不動産投資で節税できる5つの税金!FPがその仕組みと注意点を解説!
よく「不動産投資による節税」という言葉を見かけることがありますが、それがどのような仕組みで節税でるのか分かりづらい方も多いのではないでしょうか。
この記事では、不動産投資で節税できる5つの税金について、FPがその仕組みと始める前に知っておくべき注意点を徹底解説します。
不動産投資で節税できる5つの税金
不動産投資について先ず押さえておかなければならないポイントは、一番の目的は将来的な資産形成であるということです。
つまり節税は副次的な効果であって、一部のケースをのぞき節税が目的ではありません。
とはいえ少しでも無駄な税金は抑えたいのも事実なので、不動産投資によって節税できる5つの税金の仕組みを理解しましょう。
(1)所得税
不動産投資には大きく二つに分かれ、一つは買った不動産を高く売ることで利益獲得をめざす不動産売買と、一つは買った不動産を貸すなどして運用益を上げる不動産経営です。
このうち後者の不動産経営による所得は、給与所得などと同じ総合課税の所得になります。
ここでポイントになるのは、総合課税の所得を減らすことができるかどうかになりますが、日本の所得税は下記のような課税区分となっています。
【所得の種類】
課税区分 | 所得の種類 | 代表的な内容 |
源泉分離課税 | 利子所得 | 預貯金や公社債などの利子 |
総合課税(上場株式は分離課税も可) | 配当所得 | 株主や出資者が法人から受ける配当や、投資信託および特定受益証券発行信託の収益の分配などに係る所得 |
総合課税 | 不動産所得 | 土地や建物などの不動産、借地権など不動産の上に存する権利、船舶や航空機の貸付けによる所得 |
総合課税 | 事業所得 | 農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業から生ずる所得 |
総合課税 | 給与所得 | 勤務先から受ける給料、賞与などの所得 |
分離課税 | 退職所得 | 退職により勤務先から受ける退職手当や厚生年金基金等の加入員の退職に基因して支払われる厚生年金保険法に基づく一時金などの所得 |
分離課税 | 山林所得 | 山林を伐採して譲渡したり、立木のままで譲渡することによって生ずる所得(山林を取得してから5年以内に伐採または譲渡した場合には、山林所得ではなく、 事業所得または雑所得) |
分離課税 | 譲渡所得 | 土地、建物、ゴルフ会員権などの資産を譲渡することによって生ずる所得 |
総合課税 | 一時所得 | 利子所得から譲渡所得までのいずれの所得にも該当しないもので、営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外のものであって、労務その他の役務の対価としての性質や資産の譲渡による対価としての性質を有しない一時の所得 |
総合課税 | 雑所得 | 利子所得から一時所得までの所得のいずれにも該当しない所得(年金収入も雑所得) |
また総合課税の税率は、所得金額から各種所得控除額を差し引いた課税所得の金額に応じて税率が定められていて、税率と所得控除の項目は下表のとおりです。
【所得税率】
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円から1,949,000円まで | 5% | 0円 |
1,950,000円 から 3,299,000円まで | 10% | 97,500円 |
3,300,000円 から 6,949,000円まで | 20% | 427,500円 |
6,950,000円 から 8,999,000円まで | 23% | 636,000円 |
9,000,000円 から 17,999,000円まで | 33% | 1,536,000円 |
18,000,000円 から 39,999,000円まで | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円 以上 | 45% | 4,796,000円 |
【所得控除の種類】
社会保険料等控除 | 納税者本人や配偶者、扶養親族等が負担した健康保険料、国民健康保険料、国民年金保険料などの保険料負担額 | その年に負担した金額 |
小規模共済等掛金控除 | 小規模企業共済、確定拠出年金などの掛金負担額 | その年に負担した金額 |
生命保険料控除 | 保険契約に基づき支払った生命保険料、介護保険料、個人年金保険料 | 一定の計算により算出された金額 |
地震保険料控除 | 保険契約に基づき支払った地震等の災害に対する地震保険料、損害保険料 | 一定の計算により算出された金額 |
寡婦控除 | 離婚、死別等を原因として配偶者がおらず、かつ一定の要件に該当する方 | 27万円 |
ひとり親控除 | 離婚、死別、未婚等を原因として配偶者がおらず生計を一にする子供がおり、かつ一定の要件に該当する方 | 35万円 |
勤労学生控除 | 給与所得があり、かつ合計所得金額が75万円以下(給与所得については10万円以下)である学生 | 27万円 |
障害者控除 | 納税者本人や配偶者、扶養親族(年少扶養含む)のうち、障害者として一定要件に該当する方 | 最大75万円 |
配偶者控除 | 配偶者のうち一定要件に該当する方 | 38万円 |
配偶者特別控除 | 配偶者控除を受けていない配偶者で一定要件に該当する方 | 最大38万円 |
扶養控除 | 扶養親族のうち一定要件に該当する方 | 38万円(特定扶養親族63万円、老人扶養親族は最大58万円) |
基礎控除 | 納税者本人が合計所得金額2,500万円以下の場合 | 最大48万円 |
(2)住民税
住民税は、総合課税の所得税と同じで損益通算した所得金額から、社会保険料等控除や基礎控除などの各種控除額を引いた課税所得に10%の税率を乗じて決定されます。
もちろんふるさと納税なども反映された納税額が決定されるので、節税効果は小さくはありません。
(3)相続税
相続税は、相続や遺贈により財産を取得した人が納税義務者となる税金で、相続財産の評価額と相続人の人数で課税額が決まります。
相続税の計算は、遺産総額から基礎控除額を差し引き、課税遺産総額を算出し、基礎控除額は「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。
こうして求めた課税遺産総額を、法定相続分によりあん分した法定相続分に応ずる取得金額に対し、それぞれ下表の税率により計算し算出された金額が相続税の総額の基となる税額です。
【相続税率】
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
基礎控除や相続税の計算方法をみて分かるとおり、法定相続人が多いほど税額が少なくなるのですが、近年は少子化によって相続税の課税件数が増え続けています。
(4)贈与税
贈与税は、個人からの贈与により取得した財産の価額を基に課される税金で、納税義務者は原則として贈与により財産を取得した個人です。
贈与税は、「(受け取った財産額-110万円)×税率-控除額」で求められ、財産の贈与を受けた年の1月1日現在において18歳以上の子や孫が父母または祖父母から贈与を受けた場合の「特例贈与財産」の特例税率と、その他の場合の一般税率があります。
【一般税率】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 0円 |
300万円以下 | 15% | 10万円 |
400万円以下 | 20% | 25万円 |
600円以下 | 30% | 65万円 |
1,000万円以下 | 40% | 125万円 |
1,500万円以下 | 45% | 175万円 |
3,000万円以下 | 50% | 250万円 |
3,000万円超 | 55% | 400万円 |
【特例税率】
基礎控除後の課税価格 | 税率 | 控除額 |
200万円以下 | 10% | 0円 |
400万円以下 | 15% | 10万円 |
600万円以下 | 20% | 30万円 |
1,000円以下 | 30% | 90万円 |
1,500万円以下 | 40% | 190万円 |
3,000万円以下 | 45% | 265万円 |
4,500万円以下 | 50% | 415万円 |
4,500万円超 | 55% | 640万円 |
贈与税では、婚姻期間20年以上の夫婦間でマイホームなどを贈与する場合、最高2,000万円の配偶者控除を受けることができます。
(5)法人税
法人税は、法人の企業活動により得られる所得に対して課される国税で、法人の所得金額は、益金の額から損金の額を引いた金額です。
個人に課税される所得税との最大の違いは、所得の種類に関係なく収入はすべて益金となることで、バブル期以後一定期間まで適用されていた「土地譲渡益重課制度」は適用を停止されています。
普通法人の法人税率は、資本金1億円以下の法人とそれ以外に分かれており、資本金1億円以下でも過去3年間の平均所得で2つに分かれます。
資本金1億円以下の法人の大きな違いは800万円以下の法人所得の税率で、資本金1億円超の法人は税率23.20%で固定です。
所得税、住民税を節税できる仕組み
所得税や住民税で節税できる仕組みは、不動産所得の赤字額を他の所得から控除することでトータルの所得を下げる効果によるものです。
もちろん不動産投資の赤字によって、節税どころか資金を持ち出しするようでは意味がありません。
ここでは不動産投資による節税の仕組みを見ていきましょう。
(1)確定申告で「損益通算」を活用する仕組み
不動産所得は、総合課税の所得に分類されるため、赤字が出たときに給与所得などから赤字分を差し引ける「損益通算」によって節税になります。
ただ一つ注意点があり、不動産を所有しそれを賃貸していれば自動的に不動産所得になるわけではないことです。
不動産所得になるのかは、原則として社会通念上事業と称する程度の規模で不動産貸付けを行っているかどうかによって判定しますが以下の基準が示されています。
【不動産事業となる基準】
区分 | 貸付規模 |
建物 | ・貸間、アパート等の独立した室数が、おおむね10室以上 ・独立した家屋の貸家数がおおむね5棟以上 |
土地 | ・土地、駐車場の契約件数がおおむね50件以上(1室の貸付けに相当する土地の契約件数をおおむね5件として判定) |
もし不動産の貸付規模がこれに満たない場合、不動産所得ではなく雑所得と認定される可能性があり、その場合は赤字が出ても損益通算ができません。
この判定はデリケートなものなので、不安があれば専門家に相談することをおすすめします。
(2)節税できる3つのポイント
所得区分の問題がクリアできたとして、不動産投資による節税にはいくつか抑えておくべきポイントがあります。
せっかくの節税を無駄にしないために、これらのポイントをしっかり理解しましょう。
①不動産投資に関連する「経費」を漏れなく計上する
不動産所得を計算する際に経費と認められるのは、不動産収入を得るために掛かった直接的な費用で、具体的には以下のようなものが該当します。
- ☑固定資産税・都市計画税などの租税公課
- ☑管理委託料などの維持管理費
- ☑賃貸物件に関わる水道光熱費・修繕費・火災保険
- ☑不動産取得のための借入金利息
- ☑立ち退き料や入居者募集費
- ☑税務申告のための税理士費用やFPの相談料
これらは不動産所得に直接関わる経費なので分かりやすいのですが、見落としがちなのが私的な支出と一部重複する経費です。
分かりやすい例でいえば、携帯電話の使用料も一部は不動産所得のために使用しているはずなので、それらの支出は妥当な基準で案分したうえ経費に算入します。
②「減価償却費」を正しく計上する
不動産投資による節税で一番の肝となるのが「減価償却費」の正しい計上といえ、計画段階から十分な検討が必要です。
減価償却費は、耐用年数が短いほど短期間で経費計上できるので、投資物件の構造や築年数は重要な確認ポイントです。
【新築物件の耐用年数】
構造 | 法定耐用年数 |
軽量鉄骨造(骨格材肉厚が3mm以下の場合) | 19年 |
木造 | 22年 |
重量鉄骨造 | 34年 |
鉄筋コンクリート造、鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
同じ5,000万円を投資したとして、新築木造アパートは(5,000万円÷22年=227万円)の減価償却費になるのに対して、新築マンションでは(5,000万円÷47年=106万円)と半額以下になってしまいます。
さらに中古物件の場合は、経過年数に応じて耐用年数を圧縮できるので、中古マンションなどの中古物件の方が節税効果が高くなることが理解できるでしょう。
ただ注意点としては、銀行などの金融機関が不動産ローンの審査をするとき、融資期間について耐用年数と経過年数を考慮するので、希望どおりの融資期間にならない可能性があることです。
③青色申告を利用する
不動産投資による節税対策にとって、税制上の優遇措置である「青色申告の特例」は必ず利用すべきです。
手続自体は、青色申告を始めたい年の3月15日までに居住地の所轄税務署へ「青色申告承認申請書」を提出して承認を得るだけです。
青色申告のメリットはいくつかあり、青色申告特別控除で55万円(e-Taxによる電子申告の場合65万円)を受けられるほか、青色専従者として給与を支払い経費算入できます。
青色申告を選択しなければ白色申告になりますが、税務上の優遇措置もなく税金対策にはなりません。
青色申告の注意点としては、55万円または65万円の特別控除を受けるために、収入金額や必要経費に関する日々の取引状況を記録した複式簿記の帳簿が必要になり、それらに伴う書類を保存する必要があることです。
(3)不動産投資をした時のシミュレーション
不動産投資をしたときにどれくらいの節税効果があるのかは、サラリーマンであれば本業の年収や、投資した収益物件の家賃収入など複数の要素が関係します。
ここでは一例として、年収900万円の会社員がワンルームマンション経営を行ったケースでシミュレーションしてみましょう。
設定としては、4,000万円の中古マンション(建物価格3,500万円、利回り3.9%、耐用年数・償却期間10年)を購入して、年間350万円の減価償却費をとったとします。
また4,000万円は全額借入で償還期間は30年、金利は2.0%として計算します。
収支内容 | キャッシュフロー | 税務上の所得額 |
家賃収入 | 156万円 | 156万円 |
管理費等経費 | ▲18万円 | ▲18万円 |
借入金返済額 | ▲133万円 | |
借入利息分 | ▲80万円 | ▲80万円 |
減価償却費 | ▲350万円 | |
差し引き金額 | ▲75万円 | ▲292万円 |
このマンション投資では、資金繰り上は不足分75万円が持ち出しになりますが、減価償却が大きいため税務上の所得は▲292万円となりました。
つまり給与所得から損益通算で292万円引けることになるので、900万円の給与収入であれば、所得税額で約48万円、住民税額で約29万円の節税になり、トータルで約2万円のキャッシュインになります。
これを簡単に説明すれば、金銭的な負担をせずにマンションという資産が手元に残ることになるのです。
一つ補足するなら、減価償却期間が終わってしまうと逆にキャッシュアウトが多くなるので、俗に言う「黒字倒産」のような状態になってしまいます。
そのためプラス面とマイナス面のバランスを良く考慮して、長期的な賃貸経営と収支計画が重要です。
相続税、贈与税を節税できる仕組み
相続税や贈与税で節税になる仕組みは、相続や贈与をする財産の評価方法を利用するものです。
現金は有価証券の評価は、誰が見ても分かりやすい明らかなものですが、不動産の評価は少し特別な方法で算出します。
ここでは相続時などの不動産投資による節税方法の基本を、相続税評価額にスポットを当てて見ていくことにします。
(1)現金などより課税額を抑えることができる
相続税や贈与税は、算出した課税資産の総額によって課税額が変わってきますが、ポイントになるのは相続・贈与財産の評価方法です。
例えば現預金は額面と同じ評価になるのですが、不動産の場合は路線価により評価されるので相場価格との差異が生じます。
一般的なケースでは、路線価による評価は実勢価格から20~30%低くなるので、仮に1億円の現金を持っているより、それで1億円の不動産を購入すれば2~3千万円課税評価額が下がることになります。
この差を利用するのが不動産投資による相続税・贈与税の節税ですが、対象不動産が賃貸用物件であればさらに評価を圧縮可能です。
なお相続の直前で極端にやり過ぎたケースで、国税当局に否認され裁判でも負けた事例(令和4年4月19日: 相続税更正処分等取消請求事件)があるので、税理士などの専門家に相談が必要でしょう。
(2)現金と比較して不動産で相続した時の税金シミュレーション
不動産投資による相続税対策は、土地や建物の時価と相続税評価額の差を利用するもので、富裕層においては広く認知されていた相続対策です。
仕組みはいたって簡単で、例えば現金で1億持っていた被相続人が現金を土地に変えた場合を見れば明らかです。
仮にある被相続人が亡くなり、配偶者一人に相続したケースを想定してシミュレーションします。
なお土地の相続税評価額は、平均的な時価との差で購入不動産価格の80%として計算します。
【相続税評価額】
現金・預金の場合 | 土地の場合 |
1億円 | 8千万円 |
この2,000万円の差額で相続税額の違いはいくらになるのでしょうか。
現金の場合は、1億円から基礎控除(3,000万円+600万円)を引き6,400万円に課税されるので1,220万円の相続税になります。
これが土地に変えて相続すると、8,000万円から基礎控除を引き4,400万円に課税され680万円の相続税で済むので、差額は540万円にもなります。
これだけを比較しても、投資用不動産を活用した相続税の節税がいかに有効か分かるでしょう。
法人税を節税できる仕組み
節税目的で始めた不動産投資による収支が利益を生むのであれば、不動産経営を株式会社など法人化して課税対象額を減額することも選択肢に入ります。
これは不動産事業だけではなく、他の事業にも共通していて法人化によるメリットは小さくありません。
不動産投資が本業に近くなるにつれ、費用計上など法人の会計上のメリットが大きくなり、累進課税対策としても有効です。
(1)給与など計上できる経費が増える
個人で不動産事業を営んでいると、賃貸収入金額から必要経費を引いた所得に税金がかかります。
しかし事業を法人に移管することで、自分にも役員報酬として給与を支払いそれを損金とすることができ、なおかつ個人事業主では加入できない厚生年金にも加入することが可能です。
一方で個人事業主の場合より公私の区別をしっかりつける必要があるので、事務的な作業が増えることを覚悟しましょう。
(2)課税所得が900万円以上の場合は法人税の税率が低い
法人税の実効税率は、地方税を含めておよそ33%といわれているので、個人の課税所得が900万円を超えるような方は法人化を検討する価値があります。
ただ不動産投資による所得だけで900万円以上になっているケースと、給与所得などを含めた金額でそうなっているケースでは、法人化のメリットはまるで違うので専門家に相談することをおすすめします。
節税を目的で投資した時の注意点
最初に触れたように、不動産投資の目的は資産形成の手段であって節税を目的にするのは相続などのケースに限られます。
ある程度の年収と資産をお持ちの方であれば、不動産会社などからさまざまな投資不動産を持ちかけられると思いますが、簡単に営業トークに乗ってはいけません。
とはいえ節税も考えたいのであれば、そのときの投資について注意点を知っておくべきなので、その点を確認しておきましょう。
(1)出口戦略を事前に立てておく
どのような投資でも出口戦略を考えることは重要ですが、不動産投資ではマンション経営とアパート経営で違いがあります。
マンションの場合の出口戦略は、「次の買い手がつくか」「いつ売るか」「いくらで売るか」「定収入源として持ち続ける」「自宅にする」が主なものです。
これがアパート経営では、物件を売却するという選択肢以外にも、リノベーションして売却する、新しくアパートを建て替える、建物を壊して土地を売却する、建物を壊して自宅を建てるなど、土地を所有しているだけに選択肢が多くなります。
それと重要なことが、売却による利益を事前に想定しているかということです。
一般的な不動産投資は、物件価格と運用による利回りで物件購入を考えるのですが、景気上昇期では資産運用より物件売却時の売却益を狙う投資方法もあります。
不動産投資には、さまざまなやり方やノウハウがあるので、総合的に考えることが大事です。
実際にはサラリーマンは不動産投資のカモにもなりやすいと言われています。その理由を対策について詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
(2)収支変動のリスクを予測する
節税目的の不動産投資では、キャッシュフローが黒字で税務申告は赤字という状態が理想的です。
そのポイントは減価償却費の計上額になるのですが、減価償却費は無限に計上できるわけではなく、耐用年数を過ぎると経費計上できなくなります。
節税上理想の状態というのは、不動産経営で考えるとギリギリの経営状態といえるので、投資物件から退去が続いたり、家賃相場が下落したりというリスク対応できない可能性があります。
また金利の上昇なども考慮する必要があり、節税より事業としての不動産経営に力を入れる必要があるでしょう。
節税だけで不動産を選ばない!実際にあった失敗例3つ
ある程度の収入がある方なら節税という言葉に魅力を感じるでしょうが、それを目的に不動産投資をした結果の失敗事例が多く見られます。
その多くは投資を進める営業の言葉を鵜呑みにしたものですが、ここでは節税目的の不動産投資で実際にあった失敗例を紹介します。
(1)土地取得費相当分の借入利息が損益通算できなかったケース
不動産投資による節税は、不動産所得の赤字を損益通算によって給与所得などから引くことで、結果的に所得税額を減らす効果が得られます。
これは課税所得額が高い人ほど効果的なのですが、不動産投資の損益通算では一つの落とし穴があり、土地の取得にかかる借入利息相当は損益通算できないのです。
立地の良い土地の中古アパートを購入するときは、土地代が高くなるケースが多く、不動産所得が赤字になったのに思ったような節税効果得られないことがあります。
建物だけではなく土地も取得するような不動産投資では、購入価格のうち建物価格がいくらで、土地部分がいくらなのか考えたうえで、本当に節税になるのかシミュレーションをする必要があります。
(2)キャッシュフローを生み出せず持ち出しになるケース
不動産投資による節税は、不動産所得が赤字でもキャッシュフローがプラスになることがポイントです。
ところが会社員のKさんは、知人の紹介で不動産業者と出会い、副収入目的で中古のワンルームマンションを購入しました。
不動産会社の営業からは、収入を得られるうえ節税にもなると言われてのことでしたが、肝心の賃貸マンション経営でつまずきました。
毎月家賃収入は入ってくるものの、ローンの返済、管理費、修繕積立金などの支出だけでトントンになり、修繕費用や固定資産税などは持ち出しになってしまったのです。
これは物件選びの失敗と収益性の予想が甘すぎたせいで、節税にはなっても世帯の収入が実は目減りしているというケースです。
(3)相続税を節税しようとして資産を目減りさせたケース
相続税対策としてのマンション投資は、比較的メジャーな節税対策といえますが、購入する不動産は要注意です。
現預金を不動産に変えることで節税できたとしても、購入時の価格から節税額以上に時価が下がったら、結果として資産を目減りさせることになります。
また稀に聞くケースとして不動産に投資した結果、肝心の相続税納付や相続財産の登記費用などに手持ち現金が追い付かず、せっかくの不動産を安く処分せざるを得ないことがあります。
相続税対策には、十分な準備期間と慎重な不動産の選び方が必要なので、資産価値の傾向などを把握し後悔のない始め方が重要です。
不動産投資の失敗例をもう少し詳しく知りたい方は、下記記事を参照にしてみてください。
不動産投資に不安な方はFPに相談しよう
不動産投資の基礎知識がなく不安を感じる方は、FPに相談することで問題が解決でき、リスクを回避することができます。
不動産会社から持ちかけられる話の多くは、初心者向けなどと言いながら高い物件を紹介し、数字も表面上の利回りばかりになりがちです。
しかし不動産投資は、節税がメインになるものではなく、自分と家族を含めたライフプランの一部として考えるべきものといえます。
不動産投資家として成功を収めるためには、無理のない投資額を状況や流れを読みながらタイミングよく投資しなければなりません。
安定した資産運用を期待するなら、気軽に我々FPに問い合わせてください。
まとめ
結論をいえば、不動産投資による節税は「必要な知識を持ったうえで正しく行えば成功する」といえます。
また相続税対策以外の不動産投資は、利益を上げ資産形成することが大切だという基本は忘れないことが必要です。
そのため本記事を参考にして、FPなど専門家の意見も参考にしながら、しっかりとした目的をもった不動産投資を考えてみましょう。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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