50代に適した資産運用商品は?FPが失敗しないための5つの注意点も解説
50代と一括りに考えるのは乱暴かもしれませんが、一つ確実にいえることは「老後」が近づいていることです。
定年退職も見えてくる50代が、老後を視野に入れながら資産運用をするには、この年代特有のポイントを押さえながら考える必要があります。
この記事では、50代に適した資産運用商品について、メリットとデメリットを含めてFPが解説します。50代で老後資金に不安がある方、資産運用を検討されている方は、ぜひ最後までお読みください。
50代の資産運用の現状は?
50代といっても仕事や資産状況、そして家族などおかれた環境は大きく違いますが、平均的な50代の資産の運用状況はどうなっているのでしょうか。
各種統計による平均値と自分の状況を比べることで、何が足りず何をしなければならないのかが見えてくるでしょう。
(1)50代の金融資産保有平均額
世の中の50代は、どれくらい現金・預金(貯蓄額)を含む金融資産を保有しているのか、いくつかの統計や情報がありますが、今回は金融広報中央委員会が2021年9月に実施した「家計の金融行動に関する世論調査(2人以上世帯)」を参考にしてみます。
それによると世代ごとの金融資産保有額は、次のようになっています。
年代 | 平均値 | 中央値 |
20歳代 | 212万円 | 63万円 |
30歳代 | 752万円 | 238万円 |
40歳代 | 916万円 | 300万円 |
50歳代 | 1,386万円 | 400万円 |
60歳代 | 2,427万円 | 810万円 |
70歳代 | 2,209万円 | 1,000万円 |
平均値だけで比較すると50代から金融資産が増え始めますが、一般的には子供の教育費が掛からなくなる年代になるため、自身の生活に余裕が出るためだと言われています。
もちろん年収や家族構成など条件によって違うので同列には語れませんが、余剰資金ができやすい年代といえるでしょう。
(2)50代から投資を始める割合
働き盛りと言われる30代~40代は、子育てなどで出費も多いことから、世代全体でみると種類にかかわらず投資をしている人の割合は36%ほどです。
これが50代となると51.6%となることから、およそ15%の人が50代から投資を始めていることが分かります。
50代は積立?それとも一括投資?
50代で投資を始めるとして、それまで投資と無縁だった投資初心者からしたら「何をどうしたら良いのか」全く分からないでしょう。
投資といっても様々な種類がありますが、少なくとも理解しておかなければならないのは「リスク」は必ずあるということです。
ただリスクを減らす方法はありますし、なにより今の預金金利であれば、ほぼノーリスクでありながらノーリターンなので、老後を考えた場合投資から目を背けるわけにはいきません。
まず投資の種類の中から「積立タイプ」の投資と、「一括タイプ」の投資について、それがどのような結果をもたらすのか、トータル100万円を10年間投資するケースで考えてみましょう。
(1)積立する場合のシミュレーション
100万円の投資を10年間積立すると仮定すると、月々の積立額は約8,300円になります。
月々の投資額が少ないので、投資を始めるときにまとまった資金が無くても始めやすいというのがメリットです。
では積立でトータル100万円投資した場合の結果がどうなるのか、利回り年3%と仮定した結果は下のとおりになります。
毎月の積立額 | トータルの元本 | 運用収益 | 元本+収益 |
8,300円 | 99万6千円 | 16万4千円 | 116万円 |
利回りについては積立商品によって変わりますが、必ずしも保証されていない点は投資なので理解しておきましょう。
(2)一括投資する場合のシミュレーション
もし投資を考えたときにある程度の金融資産があるのなら、一度に100万円を投資することが可能です。
では最初に100万円を投資して、10年間利回り3%で放置した場合の結果がどうなるのか見てみましょう。
初期投資額(元本) | 運用収益 | 元本+収益 |
100万円 | 34万9千円 | 134万9千円 |
上記のとおり一括投資の場合、積立投資に比べて運用効率が倍以上になることが分かります。
とはいえ一括投資には「投資先が破綻したらゼロになる」というリスクも伴うので、投資先の選定には注意が必要になるでしょう。
東日本大震災前には、鉄板の安定投資先だと思われていた東京電力が、原発事故で株価が下落するようなこともあるので、一括投資は利回りが高めになる分リスクも高めになる傾向があります。
なお、100万円がありましたらどのような資産運用ができるのかについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
50代にオススメの投資商品5選
リスクと利回りを考えながら投資商品を選ぶのは難しいのですが、ある程度の運用益を目指しながら老後に備えたいものです。
そこで50代から始めるオススメの投資商品5選を、そのメリットとデメリットを踏まえながら紹介します。
(1)投資信託
「投資信託」は、各投資家が少しずつ拠出した資金を運用の専門家が国内株式・国内債権だけだはなく、海外にもに投資・運用し、その運用益を各投資家に分配する投資商品です。
①メリットとデメリット
投資信託は少額から始めることができ、運用も専門家に任せることから投資を始めるハードルが低いことがメリットといえるでしょう。
そのため投資に興味があるものの「知識がなくて始められない」「投資の勉強をする時間がない」といった方にオススメの投資商品です。
ただ投資信託は多くの金融機関が扱っていて、気にしなければならないポイントは手数料の金額といえます。
酷い場合は毎月の積み立て時に2~3%もの投信手数料が取られるので、下手をすると運用益より手数料が上回ってしまうケースもありのです。
②オススメしたいポイント
投資信託のオススメしたいポイントは、ズバリ投資の入門編として始めやすいところです。
先ほども説明したとおり、手数料については気を付ける必要があり、特に銀行の投資信託商品は手数料が高い傾向があります。
投資信託について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(2)金(ゴールド)投資
人類の長い歴史の中で金(ゴールド)ほど価値を保ち続けた投資物はありません。
そんな金に投資することは、どのような特徴があるのでしょうか。
①メリットとデメリット
金への投資で最大の特徴といえるのが「世界で認められている普遍的な価値は失われる心配がない」ということで、守りの投資といえます。
投資の対象で考えられる株式や国債、さらに言えば預金として貯めている通貨も、場合によっては価値がゼロになることがありますが、金に関してはその可能性が極めて低い投資対象です。
デメリットとしては、投資による運用益はほとんど期待できないことで、基本的に資産価値を目減りさせないことがメインの預金的な性格が強い投資といえます。
また金の現物購入だと、盗難などのリスクもあるので金への投資方法は考える必要があるでしょう。
②オススメしたいポイント
金の価値は、全世界の物価の変動に連動しており、インフレに非常に強い投資です。
日本を含めた先進国では、かなりインフレ傾向が強まっているので、貨幣価値の目減りに備えるためにはオススメの投資といえます。
金(ゴールド)投資について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(3)外貨預金
外貨預金は、日本円ではなく外国の通貨で預金するもので、外貨を持つのと同義といえる投資です。
代表的な外貨はドルやユーロですが、世界には様々な通貨がありリスクや金利を含めて非常に多い選択肢があります。
①メリットとデメリット
外貨預金のメリットで分かりやすいのが、日本と投資先通貨の金利差といえるでしょう。
日本では長いこと超低金利が続いているので、預金していてもほとんど利息が付きませんが、例えばアメリカドルの1年定期預金は、4.7%(SMBC信託銀行外貨預金基準金利・2023年1月4日現在)と日本とは雲泥の差です。
また外貨建てなので円安に強い点もメリットですが、逆に円高のときには為替の差で損をすることもあるので、メリットとデメリットが裏腹の関係にあります。
②オススメしたいポイント
通貨安のリスクはどの国でもあり得る話なので、分散投資先の一つとして外貨預金はバランスの取れた投資先といえます。
日本国内への投資と併用することで、それぞれのメリットとデメリットを上手く相殺できるでしょう。
(4)iDeCo(イデコ)
iDeCo(イデコ)とは、個人型確定拠出年金の愛称ですが、その節税効果の高さから注目を集める任意加入の私的年金です。
主な目的は老後の資産形成で、金融機関を通して加入することができます。
2017年から会社員だけではなく主婦や公務員も加入出来るようになり、2022年5月以降は65歳まで加入できるので、ほぼ全ての国民が利用できるようになりました。
①メリットとデメリット
iDeCo(イデコ)の最大の特徴は、掛け金全額を所得控除できることで得られる節税効果で、ちょっとした投資とは比較にならない金銭的メリットが得られます。
税金の軽減効果は所得税だけではなく住民税にも及ぶので、所得の高い方ほど効果が大きく、今後もあらゆる世代におすすめの投資です。
また運用益も非課税なうえ、満期時の受け取り方法も一時金では退職金扱い、年金方式で受け取る場合は年金と同じ扱いで、それぞれ税額が減免されます。
デメリットとしては、原則として積立金を60歳まで引き出せないことで、毎月の積立金と他の投資のバランスをよく考えましょう。
②オススメしたいポイント
50代の投資では、老後資金対策が大きな目的となりますが、その意味ではiDeCo(イデコ)の利用はかなり有効な投資といえます。
iDeCo(イデコ)について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(5)つみたてNISA
つみたてNISA(ニーサ)は、投資信託などの投資で得られた利益を「NISA口座」内で一定額非課税とする、長期投資の投資優遇税制です。
2018年1月からスタートした制度ですが、令和5年度税制改正の大綱で2024年以降のNISA制度の拡充・恒久化の方針が示されています。
①メリットとデメリット
つみたてNISAのメリットは、運用益・分配金が長期にわたって非課税になることで、通常の投資で運用益・分配金に課税される20.315%の所得税が掛からない点です。
これまでの年間投資枠・非課税期間は、2024年以降大きく拡大されますが、違いは以下のとおりで非課税期間と保有上限が大きく変わります。
2023年まで | 2024年以降 | |
年間投資枠 | 40万円 | 120万円 |
非課税保有期間 | 最長20年間 | 無期限化 |
非課税保有限度額 | 800万円 | 1,200万円 |
従来のつみたてNISAは2024年までに解約しなくても、新制度と別枠で運用できるので、非課税期間内は運用実績を考えながらどうするかゆっくり考えましょう。
長期の資産形成で、積立が優良な投資先であるほど効果は大きくなりますが、50代からでも投資する余裕があるなら組み入れたい商品です。
②オススメしたいポイント
つみたてNISAは小額から始められるので、ハードルの低さが魅力ですが、積立型なので投資でよく聞く「タイミング」など意識する必要がありません。
つみたてNISAについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
また、私が講師を務める「新NISA制度丸わかりセミナー」の動画をLINE友達限定にて公開しています。
- つみたてNISAの落とし穴
- 新NISAの注意点
- 実際に私が実践している投資商品
- 成功するための鉄則
などリアルな情報がたくさんです。つみたてNISAで損をしている方、これからNISAを検討している方は、ぜひご覧ください。
50代で資産運用をする際の注意点
50代といえば老後資金を具体化しなければいけない年代で、しかも資産運用という点で考えると20代や30代より運用期間も短くなります。
そのような特徴を踏まえて、50代で資産運用をする際の注意点について考えてみましょう。
(1)定年退職の期間を意識する
50代ともなれば、まだまだ先だと思っていた定年退職が現実的に見え始めるころですが、それだからこそ定年までの期間を意識して、その期間にどれくらいの収入が見込めるのか具体的に考える必要があります。
勤め先によっても違いがあるでしょうが、もし60歳定年で再雇用されるような会社では、定年後に収入はシビアに見積もらなければなりません。
また厚生年金などの公的年金の受給開始時期と見込める受給額も計算しておきましょう。
子供の教育費から解放されていたとしても、「自分へのご褒美」などという甘えた考えは忘れて、現実と向き合わなければならないのです。
また場合によっては年金収入以外に、家賃収入やノウハウを活かした副業収入など、長期的かつ計画的に使えるものは活用しましょう。
(2)老後に必要な資金を明確にする
定年までの就業による収入と、リタイア後の収入を明確にできたら、次に残りの人生で必要になる出費を明確にしていきます。
この時に忘れてはならないのが、老後資金だけではなくリタイアするまでの必要資金のシミュレーションをしておくことです。
定年までの収入から確実に出ていく資金になるので、これを明確にしておかないと退職時の手持ち資産もはっきりしなくなります。
持ち家なのか賃貸なのか、住宅ローンの返済残高や子供の有無とまだ教育費が掛かるのか、個人ごとに違いはありますが、夫婦で旅行に行く頻度や車をいつまで乗るのか、外食のペースや医療費・介護費用のことなど、退職後の生活を出来るだけ細かく具体的にイメージしてみましょう。
ただ余りにも無理な暮らしをで支出を減らすことは、ライフプランを貧しくしてしまうので、普通な将来準備として考えることが大事です。
弊社開発のお金の管理アプリ「マネソル」(特許あり)では、老後資金のシミュレーションを簡単に行うことができます。ご興味がある方はぜひ試してみてください。
(3)リスクが低い投資商品に限定する
大雑把でも人生残りの収入と必要資金が分れば、ある程度の過不足は把握できたと思います。
先ほど「50代の投資期間は若い人より短い」という当たり前のことを言いましたが、短いからこそリスクの低い投資商品に限定しなければなりません。
投資は射幸心を煽るようなギャンブルと違うので、「短い投資期間だから一攫千金」などと考えてハイリスク商品に手を出すと確実に失敗が訪れます。
投資期間が短いということは、損失を取り返す期間がないということなので、リスクを避けながら2つ以上に分散して投資するようにしましょう。
リスクを避けながらも効果を上げるためには、様々な株式投資・債券投資・ファンドなどの銘柄の中から、中心となるベースをしっかり決めることが、着実に運用成果をだす基本です。
(4)自分に合った投資プランを立てる
人生最後までの収支を考えてマイナスだからといって焦ると、投資プランや運用方針が見えなくなってしまいます。
まず肝に銘じておくべきは「投資・資産運用だけで不足分をカバー」などと考えないことです。
そのうえで投資プランを練るのですが、現在持っている金融資産がある程度あるのであれば、ない人と比べて投資の選択肢は広がるでしょう。
その場合でもリスクを減らすための分散投資は必須ですし、利回りに目を奪われるのもいけません。
手持ち資金に余裕がなければ、積立型投資などを組み合わせて考えますが、これも一点集中は避けて、先ほども伝えたとおり複数投資など安全性を第一に考えましょう。
(5)投資営業には気をつける
それまで投資など経験していなかった方は、銀行や生命保険会社に投資商品を勧められるとつい信じてしまいがちですが、このような投資営業は飛び付かないほうが良いでしょう。
考えてみれば分かることですが、金融機関の営業担当は「自分のノルマ・成績」のために投資商品を売っているのです。
日本では1997年の「金融システム改革のプラン」によって、銀行・証券・保険の垣根がなくなりましたが、どこでも投資商品を売るようになった分、売り手の専門性が薄れています。
良さそうな投資商品だと思ったとしても、その場ですぐ契約するようなことは避けましょう。
また言うまでもありませんが、「大金を得られるチャンス」「手数料無料」「元本保証」「絶対儲かる」などと謳う営業は無視して構いません。
資産運用の考え方、注意すべき点などについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
不安がある方はFPなどの専門家に相談する
50代から投資を始めるのは不安なものですが、けっして遅いということもありません。
ただ言えることは「自分で理解できない投資商品に手を出さない」ことで、理解できるようになるために、FPなどの投資のプロに相談することをお勧めします。
弊社FPは様々な年代の方からの相談事例が豊富です。家計簿の見直しなどぜひ気軽に話をしてみるのはいかがでしょうか。
まとめ
人生100年時代などと言われるようになりましたが、本当に100年生きるとしたら65歳の定年退職から35年間も老後資金のことを考えなければならないのです。
ただ預金のお金を預けているだけでは、歴史的な低金利が続く日本では増えることは有りません。
それどころかインフレで目減りしてしまうリスクもあるので、お金を活かすための投資について真剣に考えてはいかがでしょうか。
投資は思っているより簡単で何歳から始めても遅くはありません。
やるやらないは自由ですが、現在の経済情勢を考えると投資の少しでも気持ちを向ける判断は重要です。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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