためには、商品選びや時点の情報状況を十分に把握し、充実した資産設計が必要です。手数料等も確認し、手元に出費がかかりすぎないように準備しましょう。初心者向けの情報や、執筆者の紹介がされている書籍も参考になります。わからないことがあれば、専門家に相談し、納得した上で投資しましょう。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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