つなぎ融資とは?FPが利用するメリット・デメリットや回避方法を解説
不動産買い替えや住み替えの際、資金繰りの問題を解消するのに役立つ「つなぎ融資」。
人生に何度もある出来事ではないので、自分がつなぎ融資に頼るべき状況なのかどうか、判断が難しいでしょう。
この記事ではつなぎ融資が必要になるケースや、利用するメリット・デメリットについて徹底解説します。
住み替えの時に利用できるつなぎ融資とは?
つなぎ融資(つなぎローン)とは、持ち家を住み替える時に、売却から購入までの間に生じた資金不足を一時的に補うために利用可能な短期融資です。
通常の住宅ローンだと完成した建物にしか組むことができないため、売買契約後に建築される新築マンションや注文住宅などを購入した場合に、つなぎ融資がよく利用されます。
借り入れの期間は最大で1年間程度の短期間です。
元金の返済方法は、返済期日(住宅ローン実行時)までに一括返済するのが一般的ですが、利息については以下の3通りのうち、いずれかの方法で支払います。
- 融資契約時に利息を全額前払いする
- 住宅ローン実行までに利息だけ毎月返済する
- 元金と同じタイミングで全額返済する
融資条件は金融機関によって違います。
融資可能額は「土地購入代金は100%まで」「住宅ローンの融資額の30%まで」など、各社が設けている制限の範囲内で借入れが可能です。
また、銀行によっては連帯保証人を立てることや、団体信用生命保険の加入をつなぎ融資の利用条件としている場合もあります。
つなぎ融資を利用するメリット3つ
つなぎ融資を利用するメリットは以下の3つです。
- 余裕を持って新居を購入できる
- 引っ越しや仮住まいなどの費用を節約できる
- 売却不動産は空室で内覧してもらえる
順番に解説していきます。
(1)余裕を持って新居を購入できる
つなぎ融資を利用すれば、急ぎで旧居を売却することなく、時間的・金銭的に余裕を持って次に住む家を購入できます。
例えば新居を購入した段階で、まだ自宅の売却先が決定していない場合、住宅購入のための自己資金が足りなくなる恐れがあります。
しかし、つなぎ融資で必要な資金が確保できれば、買主が決まっていない状態であっても、自宅を売り急ぐ必要がありません。
(2)引っ越しや仮住まいなどの費用を節約できる
つなぎ融資を利用すれば、買い替えのタイミングがずれることにより発生する引越し費用を抑えることができます。
例えば、自宅を売却してから新居の引き渡しまでに間があいた場合、一時的に賃貸物件を借りる必要が出てきます。
そうなると仮住まいのための家賃や初期費用(敷金・礼金など)に加えて、引越しを二重ですることによる費用と手間がかかるでしょう。
しかし、つなぎ融資を使うことで時間的制約の少ない売却活動ができれば、仮住まいをすることなく新居に移る計画が立てやすくなり、余計な出費の削減につながります。
(3)売却不動産は空室で内覧してもらえる
つなぎ融資を利用して、自宅の売却よりも先に新居を購入することで、内覧対応などの売却活動がぐっと楽になります。
もし、売却予定の自宅に居住しながら売却活動をする場合、購入希望者が内覧する際に売主として立ち会いが必要です。
そのため、その度に部屋を片付けたり、スケジュールを調整したりすることになります。
一方、新居購入後に引っ越しを済ませてから売却活動をすることができれば、内覧時の部屋の片付けが不要になり、立ち会いも不動産会社に任せることができます。
つなぎ融資を利用するデメリット5つ
つなぎ融資を利用するデメリットは以下の5つです。
- つなぎ融資の金利や手数料などがかかる
- 売却価格が下がり資金繰りが厳しくなる場合がある
- つなぎ融資できる銀行が少ない
- つなぎ融資の金利が高い
- 融資期間内に売却ができないと遅延損害金がかかる
順番に解説していきます。
(1)つなぎ融資の金利や手数料などがかかる
つなぎ手数料を利用すると、金利や融資事務手数料などのコストがかかります。
事務手数料は、10万円程度に設定している金融機関が多く、印紙代も別途かかります。
支払利息は金利と借入期間によって異なり、例えば1,000万円を3%で1年間借りた場合、30万円の利息を支払う必要があります。
つなぎ融資を利用しない場合にかかる諸費用(引っ越し代・仮住まいの家賃など)と比較した結果次第で、融資の申し込みをするかどうか決めるのもオススメです。
(2)売却価格が下がり資金繰りが厳しくなる場合がある
つなぎ融資を利用することで、売却価格が予想よりも低くなり、資金繰りが悪くなるリスクがあります。
つなぎ融資は、基本的に自宅売却よりも新居購入が先行した場合に利用するため、自宅の購入者が決まる前に融資を申し込むことになるケースも多いです。
そのため、つなぎ融資を受けた後に予想価格よりも低く売却することが決まり、返済などの資金計画が狂ってしまうこともあるのです。
つなぎ融資を利用する際は、売却金額をいくらか低めに想定するなど、慎重に資金計画を立てることをおススメします。
(3)つなぎ融資できる銀行が少ない
つなぎ融資の取り扱いがある銀行は、まだまだ少ないのが現状です。
加えて、つなぎ融資は住宅ローンと同じ金融機関で組むのが原則であるため、つなぎ融資を希望する場合は、住宅ローンを組む銀行も限定されることになります。
そのため、つなぎ融資の取扱いがあるかどうか、事前に確認してから金融機関を確定する必要があります。
(4)つなぎ融資の金利が高い
つなぎ融資は、金利の相場が年率3〜4%前後と高い傾向にあります。
住宅ローンに比べて金利が高い理由は、無担保で借入れができるからです。
また、売却が遅くなるほど借入れる期間が長くなり、その分金利負担が増えていきます。
(5)融資期間内に売却ができないと遅延損害金がかかる
つなぎ融資は、期限内に売却できなかった場合、高額な遅延損害金が発生します。
具体的には、返済が遅れた場合に年利14%程度もの損害金を支払うことになります。
遅延損害金の発生を回避するためには、多少金利が高くついても、融資期間を長めに設定しておいた方がよいでしょう。
つなぎ融資が必要になるケースとは
つなぎ融資が必要になるケースを3つ紹介します。
- 買いと売却のタイミングが合わないとき
- 新規の住宅ローンが開始する前に資金がないとき
- 抵当権を抹消するのに資金がないとき
それぞれのケースについて解説します。
(1)買いと売却のタイミングが合わないとき
自宅の売却と新居の購入のタイミングが合わず、つなぎ融資が必要になるパターンです。
住み替えの場合、自宅を売却したお金で新居を購入するのがスムーズですが、自宅が売れる前に良い物件に出会うこともあるでしょう。
その場合、つなぎ融資を利用して購入資金にあてることで、自宅の売却資金が入る前でも新居を購入できます。
(2)新規の住宅ローンが開始する前に資金がないとき
つなぎ融資は、新居の住宅ローン開始前の資金不足に対応できます。
新居の住宅ローンを利用する場合、「立替払い制度」を活用して新居の残代金を支払い、その後に住宅ローンで立て替え金を返済していく仕組みになります。
残代金支払い日から住宅ローン開始日までに間があいてしまった場合に、つなぎ融資の利用で資金面を補うことが可能です。
(3)抵当権を抹消するのに資金がないとき
つなぎ融資の資金を、抵当権の抹消費用にあてることもできます。
売却する自宅に住宅ローンが残っている場合、その残債を精算して抵当権を抹消する必要があります。
抵当権抹消のための十分な手持ち資金を用意していない場合でも、つなぎ融資を使えば現金調達が可能です。
つなぎ融資を回避するには?
つなぎ融資を回避したい人のために、つなぎ融資を使わずに住み替えをするポイントを4つ紹介します。
- 売却するタイミングを早める
- 少しでも高く売却する
- なかなか売れない場合は買取も検討する
- 信頼できる不動産会社を選ぶ
それぞれのポイントについて解説します。
(1)売却するタイミングを早める
売却活動を始めるタイミングが遅れたことで、つなぎ融資に頼ることになるケースは少なくありません。
また売却時の手続きにトラブルが発生した場合にも、売却完了と新居へ入居する時期にズレが生じ、まとまった資金調達が必要になることがあります。
つなぎ融資を使わずに住み替えをするには、売却活動を段取り良く進めていくことが必須になります。
(2)少しでも高く売却する
つなぎ融資を完全に回避する方法ではないのですが、自宅を少しでも高い金額で売却することで、つなぎ融資にかかるコストを回収するのも一つの選択肢です。
ただ、売却価格を高く設定しすぎて買い手が見つからないのも困るので、事前に市場価格を把握した上で、適正な希望価格で売却することも大切です。
(3)なかなか売れない場合は買取も検討する
売却活動をしていても、あまり反応がよくない場合は、不動産屋に買い取ってもらう方法もあります。
宅地建物取引業者である不動産会社に自宅を買取してもらえれば、個人に購入してもらうよりも売却の手続きがスムーズに進み、つなぎ融資を利用せずに売却できる可能性が高まります。
買取には色々と条件があるため必ず買い取ってもらえるわけではありませんが、仲介だけでなく自社で買取をしている不動産業者に問い合わせて、相談してみるのもよいでしょう。
(4)信頼できる不動産会社を選ぶ
つなぎ融資を回避するには、信頼できる不動産会社を選択する必要があります。
売却活動の遅れなどから資金繰りに問題が起き、つなぎ融資を利用しなければ取引できなくなる事態を避けるためです。
不動産売買の知識や実績が豊富な不動産会社を見つけ、サポートを受けながら滞りなく売却活動を進めることが、つなぎ融資の回避につながります。
つなぎ融資を回避したい方はアルファに相談
つなぎ融資に頼らず自宅を買い替えるためには、不動産会社選びが重要です。
アルファなら、累計2万件以上豊富な不動産売却ノウハウを持つファイナンシャルプランナー(FP)が、ライフプランの資金計画も含めてご相談承ります。
まとめ
今回は、不動産買い替えや住み替え時に利用する「つなぎ融資」について、必要になる場面や回避する方法などを解説しました。
自宅の売却代金が手元に入ってくる前でも、つなぎ融資を使えば新居の購入代金にあてることができます。
ただし、つなぎ融資には金利が高い・期限内に売却できなければ遅延損害金が発生するなどの注意点もあるため、安易に利用するのはおすすめしません。
「つなぎ融資を受けずに自宅を買い替えたい」と考えているのであれば、まずは信頼できる不動産会社を探すことから始めてみてはいかがでしょうか。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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