福利厚生のメニューから従業員が自由に選択して利用できるカフェテリアプラン。多様な働き方が増えつつある今、多くの企業が採用しています。

自社の福利厚生が従業員のニーズを満たせていないと感じる場合や、公平な福利厚生を提供したい場合にカフェテリアプランが役立つでしょう。カフェテリアプランの概要やメリット・デメリット、導入の流れやおすすめのメニューをわかりやすく解説します。

カフェテリアプランとは

カフェテリアプランは、企業が提供する福利厚生の中から従業員が選んで利用できる制度です。従業員は自身のニーズやライフスタイルに合わせ、企業から付与されたポイントの範囲で好みのものを自由に選択できます。

例えば、ある従業員は将来の備えとして「財形貯蓄奨励金」を選び、ある従業員は旅行が好きなので「宿泊施設優待」と「新幹線チケット割引」を選ぶといったかたちです。

カフェテリアで自分の好みのメニューを選ぶシーンに似ていることから、カフェテリアプランという名前がつきました。

カフェテリアプランの仕組み・使い方

カフェテリアプランはポイント制を採用しているのが特徴です。年に1回、役職や給与などに基づいて算出されたポイントが、個々の従業員に付与されます。

メニューごとに消費するポイントが決まっており、付与されたポイントの範囲内でメニューを自由に組み合わせて選べる仕組みです。また、ポイントを使用してプランのレベルアップや、オプション追加などもできます。

年内に使い切れなかったポイントの繰り越しの有無は、企業によって異なります。しかし、年度ごとの管理を簡単にできるように、繰り越しできない企業が多いようです。繰り越しできる場合の有効期限は1~2年が一般的で、有効期限を過ぎると未使用ポイントは無効となります。

なお、メニューは従業員のニーズに合わせて、組み換えが可能です。従業員側も企業側も、そのときのニーズに合わせ柔軟な変更ができる仕組みになっています。

カフェテリアプランが注目されている背景

カフェテリアプランはもともと1970~80年代に、医療コストの高騰や従業員のニーズの多様化に対応するため、アメリカで広まった制度です。日本国内においては、1995年に株式会社ベネッセコーポレーションが導入したのをきっかけに広く普及しました。

特に、近年は経済のグローバル化や価値観の多様化から、企業は個々のニーズに合わせた柔軟な対応が求められています。また、労働人口の減少もあり、企業は他社に比べてより魅力的な労働条件を提示して優秀な人材を確保しなければなりません。

そのため、従業員自身が選べるカフェテリアプランのニーズが高まりつつあります。

カフェテリアプランのメリット

カフェテリアプランは福利厚生の中でも高い人気で知られています。具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。

従業員の満足度が高くなる

カフェテリアプランは従業員自身がポイントの使い道を決められるため、満足度が高くなります。例えば、独身時代は健康や旅行のためのメニューを中心に選択し、結婚・出産後は育児支援のメニューを受け取るといった柔軟な使い方が可能です。ライフスタイルに合わせた選択により、プライベートの充実が図れます。リフレッシュがうまくいった結果、仕事にもより力を入れられるといった好循環も期待できるでしょう。

また、従業員が主体的に福利厚生を利用するため、自己決定感や幸福感につながるのも特徴です。会社が従業員の自主性を尊重してくれると実感すれば、従業員は会社に対して愛着を持ちやすくなり、従業員エンゲージメント向上に役立ちます。エンゲージメントの向上は離職率の低下にも効果的です。

福利厚生費の予算内で管理できる

カフェテリアプランはポイント制のため、振り分けられたポイントを超える利用はできません。つまり、企業側は従業員1人あたりの最大コストを事前に把握でき、福利厚生費の総額をコントロールできるようになります。

従来の福利厚生において、従業員の利用が多く予算を超過することがあった企業では、カフェテリアプランを導入すれば予算内での運用が可能です。また、逆に従業員の利用率が著しく低い福利厚生についてはカフェテリアプランに統合すると、予算の再配分ができ無駄なコストを削減できます。

多様化するニーズに対して公平な対応ができる

カフェテリアプランでは多彩なメニューが用意されているため、個人のニーズに合わせた福利厚生を提供できます。

人材や働き方の多様化やグローバル化が進む中、固定された福利厚生では、従業員一人ひとりのニーズに細かく対応できないことも多いでしょう。しかし、従業員にとって、自分のニーズに合わない福利厚生ばかりで利用する機会がなければ、活用できる従業員と比べて不公平感を覚える原因になります。

カフェテリアプランなら全従業員が利用できるメニューが揃っており、公平性を高められるのは魅力だと言えるでしょう。また、公平なカフェテリアプランの導入は、「すべての従業員を尊重する」という企業から従業員へのメッセージにもなり得ます。

カフェテリアプランのデメリット

カフェテリアプランにはメリットがある一方で、デメリットもあります。企業によっては導入するとかえってコストが増大する可能性もあるため、導入前に確認しておきましょう。

まとまった予算が必要

カフェテリアプランの導入や運営にはある程度のコストがかかるため、事前にまとまった準備資金が必要です。自社で運営する場合はサービスを提供するためのポイント原資や、システム開発費、人件費もかかります。外注であれば福利厚生代行サービスの利用料や、ポイント相当の費用がかかるため、あらかじめ予算内に収まるか試算しましょう。

また、カフェテリアプランは多様なメニューが魅力ですが、メニューの数が増えるほどコストも増加していく可能性があるのは覚えておきたいポイントです。

サービスにより課税・非課税が変わる

カフェテリアプランは、課税・非課税の種別がサービスによって異なります。例えば従業員本人が受ける人間ドックは非課税に該当しますが、施設の優待割引チケットの提供は課税対象です。このような違いから、従業員がサービスを利用した際に「非課税だと思っていたのに課税された」とトラブルになる可能性があります。

仮に、カフェテリアプランを利用して旅行費用1万円分の補助を受けたとすると、実際には金銭の支給でなかったとしても給与所得と見なされます。つまり、普段の給与所得のほかに1万円分が実質、所得として上乗せされるのと同じです。

すると、給与所得+1万円に対して、総所得に応じた所得税が課せられます。また、所得に補助額が上乗せされると、所得の増大により住民税や社会保険料も増加する可能性があるため注意が必要です。

非課税・課税のサービスが混在していると、会社側は経理業務が複雑になり、従業員側は税負担が大きくなってしまいます。

管理・運営が複雑になりやすい

カフェテリアプランは従業員によって選ぶメニューが異なり、メニューの数も豊富なため、それぞれに対応する手間がかかります。また、導入後には従業員のニーズに合わせてメニューを見直していくことが多いのも、管理や運営が複雑になりやすい理由です。

前述したように課税・非課税のサービスが混在しているため、経理業務の複雑化の懸念もあります。社内の管理・運営の手間を省くには外注するのが有効ですが、外注であっても管理費は必要です。管理や運営のコストが増加してしまうと制度継続が難しくなる可能性もあるので、導入前に管理・運営方法やコストについてよく検討しましょう。

カフェテリアプランの平均的な付与ポイントと単価

カフェテリアプランの付与ポイントは企業によっても異なるため、どの程度のポイントを付与すべきか悩むケースも少なくないようです。

参考として、一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)の発表するデータがあるので紹介します。「第64回福利厚生費調査結果報告」では、2019年度時点でカフェテリアプランを導入している企業104社に対して調査をおこないました。

結果、従業員1人あたりの1カ月のカフェテリアプラン費用が5,000円以上と答えた企業は24社、5,000円未満だった企業は80社と、多くの企業が5,000円未満の支給にとどまっています。また、5,000円未満と答えた企業の支給額は、1,000円未満~4,999円未満まで企業によって大きな開きがあることがわかりました。

一方、消化したポイントは月に4,660円相当が平均値です。年間に直すと55,920円になります。

企業ごとに予算もあるため一概には言えませんが、1人あたり年間50,000~60,000円分のポイントが目安と言えるでしょう。

参照:一般社団法人 日本経済団体連合会(経団連)「第64回福利厚生費調査結果報告」

おすすめのカフェテリアプランの一覧

カフェテリアプランのメニューは多岐に渡るため、どのようなメニューがあるのか、あるいはどのメニューが人気なのか知りたい人もいるのではないでしょうか。

数が多いためすべての紹介はできませんが、代表的なものを紹介します。

健康補助健康器具の購入/フィットネス優待/人間ドック/予防接種補助/各種検診補助/リラクゼーション
保険介護保険/団体生命保険/自動車保険/火災保険/傷害保険
レジャー・娯楽宿泊施設優待/レジャー施設優待/新幹線チケット割引/レストラン優待
育児保育所・託児所補助/育児用品購入
住宅社宅・寮/家賃補助/住宅ローン補助/引越しサービス
生活ランチ補助/社員食堂/教育費用補助/ユニフォーム購入/通勤手
学習資格取得補助/スクール受講/書籍購入/セミナー受講
財産財形貯蓄奨励金/持ち株金奨励金/企業年金/確定拠出年金

このように、カフェテリアプランでは生活費の削減や資産構築に役立つメニューから、育児や学習、娯楽に至るまで、さまざまなメニューが用意されています。外注サービスによっては、10万以上ものメニューから選べるものもあります。従業員の意見も聞きながら、人気のメニューを厳選して取り入れましょう。

企業がカフェテリアプランを導入する流れ

最後に、企業がカフェテリアプランを導入する際の具体的な方法について解説します。

カフェテリアプランを導入するには、自社運営で1年、外注で半年の準備期間が必要と言われています。じっくり時間をかけて準備を進め、導入を成功させましょう。

具体的な導入の流れは次のとおりです。

  1. 事前準備・調査
  2. カフェテリアプランを設計する
  3. システムを構築・導入する 
  4. 従業員へ制度を周知する
  5. フィードバックと改善を繰り返す

準備段階では、そもそもカフェテリアプランが自社に適しているかどうか、どのような目的で導入するかなどの確認から始めます。福利厚生の性質上、法律や税制への理解も必須です。必要に応じて弁護士や税理士など、専門家のアドバイスを受けるのもよいでしょう。

導入を決定したあとは、担当者を決定しカフェテリアプランを設計します。自社運営であればポイント管理システムの構築、外注であれば外注のサービス選定をおこないましょう。

設計にあたっては、ニーズの高いメニューの調査・把握や、具体的なメニューの選定、ポイント原資の確保も必要です。

システム構築後は動作をテストし、実際にシステムを導入します。無事運用の見込みが立ったら従業員へ利用方法やルールを周知し、実際に利用してもらいましょう。

その後は、定期的に従業員の利用率や人気メニュー、問題点などを確認し、フィードバックと改善を繰り返しながら運用していきます。

まとめ

カフェテリアプランは、付与されたポイントの範囲内で従業員自身が自由に選べる福利厚生制度です。従業員の自主性を尊重する仕組みであり、従業員の満足度向上が期待できます。また、企業側は予算の管理がしやすく、多様なニーズに対する公平な対応ができるのも魅力です。

一方で、複数のメニューを提供するためにまとまった予算が必要であり、課税・非課税の区別も複雑になりやすいといったデメリットもいくつかあります。カフェテリアプランの平均付与ポイントは50,000~60,000円程度なので、福利厚生費として自社の従業員全員に提供できるかも考慮しながら、導入を検討しましょう。