民間医療保険の仕組みとは?選び方や押さえるべきポイントを解説
病気やケガによる入院、それに伴う手術を行なった場合に給付金が受け取れる保険を医療保険と言います。
この医療保険には公的医療保険と民間医療保険の2つがあり、公的医療保険ではカバーできない自己負担分などを補うためのものとして民間医療保険に加入している方も多いことでしょう。
保険内容は、医療保障から生活保障、死亡保障と豊富で、保険商品を取り扱っている民間保険会社によって違っているので、その内容をしっかりと把握することも重要です。
本記事では、民間医療保険の仕組みや選び方のポイントを解説していきます。
民間医療保険の仕組みとは
民間医療保険は、生命保険会社や損害保険会社など、民間の保険会社が販売している保険商品で生命保険の一種です。
毎月、契約した一定の保険料を支払うことで公的医療保険だけではカバーできない費用を補う役割を担うのが民間医療保険と言えます。
例えば病気やケガで入院した場合、公的医療保険で支払われる治療費の他にも差額ベッド代や食事代、雑費、通院時の診察や診療にかかる医療費や交通費、更には入院時の収入減少分などは全額自己負担となります。
そこで、それらの経済的な負担を、民間医療保険で補うことになるのです。
民間医療保険には、個人で任意加入することになりますが注意点があります。それは、加入の際に健康状態を報告することが必要となるので、誰もが加入できるわけではないことです。
既往症や罹患したことがある病気の病歴によっては加入することができないことがあります。
また、民間医療保険は保険会社や保険商品によって、保障内容や給付金額、月々の保険料などが異なるので、自身に合った商品を選ばないと無駄になる可能性もあるので注意が必要です。
民間医療保険に加入するメリットは?公的医療保険との違い
民間医療保険に加入することで、公的医療保険では補いきれない部分をカバーできることは理解していただけたと思います。
民間医療保険に加入することで得られるメリットはそれだけなのでしょうか?公的医療保険に加入しているだけではダメなのでしょうか?
ここからは民間医療保険に加入することで得られるメリットと公的医療保険との違いを詳しく解説していきます。
(1)民間医療保険に加入するメリット
民間医療保険に加入する最大のメリットは、保障範囲が広い点ではないでしょうか。医療保険に加入することで、病気やケガによる入院などにかかる費用をカバーすることができます。
被保険者は生きている間、さまざまな病気やケガに対する医療費をカバーできるのは、民間保険に加入する利点です。
例えば、保障対象が悪性新生物(がん)に限られる「がん保険」であれば、がんに対する保障は手厚く受けられますが、他の病気については保障を受けられません。
このように、幅広い病気やケガに備えられることで、将来発生するかもしれないリスクに対する不安を減らすことが可能です。
また、特約をつけることで保障内容を自分の必要に応じて設定変更ができるのも、医療保険に加入するメリットと言えるでしょう。
特約の例としては、「通院特約」や「三大疾病特約(がん、心疾患、脳卒中)」、「先進医療特約」があります。
更に、生命保険料控除を受けられるので、支払う税金を減額することも可能です。年間の支払保険料額によって最大で4万円が所得税から控除されます。これも、医療保険に加入することのメリットです。
(2)公的医療保険との違い
「公的医療保険」とは、病気やケガをした場合に、医療費の自己負担額の一部を補ってくれる公的な制度です。
日本では、「国民皆保険」という制度を採用しているため、全国民が何らかの公的医療保険に加入することを義務付けられています。
ここで、少し公的医療保険制度にいて説明しておきましょう。
日本の公的医療保険制度には、会社員など被用者やその扶養家族を対象とする被用者保険や自営業者などを対象とした国民健康保険、75歳以上または65歳以上で障害のある高齢者に該当する方が加入する後期高齢者医療制度の3つがあります。
それぞれに保障内容が異なるのが特徴的です。
被用者保険には、大企業の被用者を対象とした組合管掌健康保険、中小企業の被用者を対象とした全国健康保険協会管掌健康保険(協会けんぽ)、船員が対象の船員保険、公務員が対象の共済組合があります。
保険料は被用者の給与水準で定められ、保険料負担の割合は、被用者と企業が折半することになっています。
傷病手当金や出産手当金など多くの給付があるので、病気やケガ、出産で会社を休むときでも、療養のための費用や出産費用を気にすることなく、安心して療養や出産に当たれるのが特徴的です。
国民健康保険の保険料は、世帯ごとの収入や資産、世帯人数などを計算し算出られるため、市町村によってその金額が異なります。
被用者保険と比べ、手当金などの給付が少なく、傷病による給付や出産での給付がありません。そのため、民間医療保険を利用して補うことを選択肢に入れておくことが必要になってくるでしょう。
後期高齢者医療制度は、個人単位で保険料支払いを行なっている方が対象となります。病院などの医療機関で受診や診療を受けた際の窓口負担が原則1割になるのが特徴です。
現役並の収入がある場合には3割負担となるので注意が必要になります。
またその他にも、市町村ごとの制度として医療費助成制度が設けられており、乳幼児や未就学の子どもの医療機関での負担が軽減(2割)されたり、無料となったりすることがあります。
公的医療保険では、自己負担額が3割となっていますが、高額な医療費を支払ったケースでは、高額療養費制度を利用して、払い戻しが受けられます。
年齢区分によって高額療養費は変わってくるので、確認しておきましょう。
それに対して、民間医療保険は公的医療保険でカバーすることができない自己負担分を補い、高額な医療費負担をカバーするものと言えるでしょう。
特に先進医療などは公的保険の対象外となっているため、高額になる場合がほとんどです。そこで、民間医療保険に加入し、「先進医療特約」などをつけることで、高額な自己負担分を補うというように活用することになります。
また、民間医療保険は加入時に健康告知が必要となるため、持病や病歴によっては加入できないこともあり、そこが公的医療保険との大きな違いと言えるでしょう。
民間医療保険で受け取れる給付金の種類
民間医療保険は、公的医療保険がカバーしきれない自己負担分を補うために活用するものであると解説してきました。それでは、実際に民間医療保険で支払われる給付金にはどのようなものがあるのか見ていきましょう。
(1)入院給付金
病気やケガで入院した際に受け取れる給付金です。入院日数に応じて1日あたりに契約時に設定した額が支払われることになります。
保険会社や加入している保険商品によっては、支払限度日数が決められていることに注意しましょう。現在、上限を60日としている保険が主流となっているようです。
その他にも、30日、120日など、商品内容によって異なります。支払限度日数を超えた部分は保障の対象外となってしまいますので注意が必要です。
(2)手術給付金
手術時に受け取れる給付金です。給付金額は、入院給付金額に手術の種類に応じた倍率をかけて算出するタイプと、手術の内容に関係なく定額を受け取れるタイプのものがあります。
(3)がん入院給付金・診断給付金
がんで入院したり、がんと診断されたりした際に受け取れる給付金です。がん入院給付金は、上述の入院給付金と基本的には同じですが、日数無制限で保障が受けられるのが特徴となっています。
がん診断給付金は、がんと診断された時点で支払われます。1回だけがんと診断されただけでなく、一定の期間が経って、再びがんと診断された時に再度給付される、複数回給付が可能なことが特徴です。
ただし、「上皮内新生物(がん細胞が上皮内にとどまっており、転移や再発の可能性が低いもの)」の場合は、支払い対象外になったり、給付金が減額されたりすることもあるので注意してください。
(4)がん退院療養給付金
がんの手術や治療で一定期間入院し、退院した場合に受け取れる給付金です。
退院後の通院費用等に使うことが想定されていますが、手術給付金や入院給付金でまかなえることも多いため、どちらかといえば退院時の祝い金として位置付けられている場合もあります。
(5)その他の給付金
上記の他にも、病気で入院した後、退院して一定間経って同じ病気の治療をするために通院をする場合に支払われる「通院給付金」や、女性特有の病気や生活習慣病で入院した際に、入院給付金に上乗せする形で受け取れる「女性疾病入院給付金」、「生活習慣病入院給付金」などがあります。
民間医療保険は不要か?
政策として国民皆保険制度の日本では、公的医療保険に誰もが加入しているのだから、民間医療保険に加入するのは無駄ではないかと考える人もいるかもしれません。
しかし、公的医療保険はあくまでも自己負担分の一部を補ってくれるものです。例えば、がんなどの病気にかかった場合、手術費用や入院費用も高額になる可能性があります。
退院後の経済的な負担は大きくなることが考えられるでしょう。
その不安を解消するためにも、民間医療保険に加入することをおすすめします。
上述の通り、民間医療保険に加入しておけば、公的医療保険でカバーできない部分を補うことができますし、さまざまな給付金を受け取ることができ、経済的な負担も軽減することが可能です。
公的医療保険だけでなく、民間医療保険に加入しておくと良いと言えるでしょう。
現在、民間医療保険に加入している世帯の加入率は約90%となっており、将来の不安に備えているご家庭が多いことも参考にご考慮の上、検討してみてください。
民間医療保険を選ぶ時のポイント
民間医療保険に加入しておくことは、将来の経済的な不安を解消できるというメリットがあります。そのメリットを十分に受けるためには、自身に合った保険を選ぶことが必要です。
ここからは、民間医療保険を選ぶ際に押さえておきたいポイントを解説していきます。
(1)定期、終身などの保険期間
保険の期間には、定期(5年、10年、15年など期間が決められている)タイプと終身タイプがあります。終身型の保険の保険料は、加入時は高いですが一生涯保険料が変わらないことがメリットです。
一方、定期型の保険は満期ごとに更新していくことになります。保険料金は加入時は安いですが、更新時を迎えるごとに高くなっていきますのでご注意ください。
20代、30代の若い方が終身保険に加入した場合、ライフプランに変更があった場合に保障内容を見直す必要性が高くなります。
その場合は、解約しなければなりませんので損をしてしまうというデメリットがあります。自身のライフプランに適したタイプはどちらなのか、しっかりと考えることが重要です。
(2)入院中の給付金があるか
入院や治療にかかった費用は退院時に支払うのが一般的です。しかし、長期入院が必要な場合などは、入院費用を請求されることがあります。
このような時、十分な蓄えがあれば自己負担で支払っておき、後で保険会社に入院給付金を請求すれば良いでしょう。しかし、十分な蓄えが無かった場合、その経済的負担は大きなものになります。
そこで、入院中でも入院給付金を請求できるかどうかを確認しておきましょう。入院中でも入院給付金を請求できる条件を加入前にチェックしておくことがポイントです。
(3)万が一手術するとなった時の保障
入院だけでなく、手術が必要となった場合に備えることも重要なポイントです。
手術給付金は、加入する保険会社が指定する手術を受けた場合の保障となっていますので、どのような手術に適用されるのかを確認しておきましょう。
手術給付金は、給付倍率が手術によって変動するタイプと、手術の種類に関係なく一定額が支払われるタイプがあります。
給付倍率が変動するタイプは、保険料は高くなりますが手厚い保障を受けることが可能です。
(4)保険料、支払期間
手厚く保障を受けようと考えた場合、どうしても保険料は高額になってきます。
高額な保険料を支払い続けることで経済的な負担が大きくなるようであれば、本末転倒になりますので自身が必要だと考えている保障を明確にして経済的負担の少ないものを選択するようにしましょう。
支払い期間に関しては、「終身払」と「◯◯歳払済」のものがあります。終身払は保障が続く限り支払うことになる分、保険料が安くなります。
「◯◯歳払済」の場合は保険料は高くなりますが、保険料払込期間が決まっており、払い終われば老後に保険料を支払う必要がなくなります。
30代、40代と若いうちに終身タイプの保険に加入しようと考えている場合は、「◯◯歳払済」のものに加入するのも良いかもしれません。
(5)一時金はあるか
近年、入院日数が減少傾向にあります。日帰り入院で治療が終わるということも珍しいことではありません。
そこで、確認しておきたいのが入院一時金です。入院一時金は、病気やケガで入院した場合に受け取れるもので、入院日数に関係なく給付されるものを言います。
入院給付金が支払われない短期入院をカバーしたり、最近では日帰り入院でもまとまった金額が受け取れたりするものがありますので、加入前に確認しておきましょう。
(6)特約などがあるか
特定の病気や高額な治療に備えて、特約を付けることで通常の保障に上乗せして手厚い保障が付加給付されます。例えば、「がん診断一時金特約」や「先進医療特約」、「三大疾病特約」などです。
特約を付けると、保険料は高くなりますので保険内容と保険料のバランスを考えながら付加するかどうかを判断しましょう。
民間医療保険の種類
民間医療保険は、生命保険会社や損害保険会社が販売しているため、さまざまな内容の保険が用意されています。ここからは、どのような種類の保険があるのかを具体的に見ていきます。
(1)終身医療保険
終身医療保険は、病気やケガでの入院や手術について、保険期間が一生涯続き、しっかりと保障を受けられる保険を言います。定期医療保険と比べると月々の支払いが割高です。
終身医療保険の特徴としては、保険料が終身払いとなるため加入時から変わらないという点です。20代や30代などの若い頃から加入すれば、保険料を安く抑えられることもあります。
しかし、若いうちから加入すると、ライフプランの変更に伴って見直しが必要となることもあるため、途中解約をしなければならず損をしてしまう可能性がある点がデメリットと言えるでしょう。
(2)定期医療保険
定期医療保険は、病気やケガによる入院や手術、通院にかかる費用が一定期間内で保障される保険です。一定期間保障を受けられるという特徴から、必要な期間だけ加入しておくこともできます。
また、ライフプランに合わせて見直すことができることがメリットと言えるでしょう。
その反面、定期医療保険は更新が設けられており、更新して加入者の年齢を重ねるたびに保険料も上がっていきます。
また、更新可能な年齢には上限が設けられているため、年齢によっては加入や更新ができないことがあるのがデメリットでしょう。
(3)女性むけの女性保険
女性保険とは、一般的な病気やケガに加えて、女性がかかりやすい特有の病気を手厚く保障する保険です。
つまり、性別に関係のない病気での入院でも給付金が受け取れますし、乳がんや子宮がんなど女性特有の病気で入院した際には、より手厚い保障が受けられます。
女性特有の病気に不安や心配がある方におすすめの保険です。
(4)がん保険
がん保険は、がんになった場合の保障に特化した保険です。がん以外の病気やケガで入院した場合には保障の対象外となります。保障の対象となるのは、がんによる入院や手術、通院、がんと診断された場合です。
がんに特化している保険のため、通常の医療保険に比べて保険料が安くなっていることがメリットと言えるでしょう。
また、国立がん研究センターが発表したデータによると日本人ががんに罹患する確率は男性65.5%、女性51.2%と、いずれも2人に1人と高い状況にありますので、ニーズも高まってきています。
民間医療保険が必要な人
民間医療保険が必要な人には、入院したり手術を受けたりすると家計が圧迫されてしまう人があげられます。
入院や手術を受けた場合、仕事ができなくなったり、退院したとしてもすぐに職場に復帰できなかったりすることもあります。また、入院日数が長引けば収入が減ることが想定されます。
収入の減少に加えて、入院費や治療費など支出が増えて家計を圧迫し、経済的負担が大きい方は民間医療保険に加入することを考えてみてはいかがでしょうか。
また、さまざまな治療方法を選択したり入院環境を整えたりして治療に専念することを重視する方も民間医療保険への加入がおすすめです。
医療技術が発達した今、公的医療保険では保険適用外となっている治療や、入院の際の個室利用分の差額ベッド料を給付金でカバーすることができるので、自分の希望に合った治療法を選択することが可能となり、治療に専念することができます。
資料請求は多くの保険会社で無料でできますので、さまざまな会社の資料を気軽に取り寄せ、詳細に比較検討して、ご自身に最適な保険を選ぶことが大切です。
また、保険商品の種類が多くあるため、ご自身で選ぶことができない方も多いでしょう、そのた場合は、ぜひ我々FPに相談してみてください。
特に弊社は完全独立系のFP事務所であるため、保険会社に所属しているFPではないので、より中立的な立場なアドバイスをすることができます。
まとめ
急な病気やケガは、いつ誰の身に降りかかるか分かりません。その結果、長期的な入院が必要になれば収入の減少にもつながり、その間の生活費は貯蓄から賄わなくてはならなくなります。
公的医療保険は、一定額を補ってはくれますが、自己負担額が大きくなってしまった場合、家計にその負担分のしわ寄せが来ることになるでしょう。
そんな時に、民間医療保険に加入していれば公的医療保険でカバーできなかった負担を補うことができますので、経済的な負担も軽くなります。
また自分のライフスタイルに合わせて見直しや、カスタマイズできることも民間医療保険の良い点です。将来、病気やケガで悩まないように民間医療保険に加入することをおすすめします。
どのような保険に入ればいいのか、自分に合った保険は何が良いのかなど、情報を集めて慎重に検討しているけれど、どうしても分からないという方は、ぜひ我々ファイナンシャルプランナー(FP)にご相談ください。
FPはお金に関する専門家として、保険についての知識も豊富です。保険に関する不安や悩みに対して親身なアドバイスができ、自身に適した保険を見つけることができることでしょう。
著者
- AFP、宅地建物取引士、DCプランナー、証券外務員一種、二種、内部管理責任者、不動産賃貸経営管理士、住宅ローンアドバイザー、日商簿記2級
☆「幻冬舎ゴールドオンライン」にて記事連載中☆
☆「NewsPicks」にて記事連載中☆
アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在。その後、外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャー、行員向け経済学講師を経て独立系ファイナンシャルプランナー事務所を設立。著書に『58歳で貯金がないと思った人のためのお金の教科書』、『50代から考えておきたい“お金の基本”』。Bond University大学院でマーケティングと組織マネジメントを研究。経営学修士。
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