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教育ローンの返済が大変になったら?返済シミュレーションや対策を解説

公開日:2024/01/28
悩む

入学前からでも利用できて資金が一括入金される教育ローンは、何かと準備しなければならない保護者にとって非常に役立つものです。

しかし、会社の倒産など想定していないイレギュラーにより教育ローンが当初の予定通り返済できない方もいらっしゃるかもしれません。

本記事では教育ローンの概要や種類、子どもにかかる大学進学までの学費教育ローンの平均返済額と返済期間、返済のシミュレーション、滞納しそうになった時の相談先などについて解説します。

教育ローンの返済は親が返済する

親子

教育ローンとは子どもの高校進学や大学進学のための学費に用途を限った借入のことで、家計の負担を軽減してくれるローンのことです。

教育ローンと同じように学費のために借りられるのが奨学金です。

両者は融資されたお金の受け取り方法や借入れ・返済する人に違いがあります。

それぞれを見ていきましょう。

(1)教育ローンの返済は親がする

教育ローンの融資先は親であり返済も親が行います。

教育ローンの使途は教育費に限定されているため、それ以外の使いみちに転用することはできません。

一般的なフリーローンに比べると低利で融資を受けられます。

学生が成人しており、社会人として勤務収入など安定した収入源があって独立した生計を営んでいる場合は返済資金を工面できるとみなされ学生本人に貸し付けられることもあります。

(2)奨学金の返済は学生本人がする

奨学金とは、経済的な理由で進学が難しい学生に進学のための資金の給付や貸し出しを行う制度のことです。

奨学金には給付型と貸与型がありますが、教育ローンと比較されるのは返還の義務がある貸出型です。

奨学金の貸し手には日本学生支援機構・自治体・民間(大学や財団など)がありますが、最も有名なのは日本学生支援機構の給付金です。

平成16年までは「育英会」という組織が運営していたため、そちらの名称を記憶している方も多いかもしれません。

日本学生支援機構の奨学金は無利息の第一種奨学金利息ありの第二種奨学金があります。

借り手は学生本人ですので、自分自身で奨学金を返済しなければなりません。

教育ローンは大きく2つがある

教育ローンには国が行う教育ローン銀行などの民間金融機関が提供する教育ローンの2種類が有ります。

(1)「国」の教育ローン

国の教育ローンは日本政策金融公庫が行っています。主な特徴は以下の8点です。

  • 上限350万円まで借入可能
  • 金利は年2.25%で固定
  • 返済期間は18年以内
  • 世帯年収による制限がある
  • 融資の対象は修業年限3か月以上の学校
  • 日本学生支援機構の奨学金と併用可能
  • 幅広い用途で使用できる
  • 受験前でも申込み可能

国の教育ローンの上限は350万円です。海外留学の場合や一手の条件を満たす場合は450万円まで借入可能です。

金利は年2.25%と一般的なフリーローンと比べてかなりの低利率で融資を受けられます。

返済期間は18年以内で、希望により3年・5年・7年払いのように自由に年限を設定できます。

世帯主や世帯全体の年収(世帯収入)と子供の人数によって融資を受けられるかどうかが決まってきます。

子供の人数世帯年収(所得)の上限額
1人790万円
2人890万円
3人990万円
4人1,090万円
5人1,190万円
出典:日本政策金融公庫

世帯年収の上限を超えていなければ、国の教育ローンに申し込みできます。

融資の対象となるのは修業年限が3か月以上の教育機関で、高等専門学校・大学・大学院・短期大学・専修学校・専門学校・各種学校など幅広い教育機関が対象となります。

融資金の使途は入学金などの学校納付金や受験費用(受験料や交通費・宿泊費を含む)、授業料、在学のための居住費、教材費等の勉強に必要な費用、融資のための保証料など教育に関連することであれば幅広く認められています。

奨学金と併用できる点や、受験前でも受け付けてくれるため利便性が高いのも特徴です。ただし、融資にはある程度の時間が必要であるため、必要な時期の2~3カ月前に余裕をもって必要書類を提出するなど早めに申し込むようにしましょう。

(2)「銀行」の教育ローン

銀行などの民間金融機関でも教育ローン(カードローン型をて)を受け付けています。民間金融機関の特徴は以下のとおりです。

  1. ✅年収の下限条件がある
  2. ✅最低勤続年数の条件がある
  3. ✅上限は金融機関ごとで異なる
  4. ✅使途は教育関連に限定
  5. ✅金利は2~5%と金融機関によって異なる

国の教育ローンとことなり貸出要件がある程度厳しくなっています。

年収の下限は金融機関によって異なりますが、200万円前後に設定されていることが多いようです。

最低勤続年数が定められていることからも、返済能力の有無をしっかり見極めていることがわかります。

融資限度額の上限は国の教育ローンより高いことが多いため、私立大学の進学など高額の学費を必要とする場合に民間金融機関を検討してもよいでしょう。

金利は金融機関によって幅がありますので、貸出条件などを見極めながら返済可能な金融機関の教育ローンを選びましょう。

詳しい内容については公式のホームページをご覧いただくか、メールや電話などでお問い合わせください。

子どもにかかる学費はいくら?

教育費

子どもの学費はどのくらいかかると見積もるべきなのでしょうか。国公立大学に進学する場合と私立大学に進学する場合で分けて目安となる金額を試算してみましょう。

(1)国公立大学に進学する場合

幼稚園から大学まですべて公立で進学した場合の見積もりは以下のとおりです。

幼稚園47.3万円
小学校211.2万円
中学校161.6万円
高校154.3万円
大学248.1万円
合計822.5万円
出典:日本政策金融公庫 

大学まで進学するには諸経費を入れて考えると900万円用意する必要があります。

(2)私立大学に進学する場合

幼稚園から大学まですべて私立だった場合は以下のとおりです。

幼稚園92.5万円
小学校1,000万円
中学校430.4万円
高校315.6万円
大学469.0万円
合計2,307.5万円
出典:日本政策金融公庫

すべて私立で進学した場合、すべて公立だったときと比べ得ると約2.8倍の教育費がかかります。

子どもの教育費についてより詳しく知りたい方は、下記記事を参照してみてください。

教育ローンの平均返済額と期間

教育ローンの平均返済額はどのくらいなのでしょうか。金額や期間についてまとめます。

(1)教育ローンの平均返済額

教育ローンの返済額は借入機関や金額によってまちまちですが、参考となるデータとして東京私大教連が出した2022年の「私立大学新入生の家計負担調査」があります。

このデータを参考に平均返済額を見てみましょう。

上記のデータによると、入学時の費用を借入した家庭は全体の14.3%で、借入額の全体平均は196万8,000円(自宅通学者・自宅外通学者の平均)でした。

(2)教育ローンの返済期間

返済期間は国の教育ローンと銀行の教育ローンで異なります。

国の教育ローン最長18年
銀行の教育ローン銀行ごとで異なる 毎年の返済額が少ないほど長くなる 平均で10~20年
著者作成

実際に教育ローンの返済をシミュレーションしてみる

男性

借入の平均額である196万8,000円(計算上は197万円)を借り入れた場合、国の教育ローンと銀行の教育ローンでどの程度の違いがあるのでしょうか。

以下の条件でシミュレーションを行います。

借入額197万円
金利年2.2%
返済期間5年・10年・15年
ボーナスでの元金返済なし
著者作成

(1)国の教育ローンの返済シミュレーション

はじめに、日本政策金融公庫のシミュレーターを使って返済シミュレーションを行いました。

返済期間5年10年15年
毎月の返済額35,400円18,500円13,000円
返済総額 (借入総額)2,082,900円2,199,800円2,320,800円
出典:日本政策金融公庫

返済年数が短いほど返済総額が少なくなりますが、月々の負担が大きくなります。

(2)銀行の教育ローンの返済シミュレーション

次に3大メガバンク(三菱UFJ銀行・みずほ銀行・三井住友銀行)の一角であるみずほ銀行の教育ローンでシミュレーションしてみましょう。

基本条件は国の教育ローンと同じですが、年利は固定金利4.60%で計算します。

返済期間5年10年15年
毎月の返済額36,816円20,511円設定なし
返済総額 (借入総額)2,208.960円2,461,320円設定なし
出典:みずほ銀行

国の教育ローンより利率が高いため、毎月の返済額や返済総額が多くなります。

月額の返済額を減らすと、金利が増えてしまうと覚えておきましょう。

教育ローンの返済が滞納しそうになったら?

悩む

教育ローンの返済が滞りそうになった場合、どうすればよいのでしょうか。

相談先や対処法についてまとめます。

(1)金融機関に相談する

教育ローンが支払えない場合、以下のようなデメリットが発生します。

  1. ✅遅滞損害金を請求される
  2. ✅信用情報に傷がつく
  3. ✅全額一括返済を請求される
  4. ✅連帯保証人に請求される
  5. ✅財産が差し押さえられてしまう

教育ローンを滞納すると返済期日の翌日から遅滞損害金が発生します。

損害金の利率は通常の利率よりも高いため大きな負担となるでしょう。

延滞が発生してしまうと信用情報機関に「信用事故」の情報が掲載されてしまいます。

俗にいうブラックリストに掲載されてしまいます。

そうなると、他の借入の審査も厳しくなってしまうでしょう。

滞納が数カ月続くと債務の一括返済を求められる可能性があります。

元本・利子・遅滞損害金の全てを無理にでも支払わなければならないため、かなり困難な状況となるでしょう。

また、連帯保証人に債務が請求されたり、財産が差し押さえられたりといった事態に発展する可能性もあります。

返済が厳しくなることが明らかになった場合、できるだけ速やかに教育ローンの借入先の金融機関に返済方法などについて連絡して相談しましょう。

交渉次第では元金を据え置いて利息だけの返済にするといった対応策を講じてくれる可能性があります。

(2)債務整理するのも一つの選択肢

借入先と相談しても返済のめどがつかなかった場合、債務整理することも選択肢の一つとなります。

主な債務整理の方法は以下の3つです。

  • 自己破産
  • 任意整理
  • 個人再生

自己破産は裁判所に申し立てて借金の返済義務を免除してもらう仕組みです。

原則としてすべての借金が免除されますが、クレジットカードやローン・キャッシングが利用できなくなることや保証人に影響がる可能性があること、財産の処分を伴う可能性があることなどからデメリットも少なくありません。

任意整理は債権者(教育ローンの場合は借入先の金融機関)と交渉して返済負担を軽減する方法です。

個人再生は裁判所に再生計画案を認可しても洗い、それにもとづいて債務を減らして分割で返済する方法です。

返済が大変にならないよう借りる前にFPに相談

専門家

教育ローンの返済が滞ってしまうと、子どもの教育どころか家族全員の生活に大きな悪影響を与えてしまいます。

教育ローンのような長期的な見通しが必要な借入をするには、ライフプランをしっかり見据えた計画を立案しなければなりません。

そんなときに頼りになるのが資産運用の専門家であるファイナンシャルプランナー(FP)です。

お金の専門家であるFPは5年・10年といった先を見据えた資金計画の立案に長けています。

教育ローンを契約する前に、資金繰りのプロであるFPにぜひともご相談ください。

教育ローン返済についてよくある質問

質問

ここからは教育ローンの返済に関するよくある質問にお答えします。

(1)教育ローンの金利相場はいくつ?

2024年(令和6年)1月時点の国の教育ローンの金利は固定金利で年2.25%です。

銀行ローンの金利は、国のローンよりも高めに設定されています。

2024年1月時点では変動金利で3%台後半、固定金利で4%台後半が金利の相場です。

金利はその時々の経済状況で大きく変動するため、借りる前に各金融機関で金利を確認しておいた方がよいでしょう。

(2)教育ローンを借りる時に保証人いる?

国の教育ローンの場合、教育資金融資保証基金を利用するときは連帯保証人不要です。

しかし、保証基金を利用しない場合は連帯保証人を立てなければなりません。

銀行の教育ローンの場合、保証会社・保証機関が入っていれば審査が厳しくなるため保証人は不要です。

(3)繰り上げ返済のメリットある?

繰り上げ返済(繰上返済)のメリットは借入の元本を減らすことで支払い総額を減額できることです。

一時的に返済額が大きくなりますが、その分、後の返済が楽になるでしょう。

(4)返済ができない時は途中で返済期限の延期できる?

延期できるかどうかは借入先との話し合いによります。

返済ができない可能性が出てきた場合は、速やかに借入先に相談することが必要です。

話し合いによっては、返済期間の延長や元金据置、返済額の見直しなどが行われる可能性があるからです。

(5)借り換えをしたら返済額が減ること可能なの?

借り換えによって返済額が減る可能性があります。

減額となる可能性があるのは、借り換え前に比べ借り換え後の金利負担が小さくなるケースです。

両者の金利差が小さい場合は借り換えの効果はあまりないかもしれません。

(6)親がなくなった時の返済はどうなる?

返済中に債務者である親が亡くなった場合、債務は連帯保証人に引き継がれてその人が払うことになります。

連帯保証人に迷惑をかけることになりますので、誰に依頼するか慎重に考えて決めましょう。

まとめ

家族

今回は教育ローンの基本知識や子どもの学費、返済シミュレーションなどといった内容を中心に紹介しました。

平均して200万円近くの借り入れとなる教育ローンは借り手である親にとっても大きな負担となります。

いかにお子さまのためとはいえ、安易に借り入れてしまうと、返済の見込みが狂ったときに生活費を賄うことができず破綻してしまう可能性も否定できません。

教育ローンを借り入れるべきかどうか、返済計画をどのように立てるべきかなど判断に迷うときは資金繰りのプロであるFPに相談するのが一番です。

FPはライフステージに応じた資金繰りを提案できるお金の専門家ですので、教育ローンを組む最適なタイミングについても有効なアドバイスができます。

教育ローンを借り入れる前に、ぜひ一度、FPに相談されてはいかがでしょうか。

著者

代表取締役 田中佑輝
代表取締役 田中佑輝株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズ
AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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