不動産投資に必要な年収はいくら?融資の審査基準や対策も合せて解説
- ☑「不動産投資で資産形成をしたいけれど、年収額が足りるか不安」
- ☑「気になる収益物件があるけれど、融資のハードルが高そう」
不動産投資ローンの審査基準が分からず、このような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
ローンの審査基準は金融機関によって異なりますが、一定の共通した基準があります。
基準を満たさない場合でも、効果的な対策をとることで、融資審査を通過できる可能性もあります。
本記事では、不動産投資に必要な年収についてご説明しつつ、融資の審査基準や対策も徹底解説いたします。
ローンや資金面で不安があり、不動産投資に踏み出せないという方は、ぜひ参考にしてみてください。
不動産投資に必要な年収は500万円が一つの目安?
不動産投資は、マンションやアパートを購入して、他人に貸すことで家賃収入を得る投資方法です。
不動産物件は高額であるため、ローンを組んで購入する人が多いでしょう。
金融機関によっても異なりますが、不動産投資ローンを組むのに必要な平均的な年収は700万円前後です。
ただし年収500万円程度であっても、ローン審査上のプラス要素があるか、ネット銀行やノンバンクの利用を検討すれば、融資を受けられる可能性があります。
なおメガバンクや都市銀行と比べて、日本政策金融公庫など政府から出資がある金融機関は、比較的ローンを借りやすい傾向にあります。
不動産投資に必要な年収は、500万円がひとつの目安と認識しておきましょう。
不動産投資の審査基準は?
ではローンを組む時に、どのような項目が重視されるのでしょうか。
ここでは不動産投資ローンの審査基準について解説します。
しっかり内容を理解した上で、ローン審査に臨みましょう。
(1)年収、勤務先の与信
ローン審査の中でも特に重視されるのが、年収や勤務先の与信です。
「収入に安定性があり、問題なくローンが返済できるか」「勤務先の業績悪化によって収入が減少しないか」という目線で審査されます。
雇用が安定しているため、上場企業に勤めるサラリーマンや公務員の人は有利です。
反対に非上場企業の会社員や個人事業主・自営業者などの職業は、信用力が低く、不利になる傾向があります。
(2)貯金、株などの資産状況
銀行に預けている貯金、株などの資産状況なども審査対象です。
もしローン返済が難しくなったときに、他の資産から返済可能かどうか判断されるため、換金性が高い資産であるほど評価されます。
年収や属性に不安のある人は、ローン審査が通る可能性を上げるために、保有資産と資産額を把握しておきましょう。
(3)配偶者、実家などの家族構成
単身者と比べて、配偶者がいる人や実家暮らしの人も審査で優遇されます。
仮にローンの返済が難しくなっても、配偶者を連帯保証人に設定することで、金融機関が残債を回収しやすくなるためです。
配偶者が働いている場合は、世帯年収で審査を受けることも可能です。
なお、実家暮らしの人は、毎月家賃の支払いや住宅ローンの返済がないため、融資を受けやすくなります。
年収が低くても、実家に帰って家賃の支払いを抑えられれば、審査に通過する可能性が上がるでしょう。
(4)車のローンなど現在の借入れ状況
車のローンなど、他の借入れ状況の有無もポイントです。
いくら年収が高くても、他の借入れが多いと審査に通らない可能性があります。
なぜなら、年収に対しての返済割合が高いと、ローンが返済できなくなるリスクがあるためです。
既に高額な借入れがある場合は、残りの支払いが少なくなってからローン審査を申し込むなど、タイミングを検討しましょう。
(5)クレジットカードの返済など個人の与信
クレジットカードの返済など、本人の与信状況も重要な審査基準です。
過去にクレジットカードで滞納していると、履歴として残り、ローン審査で不利になります。
一般的に過去5年間の返済履歴が見られるため、これまでにクレジットカードの返済を滞納したことのある人は注意しましょう。
(6)対象不動産の資産価値、収益力
一般的に不動産投資では、家賃収入がローンの返済原資に充てられます。
そのため、対象物件の資産価値や収益力も審査時に重視されるポイントです。
物件の資産価値は、立地やエリア、耐用年数、駅までの距離などの要素で決まります。
また、収益力は投資用不動産の入居率によって決まります。
基本的に、入居者から人気の高い物件を選ぶとよいでしょう。
(7)不動産投資の実績の有無
不動産投資の実績の有無についても、審査対象になります。
過去に不動産投資を経験しており、安定的に利益が出ていれば、審査で有利になることがあります。
反対に不動産投資が初めての人や不動産投資で利益が出ていない人は、不利になる可能性もあるでしょう。
不動産投資家としての実績があると、ローンの金利も低くなりやすいというメリットもあります。
属性を上げるための3つのポイント
次に属性を上げるための3つのポイントについて、お伝えします。
(1)他にローンを抱えている場合は見直しをする
他にローンを抱えている場合は、契約を見直すことで属性が上がる可能性があります。
以下のような方法でローンを見直し、借入状況を改善しましょう。
- ☑繰上げ返済で完済する
- ☑一部を繰上げ返済して、残債を減らす
- ☑ローンを借り換えて、返済額を減らす
ローンの借り換えについては、インターネットで手軽にシミュレーションができるサービスもあるので、利用してみてください。
生活に支障が出ないように、負担のない範囲で借り入れを見直しましょう。
(2)クレジットカードの解約、限度額の引き下げ
属性を上げるには、クレジットカードの解約や限度額の引き下げも有効です。
滞納歴がなくても、クレジットカードのキャッシング枠があると属性が下がるリスクがあります。
不要なカードは解約することを検討しましょう。
また、クレジットカードの限度額が高いと、その分、借り入れてしまう可能性もあるため、限度額の引き下げも効果的です。
(3)不安定な副業収入をアピールしない
ローンの審査で重視されるのは「安定収入があり、返済が滞らないか」という点です。
年収面での評価を上げるために副業収入をアピールしても、安定した収入とは見なされず、評価につながりにくいでしょう。
将来的に副業を本業にして、独立しようと考えている場合も、ローン審査では不利になります。
もし独立を考えているなら、企業に勤めているうちにローンを組むことをおすすめします。
属性が低い、融資に不利な場合の対策
属性を上げることが難しくても、審査に通りやすい金融機関を選んだり、頭金を増やしたりすることで、融資を受けられる可能性もあります。
ここでは属性が低く、融資に不利な場合の対策について紹介します。
(1)金融公庫の不動産投資ローンを検討する
日本政策金融公庫とは日本政府が出資する金融機関で、民間金融機関よりもローンの審査が通りやすい特徴があります。
融資期間は原則10年と短いですが、金利は固定で1%~2%程度と低めです。
審査基準をクリアできるか不安な人は、日本政策金融公庫の利用を検討してみるとよいでしょう。
ただし政府が出資する金融機関であるため、公共サービスの料金や税金の未払いがあると、融資を受けられない可能性もあります。
また審査の際は事業性が重視されるため、不動産投資事業の見通しなどが確認されます。事前にプランを準備しておきましょう。
(2)不動産投資会社の提携ローンを利用する
不動産投資会社は、特定の金融機関と提携していることが多いです。
個人で申し込むよりも、不動産投資会社からの紹介であれば、融資が通りやすくなることも期待できます。
審査に通るか心配な場合は、金融機関を紹介してもらえないか、不動産投資会社に相談してみましょう。
(3)自己資金を増やす
自己資金を増やすと、ローンで借入れる金額が少なくなるため、融資を受けやすくなります。
一般的には物件価格の2割~3割以上の頭金を用意すれば、審査で有利になることが多いようです。
収入に不安がある人は、自己資金を増やすことを意識しましょう。
(4)FPなどの専門家に相談する
我々FPなどの専門家に相談するのも、手段の一つです。
FPは豊富な金融知識を持つ、お金や住まいの総合的なアドバイザーのことです。
一人ひとりの属性や収支状況を把握した上で、ローン審査を通過しやすくなる最善の選択肢を提案させて頂きます。
「不動産投資にチャレンジしたいけれど、ローンに通るか不安」と悩んでいる人は、まずは気軽にFPに相談してみることをおすすめします。
実際に弊社にあった不動産投資の相談事例を紹介しています。ご興味がある方はぜひチェックしてみてください。
不動産投資ローンを借りる時の流れ
それでは不動産投資ローンを借りる時の流れについて、見ていきましょう。
(1)投資物件を決めて、買付書を提出する
まずは不動産会社に問い合わせて、物件情報を提供してもらいます。
購入したい物件が見つかりましたら、現地を訪問して、部屋を自分で確認することが大切です。
不動産投資で成功するコツは、好条件の物件を選ぶことであるため、積極的に複数物件を比較しましょう。
周辺の同じスペックの物件と比較して、物件価格が相場より高くないか確認しておくことも大切です。
購入希望物件が決まったら、売主に買付書を提出します。
(2)仮審査の申し込み
買付書を提出したら、金融機関に融資の仮審査を申し込みましょう。
融資の条件は金融機関によって異なるので、複数の金融機関に申し込むとよいでしょう。
仮審査は3日~4日ほどで結果が出ます。
一般的な審査で必要となる書類は次のとおりです。
- ☑源泉徴収票または確定申告書
- ☑身分証明書
- ☑購入予定の物件に関する資料
仮審査はあくまで金融機関からの仮回答であるため、この後の本審査を経て、ローン契約の締結が正式に決定します。
(3)不動産売買契約書を締結する
仮審査を通過したら、不動産売買契約書を締結し、物件購入手続きを行います。
具体的には、宅地建物取引士から重要事項説明を受け、書類に署名・捺印します。
この時、不動産売買契約に「融資特約」が付いているかを、必ず確認しましょう。
融資特約とは、ローンの本審査に通らなければ、契約を破棄できる仕組みです。
万が一、本審査に通過できなかった場合も想定して、融資特約を付ける方が安心です。
(4)本審査の申し込み
仮審査に通過後、不動産売買契約を締結したら、本審査へと移ります。
本審査は金融機関の本店やローン保証会社が行うため、結果が出るまでに2週間~1ヶ月程度の時間がかかります。
審査の必要書類は、次のようなものがあります。
- ☑源泉徴収票または確定申告書
- ☑身分証明書
- ☑住民票
- ☑印鑑証明書
- ☑購入予定の物件に関する資料
ただし注意点として、仮審査に通っても、必ず本審査を通過できる訳ではないことを覚えておきましょう。
(5)金銭消費貸借契約の締結、融資実行
本審査に通過したら、金銭消費貸借契約を締結し、ローン契約の手続きが完了します。
金融機関の担当者から、金利・借入期間など融資条件に関する説明を受けて、書類に署名・捺印をします。
ローンの融資額は、物件引渡し日に口座に振り込まれることが一般的です。その借入額を不動産投資会社に支払い、借入れ開始となります。
本当に年収が低い人は不動産投資をすべきではない
年収の低い人でも対策を講じることで、融資を受けられるようになるケースもあります。
しかし、年収が低い人が無理して不動産投資をすることは、おすすめできません。
なぜなら不動産投資は、空室時の家賃の支払い、設備が壊れた時の修繕費、税金の支払いなど、購入後もさまざまな経費が発生するためです。
年収が低いと上記のような諸費用に対応できず、キャッシュフローが悪化し、不動産投資で失敗してしまうリスクが高くなります。
最悪の場合、自己破産に追い込まれる恐れもあるでしょう。
本当に年収が低い人は、株式投資など不動産投資以外の投資手法も視野にいれるのが現実的です。
まとめ
不動産投資ローンの審査に通りやすい基準は、一般的に年収700万円と言われています。
しかし年収700万円未満でも、属性が高い人は年収500万円程度で融資を受けられる可能性は十分あります。
不動産投資ローンの審査では、年収や勤務先、預貯金、他の借入れの有無などが重視されます。
もし審査の基準未満でも、他の借入れの見直しやクレジットカードの解約・限度額の引き下げなどによって、審査通過の可能性を上げることは可能です。
審査通過が難しそうな場合は、次のような対策をとりましょう。
- ☑金融公庫の不動産投資ローンを検討する
- ☑不動産投資会社の提携ローンを利用する
- ☑自己資金を増やす
- ☑FPなどの専門家に相談する
我々FPは住まいとお金のプロであるため、投資用物件選びやローンに関して、最適なアドバイスをさせて頂きます。
特に初心者にとって、不動産経営は難易度が高いため、専門家のサポートを得ながらスタートすることをおすすめします。
この記事を参考にして、不動産投資で不労所得の実現を目指しましょう。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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