不動産購入時の仲介手数料とは?相場や計算方法、上限額について解説
不動産購入費以外にかかる代表的な経費として仲介手数料がありますが、具体的にどのような費用か知識として知らないので疑問に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。住まいを購入する上で避けて通れない諸費用のひとつ、仲介手数料について徹底解説します。
仲介業者に支払う仲介手数料は不動産売買にはつきものです。成約した売買金額によっては100万円を超える高額な費用になるケースもありますので、基本的な内容を理解しておくことが大切です。
今回は、不動産購入時の仲介業者に支払う仲介手数料の相場や計算方法、上限金額などについて解説いたします。これから不動産の購入を検討している方は基礎知識として把握するため、ぜひ最後までお読みください。
不動産購入時の仲介手数料とは
(1)不動産会社に支払う成功報酬
不動産を購入する際、個人で希望する物件を探して売主と直接取引をすることは、あまり現実的ではありません。
多くの人は不動産業者に間に入ってもらい、売主と売買契約締結するのではないでしょうか。
この売買契約時にかかる一連の手続きに対して、不動産業者へ支払う対価が仲介手数料です。これが不動産会社の利益となります。
仲介手数料は不動産業者の仲介業務や手続きに対して支払う成功報酬なので、仮に契約が成立しなかった場合は、支払う必要がありません。
ただし契約成立後に買主や相手の都合で契約が解約・契約解除になった場合でも、仲介手数料の支払義務が発生します。自然災害などの不可抗力による解約の場合や契約解除の場合であったとしても同じです。
これは売買契約が成立した時点で不動産業者は仲介業務を果たしているためです。
一度契約が成立すると契約解除しても仲介手数料を支払う義務が発生することを念頭に置いておきましょう。
(2)仲介手数料には消費税がかかる
仲介手数料は不動産会社のサービスに対する報酬であるため、消費税がかかります。土地の取引額に消費税はかかりませんが、土地取引に関する仲介手数料には消費税の適用があります。
不動産売却価格は数十年の住宅ローンを組むほど高額になるため、それに伴って仲介手数料や消費税の金額も高くなります。
例えば、売却価格3,000万円の物件を購入した際の仲介手数料上限額は96万円です。これに消費税が加算されます。
消費税率10%をかけると9万6,000円となり、消費税込みで105万6,000円の支払いになります。
仲介手数料の相場と計算方法
(1)仲介手数料は上限額が決まっている
仲介手数料の根拠は宅地建物取引業法という法律の第46条で上限額が定められており、仲介業者は上限額を超えて報酬を受けてはいけないとされています。この報酬額の仕組みには、不動産業者が受け取る下限額についての決まりはありません。
仲介手数料は一般的には上限額で設定されることが多いですが、この最大の金額より低い金額のケースもあります。
上限額の計算方法は、下の表のように売却金額ごとに料率が異なります。
売買金額(税抜) | 仲介手数料の上限額(税抜) |
売却額・購入額のうち200万円以下の部分 | 売買金額の5% |
売却額・購入額のうち200万円超400万円以下の部分 | 売買金額の4% |
売却額・購入額のうち400万円超の部分 | 売買金額の3% |
(2)仲介手数料の計算方法
では実際に売却価格に対する仲介手数料の上限額を計算してみましょう。
売却価格が3,000万円の物件の場合、計算方法は以下の通りです。
売買金額(税抜) | 仲介手数料率 | 仲介手数料の上限額 (税抜) |
売却額・購入額のうち200万円以下の部分 | 5% | 200万円×5%=10万円 |
売却額・購入額のうち200万円超400万円以下の部分 | 4% | 200万円×4%=8万円 |
売却額・購入額のうち400万円超の部分 | 3% | 2,600万円×3%=78万円 |
計 | 96万円 |
計算した売却価格に対する上限額96万円に対する消費税を計算します。以下が計算例です。
96万円×消費税率10%=9万6,000円
前述の売却価格に対する仲介手数料と消費税額を足し合わせて、支払う合計金額を算出します。
96万円+9万6,000円=106万6,000円
本来、仲介手数料率はいちいち計算するのは手間で時間もかかりますのでコツがあります。それは計算式というからくりです。以下の「速算式」でも計算が可能です。不動産業界では、不動産屋さんの店舗にも早見表として掲示されています。「HOME’S」や「SUUMO」といった大手ポータルサイトにも掲載されていますので参考にしてください。
どちらの方法でも同じ結果になり金額に違いはありません。より計算が簡単でスムーズな速算式を利用するとよいでしょう。
売買金額(税抜) | 仲介手数料の上限額(税抜) |
売却額・購入額200万円以下の場合 | 売買金額の5% |
売却額・購入額200万円超400万円以下の場合 | 売買金額の4%+2万円 |
売却額・購入額400万円超の場合 | 売買金額の3%+6万円 |
(3)仲介手数料の相場
仲介手数料は上限額で請求されることが多いので、上限値で考えておくと予算内に収まるでしょう。
売却価格ごとの仲介手数料上限額は下の表にまとめましたので、ぜひ参照してみてください。仲介手数料の目安となります。なお、宅建業法上ではあくまでも売却価格に対する仲介手数料の上限額しか設けておらず、上限額を超えてなければいくらでも問題ありません。また、不動産業者が了承をしていれば売却金額がいくらであってもゼロ円でも大丈夫です。
また、仲介業者が複数社いたとしても売り手や買い手が支払う仲介手数料はここで計算した上限額を超えることはありません。受領した仲介手数料は仲介業者で山分けとなります。
売買金額(税抜) | 仲介手数料(税込) |
100万円 | 5万5,000円 |
200万円 | 11万円 |
300万円 | 15万4,000円 |
400万円 | 19万8,000円 |
500万円 | 23万1,000円 |
600万円 | 26万4,000円 |
700万円 | 29万7,000円 |
800万円 | 33万円 |
900万円 | 36万3,000円 |
1,000万円 | 39万6,000円 |
2,000万円 | 72万6,000円 |
3,000万円 | 105万6,000円 |
4,000万円 | 138万6,000円 |
5,000万円 | 171万6,000円 |
6,000万円 | 204万6,000円 |
7,000万円 | 237万6,000円 |
8,000万円 | 270万6,000円 |
9,000万円 | 303万6,000円 |
10,000万円 | 336万6,000円 |
不動産購入時の費用は仲介手数料の他にも手付金、登記費用、引越し費用などが必要です。売却金額によるものの、仲介手数料は特に金額が高くなります。
購入が決まってから慌てることがないよう、あらかじめ予算を確保しておきましょう。
なお、不動産購入時の諸経費に対して不安がある方は、事前に弊社ファイナンシャルプランナー(FP)に相談してみるといいでしょう。
また、弊社には16,000件の相談データを元に開発された、入力するだけで簡単に資産管理ができる「マネソル」(特許あり)というアプリがあります。
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仲介手数料は値引きできる?無料になるケースも?
(1)仲介手数料は値引きできる?
仲介手数料について法律で決められているのは上限額のみです。
仲介手数料の値引きや控除については法律で特に定められていないため、値引き交渉の可能性はあります。ただ、不動産業者にとって仲介手数料は大事な利益。積極的には値引き交渉に応じてくれません。不動産業者が折れて値引きや減額をしてくれるには条件があるのです。
(2)仲介手数料を値引きしやすい条件は?
仲介手数料の値引きや値下げは媒介契約締結のタイミングですべきです。不動産の売買契約時や引き渡しの直前で交渉するのはトラブルの元になります。
仲介手数料の値引き交渉をしたい場合は、不動産業者から一般媒介契約ではなく、専属専任媒介契約や専任媒介契約での契約を求めてくるでしょう。これらの契約は報告義務などが発生する代わりに、複数の仲介業者と契約できず一定期間囲い込みが可能です。こうした契約に応じる代わりに値引き交渉をすると可能性は高まるでしょう。仲介手数料は大事な利益なので、業者が納得できる妥当な条件がないと値引きには応じてくれません。
(3)仲介手数料が無料になるケース
①売主(個人)が不動産会社を通さずに販売する場合
仲介手数料は不動産会社の仲介業務や手続きに対しての報酬です。
そのため、売主(個人)が直接買主に販売する場合は仲介手数料がかかりません。
コストを抑えられるというメリットはありますが、間に不動産会社が入らないため、買主とトラブルになる可能性もあります。買主とトラブルになった場合は売主買主の当人同士で解決が必要となるリスクやデメリットもあります。
実際には不動産売買は契約書類の用意など手続きが複雑であるため、仲介業者を介さずに売主買主双方が個人間で売買する事例は限定的です。
②不動産会社が直接販売する物件
不動産会社が売り主となる場合があります。不動産会社が物件を直接、売主という業務形態で販売するような場合も仲介手数料は不要です。一戸建て住宅や新築マンション、不動産会社所有の中古物件を購入する場合がこのケースに該当します。
反対に買取業者である仲介会社に中古マンション売却をしたり、土地売却をしたりする場合も不要となります。
不動産会社が貸主となって賃貸物件を賃貸契約する場合も同様に不要です。
しかし物件を建設した不動産会社ではなく、別の不動産会社に販売を依頼するケースは仲介にあたり、仲介手数料がかかります。具体的には業務形態が「媒介(仲介)」となる場合は手数料がかかります。一般的には物件の販売図面に記載していますが、分からない場合は事前に担当者へ確認してみましょう。
③不動産会社がキャンペーン実施した場合
最近では不動産会社がキャンペーンで仲介手数料を無料としているケースもあります。
仲介手数料の下限額については決まりがないため、不動産会社の判断で無料とすることも可能です。
例えば売主と買主との間を不動産会社1社が仲介する場合、不動産会社は両方から仲介手数料を受け取ることができます。
不動産会社は売主からの手数料収入があるので、他社との差別化を図るなどの目的で、買主の手数料を無料としていることもあります。
インターネット上で「不動産購入 仲介手数料 無料 半額」などのキーワードで検索すると仲介手数料無料の物件を探すことができます。不動産ポータルサイトや一括査定サイトから探すことが可能です。
ただし、手数料が無料という理由だけで不動産会社を選ぶことは危険です。
その会社の実績や評判などから、安心して取引ができるか検討するようにしましょう。
仲介手数料を支払うタイミング、支払方法
(1)支払いのタイミングは会社によって異なる
不動産の購入は以下のような流れで進みます。
- ①物件見学
- ②購入の申込み
- ③売買契約の締結
- ④ローンの申込み
- ⑤物件引渡し
仲介手数料を支払うタイミングは、下記の2パターンが一般的です。
- ✅③売買契約締結時に一括で支払うケース
- ✅③売買契約の締結時および⑤物件引渡し時の2回に分けて半額ずつ支払うケース
不動産会社によって異なるため、事前に確認しておきましょう。
なお、①物件見学や②購入の申込みの段階で手数料が請求されることはありません。
仲介手数料は成功報酬であるため、売買契約成立前に費用を請求することは宅地建物取引業法で禁じられています。
もし仮に、売買契約締結前に手数料の支払いを求められたとしても、支払いに応じる必要はありません。
(2)一般的に現金払い、振り込みで対応しているケースも
支払方法は原則現金払いですが、最近では振り込みなどキャッシュレス決済に対応している不動産会社もあります。
100万円前後の大金を持ち歩くのは不安という方は、振り込みで対応できないか不動産会社に相談したり、問い合わせたりしてもよいでしょう。
現金払いの場合、ATMでは引出しの上限額が設定されていることがあるため、注意が必要です。
銀行窓口であれば引出し限度額はないので、平日の15時までに窓口へ行けば全額の引出しができます。
支払日当日になって現金が用意できないことにならないよう、余裕を持ったスケジュールを計画しておきましょう。
仲介手数料に含まれる作業内容とは
仲介手数料には不動産会社が物件売買を仲介する際に、発生する作業の費用が含まれます。
具体的に発生する作業の費用は売買契約の条件(値引き交渉を含む)の調整、書類の作成などの業務に対する費用などです。仲介業者は仲介手数料で人件費、交通費などの営業活動費や広告宣伝費などの広告活動費の費用を賄います。販売活動に付随する関連費用も含まれます。
仲介手数料に含まれる主な作業項目は以下の通りです。
(1)仲介手数料に含まれる作業内容
- ✅物件の紹介(レインズへの登録等含む)
- ✅契約条件の調整(値引き交渉を含む)
- ✅売買契約書の作成
- ✅重要事項説明
- ✅契約から引渡しまでに必要な事務処理
上記の作業に対して個別で費用請求される場合は、その会社から不動産を購入することを見直すといいでしょう。
(2)不動産購入に必要な費用である
一部の例外を除いて不動産購入に仲介手数料は、司法書士手数料や印紙代と並んで不可欠のものです。避けて通ることはできません。あらかじめ不動産購入の予算に組み込んでおきましょう。抵当権を設定する場合には別途費用がかかります。
また、引越し費用などの費用が見落としがちなので、きちんと予算に入れておきましょう。
仲介手数料でトラブルにならないようにするためのチェックポイント
仲介手数料に関するトラブルの多くは支払時期と金額です。お金に絡むことなので多くの注意点があります。以下のようなチェックポイントを確認しましょう。
- ✅仲介手数料はいつ支払うのか
- ✅契約が解除された場合の対応
- ✅仲介手数料値引きの場合の対応
仲介手数料の支払い時期は通常購入物件の決済時・引き渡し完了時に支払うのが基本。ですが、売買契約時に半額まで請求することも認められています。
契約時に仲介手数料を支払った場合に、さまざまな事情で契約解除された場合の、支払い済みの仲介手数料の半額をどう取り扱うかも問題です。
契約内容によっては返金されないこともあります。
さらに最近では仲介業者が手数料を受け取らない仲介手数料無料や半額、割引サービスを提供している仲介業者もいます。
どんな場合にこうしたメリットが得られるのか確認しましょう。
不動産購入はFPに相談
不動産の仲介手数料についてここまで解説してきました。不動産購入は大金の動く複雑な作業の連続です。あまり経験のない人だとトラブルになりやすいものです。
信頼できる仲介業者の営業担当や宅地建物取引士もアドバイスをしてくれるものの、どうしても利害が絡んでしまうもの。そこで仲介業者と同じくらい不動産購入に詳しいFPに相談することをおすすめします。
弊社は累計2万件以上の不動産の相談を受けています。FPに不動産購入でどんなことが相談できるかについて知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
不動産購入で不安な方は、ぜひ気軽に相談してみてください。
まとめ
今回は不動産購入時の仲介手数料の相場や計算方法、上限額について解説しました。
これから物件を購入される方は、物件価格から仲介手数料として支払う金額を事前に見積もっておきましょう。
出費を少しでも抑えたい方は、仲介手数料の値引きや無料のキャンペーンをしている会社を検討してみてもよいでしょう。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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