一人暮らしの平均貯金額はいくら?FPが節約や貯蓄を増やすコツを解説
令和2年(2020年)に実施した国勢調査によると、日本の総人口は1億2614万6千人でした。
上記の調査によれば、一人暮らしの単身世帯は世帯数の4割を占め最多となっています。
一人暮らしをしている方にとって、どのように貯蓄を進めるかは重要なテーマです。
なぜなら、いざというときに必要なお金を自分ですぐに工面しなければならないからです。
本記事では平均貯蓄額や一人暮らしで効率よく貯金する5つのコツと7つの貯蓄方法についてチェックします。ぜひ、貯蓄をする際の参考にしてください。
一人暮らしの平均貯蓄額はいくら?
一人暮らしの方は平均でどのくらいの貯蓄をしているのでしょうか。
令和4年(2022年)12月221日に発表された金融広報中央委員会「知るぽると」が発表した「家計の金融行動に関する世論調査2022年」(単身世帯調査)をもとに年代別・年収別の一人暮らしの平均貯蓄額と貯金ゼロの割合について解説します。
なお、ここでは貯蓄をいわゆる預貯金に限定せず、保険や有価証券などのための金融資産と同じ意味で用います。
(1)「年代別」一人暮らしの平均貯蓄額
調査結果によると2022年の金融資産保有額の平均は871万円でした。
しかし、金融資産の保有状況には偏りがありますので、それを考慮して金額順にデータを並べなして出す中央値では約100万円となりました。
資産に関しては平均値よりも中央値の方が実感に近い数字となりますので、一人暮らしの方の貯蓄は100万円前後が一般的と考えてよいでしょう。
次に世帯主の年代別で詳しく分析してみます。
年代 | 平均値 | 中央値 |
20代 | 176万円 | 20万円 |
30代 | 494万円 | 75万円 |
40代 | 657万円 | 53万円 |
50代 | 1,048万円 | 53万円 |
60代 | 1,388万円 | 300万円 |
70代 | 1,433万円 | 485万円 |
20代から50代までの世代では平均的な貯蓄額は増えているものの、中央値はあまり増えていません。
平均値が上昇するのは一定数の高貯蓄者がいるからであり、中央値の増加があまり見られないのは貯蓄をしていない、または貯蓄が少ない世帯の数が多いことを示しています。
このことから、若いうちから貯蓄をしている方とそうでない方の格差が広がっていると推定できます。
(2)「年収別」一人暮らしの平均貯蓄額
年収別にみると貯蓄額の平均値や中央値はどのように変化するのでしょうか。
年間収入 | 平均値 | 中央値 |
なし | 334万円 | 0万円 |
300万円未満 | 682万円 | 50万円 |
300~500万円未満 | 796万円 | 200万円 |
500~750万円未満 | 1,988万円 | 600万円 |
750~1,000万円未満 | 3,054万円 | 1,283万円 |
1,000~1,200万円未満 | 4,428万円 | 2,154万円 |
1,200万円以上 | 3,984万円 | 3,300蔓延 |
年収で見てみると、平均的な貯蓄額はほぼ年収に比例していることがわかります。
貯蓄額の中央値が一気に増加するのは世帯収入が500~750万円未満の世帯からです。
この年収が分水嶺となっているのがうかがえます。
(3)貯金ゼロの割合は約3割5分
アンケートで貯蓄がないと回答した世帯は全体の約34.5%でした。
単純計算で3分の1の世帯が金融資産などの貯蓄を持っていないことがわかります。
年代別で見ると割合は以下のとおりです。
年代 | 金融資産を持っていない世帯の割合 |
20代 | 22.6% |
30代 | 18.5% |
40代 | 14.8% |
50代 | 11.5% |
60代 | 8.0% |
70代 | 5.2% |
社会人になりたての20代では5世帯のうち1世帯、50代では10世帯のうち1世帯が貯蓄を持っていないとわかります。
一人暮らしが効率よく貯金するコツ5つ
一人暮らしでも効率的に貯蓄するには工夫が必要です。
年収から税金や社会保険料を差し引いた可処分所得(自分で自由に使える手取り収入)の中から貯蓄に回せるお金を増やすにはどうしたらよいのでしょうか。
ここでは効率よく貯蓄するための5つのコツとお金のプロであるファイナンシャルプランナー(FP)に相談する意義について解説します。
(1)家賃は収入の2割以内に抑える
1つ目のコツは住居費(賃貸物件の家賃・住宅ローンなど)を収入の2割以内に抑えることです。
年収別で家賃の割合をシミュレーションしてみます。
1年間の収入(年間所得) | 年間所得の2割 | 月額家賃・住宅ローン |
300万円 | 60万円 | 5万円 |
400万円 | 80万円 | 6万6千円 |
500万円 | 100万円 | 8万3千円 |
600万円 | 120万円 | 10万円 |
700万円 | 140万円 | 11万6千円 |
800万円 | 160万円 | 13万3千円 |
もちろん、地域によって物価や家賃の相場が異なるためこの数字を絶対に守らなければならないというわけではありませんが、住居費を多くても3割以内を目安とし、貯蓄に回すお金を増やしましょう。
(2)毎月の貯金額「◯◯円」と明確に決める
2つ目のコツは貯金額を明確に定めることです。
以前話題になった書籍『漫画 バビロンの大富豪の教え』では資産を築くための7つの教えの一つして「収入の1割を貯金する」ことを勧めていました。
月収が20万であれば毎月2万円、30万円であれば毎月3万円を目標として貯蓄します。
20代の方が毎月2万円でも1年間で24万円、5年間で120万円、10年間で240万円の貯蓄が可能です。
すると、30代になったときには平均値の494万円には及ばなくても中央値の75万円は軽々とクリアできます。
目標額を定めて毎月定額の貯金を積み重ねることで、まとまった金額の貯蓄を築くことが可能となるのです。
(3)収支を把握し固定費などの家計を見直す
3つ目のコツは固定費の見直しです。
家計簿に登場する支出には大きく分けて変動費と固定費があります。
変動費の内訳は以下のとおりです。
食費 | 食材や外食 |
日用品費 | 生活必需品や消耗品 |
衣料・服飾費 | 衣料品など |
交通費 | 電車・バス・タクシー料金など |
交際費 | 飲み会・ランチ代など |
美容費 | 美容院代・化粧品代など |
医療費 | 通院代・治療代金など |
特別費 | 冠婚葬祭など特別な事柄で計上 |
娯楽費・その他 | 趣味・娯楽・小遣い・雑費 |
「節約」や「節約術」と聞くと日々の食費や生活費を切り詰めたり、日用品を買い控えたりといった出費を抑制する方が多いかもしれません。
日々の暮らしに直結する変動費は削減するのが難しく、無理に削減するとストレスがたまってしまってモチベーションが低下するため長続きしません。
もちろん、変動費の抑制も重要ですがより大きな効果が得られるのは固定費の削減です。
固定費には以下のものが含まれます。
住居費 | 物件の家賃・住居ローン |
保険料 | 生命保険・医療保険・損害保険など支払っているすべての保険料 |
水道光熱費 | 水道代・電気代・ガス代の料金 |
通信費 | 固定電話料金・携帯電話料金・アプリやサブスクの料金・ネット回線費など |
自動車関連費 | 自動車税・ローン・駐車場代・自動車保険料など |
教育費 | 教育ローン・学費・塾や習い事の月謝 |
固定費は使っても使わなくても必ず払わなければならない費用で、家計を圧迫する大きな要因となります。
真っ先に見直しの対象となるのは保障内容が大きすぎる保険や高すぎる光熱費、使用していないサブスク、携帯電話料金、自動車ローンや教育ローンなどです。
中でも使用していないサブスクは使わなくても支払いでお金が出て行ってしまうので、使用状況を確認して早めに解約しましょう。
携帯電話についてはデータ中心であれば大手キャリアからセカンドキャリアや格安SIMのスマホに乗り換えると大きく削減できます。
各種ローンについては借り換えで支払額を下げられる可能性があります。
固定の削減は貯蓄を実現するための最短ルートといってもよいでしょう。
(4)金利の高い貯金口座を作るなど先取り貯金をする
4つ目のコツは高金利の銀行で銀行口座を作って貯金専用口座で先取り貯金をすることです。
2024年1月現在、メガバンクなどの大手金融機関の普通預金金利は年0.0010%という極めて低い状態(三菱UFJ銀行)です。
出典:三菱UFJ銀行「円預金金利」
しかし、ネット銀行ではそれよりも高い金利で普通預金ができるケースがあります。
少しでも金利が高い口座で貯蓄をすることで、わずかでも金利収入を得ることができます。
また、先取り貯金をすることでお金の無駄遣いを防ぐという効果もあります。
家計の状況に応じて高金利の金融機関で定額の先取り貯金をすることで、貯蓄を増やすことができるでしょう。
(5)クレジットカード、キャッシュレス決済を利用する
5つ目のコツはクレジットカードやコード決済などのキャッシュレス決済を利用することです。
クレジットカードやキャッシュレスを利用するメリットは以下の2点です。
- 支出の見える化ができる
- ポイントで投資信託などが買える
クレジットカードやキャッシュレスのサービスはアプリで管理できるようになっています。
アプリの管理画面を見ると、どのタイミングで何に使ったかすぐに把握できます。
これによりお金の使いみちが明確になるため支出の削減につなげられます。
また、利用することで得られるポイントを活用することでも貯蓄を増やせます。
クレジットカードやキャッシュレス決済を行うと、多くの場合、一定の割合でポイント還元が受けられます。
ポイントの中には投資信託などの金融商品を購入できるものもあるため、低リスクで金融資産を保有できるというメリットが得られます。
(6)FPにライフプランを作ってもらう
ここまでの5つのコツを実践してもなかなか貯蓄を貯められないかもしれません。
そんなときは資金計画のプロであるFPに相談してライフプランを作成するのも一つの方法です。
FPは家計管理や老後の生活設計・教育資金・住宅資金・資産運用・保険・介護・医療など幅広い分野のお金の相談に応じることができます。
自分のライフスタイルや結婚・出産・進学などのライフイベントに応じた資産運用や大切な資産を守るためのアドバイスもしてくれます。
自分一人で貯蓄プランを考えるのが苦手という方は、FPの利用を検討してみてはいかがでしょうか。
一人暮らしにおすすめの貯蓄方法7つ
ここからは貯蓄するために必要な貯金以外の方法を7つ紹介します。
(1)NISA
NISAとは少額投資非課税制度の略称で、株式や投資信託で得た利益が非課税になる仕組みのことです。
特定口座や一般口座で行った投資で利益が出ると、20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税0.315%)の税金を払わなければなりません。
しかし、NISA口座で行った取引であれば上記の利益が非課税となるため税金を払わなくてもよくなります。
2024年から改正された新NISAの制度が始まります。
新NISAは生涯で1,800万円の非課税枠が与えられる仕組みで、つみたて投資枠と成長投資枠の2つの枠を使って投資ができます。
つみたて投資枠は年間120万円まで、成長投資枠は年間240万円まで利用でき、1年間の利用枠の合計は360万円となります。
かつては5年だった非課税保有期間は無制限となったため、以前に比べて使いやすい制度となりました。
新NISAについて詳しく知りたい方は、下記記事を参照してみてください。
また、私が講師を務める「新NISA制度丸わかりセミナー」の動画をLINE友達限定にて公開しています。
- ✅つみたてNISAの落とし穴
- ✅新NISAの注意点
- ✅実際に私が実践している投資商品
- ✅成功するための鉄則
などリアルな情報がたくさんです。つみたてNISAで損をしている方、これからNISAを検討している方は、ぜひご覧ください。
(2)イデコ
イデコ(iDeCo:個人型確定拠出年金)とは、国民年金や厚生年金にといった公的年金にプラスして給付が受けられる個人年金保険の制度です。
20歳から積み立て可能で、原則60歳以降に受け取ります。
受け取り方は毎年分割となる年金方式と一括で受け取る一時金方式に分けられます。
iDeCoのメリットは、掛金の全額が所得控除の対象となることや運用中の利息・運用益が非課税となること、受取時も一定額までは税制優遇を得られることなどです。
iDeCo(イデコ)について詳しく知りたい方は、下記記事を参照してみてください。
iDeCoについて下記動画でも解説していますので、ぜひチェックしてみてください。
(3)投資信託
投資信託とは、小口の投資資金を集めて運用会社がまとめて運用する金融商品です。
投資対象は国内株式・海外株式・外国債券・国内債券・不動産などで、それらの商品に分散して投資します。
一つの株式に集中投資するのに比べるとリスクを大幅に軽減できます。
また、投資信託には投資金額が少なくて済み100円からでも投資できるというメリットもあります。
ただし、銀行預金と異なり元本保証ではないため注意が必要です。
投資信託について詳しく知りたい方は、下記記事を参照してみてください。
一方で投資商品の中には絶対に損をする商品もあります。下記動画ではそのような商品の特徴を解説していますので、損をしたくない方はぜひご覧ください。
(4)債券
債権とは、国や企業などが投資家からお金を借りたときに発行する有価証券です。
簡単に言えば、国や企業にお金を貸して一定期間後に利子や元本を返ってくる商品と考えてよいでしょう。
アメリカ政府が発効すれば米国債、日本政府が発効すれば日本国債(国債)となります。
株式や他の金融商品に比べると安全性が高いとされていますが、外貨建て商品や外国債の一部にはハイリスクなものがあるため慎重に選ばなければなりません。
(5)財形貯蓄
財形貯蓄(財形貯蓄制度)とは、国と企業が連携して従業員の資産づくりを支援する仕組みのことで、財形法(勤労者財産形成促進法)に基づいています。
月々の給与(給料)から一定額が天引きされて自動的に積み立てられるため、高い確率で資産を築くことができるでしょう。
財形貯蓄について詳しく知りたい方は、下記記事を参照してみてください。
(6)株式投資
株式投資とは企業が発行した株式を購入し、配当金や売買価格の差額によって利益を得る投資のことです。
株価が購入時より値上がりすれば差額分が利益となりますが、下落すれば損失となります。
株式を保有することで得られる株主優待や、定期的に分配される配当金を得るといったメリットもあります。
しかし、株価は非常に不安定であるため元本割れすることが珍しくありません。
利益は大きいものの、リスクも大きいと理解しなければなりません。
かつては証券会社と電話するなどして取引していましたが、現在はネット証券を通じて自分で売買できるようになっています。
(7)不動産投資クラウドファンディング
不動産クラウドファンディングとは不特定多数の投資家から資金を集めて行う不土さん投資のことです。
集まった資金でファンドを作り、不動産の購入・運用・売却などを行って利益を得ます。
少額で不動産投資に参加できて利回りが比較的高いといったメリットがある半面、元本保証ではない点や中途解約できない点、ファンドが倒産するリスクがある点に注意が必要です。
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貯蓄を増やすための近道は、支出を見直して貯蓄の原資を作り出すことです。
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まとめ
今回は一人暮らしの貯蓄をテーマに、貯蓄の現状と貯蓄をするための5つのコツ、7つの貯蓄方法について解説しました。
収入が少なくても、あらかじめ決めた金額を毎月コツコツ積立てることで大きな資産を築くことができます。
長期投資をするには資金管理が非常に重要ですが、一人ではなかなか実行できないかもしれません。
そんなときはお金のプロであるFPを積極的に活用してみてはいかがでしょうか。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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