つみたてNISAは確定申告する必要ある?証券口座の違いや注意点を解説
2024年1月から、「新NISA」が始まります。
これを機に、投資に関心を持つ方も多くいらっしゃるかもしれません。
つみたてNISAを含む新NISAの魅力は収益が非課税になることですが、NISA以外の他の口座と何が違うのでしょうか。
また、毎年行う確定申告や年末調整とどのようにかかわってくるのでしょうか。
今回の記事では、つみたてNISAの確定申告や年末調整、口座の種類による確定申告の必要性、新NISAの概要などの重要ポイントとなる基礎知識について解説しますので、ぜひ制度を理解する際の参考にしてください。
つみたてNISAは原則「確定申告」や「年末調整」は不要
つみたてNISAは、基本的に確定申告や年末調整の必要がありません。
なぜなら、つみたて投資枠なら年間240万円まで、つみたてNISAなら年間120万円までが非課税枠となるため、税金がかからないからです。
その理由を詳しく説明します。
(1)損益通算の対象外であるから原則必要ない
損益通算とは、給与所得などの他の所得と合算して税額を計算することです。
そもそも、確定申告や会社員が会社を通じて行う年末調整は税金を正しく収めるための手続きで、1年間の所得を計算して所得税や住民税を確定させるものです。
NISAのつみたて投資枠で購入して保有している投資信託の分配金や売却益は課税対象外です。
課税対象外ということは、収益が出ても損失が出ても、確定申告や年末調整の際に損益通算しなくてもよいのです。
(2)【注意】ETFの分配金を「株式数比例配分方式」以外で受け取る場合は申告必要
つみたてNISAの運用益が課税対象となるケースとなる例外的なケースがあります。
それは、ETF(上場投資信託)の分配金の受け取り方法を株式数比例配分方式以外で、受け取るとしているときです。
ETFの分配金の受け取り方には株式数比例配分方式のほかに、登録配当金受領口座方式や配当金領収証方式などがあります。
株式数比例配分方式以外の方法で分配金を受け取る場合は、つみたてNISAであっても課税対象となるので要注意です。
証券口座の種類によって確定申告の必要性が変わる
証券会社の口座には、一般口座と特定口座、NISA口座の3タイプがあります。
しかも、特定口座には源泉徴収ありと源泉徴収なしという2パターンが存在します。
証券口座 | 一般口座 | 確定申告が必要 |
特定口座(源泉徴収なし) | ||
特定口座(源泉徴収なし) | 確定申告が不要 | |
NISA口座 |
どのタイプ、どのパターンで口座開設するかによって確定申告の必要性が変化します。
そこで、証券口座を確定申告が必要な口座と必要ない口座に分け、それぞれについて解説します。
(1)確定申告が必要な証券口座
確定申告とは、1年間の所得(収入から経費などを差し引いたもの)に関する納税額を計算し、税務署などに申告書を提出する手続きのことです。
確定申告が必要な口座は、一般口座と特定口座の源泉徴収なしの2つです。
①一般口座
一般口座とは、譲渡損益や利子、配当の計算、取得費の管理、納税手続きの全てを投資家が行う口座のことで、会計ソフトなどを使用してお金の動きを把握しておく必要があります。
一般口座で管理している上場株式の売買で利益が出た際は、原則として確定申告が必要です。
一般口座での損益は、他の所得と合算で計算する総合課税の対象となるため、あえて確定申告をすることで、損失分を他の所得から差し引ける損益通算が可能です。
翌年以降の3年間に繰越控除ができる「譲渡損失の繰越控除」制度の利用も可能です。
ただし、確定申告の不備があると国税庁の定める手続きに従って修正しなければなりませんので注意しましょう。
②特定口座(源泉徴収なし)
特定口座とは、申告分離課税の対象となる上場株式などの損益を管理する口座のことで、簡易申告口座とも呼ばれます。
一般口座と比べると、納税者の申告・納税手続きの負担を軽減できます。
- ✅申告分離課税
株式の売却などで得た利益を、他の所得と分離して計算して納税する課税方式です。
原則として、確定申告が必要です。
申告分離課税の税率は、所得税15%、住民税5%の合計20%ですが、2037年末までは復興特別売所得税として0.315%が上乗せされるため、申告分離課税の税率は計20.315%です。
一般口座とことなり、証券会社や銀行といった金融機関が特定口座年間取引報告書を作成してくれるため、納税が簡単になります。
デメリットは、証券会社は売買益から源泉徴収することまではしないため、一般口座と同様に納税者が確定申告で納税しなければならないことです。
(2)確定申告が必要ない証券口座
確定申告が必要ない証券口座は、源泉徴収有の特定口座とNISA口座です。
①特定口座(源泉徴収あり)
特定口座は、さきほど紹介した源泉徴収なしと、源泉徴収ありの2種類があります。
- ✅源泉徴収
源泉徴収とは、確定申告や年末調整の前に、税金をあらかじめ差し引いておくことです。
徴収ありの特定口座は、利益の20.315%が自動で差し引かれます。差し引かれた税は証券会社が納税手続きをとるため、自分自身で確定申告する必要がなく手間が省けます。
たとえば、源泉徴収ありの口座で100,000円の利益が出たとすると、税金は20,315円となり、受取金額はその分の金額が差し引かれた79,685円となります。
②NISA口座
NISAとは、少額投資非課税制度の略称で、2014年にスタートした仕組みです。
通常、株式投資や投資信託への投資などで得た利益(譲渡益・配当金・分配金)には、20.315%の税金がかかり、その分が利益から差し引かれます。
しかし、NISA口座で取引した際に発生した売買益や配当金、分配金は非課税となるため、節税効果が高い投資方法です。
確定申告が不要であるため、新たに投資を始めようとする人やすでに投資を行っている人でも有効活用できる制度です。積立投資は、自動的に積み立てできるため初心者向けの投資です。
現行(2023年まで)のNISAは以下の3つから1つを選択する方式です。
一般NISA | つみたてNISA | ジュニアNISA | |
種類 | 国内在住 18歳以上 | 国内在住 18歳以上 | 国内在住 0~17歳 |
年間非課税枠 | 120万円 | 40万円 | 80万円 |
非課税期間 | 最長5年間 | 最長20年間 | 最長5年間 |
投資方法 | 一括投資 積立投資 | 積立投資 | 一括投資 積立投資 |
一般NISAとつみたてNISAは併用できないため、どちらか一つを選択しなければならず、ジュニアNISAは17歳未満でなければ口座を開けません。
また、一般NISAとつみたてNISAは投資対象が異なります。
一般NISA | 国内外の上場株式 上場投資信託 投資信託 |
つみたてNISA | 長期の積み立てや分散投資に適した金融商品 (株式等の投資信託やETF) |
つみたてNISAの投資対象として認められる金融商品は、販売手数料無料(ノーロード)であることや、信託報酬が一定の割合を下回るなどの条件を満たして、金融庁に届け出が出されたものに限られます。購入する前に、つみたてNISAの対象となっているか、確認しておきましょう。
一般NISAであれば5年間、つみたてNISAであれば20年間が経過すると非課税期間が終了するため、それまでに売却するか、特定口座などに移管しなければなりません。
(3)特定口座は源泉徴収ありと源泉徴収なし、どっちがいい?
特定口座には源泉徴収ありと源泉徴収なしの2パターンがあります。
最初に、源泉徴収なしのメリットを考えてみましょう。
源泉徴収なしであれば、株式や投資信託の取引による利益が20万円以下だった場合、確定申告が不要です。
確定申告しなければ、所得税を支払う必要がありません。
その場合でも、住民税の納税義務があるほか、20万円以上の利益が出たら、確定申告をしなければなりません。
一方、源泉徴収ありのメリットは、証券会社が納税に関する業務を代行してくれるため、確定申告をする必要がなく、投資家の負担が軽減できます。
しかし、利益が20万以下の場合であっても所得税を納めなければなりません。
投資による利益が20万円を超えるのであれば源泉徴収ありのほうがよいでしょうし、20万円未満であれば、源泉徴収なしの方が税負担を軽くできるでしょう。
iDeCoは確定申告が必要
iDeCoは、個人型確定拠出年金の通称で、個人でかけられる年金のことです。
iDeCoのメリットは、税制面での優遇が手厚いことと商品の幅が広いことです。
iDeCoで金融商品を購入した場合、毎月の掛け金の全額が所得控除の対象となります。
商品の運用益が非課税となるのはNISAと同じです。
受け取り時には、退職所得控除や公的年金控除の対象となります。
また、iDeCoの運用商品は投資信託だけではなく、定期預金や保険商品も含まれます。
その一方、株式は対象商品に含まれていませんので注意しましょう。
iDeCoの魅力である所得控除や退職所得控除、公的年金控除は確定申告や年末調整をしなければ処理されません。
別な言い方をすれば、確定申告をしないとiDeCoによる節税の恩恵が受けられないということになりますので、年末調整や確定申告時期をしっかり確認して行動しましょう。
年間の掛金の上限が、会社員か自営業者か、専業主婦(夫)かといった立場で異なる点も注意が必要です。
加えて、60歳まで取り崩すことができない点も要注意です。
運用途中で取り崩す可能性があるのであれば、融通が利くNISAを利用するのがおすすめです。
iDeCo(イデコ)の仕組みについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
新NISAはどう変わる?
2024年(令和6年)1月からNISAの制度が変更され、新NISAが開始されます。
新NISAの変更点は以下のとおりです。
- ✅投資枠の一本化
- ✅年間非課税投資額の拡大と生涯非課税限度額の設定
- ✅非課税期間の無期限化
2023年までのNISAは、一般NISA・つみたてNISAに分かれ、どれか一つしか選択できませんでした。
新NISAでは、投資枠が一本化されます。
新NISAでは、全体の生涯投資額を1,800万円と定め、従来の一般NISAに似ている「成長投資枠」を1,200万円以内としました。
その枠内であれば、つみたて投資枠と成長投資枠の比率は自由です。
つみたて投資枠600万円、成長投資枠1,200万円という組み合わせも可能ですし、つみたて投資枠1,800万円のみという組み方もできます。
1年間の最大投資額は、つみたてNISA枠が120万円、成長投資枠が240万円となりました。
つみたてNISA枠に話を限れば、現行のNISAの3倍まで年間投資限度額が拡大されます。
また、非課税期間が無制限になったのも新NISAの大きな特徴です。クレジットカードの積立額も現行NISAの5万円から10万円に金額がアップされました。つみたて金額はそのままポイントになり、運用益のアップにも繋がると言えるでしょう。
おすすめのクレジットカードは下記記事にて紹介していますので、ご興味がある方はぜひチェックしてみてください。
なお、一般NISAは、5年で非課税期間が終了するため、ロールオーバーで新たな口座に移行して非課税期間を延ばさなければなりませんでしたが、その必要がなくなります。
成長投資枠の投資商品などについて知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
新NISAは全体として投資家にとって有利な制度変更であり、初めて投資する人が非課税の恩恵を受けやすくなったといってよいでしょう。
新NISAの変更点について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
また、私が講師を務める「新NISA制度丸わかりセミナー」の動画をLINE友達限定にて公開しています。
- ✅つみたてNISAの落とし穴
- ✅新NISAの注意点
- ✅実際に私が実践している投資商品
- ✅成功するための鉄則
などリアルな情報がたくさんです。つみたてNISAで損をしている方、これからNISAを検討している方は、ぜひご覧ください。
自分にあったNISAの投資方法を知りたい人はFPに相談
NISAを使った投資、特につみたてNISAを活用した投資は長期的な視点が必要です。
資金管理や家計管理など、考えることが多々あることでしょう。
そんなときにサポートしてくれるのがFP(ファイナンシャルプランナー)です。
FPは、家計管理や老後の生活設計、金融機関からの借入、年金・社会保険、資産運用、税制、相続など幅広い内容の質問や相談にこたえられます。
せっかく制度が新しくなって使いやすくなった新NISAですが、目的を定めず投資商品を選択して運用してしまうと、得られる恩恵も半減してしまいます。
自分に合った新NISAの投資方法を知りたい方は、ぜひ、FPにご相談ください。
まとめ
今回はつみたてNISAと確定申告・年末調整の関係、証券会社の口座の種類と確定申告の必要性、iDeCoや新NISAの活用方法などについて解説しました。
2024年から始まる新NISAは、年間投資枠の拡大や非課税期間の恒久化など、投資家にとってかなり有利な内容を含んでいます。
新NISAの有効活用方法や、資産形成のための資金繰りなどで悩んだときは、資金管理の情報やノウハウを持つFPへの相談を検討してみてはいかがでしょうか。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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