資産運用はやめた方がいい?しないリスクと成功するコツを教えます!
日本では資産運用というと一定数「資産運用はやめた方がいい」という意見が見られますが、その意見の真意や実際のところはどうなのか気にならないでしょうか。
最近では国もNISAのような投信への非課税制度を拡充し、非課税期間や非課税枠を拡大したり、iDeCo(個人型確定拠出年金)による節税効果を謳ったりと、個人投資を後押しいています。
それでいても資産運用に消極的な意見が聞かれる要因はどこにあるのでしょうか。
この記事では、資産運用に否定的な意見の理由を考えながら、正しい資産運用の基礎について解説し、投資初心者向けに上手な始め方と投資方法を紹介します。
資産運用しない方がいいと言われている理由
資産運用について否定的な意見を見ていくと、圧倒的に多いのが「資産を減らすリスクがあるから」というものです。
もう30年以上前の話になりますが、日本でバブル経済と言われた好景気がはじけたとき、確かに多くの人が不動産投資や株式投資で大きな損失を被りました。
しかしあの当時を考えると、そんな人たちの多くが投資を勉強せず、周囲の「やれば必ず儲かる」といった雰囲気に流されているだけだったのです。
あれから年月が過ぎましたが、バブルのイメージを引きずっている人や、たまにニュースで流れる「投資詐欺」の影響で、残念なことに日本では未だに資産運用に悪いイメージを持っている人がいるのです。
資産運用のことを「ハイリスクでハイリターンな投機」という意味だと勘違いしている人が多いことは、いかなる投資も行っていない日本人の割合が約6割存在していることでも分かります(出典:MMD研究所による調査)。
金融庁が公表した「金融レポート」のデータによると、1995年から20年間で増えた金融資産が、日本が1.54倍だったのに対し、米国では3.32倍と大差がついています。
これだけ差がついても、資産運用が広がらなかった原因の一つが長期間続いたデフレではないでしょうか。
物価上昇がなければ、金融機関の長期積立や個人年金保険など、プラスは見込めなくてもローリスクで元本割れリスクを考えなくて良い商品で問題なかったのです。
しかし安全で安定的な商品選びで大丈夫だったのは過去の話になりつつあります。
資産運用をしないリスク
面白いもので、リスクというものはチャレンジした人にもチャレンジしなかった人にも等しく降りかかってきます。
資産運用に否定的な人には、資産運用で損をするリスクを回避したいと思っている人が多いのですが、投資をしないリスクについては一顧にしません。
まずは海外では教育現場でも教えているけど、日本では教えていない「資産運用」について、それをしないリスクについて考えてみましょう。
(1)給与だけではなかなかお金が増えない
日本がバブル崩壊後に「失われた20年」と言われていたのが、いつの間にか「失われた30年」に変化し、この先の見通しも暗いと言わざるを得ません。
その根本的な原因を考えると、一つには全く上がらない給与といえるでしょう。
それどころか給与から控除される社会保険料や厚生年金が高齢化を理由として国民的議論もなしに上げられており、手取り収入は減り続けています。
これは少子高齢化により日本の社会保障制度の欠陥が表面化し、そのツケを現役世代に押し付けている結果です。
しかもこのような状況が続き過ぎたせいなのか、物価上昇などで支出が増えると「節約術」が話題に上ったり、楽天カードで楽天ポイントを貯めるような「ポイ活」が流行ったり、支出の面ばかりに目を奪われています。
本来であれば一つ目には給与が上がる方策を考え、二つ目には自身で収入を増やす対策を考えなければなりません。
そうしなければ、額面が多少上がったところでそれ以上に国に巻き上げられてしまい、家計は苦しくなっていくということです。
(2)金利がつかないため貯金してもお金が増えない
金利というのは景気と連動するものですが、ここ20年以上日本では預金をしても金利がつかない状況が続いています。
空前の景気に沸き立ったバブル景気の頃は、定期預金の金利は5%~7%もあり、元本割れのリスクが無い銀行預金にお金を置いておくメリットもありました。
現在は普通預金金利が0.001%程度なので、仮に1,000万円預けていても1年間で利息は100円しかつきません。
さらに言えることは、デフレ下では増えもしない代わりに減りもしない貯金でしたが、物価が上がるインフレ下においては貨幣価値が目減りします。
定期預金でも0.50%程度の金利しかつかないことを考えると、貯金したままでいることはデメリットになりつつあるといえるでしょう。
一般的には貨幣価値が下落する局面では、不動産や株式・債権などの投資対象は価格変動で値上がりする傾向があります。
そのため資産を預貯金にしておく割合を減らし、いくつかの投資先にバランスよく振り分けることでリスク分散ができるのです。
(3)子どもの教育資金が貯まらない
子どもの教育資金を貯める商品として、これまでは学資保険が手堅い商品として人気でしたが、そのような状況ではなくなりました。
コロナ禍以降は物価の上昇が進み明らかなインフレ傾向になっています。
もともと学資保険は返戻率の低い商品なうえ、解約しなければ中途で引き出しすことができないため、柔軟性に欠ける一種の投資といえるものです。
大学進学が当たり前になっている今は、それを前提とした教育資金の準備が必要ですが、目安は子どもが高校に入るまでに500万円といわれています。
これまで一般的だった積立だけで500万円貯めることは現実的ではなくなっているので、積み立て以外の運用を考えないことはリスクとなっています。
子どもの成長期間を考えても、それほど長期運用にはならないので、毎月一定額の拠出で負担のかからない投資手法を考えるのもオススメです。
(4)老後資金の準備ができない
人生100年時代といわれるなか、2019年に金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書が話題になりました。
そこでは公的年金だけでは、老後資金が2,000万円不足するとされていて、多額の老後資金を自分で準備しなければということを多くの人に認識させた内容です。
かつては退職金を老後の生活資金に充てることで足りた時代もあったのですが、退職金の平均額が減り続ける現在では、その前提も崩れています。
さらに老後資金の計算を難しくさせているのが、医療の進化によって平均余命が伸びているにも関わらず、健康寿命は延びていないことです。
それが計算しなければ、老後に必要な生活費用の計算方法で悩みはありませんでした。
投資をしないことは、金融資産を食いつぶすだけで減っていくということなので、老後を考えるとリスクが高いといえます。
老後期間の開始まで長ければ長いほど、その準備も容易になるので、できれば20代や30代のうちに60歳以降を見据え、長い目で見た長期投資がオススメです。
とくにiDeCoは、所得控除による所得税軽減効果があるので、老後資金の問題を解決するために絶対外せない積立投資といえます。
iDeCo(イデコ)について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
資産運用をするメリット
資産運用とは、資産を増やすことを目的として、不動産、株などに投資して運用する仕組みのことですが、そのメリットは多いといえます。
もちろんリスクもあるのですが、誤解されている方の一定数は資産運用を「一か八かのギャンブル」といった理解のようです。
リスクヘッジしながら資産運用するのが基本ですが、そのメリットについて考えてみましょう。
(1)複利など効率よくお金を増やすことができる
複利とは、投資などの元本に運用益が加わり、さらにその合計額に対する運用益が生まれる仕組みです。
複利の力を活用して資産を増やす効果のことを複利効果といいますが、複利の力により利益がさらに利益を生んでいき、年月とともに雪だるま式に資産が増える効果があります。
銀行の定期預金なども複利計算ではあるのですが、現在の低金利ではほぼ単利商品といえる状況です。
資産運用と複利効果が分かる法則で「72の法則」というものがあり、平均利回りと元手が2倍になるまでの期間は導きだせます。
計算は非常に単純で、「72÷予定利回り≒元本が2倍になるまでの期間(近似値)」が計算式です。
例えば100万円の元本を3.5%の利回りで複利運用したとすると、「72÷3.5%≒20」となるので、約20年後に200万円に増えていることになります。
これだけを見ても、いかに複利効果が大きいか理解できるでしょう。
利回りは高いほどリスクが高くなる傾向があるので、リスク許容度を具体的に考え、国内上場株や米国株式、債券投資などを厳選して上手に運用することが大事です。
複利効果を得るためには、長期保有による運用成果の積み上げが原則なので、デイトレードのような短期投資・短期売買とは全く異なる考え方になります。
運用期間中の値動きには注目し、運用成績次第では保有資産の売却も検討しなければなりません。
売却時に購入時の金額より高く売れた場合は、差額は譲渡益となり課税の問題はありますが、それも運用実績の一部です。
(2)勉強することによって金融リテラシーを高まることができる
資産運用を始めると、それまで気にすることのなかった経済指標や株価などに目が行くようになり、経済・金融リテラシーを高めることができます。
経済ニュースや金融に関する知識をつけることは、資産運用の投資効果を高めたり、損失のリスクを回避したりするのに不可欠なものです。
また資産運用をすると確定申告が必要になり税金の知識も得ることができるので、社会人として必要なさまざまな知識を、資産運用を通して得られるでしょう。
投資家としての経験を積むことは、今後も低リスクの投資を続けるための大きな財産となります。
証券口座開設はネット証券などを利用すると、スマホのアプリだけでも簡単に始められ少ない掛け金から気軽に投資可能です。
手数料の安さや使い勝手・手軽さを考えると、ネット証券ではSBI証券、楽天証券、松井証券、マネックス証券の4つが人気でオススメといえます。
これら証券会社の公式サイトを比較することで、各証券会社のキャンペーン情報なども確認できます。
例えばSBI証券の場合、三井住友カードでクレカ決済することで、3,000円分のVポイントが必ず貰えるキャンペーンを実施しているようです。
(3)計画的に資産を増やすことができる
人生においてライフプランを考えることは重要で、いつどの時点でどのくらいの蓄えが必要かを把握し、貯蓄、資産運用の計画を立てる必要があります。
もちろん全ての人がライフプランを考えていないのは事実ですが、行き当たりばったりの人生はリスクが大きなものです。
もはや昭和のころの死語かもしれませんが、「結婚・出産・マイホーム」のような人生におけるイベントには、必ず大きな出費が伴います。
資産運用をすることで、ライフプランを見据えて計画的に資産を増やすことができるので、人生のリスクそのものを回避する手段といえるでしょう。
この場合のシミュレーションは、複数のイベントを具体的に落とし込み、家の購入などで借りることになる住宅ローンなども考えておきましょう。
そして大切なことは、勤め先の企業の将来性や自分自身の将来性も、十分検討しておくことです。
(4)不労所得を得ることができる
勤労所得は、自分が働く対価として収入を得るものですが、資産運用はお金が収入を生むことで不労所得を得ることができます。
資産運用の最大の魅力がこの不労所得にあるといえ、基本的には勤労所得を補完するものと考えるべきでしょう。
普段は会社員として給料を貰いながら、余剰資金で資産運用すれば生活に影響することなく、リスクも最小で始めることができます。
そのためには、若いうちに余裕資金で少額投資から始めることがおすすめポイントで、間違っても短期的な一括投資など考えてはいけません。
慣れてくると運用商品への投資金と、それに対する分配金の関係も理解できるようになるでしょう。
資産運用に向いていない人
資産運用には利益を上げられるというメリットと裏腹に、損をしてしまう可能性があります。
つまり全員が資産運用に成功するわけではないのですが、失敗する人には似たような傾向があるようです。
そんな資産運用に向いていない人とは、どのような傾向がある人なのかを考えてみましょう。
(1)情報収集、勉強が嫌いな人
資産運用は、お金があれば誰でも始められるものですが、自分の力で情報収集や運用の勉強をしない人、できない人は、資産運用に不向きなタイプです。
とくにリターンが大きい代わりにリスクも大きい資産運用の場合、値上がりや値下がりの兆候を情報から判断しなければ、利益を逃し損失を被ることになります。
もちろん情報を正確に分析できる知識がなければ判断もできないので、知識を得るための勉強は不可欠です。
例えば投資信託では、買うときには販売手数料、投資期間のあいだは信託報酬、売るときには信託財産留保額と複数の手数料がかかります。
そんなことも考えずに不要な売り買いの注文を出していたら、無駄な手数料ばかり払う結果となります。
やる気さえあれば、1人で参加できる無料相談会や、ファンドマネージャーの提案を受けるなど機会はいくらでもあるのですが、手間をかけず楽して収益を得たい人などは、結果的には大損するでしょう。
(2)決断力がない人
資産運用の中で、株式やFX、仮想通貨といったものは、刻々と相場が変動するものです。
時としては、損失がそれ以上拡大しないため損切りなどを思い切って決断しないと、いたずらに損失ばかり膨らむことになります。
運用中の投資をリアルタイムで確認し、適切なタイミングで取引することは、確かな知識と大変な決断力を要します。
資産運用のすべてが短期の決断を要するものではありませんが、判断したうえで行動に移せない決断力のない人は資産運用に向いていません。
(3)メンタルが弱い人
資産運用は、ポートフォリオをしっかり考えることでリスクを最小化できますが、感情に左右されるメンタルの弱い人は向いていないといえるでしょう。
資産運用というと「短期の売り買い」を想像する人もいるようですが、本来は計算に基づいて機械的に行うものです。
目先の相場で一喜一憂しているようでは、長期的な正しい判断はできませんし、ひとつのハードルといえます。
資産運用で失敗しないための注意点
資産運用は、漠然と始めるものではなく、様々な準備をしながら考えることでリスクを最小化するものです。
つまり大きな成功を考える前に、失敗する芽を摘み取っていく方がより重要になります。
ここからは、資産運用で失敗しないための最低限の注意点を考えてみましょう。
(1)投資目的を明確にする
資産運用の目的をもっとも単純に言い換えれば「資産を増やすこと」となりますが、目的が明確でなければ投資方針も明確になりません。
運用益を上げるのが目的でも、「何のために」「いつまでに」「目標金額はいくらか」が定まっていなければ、何に投資してよいのか分からなくなります。
例えば「10年後には60万円の手元資金を120万円に増やす」と設定すれば、おのずと利回りやそれに対応した対象商品が決まるはずです。
資産運用や投資は、何かを達成するための手段であって、それ自体は目的ではないことを理解しておきましょう。
(2)余暇資金など無理な投資をしない
資産運用は、けっしてギャンブルの類のものではないので、生活資金に手を付けてまですべきものではありません。
先ほど「預貯金だけで資産を保持しているのはリスク」と言いましたが、それであっても病気などのリスクに備えてすぐに現金化できる資産を持っておくべきです。
そのうえで使える余暇資金などを使って、無理のない投資をするところから始めましょう。
(3)情報収集を積極的に行う
投資でリスクを避ける基本は「分散投資」といわれる手法ですが、投資商品の情報を知らなければ選ぶことすらできなくなります。
さらに実際の運用では、急な情勢の変化などで運用方法の変更を迫られることも少なくありません。
最初に決めたポートフォリオに安心することなく、しっかりと情報収集し変化に対応していきましょう。
資産運用の勉強方法について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(4)FPなどの専門家にアドバイスをもらう
資産運用は、自分で勉強して知識を身につけることが大事になるのですが、現実問題としてすべてを自分一人で完結させるのは難しいのが現実です。
難しいと感じたときは、FP(ファイナンシャルプランナー)などの専門家にアドバイスをもらうことも考えてみましょう。
我々FPは「お金のプロ」といわれますが、ライププランの設計をお金の面でサポートさせて頂きます。
金融商品の詳しい説明であれば証券会社や銀行などの窓口、税金のことなら税理士など、必要に応じて専門家の知見を大いに利用しましょう。
FPに何が相談できるかについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
まとめ
今回は「資産運用はやめた方がいい」という意見が、現在の日本の状況下で正しいことなのかを考えてみました。
日本では「投資」というものを教育で取り上げないため、資産運用はお金持ちがするものといったイメージで見られがちです。
しかし個人所得も伸びず、老後などの不安などが高まるなか、資産運用は自分を守るための有力な選択肢となっています。
自分が大金持ちでもないかぎり、この記事を参考にして無理のない資産運用を考えることは、将来の不安を打ち消すことに繋がるので、検討だけでもすることをおすすめします。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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