アルファ・ファイナンシャルプラナーズ

つみたてNISA・新NISAの出口戦略|暴落が来ても後悔しない「取り崩し方」とライフプランの作り方

公開日:
代表取締役 田中佑輝

この記事の監修者:

アルファ・ファイナンシャルプランナーズ 代表取締役/田中佑輝

「暴落が来たら、積み立ててきたNISAはどうすればいいの?」「そろそろ使いたいけど、売り時がわからない」——つみたてNISAや新NISAで積み立てを続けてきた方から、こういった相談が増えています。

積み立てを始めるときは「長期・分散・積立」という言葉をよく耳にしますが、「どうやって使うか(出口)」についての情報は圧倒的に少ないのが現実です。そして、暴落というイレギュラーな局面が重なったとき、多くの人が「売るべきか、待つべきか」で判断を誤ってしまいます。

この記事では、シンガポールの外資系銀行で2,000件以上の資産形成相談を手がけてきた田中佑輝(アルファ・ファイナンシャルプランナーズ代表)の視点から、つみたてNISA・新NISAの出口戦略を「暴落時の対処法」と「ライフプランに合わせた取り崩し方」に分けて、具体的にお伝えします。

つみたてNISA・新NISAの出口戦略|暴落が来ても後悔しない「取り崩し方」とライフプランの作り方

そもそも「出口戦略」とは何か——積み立てより難しい「使い方」の話

出口戦略とは、積み立てた資産を「いつ・どのように・どれだけ」売却・取り崩していくかの計画のことです。

投資の世界では「買い方(積み立て)」より「売り方(取り崩し)」の方が難しいと言われます。積み立ては「毎月決まった額を入れるだけ」ですが、取り崩しは相場の状況、自分の生活費、税金、将来の必要資金——これらを同時に考えながら判断しなければならないからです。

特に、暴落のタイミングと取り崩しのタイミングが重なったときに、どう動くかを事前に決めておくかどうかで、最終的に手元に残る資産は大きく変わります。

新NISAになって、出口戦略の重要性はさらに増した

旧つみたてNISAは「最長20年」という非課税期間の縛りがありましたが、2024年からスタートした新NISAは非課税期間が無期限になりました。これは大きな変化です。

「無期限だからとりあえず持ち続ければいい」と思いがちですが、それが落とし穴でもあります。出口を決めずに持ち続けていると、いざ使いたいときに相場が暴落していて「売れない」という状況に陥りやすくなります。非課税期間が無期限だからこそ、「いつまでに・何のために使うか」という出口の設計が以前より重要になっているのです。


暴落が起きたとき、NISAはどうなる?まず知っておくべき「3つの事実」

暴落の話をする前に、冷静に事実を整理しておきましょう。感情で動かないためには、「何が起きているか」を正確に理解することが最初のステップです。

事実①:暴落は「歴史上、必ず回復してきた」

2008年のリーマンショック、2020年のコロナショック——どちらも当時は「株価が半分近くになった」という衝撃的な暴落でした。しかし、どちらも数年以内に回復し、その後さらに高値を更新しています。

長期の分散投資(特にインデックス投資)は、こうした歴史的な回復力を前提に設計されています。つみたてNISAや新NISAで積み立てているオルカン(全世界株式)やS&P500連動の商品は、まさにこの考え方に基づいています。

ただし、「必ず回復する」という前提が成り立つのは「売らずに持ち続けられる場合に限る」という点が重要です。

事実②:暴落中に売ると「損失が確定する」

含み損(評価額が下がっている状態)はあくまでも「帳簿上の損失」です。売った瞬間に初めて損失が確定します。

多くの人が暴落時にやってしまうのが、「これ以上下がる前に売ってしまおう」という行動です。しかし、売った後に相場が回復したとき、その恩恵を受けることができません。歴史的に見ても、「暴落の底で売り、回復を見逃す」というパターンが最も損をするケースです。

事実③:NISAは損益通算ができない

通常の課税口座であれば、ある銘柄で損が出た場合、別の銘柄の利益と相殺(損益通算)できます。しかし、NISA口座内の損失は損益通算の対象外です。

つまり、暴落時にNISAで損切り売却しても、税務上のメリットはまったくありません。売るとしたら「損失を受け入れる」という判断になります。だからこそ、NISAの取り崩しは慎重に計画的に行う必要があるのです。


暴落時に「やってはいけないこと」と「やるべきこと」

田中が相談業務を通じて繰り返し目にしてきたのは、暴落のたびに同じような失敗をする人のパターンです。事前に「やってはいけないこと」を知っておくだけで、多くの失敗は防げます。

やってはいけないこと①:全部売って「現金に戻す」

「このまま下がり続けたら怖い。一旦現金にしておこう」という判断は、長期投資において最も避けたい行動の一つです。

問題は、「いつ戻すか」の判断が非常に難しいことです。現金に戻した後、「まだ下がるかも」と思っているうちに相場が回復し、高値で再び買い直すことになります。これを繰り返すと、結果的に「高く買って安く売る」という最悪のパターンになります。

やってはいけないこと②:積み立てを止める

暴落時に積み立てを止めてしまうのも、長期的には損をする行動です。暴落中は基準価額が下がっているため、同じ積立金額でより多くの口数を買えます。これが「ドルコスト平均法」の効果で、暴落は長期積立投資家にとって「安く仕込める期間」でもあります。

感情的には「今は怖いから止めよう」と思いがちですが、積み立てを継続することが結果的には資産形成を加速させます。

やってはいけないこと③:毎日値動きを確認する

暴落時に毎日アプリを開いて残高を確認するのは、精神的にも判断力にも悪影響があります。数字が動くたびに「売ろうかな」という気持ちが揺れ、感情的な判断につながりやすくなります。

長期投資において、日々の値動きは基本的に「ノイズ」です。月次か四半期ごとに確認するくらいのペースが、精神的にも投資判断的にも適切です。

暴落時にやるべきこと:「自分のライフプランと照らし合わせる」

暴落が起きたとき、最初にすべきことは「自分はいつ・何のためにこのお金を使う予定だったか」を確認することです。

  • 使う予定が5年以上先なら:積み立てを継続し、回復を待つ
  • 使う予定が2〜3年以内なら:今すぐ全額売る必要はないが、一部を安全資産に移す検討を始める
  • 使う予定が1年以内なら:暴落前に安全資産へ移しておくべきだった(今後のための教訓にする)

この判断ができるのは、事前にライフプランと出口戦略を決めている人だけです。決めていない人は「どうしよう」で止まってしまいます。


ライフプラン別の出口戦略——「いつ・何のために使うか」で取り崩し方は変わる

出口戦略は「一律にこうすればいい」というものではなく、使う目的と時期によって大きく変わります。田中が相談現場でよく見るパターンを3つご紹介します。

パターンA:老後資金として使う場合(使用時期:60〜65歳以降)

最も多いのがこのパターンです。30〜40代から積み立てを始め、60代以降の老後生活費として使う計画です。

基本的な考え方:「退職5年前から徐々にリスクを下げる」

たとえば60歳で退職予定なら、55歳頃から資産配分を少しずつ安全方向にシフトします。具体的には、積み立ての新規購入は株式インデックスのまま継続しつつ、すでに積み上がった資産の一部を債券や現金に移すイメージです。

取り崩し方法としては、「定率取り崩し(毎月残高の一定割合を売る)」が長続きしやすいと言われています。仮に残高1,000万円から毎月4万円を取り崩す場合、残高が減っても取り崩し額も自動的に減るため、資産が早期に底をつくリスクを軽減できます。

一方で「定額取り崩し(毎月固定額を引き出す)」は生活費の計画が立てやすいメリットがありますが、暴落時に安い価格で大量の口数を売ることになるデメリットもあります。どちらが向いているかは、年金収入の額や生活費の固定度によって変わります。

パターンB:子どもの教育費として使う場合(使用時期:5〜15年後)

「子どもが18歳になったときの大学費用に使う」という目的でNISAを活用している方も多くいます。この場合、使う時期が比較的近い(かつ時期が明確)ため、出口の設計がより重要です。

田中がよく勧めるのが、「使う3〜5年前から段階的に売却を始める」方法です。たとえば子どもが13〜14歳になった頃から毎年一定額を売却し、定期預金や普通預金へ移していきます。こうすることで、入学直前に暴落が起きても「使えるお金がない」という最悪の事態を回避できます。

教育費の場合、「使う時期が絶対にずらせない」という性質があります。老後資金なら「もう少し働けばいい」という選択肢もありますが、子どもの大学入学は待ってもらえません。この「待てない資金」こそ、早めに安全資産へ移す必要があります。

なお、子どもの年齢(0歳〜大学卒業まで)に応じていつ・いくら具体的な教育資金が必要になるのか、全体の予算感についてはこちらの『子育て費用シミュレーション2026|0歳から大学卒業までいくら必要?【最新無償化対応】』を参考にしてください。

パターンC:住宅購入の頭金として使う場合(使用時期:3〜7年後)

NISAで積み立てたお金を住宅購入の頭金に充てる計画の方も増えています。ただ、これは注意が必要なパターンです。

住宅購入は「良い物件が出たら動く」という性質があり、使用時期が読みにくいうえ、購入のタイミングを自分でコントロールしにくい場合があります。

そのため田中は、「住宅購入予定があるなら、その分の資金はNISAではなく定期預金や個人向け国債などの安全資産で別管理する」ことを勧めています。せっかく積み立てたNISAを暴落のタイミングで売り崩すことになれば、住宅取得コストが大幅に増えることにもなりかねません。

また、住宅購入を検討する上で、自分の年収に対してどれくらいのローンを組むのが適正なのか、無理のない返済計画についてはこちらの『年収800万円の適正な住宅ローンはいくら?FPが返済計画の立て方も解説』で詳しく解説しています。


「取り崩し順序」も出口戦略のうち——どの口座から売るべきか

新NISAと並行して、iDeCo・課税口座・普通預金など複数の資産を持っている方も多いでしょう。どの口座から取り崩すかで、税負担や資産の減り方が大きく変わります。

口座の種類取り崩す順序の目安理由
普通預金・定期預金まず使う利息がほぼつかないため、先に使っても機会損失が少ない
課税口座(特定口座)次に使う含み益には税金がかかるが、損益通算できる柔軟性がある
新NISA(成長投資枠)その次非課税の恩恵を長く享受するため、できるだけ長く保有
新NISA(つみたて投資枠)できるだけ後回し非課税期間が無期限のため、長期複利を最大限活かす
iDeCo受給開始年齢に合わせる60歳以降の受け取り方(一時金 vs 年金)で税額が変わる

この順序はあくまでも一般的な目安であり、個人の税状況・年収・退職金の有無によって最適解は変わります。特にiDeCoの受け取り方は、退職金との兼ね合いで税負担が大きく変わるため、50代後半になったら必ずFPや税理士に相談することをおすすめします


「4%ルール」は日本人に使えるか?——老後の取り崩しで参考にされる考え方の検証

老後の資産取り崩しの話題で必ず出てくるのが「4%ルール」です。これはアメリカの研究(トリニティスタディ)に基づいた考え方で、「保有資産の年4%を毎年取り崩しても、30年間は資産が底をつかない」という内容です。

1,000万円の資産があれば年40万円(月約3.3万円)、3,000万円なら年120万円(月10万円)を取り崩せる計算です。

日本人がそのまま使うと危ない3つの理由

ただし、この4%ルールには「アメリカの株式・債券市場を前提にしている」という前提条件があります。日本人がそのまま適用するときには、次の点に注意が必要です。

  • 長寿リスク:日本の平均寿命はアメリカより長く、90歳・100歳まで生きる可能性を考えると30年では足りないケースがある
  • 円安・インフレリスク:円建ての生活費が物価上昇で増えた場合、実質的な取り崩し率が上がる
  • 年金との組み合わせ:日本では公的年金が老後収入の大きな柱になるため、年金受給額を差し引いた「不足分だけ取り崩す」設計が現実的

田中が相談現場で活用するのは「4%ルールをそのまま使う」のではなく、「年金収入で賄えない生活費の不足分を、資産から逆算して取り崩す」という個別設計です。4%ルールはあくまで参考値として使い、自分の家計に合った数字を計算することが大切です。


年代別チェック——今の自分に合った出口戦略の考え方

出口戦略は「何歳の時点で考えるか」でも、優先すべき行動が変わります。自分の年代に合ったチェックポイントを確認してみてください。

30代:出口はまだ先でも「目的を決める」だけで十分

30代でつみたてNISAや新NISAを始めたばかりなら、出口を細かく設計する必要はまだありません。ただ、「何のために積み立てているか」だけは明確にしておくことが重要です。老後資金なのか、教育費なのか、それとも住宅購入なのか——目的が決まれば、使う時期のおおよその見当がつきます。

30代は積み立てを継続することが最優先。暴落が来ても「まだ20〜30年ある」という時間が最大の武器です。

40代:出口を「5年単位」で考え始める時期

40代になると、教育費のピークや老後までの残り年数が具体的に見えてきます。このタイミングでライフプラン表(キャッシュフロー表)を作り、いつ・いくら必要かを可視化することを強くおすすめします。

「教育費は50歳頃にピークが来る」「老後は65歳から」という目安が見えると、NISAで積み上げた資産のうち、どの部分をいつ頃から移し始めればいいかが見えてきます。40代は積み立てを続けながら、出口の設計を始める時期です。

50代:「取り崩し5年前」から具体的な行動を始める

50代は出口戦略を本格的に動かす時期です。退職まで10年を切ってきたなら、次のことを順番に確認してください。

  1. 退職金の見込み額を会社に確認する
  2. 年金の受給見込み額を「ねんきんネット」で確認する
  3. 老後の月間生活費の目標を試算する
  4. 退職後の収支を年単位でシミュレーションする
  5. NISAの資産のうち「いつ頃から取り崩す分か」を明確にする
  6. 資産配分を少しずつ安定方向へシフトし始める

このリストを一人でやろうとすると判断が難しい項目も出てきます。特に退職金とiDeCoの受け取り方の組み合わせは税負担に直結するため、この時期こそFP相談の価値が高くなります。

50代から退職金を視野に入れ、「大きく減らさない守りの運用」を軸に新NISAやiDeCoを賢く使いこなすための全体戦略については『50代の資産運用|おすすめポートフォリオと新NISA・iDeCoの賢い使い方』に目を通しておきましょう。

60代以降:「使いながら育てる」という新しい発想

60代以降は取り崩し期に入りますが、新NISAの非課税期間が無期限になったことで、「全部一気に売らず、使う分だけ少しずつ売る」という運用が現実的になりました。

たとえば70代まで元気で働いたり、年金収入が十分であれば、NISAの資産は70代・80代まで運用を続けることも選択肢のひとつです。「老後に使うために積み立てた」と思っていたお金が、生涯を通じた資産として機能するケースも増えています。


実際の相談事例から学ぶ——出口戦略を考えておいてよかった・悪かったケース

田中が実際に接してきた相談の中から、出口戦略の有無が結果を分けたケースをご紹介します。(プライバシー保護のため、一部内容を変更しています)

ケースA:計画通りに動いた50代女性の事例

つみたてNISAを45歳から始め、60歳の退職をゴールに設定していたAさん。55歳の時点でライフプラン表を作り直し、「退職後の生活費は年金+月5万円の取り崩しで足りる」という計算を確認していました。

58歳頃に相場が大きく下落する局面がありましたが、「まだ2年ある。退職後も定率で少しずつ売る計画だから焦る必要はない」と判断し、積み立てを継続。その後相場が回復し、退職時には計画通りの資産を確保できました。

成功の理由:「いつ・いくら必要か」が事前に明確だったため、暴落時に感情で動かずに済んだ。

ケースB:計画がなかった40代男性の失敗事例

「老後のためにNISAをやっている」と言いつつ、具体的な出口を考えていなかったBさん。子どもの大学入学が近づいてきたとき、相場が急落。「学費が払えない」という危機感から、損失が出た状態でNISAを売却せざるを得ませんでした。

「老後用」と思っていたお金を教育費に充ててしまい、老後資産の計画も崩れるという連鎖が起きました。

失敗の理由:「何のために積み立てているか」が曖昧で、教育費と老後資金が同じ口座に混在していた。

このケースから学べることは、「目的別に資金を分けて管理する」という基本の重要さです。教育費のように「使う時期が固定されていて待てない資金」は、リスク資産ではなく安全資産で別に管理しておく必要があります。


まとめ:「守りの売却術」は、積み立て開始と同時に考え始めるもの

つみたてNISA・新NISAの出口戦略について、暴落時の対応からライフプラン別の取り崩し方まで詳しくお伝えしてきました。最後に、大事なポイントを整理します。

  • 暴落時は「売らない」「積み立てを止めない」が基本行動
  • NISAは損益通算ができないため、暴落中の売却は慎重に
  • 出口戦略は「いつ・何のために使うか」で大きく変わる
  • 教育費のように「待てない資金」はリスク資産で持たない
  • 老後資金は「退職5年前から段階的にリスクを下げる」が目安
  • 取り崩す口座の順序も税負担に影響する
  • 4%ルールは参考値。年金収入との差額を逆算するのが日本人には現実的

田中が何度も繰り返してきた言葉があります。「投資で失敗する人の多くは、知識が足りないのではなく、計画が足りないのです」。暴落が来ても焦らずに動けるのは、事前にシナリオを考えておいた人だけです。

出口戦略は、難しく考える必要はありません。まず「自分はいつ・何のためにこのお金を使うのか」を紙に書き出すことから始めてみてください。それだけで、次に相場が揺れたときの行動がずいぶん変わってくるはずです。

「暴落が来たら具体的にどう動けばいい?」「iDeCoとNISAはどちらを先に使うべき?」「今の年齢から出口を考えるのに遅い?」——こうした具体的な疑問については、このあとのよくある質問でまとめてお答えしています。ぜひ続けてご確認ください。

この記事の監修者

代表取締役/田中佑輝
アルファ・ファイナンシャルプランナーズ 代表取締役/田中佑輝

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在し、グローバルな金融リテラシーを培う。外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャーなどを経て株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズを創業。実務の傍ら、Bond University大学院にて経営学修士(MBA)を取得。現場での豊富な実務経験と理論に基づき、単なる運用益にとらわれない「一生涯お金に困らないための資産形成」を提唱。富裕層から一般層まで自身で2,000件以上、代表を務める同社全体ではのべ3万件以上の資産運用のアドバイス実績を持つ。

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