近年よく聞く「ワークライフバランス」は、さまざまな価値観が生まれた現代で、従業員側と企業側、どちらにとっても重要な考え方のひとつです。

本記事では「ワークライフバランス」の言葉の意味や使い方、実際に使用するときの参考になる例文を紹介します。また、企業がワークライフバランスを取り組むメリットや取り組み例も解説していますので、ぜひ参考にしてください。

ワークライフバランスの意味

ワークライフバランスとは、仕事と生活それぞれに費やす時間のバランスが取れている状態を指します。

仕事へのやりがいや充実感・責任感をもって働くことと、私生活の時間を健康かつ豊かに過ごすこと、仕事と私生活の両方が充実していることで、相互的に良い効果をもたらすという考え方を示すのがワークライフバランスです。

「仕事時間を減らしてプライベートを充実させる」「仕事時間と私生活の時間を平等にする」のように、誤って使われるケースもあるため注意しましょう。

ワークライフバランスが生まれた背景

ワークライフバランスという言葉が使われるようになったのは、1990年代だとされています。

アメリカやイギリスで女性が働くことへの考え方が進み、仕事とプライベートの両立が課題として挙げられていたことから、就労支援対策としてワークライフバランスの概念が導入されました。

日本でワークライフバランスが注目されたのは、少子化問題が社会課題となった2007年頃です。ワークライフバランスの実現のため、経済界や労働界などの有識者によって「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」および「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。

参照:内閣府男女共同参画局「仕事と生活の調和推進官民トップ会議について」

ワークライフバランスの使い方

具体的にワークライフバランスという言葉を使う場合の例文をいくつか紹介します。

【企業側が使用するときの例文】
  • 当社では従業員のワークライフバランスを尊重し、フレックスタイム制や在宅勤務制度を導入しています。
  • ワークライフバランスの実現に向けて、労働環境の改善に取り組んでいます。
【個人が使用するときの例文】
  • 将来のライフプランを立てるうえで、ワークライフバランスを保てる仕事かどうかが重要なポイントです。
  • テレワークにより通勤時間を減らして、睡眠時間を増やしたいです。ワークライフバランスを改善することで、心身ともに健康な状態で働きたいと考えます。

ワークライフバランスの意味が合っているかを確認しながら、適切な使い方を意識しましょう。

ワークライフバランスと間違えやすい新たな概念

近年では、ワークライフバランスとは違った考え方も出てきています。似ている言葉のため、誤用・誤認してしまう可能性もあるでしょう。

ここでは新たな考え方の正しい意味や使い方を理解しておきましょう。

ワークライフマネジメント

ワークライフマネジメントとは、仕事(ワーク)と私生活(ライフ)を管理(マネジメント)することを指します。つまり、仕事と私生活の時間を意識するだけでなく、双方の時間を充実させるために主体的に管理するということです。

ワークライフバランスは、仕事と私生活の調和を目的としていますが、ワークライフマネジメントは、管理する過程を大切にします。個人と企業のどちらにもよい効果を発揮し、相乗効果が見込めます。

【使い方の例文】
  • 今日は帰ってからしたいことがあるから、残業にならないようテキパキ仕事する。
  • ワークライフマネジメントを意識して、メリハリのある生活を送るようにしています。

ワークライフインテグレーション

インテグレーション(integration)とは「統合する」という意味です。

仕事(ワーク)と私生活(ライフ)を統合(インテグレーション)する、つまり、仕事と私生活がそれぞれに相乗効果を追求することを指します。

ワークライフバランスと同じような意味に感じられますが、大きな違いは仕事と私生活をどう捉えているかです。仕事と私生活が線引されている感覚がある場合は、ワークライフバランスを使用します。

一方、生活と仕事はお互いにプラスの影響を与え合うもので、片方の充実がもう片方の充実つながるという考えは、ワークライフインテグレーションです。

【使い方の例文】
  • ワークライフインテグレーションを推進するため、企業は在宅勤務制度やフレックスタイム制の導入を進めている。

ワークライフチョイス

個人の希望によって、生活スタイルや働き方を選ぶ(チョイス)考え方です。勤務時間や勤務する場所や休みなど、多様な働き方の中から個人の価値観で自由に選べます。

ワークライフバランスやワークライフインテグレーションとは違った考え方を持ち、個人の考えやライフスタイルにあわせた働き方を目指します。

【例文】
  • 株式会社△△は、ワークライフチョイスを経営理念に掲げ、従業員のワークライフスタイルを尊重した働き方を実現しています。

企業が働き方の選択肢を提示することで、従業員の満足度の向上や定着、優秀な人材の確保が期待できます。

ワークライフバランスの推進が重要な理由

なぜ企業にとって、ワークライフバランスの推進が重要とされているのでしょうか。ここでは、主に次の2つの理由について解説します。特に自社の就労改善を検討している場合は理解を深めておきたいポイントとなります。

雇用形態や働き方が多様化しているため

近年、雇用形態や働き方の多様化が加速しています。非正規雇用やフリーランスのような働き方も珍しくありません。また、IT技術の発展によって、場所や時間に縛られない働き方も可能となりました。

ライフスタイルにあわせて柔軟な働き方を求める人や、仕事は人生を豊かにするものと考える人が増えました。そのため、企業にも柔軟な対応が求められています。

人材不足の解消や優秀な人材の流出を防ぐため

日本では、少子高齢化が進み労働人口が減少傾向にあります。企業にとって、人員不足解消や、優秀な人材の流出の防止は急務となっています。

自社の労働環境を整備すると、従業員の満足度が向上し離職率の低下につながったり、新たな人材確保の期待ができたりします。子育て世代や介護が必要な従業員にとって、ワークライフバランスの実現は必要不可欠です。

多様なライフスタイルに対応した働き方を可能にする環境整備が、企業には求められています。

ワークライフバランスを推進するメリット

ワークライフバランスを推進することで、従業員、企業どちらにもメリットがあります。よりよい職場にしていけるように、双方が得られる魅力をさらに深めていきましょう。

従業員側にとってのメリット

ワークライフバランスが充実することで、従業員が感じるメリットは次のとおりです。

  • 私生活の充実を感じられる
  • 時間に余裕が生まれることから、スキルアップのために時間を使える
  • 適切な労働時間により、健康が保たれる
  • 子育てや介護によりキャリアアップを諦めなくてよくなる

やりがいを感じながら健康的に働ける点や、長期的に就業できる点が大きなメリットです。スキルアップのために時間を使うことで、業務効率化や業績アップにつながることも期待できます。

企業側にとってのメリット

企業側が感じられるメリットには、次のようなものがあります。

  • 生産性・効率性がアップする
  • 離職率を下げ、優秀な人材を長期的に確保できる
  • 人材確保のためのコストが削減できる
  • 企業のイメージが向上する

ワークライフバランスの推進は、従業員の仕事や職場に対する満足度が向上するため、離職率我の低下につながります。長く勤めてくれることから、欠員補充のための人材確保にかかるコストが不要となり、その分、事業への資金投資も検討できるでしょう。

離職率の低い企業は企業イメージも向上しやすいため、優秀な人材の確保もしやすくなります。

ワークライフバランスを実現するための取り組み例

ここではワークライフバランスを実現するために、企業が取り組める施策を3つ紹介します。自社にとって足りない要素や改善できる点を探っていきましょう。

休暇の充実と勤務時間の改善

産休・育児休業や介護休業は、男女問わず取得しやすい環境整備が必要不可欠です。制度の周知徹底はもちろん、取得後のキャリアパスや復帰後のフォロー体制を充実させ、安心して休暇を取得できる環境を整えましょう。

上長の理解促進や積極的な取得も、従業員が休業取得に対する心理的ハードルを下げることにつながります。

さらに、企業独自の休暇として、有給休暇とは別にバースデー休暇や結婚休暇、リフレッシュ休暇や特別休暇を設けることも検討しましょう。年間休日を増やすことで、プライベートの充実、十分な休息の取得が可能となり、仕事と私生活の調和が図れます。

柔軟な働き方の提案

多様な考え方に対応すべく、企業は働く時間や場所に選択肢を設けることが必要です。例えば、所定労働時間を短縮する時短勤務制度や、コアタイムを設けたフレックスタイム制の導入です。

従業員は育児や介護との両立がしやすくなったり、自己啓発の時間を確保しやすくなったりします。また、テレワークを活用すると、通勤の負担を軽減でき、効率的に働ける環境を整備できるようになるでしょう。

多様な労働形態を用意することで、従業員一人ひとりにとってベストな働き方を実現しやすくなります。

福利厚生の充実

給与や休暇、柔軟な働き方だけでなく、福利厚生の充実も重要な取り組みです。例として、次のような制度を紹介します。自社への導入を検討してみましょう。

  • 資格取得支援
  • スポーツジムや保養施設の利用サービス
  • 企業内保育所の設置

私生活の充実に直結する福利厚生を用意すると、満足度の向上や仕事へのモチベーションアップが期待できます。しかし、多種多様な待遇や福利厚生を用意しても、お金の不安や心配事があると、人はストレスを感じ、本当の充実感を得られません。

ストレスなく快適に生活できるようなお金の管理方法や知識を身につけることが、私生活の幸福度や仕事の充実度につながります。

まとめ

ワークライフバランスとは、仕事と私生活の調和を追求することです。単に仕事時間を減らすのではなく、仕事へのやりがいや責任感と私生活の充実を両立させることが重要です。

企業がワークライフバランスを推進すると、働き手不足の解消や優秀な人材の流出を防止することにつながります。企業と従業員の双方にとってメリットがあるため、多様な働き方を求める人が多い現代では重要な施策です。

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