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アパート経営は個人事業主がお得?FPがメリットと注意点を解説!

公開日:2023/10/19
不動産

土地活用や相続対策に有効なアパートやマンションの経営には、確定申告や税金面での悩みも多いでしょう。

個人事業主としてアパート経営をおこなうとさまざまなメリットが受けられますが、「個人事業主=起業、大変そう」といったイメージを持つ方も多いかもしれません。

本記事では、アパート経営を個人事業主としておこなう5つのメリットや、個人事業主になる手続きや注意点を徹底解説します。

さらに、法人化を検討するタイミングやアパート経営の相談先もご紹介しますので、アパート・マンション経営の基礎知識を知りたい方はぜひチェックしてください。

アパート経営を個人事業主で行うには?

大家

アパート経営やマンション経営のような不動産収入がある場合、個人事業主としての開業が可能です。

個人事業主とは会社に属さず個人で事業を営む人を指します。

会社員であっても個人事業主になれるので、最近ではサラリーマンが個人事業主として副業で不動産投資をおこなうケースも増加しています。

開業せずにアパート経営をおこなうことも可能ですが、確定申告時に白色申告しか選択できずに税制面での優遇が受けられません。

特に、賃貸経営が拡大して「事業的規模」とみなされると、青色申告による減税効果が大きくアップします。

事業的規模の目安としていわれているのが、一戸建てなら5棟、アパート・マンションなら10室以上の保有数を指す「5棟10室基準」です。

この基準に満たない事業規模でも、個人事業主としてのアパート経営には複数のメリットがあるため、開業を検討する価値は十分にあるでしょう。

個人事業主としてアパート経営する5つのメリット

アパートやマンションの経営を個人事業主としておこなうと、青色申告による経費計上や特別控除などの優遇措置が受けられます。

税金対策にも効果のあるメリットを5点詳しく解説していきます。

(1)計上できる経費が増える

個人事業主になると青色申告が可能となり、認められる必要経費の種類が増える点がメリットのひとつです。

計上できる経費の種類が増える分帳簿上の所得を減らしやすくなるため、節税効果が高まります。

特に、滞納家賃を経費計上できる点や、30万円未満の備品を購入した年に一括で計上か減価償却するかを選択できる点などが、白色申告との違いです。

出典「青色申告個人事業者なら、30万円未満の備品代等を経費計上できます!」

出典「不動産所得は青色申告にしたほうが良い?白色申告との違いも解説」

賃貸経営で認められる主な経費は以下のとおりです

  1. ✅建物の減価償却費
  2. ✅物件を維持するための修繕費
  3. ✅不動産管理会社に管理を任せるための管理委託料
  4. ✅固定資産税や都市計画税などの賃貸不動産にかかる租税公課
  5. ✅不動産購入時のローンの金利部分
  6. ✅不動産購入時の不動産取得税、登録免許税、印紙税、仲介手数料など
  7. ✅入居者募集のための広告宣伝費
  8. ✅不動産物件の情報収集のための通信費
  9. ✅火災保険料や地震保険料などの損害保険料

アパート・マンション経営の費用で理解しておきたいポイントが、減価償却費です。

物件購入費用を法定耐用年数に分割して費用計上でき、数年に渡って会計上の利益を抑えられるメリットがあります。

建物本体や設備や器具も減価償却が可能で、それぞれに定められた耐用年数ごとに償却率が決まっています。

そのほか、接待交際費として取引先との打ち合わせ時の食事代、交通費として物件の下見に行った際のガソリン代なども経費計上が可能です。

領収書やレシートをしっかり保管し、漏れのない適切な経費の計上が大切です。

(2)青色申告を選択ができる

青色申告を選択すると、最大65万円の控除ができる「青色申告特別控除」が受けられます。

青色申告特別控除で65万円の控除を受けるには、以下の条件を満たさなければなりません。

  1. ✅不動産経営が事業的規模(賃貸できる戸数が5棟もしくは10室以上)
  2. ✅複式簿記にて貸借対照表や損益計算書などの提出
  3. ✅e‐Tax(電子申告)での提出もしくは電子帳簿での保存

e-Taxや電子帳簿ができない場合は、控除額が55万円になります。

事業的規模に満たない場合でも、記帳方法が比較的簡単な簡易簿記による青色申告がおこなえるため、10万円の控除が適用されます。

課税所得額から大幅な控除ができる青色申告を選択できるのが、個人事業主の大きなメリットといえるでしょう。

(3)配偶者の給与が経費になる

個人事業主での青色申告は、生計をともにする家族や親族に支払った給与を経費計上できる「青色事業専従者給与」が利用できます。

そのため、所得を給料として家族に分配でき、支払った給与の経費計上により所得額をマイナスさせて税制上で有利に働きます。

ただし、制度を利用するには事前に「青色専従者給与に関する届出書」を提出しなければなりません。

また、実際には働いていない人への給与や過度な金額の支給である場合は、認められない可能性が高いため注意が必要です。

(4)繰越控除ができる

アパート・マンション経営で赤字が出た場合、青色申告をおこなえば翌年以降3年間に渡って赤字額を繰り越しできます。

今年度で赤字になった額を翌年の所得と相殺し、それでも差し引きできなかった分は、さらに2年後、3年後の黒字との相殺が可能です。

白色申告では赤字の繰越ができないため、どれだけ損失が多くても翌年は所得に応じて課税されてしまいます。

また、会社からの給与所得など不動産投資以外での収益がある場合は、アパート経営で出た赤字分をほかの所得から差し引く損益通算がおこなえます。

物件の建築や購入で支出が重なる初年度の赤字を、翌年以降の所得や本業での課税額を減らすのに活用できる点がアパート経営のメリットです。

(5)小規模は税率が低い

事業の規模が小さく所得額も少なければ、所得税の税率も低く設定されています。

所得税は所得が上がるほど税負担が大きくなる超過累進課税制度が採用されており、5%~45%の範囲で7段階に区分されています。

例えば、課税所得金額が300万円のときの所得税率は10%です。

所得税率10%時の控除額97,500円を差し引くと、納める所得税額は202,500円になります。

アパート経営で個人事業主になる手続き

手続き

個人事業主になるための手続きは簡単で、必要書類は3点です。

税務署への開業届と青色申告承認申請書の提出を済ませば、翌年の3月には青色申告で確定申告をおこなえます。

(1)開業届を提出

管轄の税務署に開業届を提出すれば、誰でも簡単に個人事業主として開業できます。

申請費用も無料で、簡単な書類に記入するだけで届け出が完了します。

また、国税庁の電子納税システムの「e-Tax」や、会計ソフトなどの業務システムを提供するfreee株式会社による「freee開業」などを使えば、さらに手軽に開業届が準備できるでしょう。

開業届の提出は、業務を開始した日から1か月以内に提出するのが原則ですが、現実的には開業日が提出日より1か月以上前であっても問題なく受理されます。

(2)青色申告承認申請書を提出

確定申告時に青色申告を選択するには、「青色申告承認申請書」の提出が必要です。

開業した年から青色申告をするには、開業届の提出から2か月以内に青色申告承認申請書を出さなければなりません。

青色申告承認申請書を提出したところで必ずしも青色申告をおこなう必要はないため、確定申告の予定がわからなくても、開業届と一緒に提出しておくのがおすすめです。

また、家族に給与を支払う予定であれば「青色事業専従者給与に関する届出書」も提出しておきましょう。

(3)個人事業開始等申告書を提出

開業届や青色申告承認申請書が税務署に提出するのに対し、各都道府県税事務局へ提出するのが「個人事業開始等申告書」です。

個人事業主は所得税などの国税以外にも、地方税である個人事業税が課税されるケースがあるため、都道府県税事務所への届け出が求められます。

各都道府県により提出先や提出期限に違いがあるため、お住まいの都道府県の提出方法を確認しておきましょう。

アパート経営で個人事業主になる時の注意点


アパートやマンションの経営を個人事業主としておこなうと、その規模が事業的規模であれば不動産貸付業として「個人事業税」が課せられる点に注意が必要です。

賃貸経営が事業的規模であるかどうかは、保有賃貸物件数が一戸建て10棟、もしくはアパート10室の「10棟10室」の基準により判断されます。

個人事業税の計算式は下記のとおりです。

個人事業税=(所得金額ー事業主控除額290万円)× 税率5%

算出するときの所得金額は青色申告特別控除を適用する前の金額で、所得金額が290万円以下であれば個人事業税はかかりません。

確定申告をおこなうと自動的に都道府県から納税通知書(納付書)が届き、納付した個人事業税は経費に計上可能です。

個人事業主と法人どっちがいい?

オフィス

さまざまなメリットがある個人事業主ですが、アパート・マンション経営を「法人」としておこなう選択肢もあります。

賃料収入が増えてきて所得税率が33%になるタイミングを迎えると、法人化による減税効果が期待できるでしょう。

(1)法人化のメリット

法人化する最大のメリットは、所得が一定額を超えていれば個人事業主より納税額を減らせる点です。

個人事業主に課せられる所得税・住民税に対して、法人には法人税や法人住民税などが課されます。

中小法人が実質的に負担する実効税率は自治体によって異なりますが、通常は33%前後であるケースが多いです。

一方で個人事業主は、個人の課税所得額が900万円を超えると所得税率が33%となり、一律10%課税される住民税と合わせると43%の税率になります。

中小法人の実効税率よりも10%も税率が高くなるため、課税所得額900万円のラインが法人化を検討する目安のひとつといえます。

課税所得額が900万円を超えるかどうかは、アパート経営での不動産所得だけでなく、会社からの給与所得やほかの事業所得も含めた金額で判断されるため注意しましょう。

ほかにも、自身への給与である役員報酬が経費計上できる、経費の範囲が広がる、損失が10年間にわたり繰り越しできるなど、法人化には幅広いメリットがあります。

(2)法人化のデメリット

アパートやマンションの経営事業を法人化するには、法人設立の手続きにそれなりの費用と手間がかかります。

自分で設立登記をしたとしても、法定費用だけで20万円以上必要です。

個人で所有していた不動産を法人名義に移す際には、不動産取得税と登記費用もかかります。

また、法人には従業員の社会保険への加入義務があるため、保険料の負担が発生します。

複雑化する会計処理を委託する税理士への報酬も必要となるでしょう。

法人化したあとに売上が落ちたなどの理由で個人事業主に戻るにしても、会社の解散や清算に手間や費用がかかる点も懸念材料です。

法人設立の初期費用や維持するためのランニングコストも全て把握したうえで、法人化した場合の収支計画を立てて慎重に判断する必要があります。

また実際に不動産投資をする時のリスクもあります。より詳しく知りたい方は下記記事を参照にしてみてください。

なお、動画でも解説していますので、ぜひ合わせてチェックしてみてください。

不安な方はFPに相談

相談

アパートやマンションの経営をおこなううえで、判断に迷うときにはFP(ファイナンシャルプランナー)相談しましょう。

お金の専門家であるFPは、アパート経営に関する資産計画だけでなく、融資、税金、保険、相続などに幅広い知識を持っています。

アパート経営の相談先としてもっとも一般的なのは、不動産会社やハウスメーカーです。

不動産や建物のプロであることから、アパート経営の実務面での相談には適任でしょう。

ただし、不動産会社やハウスメーカーはアパート経営に自分たちの利益も関わってくるために、どうしてもセールスが含まれたアドバイスになってしまいがちです。

それに対してFPであれば、利害関係のない中立な立場から、依頼者にとってよりリスクの少ない資金計画を提案してくれるでしょう。アパート経営に限らず、ライフプランや資産形成全般の相談ができるのがFPのメリットです。

弊社では不動産投資の相談実績も数多くありますので、ご興味がある方は相談事例もチェックしてみてください。

まとめ

収入

保有するアパートやマンションから家賃収入を得るアパート経営は、個人事業主になると経費計上できる範囲が増え、節税に効果的な青色申告を選択できるメリットを享受できます。

所得が900万円を超えてくると、個人事業主より法人のほうが税負担は小さくなる傾向です。

ただし、法人設立費用や法人を維持するためのコストがかかるため、費用をシミュレーションしたうえで慎重に判断する必要があります。

著者

代表取締役 田中佑輝
代表取締役 田中佑輝株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ
AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。

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