不動産取得税の軽減措置とは?計算方法や申請手続きを分りやすく解説
不動産を取得する際、多くの方が直面するのが「不動産取得税」です。
しかし、知っていると大きな節約につながるのが、この税金に関するさまざまな軽減措置です。
不動産取得税は、新築住宅や中古住宅、土地などを購入した際にかかる税金で、課税台帳に基づいて県や市町村から納税通知が届きます。
ただし、昭和56年4月1日以降に適用された特例措置や、耐震基準適合などの条件を満たす物件を取得した場合、税額の軽減や徴収猶予、さらには税還付を受けられる場合があります。
本記事では、これらの軽減措置について、控除額や申請の期限(多くは新築後2年以内、または3月31日や12月31日などの特定の期日まで)、必要書類の詳細から、具体的な申請手続きの方法まで、丁寧に解説していきます。
不動産取得税とは
不動産取得税は、新築や中古の住宅、土地を取得した際にかかる県民税で、購入者がその価格や面積に基づいて納めるものです。
不動産を手に入れるには一般に大きな財務的負担を伴いますが、不動産取得税はその一環として考えられています。
令和の時代においても、不動産取得税に関わる規定は私たちの生活に密接に関わっており、賢い不動産取得のために軽減措置や控除の適用条件を知っておいて損はありません。
不動産取得税の税率は、標準的には不動産の評価額の4%ですが、住宅や土地については3%に軽減されています。
この軽減措置は、昭和29年の税制改正で道府県税として創設されました。
固定資産税の税率を引き下げることによって不動産に対する将来にわたる固定資産税の負担を緩和するための制度です。
新築住宅の取得者は、課税標準から1,200万円を控除できる特例が設けられており、中古住宅についても新築時期により最高1,200万円の控除が適用されます。
さらに、住宅用地の取得においては、150万円または床面積の2倍の面積(200平方メートル限度)に相当する土地の価格のいずれか大きい額に税率を乗じて得た額を減額する措置があります。
このほか、平成6年には住宅用地や商業地等の取得に関する課税標準としての価格を評価額の半分に圧縮する特例も創設され、より多くの人が新しい住まいを手に入れやすい措置がなされています。
参照:不動産取得税|総務省
不動産取得税の計算方法
不動産取得税の基本的な税率は、取得する不動産の評価額に対して設定されています。
一般に、取得する不動産の種類や地域によって異なる場合がありますが、不動産取得税率は3%です。
例えば、新築住宅や耐震基準に適合した住宅、特定の床面積を超える住宅用地の取得には、軽減税率が適用されます。
まず、不動産取得税の計算には、県税事務所や市町村が発行する固定資産評価証明書に基づいて決定される評価額が必要です。
評価額には、土地や建物の市場価格が反映されるため、実際の取引価格とは異なる場合があります。
計算例として、新築住宅の取得価格が2,000万円であった場合、基本的な税率3%を適用すると、不動産取得税は60万円です。
ただし、新築住宅や耐震基準に適合する住宅など、特定の条件を満たす場合には、軽減措置が適用されるため、実際に支払う税金はこの金額よりも低くなる可能性があります。
軽減措置を受けるためには、取得した不動産が特定の要件を満たしていなければなりません。
例えば、新築住宅の場合、一定の耐震基準に適合していることや、特定の床面積を超える住宅用地を取得した場合も、軽減税率の対象となるか確認が必要です。
また、不動産を取得した際、不動産取得税の申告と納税の手続きがありますので、取得した不動産に関する書類の保管や、税額を記載した申告書の提出など、滞りなく行いましょう。
不動産取得税の軽減措置とは
多くの家庭にとって、新しい住まいの購入は大きな経済的負担ですが、軽減措置を活用すれば、負担を少しでも軽くできます。
しかし、このような支援を受けるためには、特定の条件を満たし、必要な手続きを正しく行う必要があります。
主な軽減措置は以下の4分類です。
- 新築住宅の軽減措置
- 中古住宅の軽減措置
- 土地付き住宅用の軽減措置
- その他の軽減措置
ここでは、さまざまなケースでの不動産取得税の軽減措置について解説します。
(1)新築住宅の軽減措置
新築住宅の取得価格から控除されるのは、最大1,200万円までです。
また、この措置には居住用宅地の取得も含まれる場合があり、敷地面積に応じてさらなる税額の減免が期待できます。
新築住宅の軽減措置を受けるためには、新築住宅が新耐震基準に適合している必要があり、耐震性を証明する書類の提出が必須です。
また、新築住宅を取得した日から1年以内に申請を行うことが必要で、期限を過ぎるとこの有益な措置を利用できなくなるのでご注意ください。
不動産取得税の軽減措置は、新しい家を建てることを考えている家庭にとって、非常に有益な支援策です。
建築士等の専門家に相談しながら、耐震性や省エネルギー対策など、新築住宅の質を高める工夫を凝らすことも、長期的に見て家族のくらしを豊かにできます。
また、新型コロナウイルスの流行により、家で過ごす時間が増えている今、より快適で安全な住空間を実現するためのリフォームや改築に関する軽減措置も、適用条件を満たせば利用することができます。
軽減措置の適用を受けるためには、登記事項証明書や建築確認申請書の写し、さらには耐震基準適合証明書、居住開始証明書などの書類が必要です。
管轄の税務署や県税事務所に直接問い合わせ、必要書類を準備することから始めましょう。
(2)中古住宅の軽減措置
中古住宅の軽減措置は、中古住宅を購入する際に適用される税の軽減策です。
この措置を利用することにより、購入者は中古住宅の取得税を一定割合で軽減され、購入の負担を減らせます。
軽減される税額は、住宅の取得価格や築年数、耐震性能に基づいて計算され、特に耐震基準に適合する中古住宅を購入する場合、より大きな軽減措置が適用される可能性があります。
申請に必要な書類には、登記簿謄本や売買契約書、耐震基準適合証明書などがあり、これらの書類は購入後一定期間内の提出が必要です。
また、中古住宅を購入する際には、耐震性能など住宅の状態をしっかりと確認し、軽減措置の対象となる条件を満たしているか確認しましょう。
中古住宅購入を検討している方は、この機会に軽減措置の詳細を確認し、有利な条件での購入を目指してください。
(3)土地付き住宅用の軽減措置
土地付き住宅用の軽減措置は、新築または中古の家屋とその宅地を一緒に取得する場合に適用される税の軽減策です。
この措置を活用することで、土地と住宅の取得にかかる不動産取得税が軽減され、購入者の経済的負担が大幅に減少します。
軽減される税額は、土地の平方メートル当たりの価格や住宅の購入価格に応じて異なりますが、特定の条件を満たす場合には、土地価格の一部が非課税となる場合があります。
申請には、土地と住宅の購入契約書や登記簿謄本、固定資産税評価証明書などが必要です。
新築住宅の場合は完成後、中古住宅の場合は購入後に一定期間内に申請を行う必要がありますので、適用を受けるための条件や手続きの詳細を、事前に確認しておきましょう。
さらに、特例措置や耐震診断、増築や改築などの条件を満たす場合、追加の軽減が適用されることもあるので、詳しくは管轄の税務署や県税事務所にお問い合わせください。
また、地震やその他の災害からの復旧支援として、耐震改修や防災措置を施した住宅に対しても軽減措置が適用される場合があります。
土地付き住宅の取得を検討している方は、これらの軽減措置を活用して、新築や中古住宅の購入、さらには長期的な居住環境の改善を目指しましょう。
(4)その他の軽減措置
その他の軽減措置には、新耐震基準に適合する耐震改修を行った住宅や、特定の条件を満たすリフォームを施した住宅に対して、さまざまな税の軽減策があります。
例えば、敷地内の家屋に対して耐震改修工事を行った場合、工事費用の一部に対して減免措置が適用され、住宅の安全性が向上します。
また、省エネルギー対策やバリアフリー改修、増築や改築など、特定のリフォームを行った住宅も、条件次第ですが、軽減措置の対象です。
こういった軽減措置を利用するためには、改修工事の内容や費用、完了証明書など、適用条件を満たすための書類の提出が必要です。
また、贈与や譲渡を伴う取引、土地取得や共用部分の利用に関する軽減措置もあり、登記簿謄本や土地の固定資産評価額、さらには新築年月日や買取再販情報などを含む、詳細な情報が必要になる場合があります。
軽減後の固定資産評価額の変更や、耐震診断結果に基づく改修の有無、さらにはさまざまな制限や要件をクリアすることで、さらに多くの軽減措置を享受する可能性もあります。
不動産取得税の軽減措置について、申請様式などを含め十分に理解を深め、ぜひ有効活用しましょう。
不動産取得税のシミュレーション
不動産取得税の計算方法や軽減措置の適用条件が不明確の場合、不動産取得時に想定外の費用に直面することがあります。
ここでは、中古マンションや土地付き新築住宅の購入に際して、どのように不動産取得税が計算されるか、シミュレーションしてみましょう。
(1)中古マンションの軽減措置
ここでは、一般的な軽減措置として、耐震改修を行った物件の取得や、省エネ性能が優れた住宅の取得などが該当する場合のシミュレーションを想定します。
- ✅ 固定資産税評価額の設定
中古マンションの固定資産税評価額を例として、3,000万円とします。
- ✅標準税率の確認
不動産取得税の標準税率は、通常3%です。
- ✅軽減措置の適用
中古マンションが特定の軽減措置の条件を満たす場合、税率が軽減されます。例えば、耐震改修を施した物件の税率が1.5%に軽減されるケースを想定します。
- ✅税額の計算(軽減措置適用後)
固定資産税評価額3,000万円に対して、軽減後の税率1.5%を適用すると、不動産取得税は以下のように計算できます。
不動産取得税(軽減後)=3,000万円 × 0.015=45万円
このシミュレーションでは、軽減措置により税率が半減し、不動産取得税が90万円(標準税率は3%)から45万円に軽減されました。
(2)土地付き新築住宅の軽減措置
ここでは、土地と建物それぞれに対する固定資産税評価額と適用される税率を基に、不動産取得税の合計額を算出します。
- ✅ 固定資産税評価額の設定
土地の固定資産税評価額を5,000万円、建物の固定資産税評価額を2,500万円とします。
- ✅標準税率の確認
不動産取得税の標準税率(土地に適用)は3%、軽減税率(建物に適用)1.5%です。
- ✅軽減措置の適用
建物が特定の軽減措置の条件を満たす場合、税率が軽減されます。
- ✅税額の計算(軽減措置適用後)
土地の固定資産税評価額5,000万円に対しては、
5,000万円 × 0.03 = 150万円
建物に対しては、軽減税率を適用し、
2,500万円 × 0.015 = 37万5千円
となり、不動産取得税の合計は、
150万円 + 37万5千円 = 187万5千円
建物に対する不動産取得税の軽減が適用され、37万5千円が減額されます。
不動産取得税の軽減措置申請する時の流れ
不動産取得税の軽減措置の申請には、いくつか重要なステップがあります。
具体的なステップは以下のとおりです。
- 1.条件の確認
まず、対象となる不動産が軽減措置の適用条件に合致しているかどうかを確認します。
条件には、認定長期優良住宅であることや、耐震基準に適合していること、特定の床面積を持つ住宅用地であることをチェックしましょう。
- 2.申請書類の準備
条件を満たしていることが確認できたら、次に申請に必要な書類を集めます。
不動産の登記事項証明書、建築確認書、土地や建物の購入契約書、新築住宅の場合は、建築確認申請の承認通知書や耐震基準適合証明書などをそろえましょう。
- 3.書類の提出
準備した書類は、不動産の所在地を管轄する県税事務所や市町村役場に提出します。
提出方法は、直接持参または郵送が一般的です。 提出時には、申請書に加えて、必要な書類のコピーを添付しましょう。
- 4.審査
書類提出後、管轄の税務課で審査が行われます。
審査期間中には、追加書類の提出や詳細な質問への回答が求められる場合がありますので、対応に備えておきましょう。
- 5.審査完了
審査が完了し、軽減措置が適用されると、税額が軽減されたり還付が行われたりします。
審査結果は、通常、書面で通知されます。
一般的に、以上のような申請は不動産取得後6か月以内に行う必要がありますが、具体的な期限は不動産の種類や条件によって異なるため、事前に確認しましょう。
申請手続きに関する詳細や疑問点があれば、事前に問い合わせることをお勧めします。
県税事務所や市町村役場のウェブサイトでは、必要な情報や申請書類のダウンロード、さらにはQ&Aコーナーを通じて、申請に関する疑問を解消できるでしょう。
申請忘れた場合は5年以内であれば還付請求ができる
不動産取得税の軽減措置を申請し忘れてしまった方も、取得日から5年以内であれば、還付請求の機会がまだあります。
(1)軽減措置の対象となる条件を再確認する
まず、軽減措置の対象となる条件を再確認しましょう。 認定長期優良住宅であるかどうか、耐震基準に適合しているか、また、新築住宅の場合は1月1日から始まる居住の開始などの確認が必要です。
特に、耐震改修を施した建売住宅や共同住宅など、さまざまな種類の不動産が軽減措置の対象になり得るため、自己流で判断せず、入念にご確認ください。
(2)還付請求に必要な書類を準備する
次に、還付請求に必要な書類を準備しましょう。
不動産取得時の契約書の写し、登記簿謄本、固定資産評価基準に基づく固定資産税評価証明書などが必要です。
また、条件を満たしていることを示すための追加書類、例えば長期優良住宅の認定証明書や耐震基準適合証明書などが求められる場合があります。
還付請求書は、PDFファイルでダウンロード可能なものを含め、管轄の県税事務所や市町村役場で提出します。
(3)書類を提出する
提出時には、還付を受けるための口座情報の提供も必要です。
審査は、提出された書類を基に行われ、軽減措置の対象条件を満たしていれば、還付が行われます。
還付請求の手続きには5年以内という期限があるので、忘れずに申請を行ってください。
もし不明点があれば、県政情報のウェブサイトや税務署、県税事務所にも問い合わせてみましょう。
不動産取得税の還付請求に必要な書類
不動産取得税の還付請求を行う際には、還付請求の根拠となる証明書類を提出しなければなりません。
特に、還付請求には不適合な条件や規定に注意し、下記の書類をそろえる必要があります。
(1)不動産取得時の契約書
新築住宅や土地、または既存住宅の購入契約書(取得した不動産の詳細、取得日、そして延べ床面積や販売価格(例:300万円、420万円等)が分かるもの)のコピーを提出します。
特に、平成30年以前に建設された物件や昭和60年代の建物の取引には、適用される軽減措置が異なる場合があるため、詳細な契約内容の確認が必要です。
(2)登記事項証明書
不動産の所有権移転が正式に登記されたことを証明する書類で、当該住宅や土地の法的な権利関係が明確にされ、所有者の変更や物件の履歴(例:相続や贈与等による所有権の移動)が確認できます。
(3)固定資産税評価証明書
不動産の固定資産税評価額を証明する書類で、不動産取得税の計算基礎となります。
評価額は、納税方法や税額(例:230万円未満、450万円等)に影響を及ぼし、特定の条件下では課税免除や軽減対象となる可能性があります。
(4)耐震基準適合証明書(該当する場合)
新築住宅が耐震基準に適合していることを証明する書類で、耐震性を満たす住宅の取得には、追加の軽減措置や環境性能割が適用される場合があります。
特に平成元年以降の建築基準法の改正に伴って必要となりました。
(5)居住開始証明書(該当する場合)
新築住宅において、特定の期間内に居住を開始したことを証明する書類です。
この書類は、居住用の不動産取得における軽減措置の適用要件を満たすかどうかを判断するため、特に新築の一戸建てやマンション等の居住開始日の確認に必要です。
(6)還付請求書
還付を請求するための正式な書類で、管轄の県税事務所や市町村役場から入手できます。 請求者の情報、取得した不動産の情報、還付を請求する理由などを詳細に記入し、必要に応じて電話番号やメールアドレスでの連絡先も明記しましょう。
以上の書類を揃え、不動産取得税の還付請求の手続きをスムーズに進めましょう。
なお、他に不動産を購入する時にかかる税金や諸経費などについて知っておきたい方は、下記記事を参照してみてください。
まとめ
本記事では、不動産取得税の軽減措置に関する詳細な情報と、申請手続きの流れについて解説してきました。
不動産取得時には、新築住宅や中古住宅、土地付き住宅の購入時に適用されるさまざまな軽減措置の条件、計算方法、必要書類、そして申請し忘れた場合の還付請求についても確認しておきましょう。
ただ、不動産取得は必要書類だけでもいくつもあり、手続きも単純ではありませんので、専門のサポートへの依頼を検討してもよいでしょう。
この記事が、不動産取得を検討している方のお役に立てれば幸いです。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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