家を購入する時の頭金はいくらが目安?FPが頭金を決める時の注意点を解説
一戸建てかマンションか、間取りはどうするか。家の購入には夢が膨らんでいきます。
ですが、マイホームを購入するには多額の購入資金がかかります。
経済的なことも考えなければいけません。資金の手当てもそのひとつで、具体的には頭金はいくら出すのか、借入額はいくら借りるのか、といったことです。
お金に強いFPが頭金についての注意点を解説します。
家購入するときの頭金とは?
そもそも頭金とは、分割払いなどで最初に支払うある程度のまとまった金銭のことです。
マイホーム購入や自動車購入など支払額が大きい買い物の際に支払います。
以前は家電品のような少額商品の買い物でも頭金が一般的でしたが、クレジットカードの利用や普及に伴って少なくなりました。
似たようなお金が手付金です。手付金は契約の証として支払い、解約の際には没収されてしまうお金のこと。
契約が無事に成立すると、手付金は頭金の一部に充当もできます。
頭金はいくらが必要?目安は?
住宅購入資金を準備するなら多いほうがよいでしょう。
ただ、人それぞれ収入支出、世帯年収や預貯金には差があります。
それに連れて返済能力も変わってきます。
頭金についても、中には父母や祖父母からの援助がある人もいるでしょう。
国土交通省が発表した「令和3年度住宅市場動向調査報告書」によると、頭金の目安となるのは「購入額の20%」とされています。
つまり、4,500万円の住宅を購入しようと考えた場合、900万円の頭金を用意している人が多いということです。
それでは、実際に住宅を購入している人は、頭金をどれくらい支払っているのでしょうか。
実際に住宅購入した際に支払われた頭金の平均額について、住宅金融支援機構が発表している「2021年度フラット35利用調査」の結果を下記の表にしてみました。
頭金の全国平均額(万円) | 住宅購入費用に対する頭金の割合(%) | |
注文住宅 | 596.6 | 16.7 |
土地付注文住宅 | 412.3 | 9.3 |
建売住宅 | 270.0 | 7.5 |
マンション | 785.9 | 17.4 |
中古戸建 | 214.9 | 8.2 |
中古マンション | 418.9 | 13.8 |
上記の利用者調査の結果を見てみると、一戸建ての注文住宅購入における頭金の割合は16.7%、マンション購入における頭金の割合は17.4%となっており、頭金の目安となっている20%に近い数字になっています。
その他の住宅購入における頭金の割合に関してはおおむね10%前後となっています。
平均金額としては、新築一戸建ての購入の際には600万円程度、新築マンション購入の際には800万円と程度となっており、中古住宅や中古一戸建て、中古マンションなどの中古物件を購入する場合には、新築の1/3程度から半額程度となっているのが分かります。
頭金の目安は20%とされてはいますが、実際に住宅を購入する場合には、税金やさまざまな手数料が必要です。
それらの諸費用については目安として、購入費用の5%程度がかかるとされていますので、実際に住宅を購入する際には、自己資金として住宅購入費用の25%を準備しておくことをおすすめします。
頭金を払う時のメリット・デメリット
家づくりで必ず出てくる頭金。頭金を用意すればその分支払いが楽になります。
反対に頭金をためるには時間がかかるためその分購入が遅れてしまいます。
経済情勢や住宅ローン金利の状況によっては、無理して頭金を預金するよりも住宅ローンを組んだほうがよい場合もあるくらいです。
基礎知識として、頭金を支払うことのメリットとデメリットを確認しましょう。
(1)頭金を払う時のメリット
頭金を用意した方がいいメリットが大きく下記2つです。
- ①返済金額が少なくなる
- ②金利が優遇される可能性がある
それぞれに見ていきましょう。
①返済金額が少なくなる
第一にあげられるメリットは、ローン返済額が少なくなることです。最初に頭金を支払うことで、購入金額からその分が差し引かれるため、借入金額も少なくなります。
借入金額が少なくなれば、毎月の返済額も少なくなり、その分を子どもの教育資金や車の買い換え、老後資金のための貯蓄などに使えるようになるため、さまざまなライフイベントに備えることも可能です。
また、借入額が少なければ、返済期間を短縮することも可能ですので、金利の負担を軽減することもできます。
金利は数字だけで見ると1〜2%前後と小さな値ですが、住宅の購入金額が大きいため、金利の負担を軽減できれば支払総額を抑えることもできるのです。
②金利が優遇される可能性がある
頭金を用意するメリットの2つ目は、優遇金利の存在があげられます。
多くの銀行では、頭金を住宅購入金額の1〜2割入れることで、住宅ローン金利が下がるという優遇制度を用意したプランがあります。これが優遇金利と呼ばれるものです。
例えば、フルローンを組んだ場合の借入金利は1.9%前後ですが、頭金を2割入れた場合には優遇金利が適用され、借入金利が1.6%前後に下がるというようなプランが用意されている金融機関があります。
金利が下がるということは、支払う利息の金額が少なくなることを意味しますので、上記の通り、支払総額を抑えることが可能になるのです。
(2)頭金を払う時のデメリット
一方、頭金はためるまで時間がかかるもの。節約を心がけ、手持金を増やさないといけません。
時間がかかることはデメリットといえるでしょう。
頭金をためる場合、当然ながらためている最中は住宅購入ができません。
その期間に賃貸物件に住んでいると家賃がかかってしまいます。
また、時間がかかるということは経済情勢や自身を取り巻く環境が変わるということ。
自宅購入の時期やタイミングによっては、金利上昇リスクや病気、ケガなどの健康リスク、昨今のコロナ禍のような思わぬ状況が発生します。
頭金ゼロでも家購入できる?
もちろん、頭金がゼロでも自宅は購入できます。そのため頭金は絶対に必要なものではありません。
全額ローンのいわゆるフルローンもあります。
ただ、フルローンは金融機関によっては難色を示すこともあり、頭金がある場合と違い、ローン審査も厳しめです。
住宅ローンの事前審査においては、返済能力を重視する傾向にあります。その際に注意しておきたいのが、返済比率です。
返済比率とは、年収に占める年間の返済額の割合を言います。この返済比率が高い場合、審査を通らない可能性が高くなります。
返済比率は、おおむね30%以下に抑えられれば返済可能額となりますので、安心して返済を続けることができるでしょう。
しかし、返済比率が35%以上になった場合、返済能力に不安があると判断され、審査を通らない可能性が高くなります。
ここで、住宅ローン以外に借金がある場合や、その他のローン返済中の方は注意が必要です。
返済比率は、住宅ローンだけでなくクレジットカードでのカードローンやマイカーローン、その他全ての返済をトータルしたものが対象となっています。
住宅ローンを頭金ゼロで組むことを考えている方は、事前に自分自身の返済比率をチェックしておくことが肝心だと言えるでしょう。
住宅ローンを組もうと考えている場合、預貯金額や住宅購入資金、手元資金など個人の所有する資産や返済能力等、銀行などの金融機関が定める融資条件を満たしていれば、頭金ゼロ円でも住宅ローンを組むことが可能と言えます。
住宅ローンの審査基準について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
頭金ゼロで家購入する時に注意点3つ
どうしても頭金ゼロで家を購入したい。こうした場合には以下の点に注意しましょう。
借入金は多額となり、それに連れて金利負担も大きくなります。
返済期間も長くなるでしょう。そもそも住宅ローンを借りられないこともあります。
頭金ゼロでの自宅購入時の注意するポイントをお伝えします。
(1)借入れ金額が大きくなり金利も大きくなる
住宅価格のすべてを住宅ローンで賄うと、頭金がある場合よりも借入れ金額が大きくなります。
支払総額や残債が大きくなれば毎月の支払い、ボーナス時の返済も多額です。
それだけではありません。借り入れが多くなると支払う利息も多くなるのです。
元利均等払いの場合、返済当初はほとんどが金利となります。
繰上返済を利用して早めに返済することも行われています。
(2)長期に渡り返済できる金額なのか
借入れ金額が大きくなると返済期間も長期化します。フラット35の場合だと完済時まで最長35年間です。
その間にさまざまなライフイベントが毎年のように予想されます。中には思わぬアクシデントもあるでしょう。
もし、ご自身の病気やケガなどにより、仕事を休まざるを得ない状況になった時、収入がなくなってしまうかもしれません。
近年は、新型コロナウイルス感染症の流行などもあり、雇用状態が不安定になったという人もおられるでしょう。
このような場合に、預貯金が十分にないという方は返済が困難になってしまう可能性があります。返済が困難になった場合は、購入した家の売却が必要になる可能性があります。
購入時と同程度か高い金額で売却ができれば良いのですが、資産価値が下がってしまい売却価格が低くなってしまうと危険な状態に陥ってしまうかもしれません。
このように、資産価値よりもローン残高が多いことをオーバーローンと言い、不動産売却で得たお金で住宅ローンを支払っても残債がある状態になります。
このような場合には自己破産しなくてはいけないという事態に陥るケースも考えられますので、注意しておきましょう。
具体的にはどんな状況で自己破産になるかについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(3)住宅ローンを借りられない時もある
フルローンだと住宅ローン審査が通らず、住宅ローンを借りられない傾向もあります。
そもそも以前はどの金融機関でも頭金があることを前提に融資をしていました。
今でも頭金のない売買契約には慎重な判断をする金融機関はあります。担保評価も基本的に厳しめです。
自分が想定していた銀行から借りられず、あわてて他の銀行を探すこともあります。
頭金の金額を決める時の注意点
頭金は多いほうがよい。書籍やネット情報にもそのように書いてあります。
では頭金の金額を決める際にはどのような点を考慮したらよいでしょうか。
物件取得には物件価格以外にも現金で支払う費用もあります。
もちろん、不動産購入だけでなくそれ以外の出費にも備えなければいけません。
頭金の金額を決める際に検討すべき注意点をみていきます。
(1)頭金の他に諸経費も現金で支払う必要がある
頭金以外にも物件購入には諸経費がかかります。
その中には現金で支払うべき費用もあるのです。
具体期には仲介手数料や登記費用などが該当します、
こうした諸経費はつい忘れてしまいがちですが、諸経費がどれくらいかかるのかもチェックしながら頭金を計算する必要があります。
(2)諸経費のローンを組む場合は金利が高くなる
金融機関の中には諸経費を含めて融資をしてくれる銀行や信用金庫もあります。
ただ、諸経費を込みで借りると返済総額が増え、金利も高くなります。
これに加えて物件の査定次第では諸経費を貸してくれないこともあるのです。
諸経費込みのローンを利用する際には注意しましょう。
(3)住宅以外で急な出費に備える必要がある
家を探しているときはそればかりを考えてしまいますが、生活をしていくにはそれ以外の生活費も捻出しなければなりません。
家族構成にもよりますが、子どもがいれば進学の際の費用、教育費などです。
これ以外にも不測の事態に備えて、予備費としてある程度の手元資金を確保しておくことが必要でしょう。
文字通りの全財産をつぎ込むわけにはいかないのです。
家購入する時の諸経費とは?
住宅を購入する際の諸経費は、住宅ローン事務手数料や保証料、登記費用、仲介手数料、固定資産税の清算金などです。
これに測量費用などが加わる可能性もあります。
こうした取引や不動産取得にかかる費用のほか必要な費用としては引っ越し費用、家具や家電品の購入費用などです。
物件価格の1割程度が必要なこともあります。
不動産を購入する時に必要な諸経費について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
実際に住宅ローンのシミュレーションをしてみよう
頭金の有無や予算総額、編成計画などは実際にシミュレーションしてローンの流れを把握するとよくわかります。
現在は住宅金融支援機構をはじめ多くの金融機関ではサイトに住宅ローンの返済シミュレーション機能を搭載しています。
多くの人は事前審査の申込み前に返済シミュレーションを行う人も多いでしょう。
これらを利用すると頭金の有無によるローン返済額は一目瞭然です。
今回は購入価格6,000万円で頭金のない場合と、頭金を1,200万円用意した場合を比較してみました。
(1)頭金なしのケース
頭金なしのケースです。
頭金 | 0円 |
借入金額 | 6,000万円 |
適用金利 | 0.320% |
借入期間 | 35年 |
月々の支払い | 100,683円 |
ボーナス時増額返済額 | 302,160円 |
総返済額 | 63,452,338円 |
諸費用 | 1,705,000円 |
(2)頭金ありのケース
頭金を購入金額の2割、1,200万円用意したケースです。
頭金 | 1,200万円 |
借入金額 | 4,800万円 |
適用金利 | 0.320% |
借入期間 | 35年 |
月々の支払い | 70,478円 |
ボーナス時増額返済額 | 302,160円 |
総返済額 | 50,763,359円 |
諸費用 | 1,353,000円 |
頭金がない場合に比べて毎月の支払額が3万円ほど減りました。
頭金を差し入れた効果で月々の負担が有利であることがわかります。
これらのほかにも住宅ローン控除などの恩恵で所得税や住民税などの税金が還付されるとさらに負担が軽減されます。
購入代金や借入金利、ボーナス払いの有無といった借入条件を自分に当てはめて計算すると、自分の支払条件に即したシミュレーション結果が得られるでしょう。
住宅ローンの組み方が不安な方はFPに相談する
多くの人は住宅を購入するのは一度か、二度です。何度も経験することではありません。
初めて住まいを購入する人は多額の住宅ローンを組むのを不安に感じる人もいます。
ネットで検索すると自己破産、自宅を手放す、といった深刻なキーワードもあるものです。
こうした不安のある人はFPとも呼ばれるファイナンシャルプランナーに気軽に相談するのがよいでしょう。
FPへの活用方法やメリットについてみていきます。
(1)FPには住宅ローンの相談が増えている
FPは大切なお金や家計に関するアドバイザーです。
最新の知識やノウハウを持っています。もちろん住宅ローンも守備範囲です。
住宅ローンは審査など煩雑な手続きがあります。
しかも住宅購入と並行してしなければなりません。慣れない人には大きな負担です。
こうした負担や不安をFPは軽くしてくれます。
(2)FPに相談するメリット
先ほどの不安や負担の解消はもちろんですが、FPはその知識によって、その人にとって最適な住宅ローンを紹介してくれます。
ライフプランニングによって住宅ローンをどれくらいまで借りても大丈夫なのか、目安を示すことも可能です。
さらには購入後のメンテナンス費用、老後資金といった住宅費以外のことも計画的に考えてくれます。
FPに相談すれば多彩な選択肢の中から理想的な提案をしてくれるでしょう。
それがFPに相談する確かなメリットです。
まとめ
家を買うことは一大イベントです。考えるべきことは多くあります。
お金に関しては優先順位も高いでしょう。
頭金をいくらまでためる必要があるか、住宅ローンはどれくらいまで借りられるか。
こうしたことは自分で考えているだけでは結論がでないこともあります。
お金の問題はとても重要です。資金計画については専門家であるFPにぜひご相談ください。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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