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不動産売却にかかる税金はいくつあるの?計算方法や節税方法も合わせて解説

公開日:2024/02/14
家

不動産を売却すると、売却益には税金がかかります。売る前に、どの税金がどのようにかかるのかを知っておくことが重要です。

この記事では、不動産売却の手続きでかかる税金の種類や、売却益にかかる税金、税金の支払い時期や方法についてわかりやすく説明します。

また、築10年のマンションを売却した場合の税金の算出方法節税対策についても紹介しています。ぜひ参考にしてください。

不動産の売却手続きでかかる税金3つ

計算

不動産売却では、手続き時にも以下の税金がかかります。

  • 登録免許税
  • 印紙税
  • 仲介手数料の消費税

それぞれの税金についてくわしく見ていきましょう。

(1)登録免許税

登録免許税は、不動産や会社の登記手続きに関連する税金です。

登録免許税は、不動産売買の場合、登記費用として一般的に請求されるもので、これには司法書士の報酬や書類の取得費用などの実費も含まれます。

登記申請時に収入印紙を貼付することで納税します。不動産の登記手続きが必要な場合、売主と買主の両方が登記申請に関して支払いを行うことが必要です。

売主が物件を売る際、住宅ローンの抵当権が設定されている場合、不動産売却の資金を使ってそのローンを完済すると、抵当権を削除するために「抵当権抹消登記」の手続きが必要です。

通常、この抵当権の抹消手続きは、物件の所有権が移転する前に行う必要がありますが、「売主の抵当権抹消登記」「買主への所有権移転登記」が同じ決済日に一緒に続けて申請するのが一般的です。

さらに、売買時に登記簿に登録されている売主、すなわち所有者の住所が変更されている場合、「住所変更登記」も必要です。

買主側も手続きを行う必要があります。不動産の所有者を売主から自分に変更するためには、「所有権移転登記」が必要です。

また、住宅ローンの担保として抵当権を設定するためには、「抵当権設定登記」が必要です。

これらの手続きをする際に、登録免許税を支払う必要があります。

登録免許税の金額は登記する内容によって異なります。

たとえば、抵当権を削除する場合は、不動産1件につき登録免許税が千円必要です。

ただし、不動産1件とは、土地が1筆で、建物は1つを指します。

つまり、土地が2筆で1つの建物が建っている場合、3件分の登録免許税が必要です。

(2)印紙税

印紙税は、不動産の「売買契約書」に対してかかる税金です。

不動産を売るときには、売主と買主が契約書を作成し、この契約書には、売買の条件や取引内容が記載されます。

なお、売却の場合は契約書の原本をもらわずコピーだけもらえば、印紙税がかかりません。

印紙税は、契約書やその他の「課税文書」と呼ばれる書類にかかる税金です。

収入印紙を文書に貼り、消印することで税金を支払ったことになります。

印紙税の金額は、契約書に記載された取引金額によって決まります。

2024年(令和6年)3月31日までは、不動産の売買契約および建築請負契約には特別な軽減税率が適用されます。

納めるべき税額は、以下の表を参照してください。

契約金額本則税率軽減税率
100万円超500万円以下2,000円1,000円
500万円超1,000万円以下1万円5,000円
1,000万円超5,000万円以下2万円1万円
5,000円超1億円以下6万円3万円
1億円超5億円以下10万円6万円
参照:国税庁|No.7140 印紙税額の一覧表

(3)仲介手数料の消費税

不動産を売るときには、通常は不動産会社に仲介を依頼し、売買が成立すると、不動産会社には仲介手数料として報酬が支払われます。この仲介手数料に消費税がかかります。

仲介手数料は、売買価格に応じて決まり、価格が高いほど、仲介手数料も高額になり、それに応じて消費税も増えます。

仲介手数料には法律で定められた上限額が定められていますが、売却価格が400万円以上の場合、下記の計算式で算出することが可能です。

仲介手数料 = 売買価格 × 3% + 6万円 + 消費税

不動産の売却利益が出た時にかかる税金

不動産を売ると、譲渡益(売却益)が生まれます。この利益に所得税や住民税がかかり、これを一般的に譲渡所得税と呼びます。

譲渡所得税は、不動産や株式など特定の資産を売却する際に、取得時と売却時の諸費用を売却金額から差し引いた値である譲渡所得がプラスになるときに課税されます。

譲渡所得にかかる税金は、以下の3つから成り立っています。

  • 所得税
  • 住民税
  • 復興特別所得税

復興特別所得税は、東日本大震災の復興支援を目的とした税金で、2037年(令和19年)まで支払わなければなりません。

(1)「譲渡所得税」とは

不動産を売って利益が出た際には、譲渡所得税が発生します。

これは、土地売却や建物の売却で得た利益が個人の所得として扱われ、給与所得や事業収入と同様に所得税や住民税が課税されるためです。

要するに、譲渡所得税とは、不動産売却で得た利益(譲渡所得)に対する所得税や住民税のことです。

譲渡所得税は、売却価格から売買に関連する費用を差し引いた譲渡所得の額に基づいて計算されます。

なお、土地売却や建物の売却でかかる譲渡所得税は「分離課税」と呼ばれ、他の所得とは別に計算されます。ただし、確定申告は他の所得と一緒に行います。

(2)不動産売却で発生する譲渡所得税の計算方法

不動産売却で譲渡益が生じると、譲渡所得税が課されます。

不動産の価値が高いため、それに比例して税金も高額になることがあります。

そのため、税金の額がいくらなるか気になる方が多いことでしょう。

譲渡所得税の計算は、物件の用途・所有期間により異なる税率が適用され、ややこしいと感じる人もいます。

譲渡所得税の金額は、「譲渡所得<A>」から「特別控除額<B>」を差し引いて求めた「課税譲渡所得」に、「税率<C>」を掛けて計算します。計算式は以下の通りです。

譲渡所得税=(譲渡所得<A>-特別控除額<B>)×税率<C>

譲渡所得は、不動産売却によって生じる利益や損失を表します。

したがって、譲渡所得税を計算する際には、まず売却によって得られた譲渡所得金額を計算することが最初のステップです。

譲渡所得とは、簡単に言えば不動産売却した際の利益のことです。

確定申告の際には、譲渡所得税を正しく納付するために、以下の計算式を使って譲渡所得を算出する必要があります。

譲渡所得 = 不動産売却価格 −(取得費 + 譲渡費用)

上記の通り、不動産売却価額から取得費と譲渡費用を差し引き、譲渡所得を求めます。

相続した不動産のため、万が一売買契約書や領収書が見つからず、取得費や譲渡費用が不明というような場合でも、国税庁は「売却収入額の5%を取得費として扱う」ことを定めています。

つまり、不動産の売却額が3,000万円であった場合、売却額の5%相当額の150万円が取得費として計上できるわけです。

参照:土地や建物を売ったとき

(3)譲渡所得税で利用できる4つの特例

不動産売却で利益が出た場合、税金を節約するにはどのような方法があるでしょうか?

売主が把握しておくべき税金対策の1つは、税制上の特例です。

具体的には、不動産売却時には、譲渡所得税に対して特別控除や軽減税率などの軽減措置が適用されることがあります。

これらの特例にはいくつかの種類があり、それぞれの適用条件が異なります。

売却する不動産の種類や所有期間、取引条件に応じて、どの特例が適用されるかをチェックすることが重要です。

売却益が出たことを確認後に特例を利用するためには、不動産売却した翌年に税務署に確定申告を行います。

会社員など給与所得者であっても、譲渡所得がある場合は、年末調整とは別に確定申告を行わなければなりません。

特例1:3,000万円の特別控除<居住用財産を譲渡した場合>

この特例は、売却益から最大で3,000万円までの控除が受けられるものです。

ただし、対象は自らが居住するための物件に限られます。

賃貸用の不動産、更地、長期間居住していない物件は対象外です。

注意点として、住宅ローン減税との併用はできませんし、自分が住んでいる物件に限定されます。

また、相続したマイホーム(居住用財産)もこの特例の対象外です。

特例2:3,000万円の特別控除<空き家にかかる譲渡所得の特別控除>

相続した空き家を売却する場合でも、最大3,000万円の控除が適用されることがあります。

ただし、この税金控除は、2023年(令和5年)12月31日までに売却したことが条件です。

しかし、要件が複雑でわかりづらいため、特例が適用されるかどうか不明な場合は、税理士や会計士などの専門家に相談するのがおすすめです。

特例の詳細について詳しくは、国税庁のホームページを参照してください。

特例3:特定の居住用財産の買換えの特例

自宅を買換える際に、その年の1月1日時点で所有期間と居住期間が10年以上であるなどの条件を満たすと、売却時の譲渡益に対する税金を将来に繰り延べることができる特例があります。

具体的には、売却して譲渡益が出た場合、新たに買い替えた住宅の購入金額が売却金額より高い場合、その時点で譲渡所得税は課されるのではなく、買換えた住宅を売却する時に繰り延べすることが可能です。

逆に、新居の購入金額が売却金額より低いケースでは、購入金額と同額まで繰り延べることができますが、差額に譲渡所得税がかかります。

ただし、この特例についてはマイホーム(居住用財産)を2023年(令和5年)12月31日までに売却した場合に限られます。

詳細な要件については、国税庁のホームページで確認してください。

特例4:譲渡損失となった場合の特例

不動産売却時に譲渡所得がマイナスになり、譲渡損失が発生した場合、基本的には確定申告は不要です。

ただし、譲渡損失が出た場合、「損益通算」という制度が利用できます。

損益通算は、その年の所得の利益と損失を相殺することができる制度です。損益通算を利用すれば、税負担を軽減できます。

さらに、所有期間が5年以上など一定の条件を満たす居住用財産の場合、特例があります。

「特定のマイホームの譲渡損失と損益通算及び繰越控除の特例」では、住宅ローンのあるマイホーム(居住用財産)を売却時に、住宅ローンの残高を下回る価格で売って譲渡損失が出たとき、その年の所得よりも譲渡損失のほうが大きい場合、その損失を所得と相殺(損益通算)し、税金を軽減できます。

さらに、この特例を適用することで、繰越控除として譲渡損失を最大で3年間繰り越して税金を計算できます。

詳細については、国税庁のホームページを参照してください。

(4)譲渡所得が出た場合は「住民税」もかかる

不動産を売ると、一時的に住民税が増えることがありますが、必ずしも増えるわけではありません。

住民税が上がるのは、不動産売却して利益が出た場合にのみ、住民税が発生します。以下は計算法です。

不動産の売却額-(不動産の取得費+譲渡費用)=譲渡所得額

上記の計算結果がプラスになると、課税される可能性があります。

不動産の取得費とは、単に購入時の金額ではありません。通常は、購入価額から建物の減価償却費を差し引いて算出されます。

また、譲渡費用は、売却時に不動産会社に支払う仲介手数料などを指します。

不動産売却の利益に対する住民税は、給与所得などの住民税とは異なる税率が適用されます。

以下が適用される税率です:

  1. ✅売却した不動産の保有期間が5年以下(短期譲渡所得):譲渡所得の額×9%
  2. ✅売却した不動産の保有期間が5年超(長期譲渡所得):譲渡所得の額×5%

なお、この「5年」とは、不動産売却をした年の1月1日からの期間で計算されます。

築10年のマンションを売却した時のシミュレーション

男性

築10年のマンションを売却し、売却益が500万円のときの譲渡所得税の計算をシミュレーションすると、以下の通りです。

■前提条件

  1. ✅物件の購入代金:4,000万円
  2. ✅購入にかかった諸経費:300万円
  3. ✅譲渡収入金額:5,000万円
  4. ✅所有期間中の建物の減価償却費:100万円
  5. ✅譲渡費用:300万円

(1)取得費

この場合、取得費は以下のように計算されます。

  1. 取得費 = 物件の購入代金 + 購入にかかった諸経費 – 建物の減価償却費
  2. 取得費 = 4,000万円 + 300万円 – 100万円
  3. 取得費 = 4,200万円

(2)譲渡所得

譲渡所得は以下のように計算されます。

  1. 譲渡所得 = 譲渡収入金額 – 取得費 – 譲渡費用
  2. 譲渡所得 = 5,000万円 – 4,200万円 – 300万円
  3. 譲渡所得 = 500万円

譲渡所得500万円にかかる所得税・住民税(譲渡所得税)は、所有期間に応じて以下のように計算されます。

(3)所有期間5年以下(短期譲渡所得)

  1. 譲渡所得税 = 譲渡所得500万円 × 39.63%
  2. 譲渡所得税 = 198万1,500円

※内訳は、所得税153万1,500円 と 住民税45万円になります。

(4)所有期間5年超(長期譲渡所得合)

  1. 譲渡所得税 = 譲渡所得500万円  × 20.315%
  2. 譲渡所得税 = 20.315%
  3. 譲渡所得税 = 101万5,750円

※内訳は、所得税76万5,750円 と 住民税25万円になります。

※所得税には復興所得税が含まれます。

このケースでは、譲渡所得が3,000万円以下であるため特例が適用されると、課税されません。

不動産売却でかかる税金の納品時期や納付方法について

不動産売却する際には、売主が支払わなければならないさまざまな税金あることをお伝えしてきました。

たとえば、売却時に支払う印紙税や登録免許税、さらには譲渡所得税などです。

これらの税金は、支払い期限を守らないと督促状が届き、延滞金が請求される可能性があります。

それぞれの税金は支払い期限や納付方法が異なるので、スケジュールを把握しておきましょう。

以下は、不動産売却時に売主が支払う税金の納付時期と納付方法です。

納付時期納付方法
印紙税売買契約時収入印紙を購入し、契約書に貼付し消印
登録免許税抵当権の抹消登記など登記申請時収入印紙で納付(通常は司法書士に登記費用として支払い、司法書士が代わりに納める)
譲渡所得にかかる税金(所得税)物件引渡し完了の翌年の確定申告後確定申告後に納付書で納付
譲渡所得にかかる税金(住民税)物件引渡し完了の翌年の確定申告後確定申告した場合、給与所得者は手続き不要
普通徴収では、確定申告後に別途納付書で納付
復興特別所得税所得税と同じ所得税と同じ
著者作成
  1. ※譲渡した年の1月1日現在、所有期間が5年以下か5年を超えているかで判断
  2. ※復興特別所得税の2.1%が上乗せ

※10年超所有軽減税率の特例は、マイホーム(居住用財産)を売却して、一定の要件に該当する場合に適用。対象は自らが居住していた居住用に限定

不動産売却の税金を節税するには?

家計

節税対策には、以下の方法があります。

  1. ✅取得費の資料を集める
  2. ✅取得費に加算できる費用を確認し加える
  3. ✅譲渡費用をしっかり計上する
  4. ✅マイホームの場合は3,000万円特別控除を活用する
  5. ✅売却時の税率が下がる5年超・10年超を狙う
  6. ✅譲渡所得が3,000万円を超える場合居住用財産の買換え特例を利用する
  7. ✅ふるさと納税の制度を利用する
  8. ✅平成21年・平成22年に取得した土地の「1,000万円特別控除」を活用する
  9. ✅未利用土地等の「100万円特別控除」を利用する
  10. ✅相続空き家の「3,000万円特別控除」を利用する
  11. ✅相続税を納税する場合は取得費の加算を活用する
  12. ✅収益物件の場合は特定事業用資産の買い換え特例を活用する

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まとめ

カップル

不動産売却において、税金に関する基礎知識は非常に重要です。

まずは、どの税金がいつ、どれくらいかかるのかを理解することが大切なポイントです。また、特例制度についても把握しておくことが必要です。自分の不動産に特例が適用されるかどうかも事前に確認しましょう。

支払いが必要な税金の種類と金額を把握するためには、自分の不動産の価値を知ることが重要です。

不動産査定を受けることで、査定額がわかれば、支払うべき税金の目安を把握できます。手始めに、不動産会社に査定を依頼してみてはいかがでしょうか。

著者

代表取締役 田中佑輝
代表取締役 田中佑輝株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ
AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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