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不動産投資の頭金は2割が相場?失敗しないポイントも解説

公開日:2023/06/30
不動産

「不動産投資を始めて大家さんになってみたいけど、頭金は必ず用意しないと始められないのかな?」

将来の資産形成や年金対策として、会社員やサラリーマンから不動産投資家を目指して不動産投資を検討する人が増えてきています。

不動産投資では、多くの人が融資を利用しますが、フルローンではなく自己資金として頭金を求められるケースも少なくありません。

実際、どの程度の頭金が不動産投資の相場になるのでしょうか?

今回は、不動産投資をする際には本当に頭金が必要なのか、頭金の相場や失敗しない資金計画のポイントについて解説していきます。

不動産投資における頭金の目安は2割前後?

相場

不動産投資において、多くの場合、融資をする金融機関から頭金の準備を求められます。

購入する物件や融資を受ける投資家の属人性によって変わりますが、頭金の目安は物件価格の10%から20%の割合が妥当といわれています。

融資をする金融機関からすると、返済が滞ってしまうリスクを避けるためにも、物件評価に対して全額の融資をするのではなく、いくらかの頭金を融資時に出してほしいと求めるケースも少なくありません。

不動産投資で頭金を入れるメリット・デメリット

不動産投資の頭金が10%から20%だとしても、物件価格が2,000万円であれば200万円から400万円前後の頭金を支払う必要があります。

大きな金額を支払うわけですから、自己資金を出して不動産投資を行うメリット・デメリットについて、しっかりと理解しておきましょう。

(1)不動産投資で頭金を入れるメリット

不動産投資で頭金を入れるメリットは大きく3つあります。

審査が通りやすい

融資を実行する金融機関の立場からすると、頭金を全く準備できない投資家よりも、自己資金があり、十分な頭金を支払うことができる投資家のほうが返済能力が高いと考えるのが一般的です。

年収や勤続年数など判断材料は多数ありますが、十分な自己資金を準備できているということで融資審査が通りやすくなるのは明確なメリットといえるでしょう。

月々の返済額が少ない

頭金の額が多いほど、金融機関からの融資額を減らすことができます。

融資額が減れば、利息や毎月の返済額を効果的に抑えられます。

不動産投資において、毎月の家賃収入から管理費や修繕積立金、固定資産税やローン返済など全ての支出を差し引いてどれだけ利益を残せるかがポイントになります。

頭金を支払うことで返済期間や毎月の返済金額を短くすることができれば、安定的に利益を確保できる可能性が高まります。

万が一金利が上昇しても対処しやすい

万が一金利が上昇してしまうと、融資額に加算される利息も増えます。

頭金を支払うことで融資額を抑えておくことができれば、金利上昇の際に加算される利息も減らすことができます。

不動産投資は中長期に渡って融資を返済していきますので、今後の金利変動リスクの対策として安心できるように、頭金を一定額支払っておくのはメリットといえるでしょう。

(2)不動産投資で頭金を入れるデメリット

不動産投資で頭金を入れることでデメリットもあります。

本来、不動産投資の強みは、金融機関からの融資を受けることで自己資金を温存し、レバレッジを活かして収益を最大化できることにあります。

しかし、頭金の準備に時間がかかってしまうと、不動産投資を始めるのが遅くなり、投資の強みである複利効果を活かせる期間が短くなってしまいます。

もちろん、頭金とは別に不動産投資を始めるための初期費用にも資金を投入する必要があることも考えると、現金が十分に準備できるまで不動産投資ができないのは痛手といえます。

レバレッジ効果や時間による長期投資の強みが小さくなってしまうことが頭金を準備するデメリットといえるでしょう。

頭金ゼロで始める不動産投資のメリット・デメリット

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不動産投資で頭金を入れることで融資審査や金利上昇リスクにメリットはあるものの、頭金ゼロで始められるケースもあり、頭金ゼロによるメリット・デメリットもあります。

(1)金融機関の審査に通るためのポイント

前提として、頭金ゼロで不動産投資の融資審査を通過するのは難易度が高いです。

フルローンを組める基準以上の属性が投資家にあるかはもちろん、融資対象の物件の担保評価も重要となってきます。

その上で、過去に不動産投資の実績があり、返済が滞ることなく支払いができているかなど、多くの条件に通過する必要があります。

(2)フルローンを利用した物件購入のメリットとデメリット

不動産投資ローンを活用してフルローンで始めた場合、仲介手数料や司法書士報酬などの諸費用の支払いを除いて、手持ち資金を残しておけることで、万が一、出費がかさんでしまった際や、急なリフォーム、リノベーションなどの支払いに充てることができます。

また、頭金を準備する期間を短縮して不動産投資をスタートすることで、団体信用生命保険に加入して生命保険にかわる資産を持つことや、早期返済後の出口戦略を若いうちに考えられるなど有利な点もあります。

一方で、借り入れが増えてしまうことにより、毎月のローン支払いや利息合計額は増えてしまいますので、想定外の自体で赤字になってしまう可能性が高まります。

また、融資とはいえ借金ですので、高額な借金をすることで過剰に不安になってしまうようであれば、余裕のない事業計画かもしれません。

さらに、不動産の資産価値が下がってしまった際に、物件を売却しても残債を返せないオーバーローンになってしまう可能性も高くなりますので、頭金ゼロの注意点は少なくないといえるでしょう。

(3)金利上昇の影響が大きいリスク

自己資金ゼロで始められるフルローンの場合、融資合計額が大きくなりますので、金利上昇の影響がより大きくなります。

仮に、収支がトントンの利回り設定で不動産投資を始めたとすると、金利上昇で毎月の返済額が増加すれば、すぐにキャッシュフローがマイナスになってしまう可能性もあります。

また、マンション投資であれば、管理費や修繕積立金などの、マンション特有の支出も連動して上がってしまうかもしれません。

融資額が大きくなることで、収益物件に対する総支払額の増加、金利上昇によるリスクも高くなることをシミュレーションした上で、頭金をどうするか決める必要があります。

頭金の目安と自己資金の準備方法

不動産投資の頭金の目安と自己資金の準備方法については、購入を検討している投資家の状況によって大きく異なります。

(1)年収や物件価格に基づく目安の算出

住宅ローンはマイホーム購入のため、購入者の年収による影響を大きく受けます。

一方、不動産投資の場合、年収も融資額や頭金を決める目安にはなりますが、物件評価や想定される見込み賃料収入といった投資効率がどうかも影響があります。

結果として、年収の10倍近い融資を受けられるケースもあり、不動産投資の事業を拡大していくこともできます。

頭金については、年収はもちろん、物件評価、その他、様々な要因が考慮されて算出するべき重要な数値といっていいでしょう。

(2)借入れできる金額は返済できる金額ではない

仮に借入限度額を金融機関から提示されたとしても、全額を借りるのが適正であるかどうかは見極めなくてはなりません。

なぜなら、投資家の状況によってはローン返済額が大きすぎ、購入可能であったとしても、借入額の返済が可能とはいえないケースもでてくるからです。

具体的には、勤務先の規模や今後の昇進昇格状況、配偶者や子供の有無、現金資産がどれくらいあるかによって、許容できるリスクは増減してしまいます。

提示された上限で可能な限り借りるのではなく、適正な融資額はいくらかをきちんと検討した上で融資を実行していきましょう。

失敗しないために注意すべきポイント

注意

続いて、不動産投資に失敗しないために、注意すべき3つのポイントを解説していきます。

(1)融資限度額をフルに利用しない

前提として、不動産投資において融資限度額とは借りられる限度額であって、返済できる限度額という意味ではありません。

融資限度額いっぱいにローンを組むということは、返済額や返済期限も審査ギリギリの条件で進めるということになります。

不動産投資は中長期が前提な投資になりますので、ちょっとした変化でお金が不足してしまい、支払いができなくなってしまっては元も子もありません。

融資限度額は一つの目安として、その中でどのくらいの融資が適正であるかを考えて、計画的に利用していく必要があるでしょう。

(2)フルローンが出ない物件はやめる

金融機関が融資限度額を決める基準として、投資家の属人性に加え、投資対象の物件評価があります。

優良物件であれば、投資家の審査が少し厳しかったとしても、フルローンを組める可能性が高いです。

逆に、属性が良いにもかかわらずフルローンが出ないということは、プロである金融機関からみてフルローンに値しない物件と判断されている可能性があります。

もちろん、中古マンションで魅力的な物件であるにも関わらず、築年数からローン審査が厳しくなっているということもあるでしょう。

資産価値を正しく見極めて物件選びをする必要はありますが、金融機関が融資をしたいと思ってくれるような物件でないのなら、無理せずに他の物件を改めて比較検討しておくほうが良いでしょう。

(3)FPなどの専門家にセカンドオピニオン

不動産投資を始める前に、担当の不動産会社だけでなく、外部の専門家からアドバイスを貰うのも良いでしょう。

利害関係のない第三者の意見を気軽に聞くことで、思わぬ問題やリスクに気づくことができるかもしれません。

例えば、信用できるFP相談することで不動産購入と他の資産運用を比較検討して最適な選択肢を提案してくれたり、豊富な知識から、少額から始められる投資やライフプランについて理解を深めることができるかもしれません。

その上で、第三者からも悪くない事業計画であると太鼓判を押してもらえるくらい投資先を選んだ理由やプランが厳選されているようであれば、収益性の高い投資物件である可能性が高く、結果としてうまくいく可能性も高いといえるでしょう。

他に注意すべき不動産投資のリスク

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その他、不動産投資を行う上で注意すべきリスクについても理解を深めておきましょう。

(1)空室リスク

せっかく不動産投資を始めても、入居者が決まらなければ家賃収入を得ることはできません。

融資を活用して担保価値の高い投資用不動産を保有していたとしても、家賃収入が入らない期間は手元の資金を利用して返済をしていかなくてはならないです。

不動産投資を始める前は、確実に満室になるという想定で過度にプラスに事業計算してしまう投資家が少なくありません。

どんなに価値の高い水準のエリアであったとしても、空室になるリスクがあるということを忘れないようにしましょう。

(2)家賃下落リスク

投資した不動産の築年数が経過するにつれて、物件の建物評価は基本的には下落していきます。

例えば、将来性のある首都圏の好立地であっても、新築物件のワンルームマンションを保有したとして、老後の年金の足しとして活用する際には新築時と同じ賃料を設定できるかというと疑問です。

さらに、周辺に新しい賃貸物件が建設されるなど、突発的に対象物件の評価が減少してしまい、期待よりも大幅に入居率が下がってしまうというさまざまな事例もあります。

結果として、不動産投資を始めた頃よりも家賃を下げなくては入居者が見つからないということも考えられます。

(3)家賃滞納リスク

無事に入居者が決まったとしても、家賃を必ず支払ってくれるわけではありません。

様々な事情で生活環境が悪化して手元資金がなくなり、家賃が支払えなくなってしまったという入居者もゼロではありませんので、もしかしたら家賃滞納が続いてしまう入居者にあたってしまうかもしれません。

家賃滞納に備えて、入居審査を厳しくしたり、保証会社を利用したり、さらには自身で万が一の際の準備金を用意しておくなどリスクヘッジの意識を持ち、家賃滞納リスクに備えて賃貸経営をしていくことも大切です。

不動産投資のリスクや回避策について、詳しくは下記記事を参照にしてみてください。

まとめ

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不動産投資を始める際に、頭金を利用することで発生するそれぞれのメリット、デメリットについて解説してきました。

確かに、不動産投資を始めるには頭金を含め、余剰資金がある方が有利かもしれませんが、そのために、不動産投資を始めるタイミングを見逃してしまっては元も子もありません。

融資というレバレッジ効果を高め、中長期的に運用できるのが不動産投資の強みですので、今の不動産業界の市況で不動産投資を始められる適切な状況かどうか、慎重に見極めながらも、自分なりに情報収集して不動産投資への疑問を解消した上で、さらに理解を深めてみてください。

著者

代表取締役 田中佑輝
代表取締役 田中佑輝株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ
AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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