「最近よく耳にする401kとは何?」「401kって難しそうだけど、知っておきたい」と、言葉は知っていても401kの内容についてよく知らない人も多いのではないでしょうか。

401kは確定拠出年金のことを指し、企業型確定拠出年金(DC)や個人型確定拠出年金(iDeCo)があります。複雑な内容も含まれるため、すぐに全容を把握するのは難しいかもしれません。

そこで本記事では、401kの概要やメリットやデメリットを分かりやすく解説します。

401kとは「確定拠出年金」のこと

401k(よんまるいちけい)とは「確定拠出年金」を表す言葉です。アメリカの米国内国歳入法(Internal Revenue Code of 1978)の条項名(401(k))にちなんで付けられたといわれています。

つまり、401kが意味するのは「確定拠出年金」と同じです。義務付けられている国民年金などの公的年金とは違い、401kは個人や企業が任意加入する私的年金となります。

401kが導入された背景

現在の日本は、毎年のように平均年齢が高くなっています。長生きは喜ばしいことではあるものの、公的年金制度や社会保障給付だけでは、安定した老後生活を送るのに厳しいと言わざるを得ません。

老後、少しでもゆとりある生活をするには若いうちからコツコツと貯蓄をしておくことが大切です。しかし、日々の生活資金やマイホーム資金、教育資金などさまざまな出費があり、遠い将来のための貯蓄は優先順位が下がりやすい傾向にあるのが現実です。

多少、上昇の兆しが見えてきたとはいえ低金利が続く経済情勢もあり、老後資金を貯めるための方法として、私的年金のうちの1つである「確定拠出年金」が注目されているのです。

私的年金と公的年金の違い

確定拠出年金の詳しい解説の前に、まずは私的年金と公的年金の違いを把握しておきましょう。

私的年金は、民間の保険会社など政府以外が取り扱っている年金制度のことで・確定拠出年金・国民年金基金・個人年金などの種類があります。

私的年金の加入は任意で、「自分で掛金の額や預け先などを決め、掛けた運用結果の額は将来の自分が受け取る」形式の年金になります。自身のニーズに合った商品を選ぶことができる点が特徴です。

一方、公的年金(国民年金・厚生年金)は、賦課(ふか)方式といって「いま働いている世代が保険料を支払い、高齢者など過去に支払っていた世代の年金給付に充てる」ことを基本とした形式です。

仕送りをするように、世代間の支え合いが中心の仕組みで運営されています。なお、保険料収入以外に年金積立金や税金も財源となっています。

日本の公的年金制度は2階建て構造。1階部分は、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する国民年金(基礎年金)で、2階部分は会社員・公務員が加入する厚生年金です。

つまり、会社員・公務員の人は国民年金と厚生年金の二つの年金制度に加入しているということになります。

国民年金には職業などによって3つの被保険者の種別(第1号・第2号・第3号)があります。

分類第1号被保険者第2号被保険者第3号被保険者
加入者自営業者、農業者、漁業者、学生、無職の人など会社員、公務員など第2号被保険者に扶養されている配偶者で年収130万円未満の人
年齢20歳以上60歳未満70歳未満20歳以上60歳未満
月額保険料    16,980円(令和6年度)標準報酬月額の18.30%        なし

出典:日本年金機構「公的年金制度の種類と加入する制度」

401k(確定拠出年金)の種類

401k(確定拠出年金)は、大きく分けて2つの種類があります。種類によって掛け金の拠出する人や掛け金の上限金額などが異なります。

それぞれの特徴について詳しく見ていきましょう。

1.個人型確定拠出年金(iDeCo)

60歳未満で国民年金を納付している人が加入でき、掛金は全額加入者が拠出します。

運用を行うのは加入者自身で、具体的には複数ある運用プランの中から自分で決めます。運用商品は投資信託を選べますが、それぞれ投資対象の内訳が異なります。リスクの許容範囲や、一定の方針を予め考えておくといいでしょう。

拠出可能な額の上限は、加入資格によって月額1.2万円〜6.8万円と差があります。

  • 第1号被保険者(自営業者等)6.8万円
  • 第2号被保険者(会社員)1.2万円〜2.3万円(他の企業年金等の加入状況による)
  • 第2号被保険者(公務員)1.2万円
  • 第3号被保険者(専業主婦、専業主夫)2.3万円

積立期間は最長65歳までで、手数料等の管理費用は加入者の負担となります。このことから運用商品を選ぶ際にはランニングコストの確認も大事だと言えるでしょう。

2.企業型確定拠出年金(DC)

企業確定拠出年金の場合、資産運用を行うのは加入者個人です。一方で掛け金の拠出は企業によって異なります。

企業が拠出する掛金は会社の損金として処理ができます。また、社会保険料算定の対象外となるため、全額掛け金の負担をしている企業も多くあります。

拠出可能額の上限は原則月額5.5万円(他の企業年金がある場合は2.75万円)です。積立期間は会社が定めた年齢までで、最長70歳まで定められます。

手数料は原則、実施する企業が負担します。ただし、確定拠出年金規約(企業型確定拠出年金を導入する際に作成)によっては一部が加入者負担となる場合があります。

出典:厚生労働省「確定拠出年金の拠出限度額」

確定拠出年金のメリット

確定拠出年金は、自分で運用先が決められたり、税制上の優遇がうけられたりするメリットがあります。特に、税制の面では3つのシーンでそれぞれ節税効果があるので、ひとつずつ詳しく解説します。

1.自分で運用先が決められる

拠出したお金を「何(株式や債券など)に」「どのような割合で」投資するかを従業員自ら決められます。

投資対象の価値は変動するので、それに伴い評価額が変わっていきます。運用結果次第では、効率よく資産を増やせる可能性があるのです。

2.税制上の優遇がうけられる

「拠出時・運用益・受け取り時」の3つのシーンで、控除が受けられたり非課税になったりと、税負担が減る効果があります。つまり401kでは税制優遇の恩恵を十分に受けられると言えるでしょう。

具体的な内容をひとつずつ解説します。

掛金を全額所得控除にできる

確定拠出年金に拠出した掛金は、小規模企業共済等掛金控除として全額が所得控除の対象になります。

確定申告(自営業等)や年末調整(会社員・公務員)で、所得と掛金に応じて所得税の還付を受けられます。

また、住民税は前年の所得によって計算されます。控除された分の所得が減れば、住民税の負担も軽減できるのはメリットです。

運用益に税金がかからない

預貯金の利息や投資信託の運用益などは増えた利益に対し 、原則20.315%の税金がかかります。(NISA利用時は除く)

一方で、確定拠出年金の運用益には税金がかかりません。たとえば、100万円の利益が出たとき、通常であれば約20万円の税金がかかります。つまり手元に残るのは80万円です。非課税であれば、原則として手元にまるまる100万円が入ります。

老後資金を貯める目的なので、長期的な運用になることが多く、運用益が大きくなるほど非課税の効果も大きくなります。

受取時、退職所得控除・公的年金等控除の対象になる

60歳以降に、積み立てたものを受け取る時に所得から一定額を控除できます。受け取り方によって控除額の算定方法が違うので、覚えておきましょう。

一時金でまとめて受け取る場合は「退職所得控除」の対象です。退職所得の計算にあたり、収入金額から勤続年数に応じた一定額を差し引くことができます。

対して、年金形式で複数回に分けて受け取る場合は、「公的年金等控除」の対象になります。雑所得の計算にあたり、公的年金等の収入金額から、公的年金等の収入金額および年齢に応じた一定額を差し引くことができます。

参照:日本年金機構「所得金額の計算方法」

確定拠出年金のデメリット

確定拠出年金はメリットがある反面、デメリットも存在します。とはいえ、予め理解しておいたり対策をとっておいたりすることで、不安やリスクを軽減できます。

ここでは、よく話題となる4つのデメリットを見ていきましょう。

1.原則60歳まで引き出せない

原則、運用の途中でお金を引き出すことはできません。どうしても引き出す必要がある場合は、生活保護受給者になった等、真にやむを得ない事情があるなど一定の厳しい要件を満たす必要があります。

一方で、引き出せなくなることで半強制的に貯められるという考えもできます。

2.年金額が確定せず元本割れリスクがある

確定拠出年金は、元本割れをするリスクがあります。保険など元本確保型の運用先を選べることもありますが、確定拠出年金は投資信託で運用するケースが大半を占めます。

前者で運用しても問題はありませんが、昨今の金利状況や金融商品の特性上、資産を増やすのは極めて困難です。

投資信託は、株式や債券などに投資をするため、日々価格が変動し元本保証ではありません。運用結果が芳しくないと、掛金の合計より少ない額しか受け取れないことも考えられます。

リスクは完全になくせませんが、確定拠出年金は、投資の基本である「長期・積立・分散」です。金融庁でも推奨している資産形成の基本で、三つの要素の相乗効果により、安定的な収益が期待できます。

3.iDeCoは手数料などのコストがかかる

企業型(DC)は、手数料は原則会社負担であるのに対し、個人型(iDeCo)は、加入した個人が負担しなくてはなりません。

そのため、元本確保型であまり運用成果が期待できない商品を選んでしまうと、「増えた額より手数料の方が多かった」という事態が起こり得ます。

具体的には、加入時手数料(初回1回のみ)2,829円と加入者手数料(掛金納付の都度)171円かかります。これらは、どの金融機関も同じ額です。

加えて銀行や証券会社など、運営管理機関への手数料が必要です。金額は金融機関によって異なり、毎月400円以上かかる場合があります。無料のところもあるので、加入前に比較しましょう。

4.60歳時点で10年以上加入していないと受取開始年齢が遅くなる

確定拠出年金は加入年数によって、受取開始年齢が決まっています。

10年以上加入していれば60歳からの受け取りが可能ですが、加入期間が短くなるにつれ、受取開始年齢が上がっていきます。

60歳までの通算加入期間受取開始年齢
10年以上60歳
8年以上10年未満61歳
6年以上8年未満62歳
4年以上6年未満63歳
2年以上4年未満64歳
1ヶ月以上2年未満65歳

60歳でもらうためには、50歳までに加入していればいい計算です。55歳に加入したとしても63歳のときには受給開始できます。ただし、毎月の拠出金は多くないので、運用期間が短ければ運用益を大きく資産を増やすのも難しくなる点には注意しましょう。

確定拠出年金に向いている人の特徴

最後にどのような人に向いているのかを説明します。

401kは利点を享受できるように上手に使えば、長期の資産形成にきっと役立ちます。特に以下のような人は、将来のために401kを検討してみるといいでしょう。

1.普通預金など引き出しやすいお金をつい使ってしまう

引き出しが容易だと便利な反面、浪費につながりやすいものです。その点、確定拠出年金は給与天引きや口座振替で積み立てることができます。

なお、掛金の変更は個人型(iDeCo)では年に一回可能、1,000円単位で変えられます。(最低掛金額5,000円)

収入から半ば強制的に積まれていくので、仕組みさえ作れば着実に貯まっていきます。必然的に手元に残ったお金で生活するようになる、という家計管理としての健全さが保たれることでしょう。

2.長期的に老後資金を準備したい

「卵は一つのカゴに盛るな」という有名な投資格言があります。すべての卵をひとつのカゴに一度に盛った場合、落としたら全部割れてしまいます。しかし、複数のカゴに時期をずらして卵を盛っていれば、カゴの一つを落としても卵が全部割れるのを避けられるという考えです。

少なくとも60歳までは引き出せませんが、老後資金を計画的に貯められます。いま現在、すぐに使えるお金は減るかもしれませんが、長期間つみたてることでリスクの軽減が図れます。

3.所得税と住民税の負担を軽減させたい

メリットで詳細を説明した通り、確定拠出年金を利用することで、税制上の優遇があります。

「積立時」「運用時」「受取時」のすべてに節税効果が見込めるのは魅力的です。払わなくてはならない税金が減ると、手元のお金が増えることに繋がっていきます。401kはこの利点を有効活用したい人に適しています。

まとめ

企業の人事担当者として、まずは自分事として考え、401kのメリットやデメリットなど制度をよく知ることが重要です。

知識をもって長期的に賢く使えば、確定拠出年金は優れた貯め方だといえます。人事担当者が自ら金融リテラシーを高めると有益な情報が共有され、従業員の資産形成に力を発揮することでしょう。

経済的な不安がなくなると、メンタルは安定しやすくなります。その結果、業務への意欲が上がるなど、良い波及効果があるかもしれません。

401kについて学ぶことから企業型確定拠出年金(DC)導入のシミュレーションをしてみるなど、自社の福利厚生充実を検討してみてはいかがでしょうか。