不動産投資に自己資金いくら必要?目安と失敗しないための注意点を解説
「自己資金ゼロ円で不動産投資ができる」などの営業文句を聞いたことがある方も少なくないでしょうか。
しかし、数千万円もするような不動産は、果たして自己資金ゼロ円で購入できるものでしょうか?結論から申し上げますと、無理なことではありません。ただし、リスクが大きいことと、失敗しないために事前に知っておくべき注意点も多くあります。
そこで今回の記事では、自己資金ゼロで不動産投資を行う際に知っておくべき基礎知識や、メリット・デメリットをお伝えします。現在不動産投資を検討されている方、自己資金ゼロ円で不動産投資を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
不動産投資にかかる自己資金は?
不動産投資は不動産の本体の価格の他に、「頭金」や「諸経費」などと言った自己資金が必要と言われています。
まずは頭金の意味や諸経費の種類について把握しておきましょう。
(1)頭金とは
住宅ローンなどでもよく耳にする「頭金」とは、物件購入時のタイミングで、ローン以外に支払うお金(自己資金)のことです。
例えば、投資用不動産の物件価格が5,000万円で、そのうちのローンを4,000万円で組むとしましょう。その場合頭金は1,000万円になります。(頭金=物件価格-ローン)
頭金には具体的にいくら必要といったルールはありませんが、通常だと物件価格の3割程度の頭金が必要だとされます。
頭金を入れることで、その分借入額が少なくなるため、結果的に購入後の返済負担が軽くなるのがメリットです。
また、頭金が多いほどローン審査に通りやすくなるのも利点です。
(2)諸経費とは
「諸経費(諸費用)」とは、物件本体の購入費用とは別に支払う、例えば仲介手数料やローン事務手数料といった初期費用のことです。主な諸経費には下記のものがあります。
- ☑印紙税
- ☑登録免許税
- ☑司法書士報酬
- ☑固定資産税・都市計画税
- ☑不動産仲介手数料
- ☑ローン事務手数料
- ☑ローン保証料
- ☑火災保険料
- ☑団体信用生命保険料
- ☑不動産取得税
なお、一般的に諸経費は物件価格の「7~10%」といわれています。例えば3,000万円の物件であれば210~300万円といったイメージです。
自己資金ゼロで不動産投資ができる仕組みとは?
上記を読んで頂いた方の殆どは、不動産投資は自己資金ゼロ円ではできないのではないかと思われているでしょう。これからは自己資金ゼロで不動産投資ができる仕組みを解説します。
(1)頭金を出さず「フルローン」を利用するケース
「フルローン」とは、頭金を出さず物件価格の全額を借り入れる手法です。
フルローンのもっとも大きなメリットは、自己資金がない人でも、不動産投資をスタートできるのがポイントです。
ただし、融資条件が厳しくなるなどのデメリットがあるので十分注意しましょう。なお、フルローンには諸経費の融資分は含まれません。
(2)諸経費までローンを組む「オーバーローン」を利用するケース
「オーバーローン」とは、物件価格の他に諸経費までもローンでまかなうことです。フルローンと同様に自己資金を確保できるのが利点です。
例えば、物件価格3,000万円の物件で、諸経費が200万円をかかる場合、その諸経費も全てローンに組むことができ、合計3,200万円は全額ローンを賄うことができます。
しかし、オーバーローンの審査基準は通常の不動産投資ローンよりも厳しく設けられており、投資実績がない、自己資金がないのような初心者の方は殆ど通らないと言われています。
つまり、初心者がいきなりオーバーローンを利用することは非常にハードルが高いと言えます。
(3)不動産会社が諸経費を値引きしてフルローンを利用するケース
3つ目は、不動産会社が諸経費を値引きした上でフルローンを利用するケースです。
一般的には不動産投資会社は自社の利益を確保した上での物件価格設定をしています。中には利益を多く載せて、その分諸経費を値引きするようにして、投資家が得するような見せ方をする業者もいます。
例えば、3,000万円の物件の場合、本来であれば200万円の諸経費がかかりますが、その200万円を値引きして、諸経費込みで3,000万円という見せ方して、フルローンを申請するケースもあります。
オーバーローンではないため、通常の不動産投資ローンの審査基準で受けることができ、ハードルが下がり通りやすくなります。
この場合は、契約書類の作成費用やローン代行手数料など、他の名目で別途利益を確保しているケースもあるため、その点は確認が必要です。
自己資金ゼロで不動産投資をするメリット
ここでは自己資金ゼロで不動産投資を行うメリットを解説します。基本的には自己資金ゼロだと注意点が多いのですが、とはいえ不動産投資がはじめやすくなるのは確かです。
実際に不動産投資をはじめる前に参考にしてください。
(1)手元に資金を残すことができる
自己資金ゼロで不動産投資をはじめるメリットは「手元に資金を残すことができる」です。
不動産投資をはじめたい方の中には「なるべく自己資金を使いたくない」という人も少なくありません。
投資用物件の購入時にフルローンやオーバーローンが利用できれば、それだけ自己資金を手元に置いておけるため、例えば空室が発生したときや修繕費用が必要となった場合に、手元の資金で補えます。
(2)レバレッジ効果を最大限に活かせる
自己資金ゼロなら、レバレッジ効果を最大限活用できるのもメリットです。レバレッジ効果とは「テコの原理」のことです。
レバレッジを効かせると、少ない資金でもより大きな投資効果が期待できます。
自己資金と不動産投資ローンを組み合わせれば、手持ち資金の何倍もする高額な物件も購入でき、より高い収益性が望めます。
自己資金ゼロで不動産投資をするデメリット
次に自己資金ゼロで不動産投資を行うデメリットをお伝えします。
見てもらうとわかりますが、メリットよりもデメリットの方が多いのは間違いありません。実際にはじめる前に必ず確認してください。
(1)月々の返済額が大きい
自己資金ゼロだと「月々の返済負担が大きくなる他、返済期間が長期化する傾向にある」のがデメリットです。
フルローンやオーバーローンの場合、融資額が大きくなるためです。
毎月の返済額が大きくなれば、家賃収入に対する返済比率も上がってしまうため、支出の面で赤字の状態になるリスクが高くなります。
返済比率とは、賃料収入に対する返済額の割合のことで、安全性のバランスを測る指標の1つとして不動産投資で重視されているものです。
空室リスクなどでキャッシュフローが減少した際の事態に備えられるよう、通常40~50%が1つの目安だとされます。
(2)融資条件が悪くなる場合がある
「融資審査が厳しくなる」のも、自己資金ゼロで不動産投資をはじめるデメリットです。
フルローンやオーバーローンだと借金が大きくなるため、金融機関は融資に対して慎重になります。というのも貸倒れのリスクがあるからです。
そのため、より審査条件が厳しくなります。
(3)万が一な出費には対応ができない
自己資金ゼロで不動産投資を行うと、突然の出費があったときに対応できなくなる恐れがあるのがデメリットです。
例えば自己資金なし・預貯金なしといった場合、突然病気になったときや、リストラされたときに生活が苦しくなってしまいます。
そのため不動産投資に限った話ではありませんが、万が一のときに困らないよう、ある程度の現金は確保しておくべきです。
フルローンを利用する時の注意点
ここでは、フルローンを利用する際の注意点をお伝えします。融資を受ける際は「信用情報」や「物件情報」の確認が大切です。
フルローンやオーバーローンを希望する際は、必ず確認しましょう。
(1)自分の信用情報は大丈夫なのか
フルローンを設定したい場合は、自身の「信用情報」に問題がないか確認しましょう。金融機関では、融資を行う際にその人の信用情報を調べます。
その際、例えばクレジットカードの返済が滞っているような人や、複数の金融機関から借り過ぎている人だとローン審査に通らない可能性が高いです。
また、特にフルローンでは融資を受ける金額が大きくなるため、通常よりも厳しい条件になると覚えておきましょう。
(2)本当にいい物件なのか
フルローンの利用を考えているなら「本当にいい投資物件なのか」を確認しましょう。例えば、収益力がない物件だと結果破産のリスクを招いてしまいます。
ここでは収益物件を選ぶのに大切な「収益力」「担保力」「稼働力」を取り上げ解説します。
①毎月安定した家賃を得られる「収益力」があるのか
いい物件かどうか判断する際は「毎月安定した家賃を得られる収益力があるか」に注目しましょう。
頻繁に空室が続くような収益力が低い物件だと、家賃収入が得られず結果返済が滞ってしまいます。
収益力の高い物件の例として、駅から歩いて5~10分程度など、利便性の良さがあげられます。
②フルローンが下りる「担保力」があるのか
「物件の担保力があるか」は金融機関が融資を行う際の判断材料の1つになります。
担保力が融資額に見合っているなら、マイナス評価とならず希望の金額が受けられるでしょう。
ローン返済ができなくなったことを考え、金融機関は物件を担保に入れるよう要求します。担保力が高い物件だと高値で売却できるため、その方が望ましいわけです。
なお、担保価値の評価は、土地と建物に分けて計算されます。土地の場合、例えば駅が近い物件や、大通りに面している物件などが評価は高めです。
また建物では、築年年数が浅い物件や、強度が高い鉄筋コンクリートなどの方が評価は上がります。
③空室にならないほどの「稼働力」があるのか
良い物件かどうか判断する際は「稼働力」も大事です。つまり、入居率が低いと安定した収益が期待できないからです。
エリアによって、ファミリー需要が高い場所や、反対に単身者需要が高い場所など入居者に違いがあるため、そのニーズを満たしている必要があります。
できるなら自分の足で現地に向かい、例えばファミリー層に人気があるエリアなら、近くに公園やショッピングセンターがあるかなど確認してみましょう。
(3)家賃収入がなくても返済可能な金額なのか
フルローンを利用する際は、万が一家賃収入がなくても「返済可能な金額かどうか」も考えましょう。
収支計画表を作成し、賃貸経営が上手くいかず家賃収入が途絶えるようなときでも、返済できるのかシミュレーションしてみるのが大切です。
フルローンは頭金を出さず融資を受けるものですが、不動産投資には諸経費や管理費、修繕積立金などローン以外にもかかる費用があるため、そのあたりの資金計画・返済計画も考えておく必要があります。
自己資金ゼロを煽る不動産会社は信用できる?
インターネットなどの広告で「自己資金ゼロ」を過剰に煽っている不動産会社を見かけたことがあるかもしれません。
また「自己資金ゼロで不動産購入できる」など、営業から紹介を受けて勧められるがまま契約してしまったという方もいるでしょう。
元手がなくても上手くいく人もいますが、運用が思い通りにいかなければ、資産形成にはならず最悪破産するということを覚えておいてください。
不動産投資はミドルリスク・ミドルリターンの投資方法です。絶対成功する・絶対儲かるといった投資法ではありません。
そのため、自己資金ゼロを煽る不動産会社を過度に信用するのは、リスクがあると考えるべきです。
本当に自己資金ゼロの人は不動産投資オススメしません
自己資金ゼロ、金融資産などもない人に「不動産投資はおすすめできない」と断言します。
例え年収が高くても、貯金がまったくない人だと突発的な出費に対応できないのが理由です。
失敗して自己破産に追い込まれるようだと、その後の生活が厳しくなってしまいます。
ただし「自己資金はあるが、頭金は出さない」という人であれば、出費が必要となったときでも対策が取れるため、有利だと考えられます。
この他、不動産投資の中には1万円からスタートできる不動産クラウドファンディングがあるので、資金が少ない場合はそれを利用してもよいでしょう。
自己資金ゼロで不動産投資に向いている人
自己資金ゼロで不動産投資を始めるのに適している人は「自分の土地をもっている人」です。
土地を所有していれば、購入するのは建物だけになるので、その分ローンの支払いが抑えられるという考え方です。
自分で所有する土地が利便性の良い場所にあるなら、高い収益性も期待できます。
一方で、例えばサラリーマンとは異なり毎月安定した収入を得られないような人は、いざという時のリスクに対応できないため、自己資金ゼロの不動産投資には向きません。
また、土地があっても場所が悪いのであれば、いくらか余裕のある自己資金を、最低限用意しておいた方がよいでしょう。
これからは融資条件がどんどん厳しくなる
今回著者が本記事を執筆しているのは2022年ですが「近年融資条件は特に厳しくなっている」ということを覚えておいてください。
融資条件がより厳しくなった理由にコロナの影響もありますが、サブリース事業の破綻を招いた株式会社スマートデイズの「かぼちゃの馬車事件」もあります。
この事件を機に、金融庁は銀行などの金融機関に注意喚起を行い、結果より厳格な審査基準が設けられるようになりました。
その中でも、不動産投資家の「属性(財産・収入状況)」は重要な判断材料の1つです。
自己資金ゼロでフルローンやオーバーローンを受けたいという気持ちはわかりますが、そのハードルは高くなっているということは今後のためにも理解しておきましょう。
まとめ
今回は、自己資金ゼロでも不動産投資が実践できる仕組みや、メリット・デメリットなどについて徹底解説してきました。
自己資金ゼロでも、フルローンやオーバーローンを利用すれば物件購入可能です。ただし、大きなリスクがあるという点は必ず覚えておきましょう。
株式投資やFXなどの投資商品と比較し、リスクが低いといわれる不動産投資ですが、絶対儲かるという保証はありません。
なお「少額で不動産投資をはじめてみたい」という人は、不動産投資の専門知識を持つ我々FP(ファインシャルプランナー)に一度相談してみてください。
あなたの状況にあった適確なアドバイスができます。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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