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【医療保険はいらない?】高額療養費制度の仕組みと本当に必要な民間保険の選び方

公開日:
代表取締役 田中佑輝

この記事の監修者:

アルファ・ファイナンシャルプランナーズ 代表取締役/田中佑輝

「YouTubeや本で『医療保険はいらない』って見たんですが、本当に解約して大丈夫でしょうか。でも、いざ病気になったときに無保険だと不安で……」——保険の相談で、この悩みを聞かない週はありません。「いらない」という情報と「不安」という気持ちの間で、多くの方が身動きが取れなくなっています。

結論から言えば、答えは「人による」です。無責任に聞こえるかもしれませんが、これが真実です。なぜなら、日本には世界でもトップクラスに手厚い公的医療保険があり、この公的保障でカバーできる範囲は、多くの方が思っているよりずっと広いからです。その結果、必要以上の民間保険に「入りすぎ」ているご家庭が、本当に多いのです。

ただし、2026年8月から高額療養費制度の自己負担上限が引き上げられるなど、公的保障をめぐる状況にも変化があります。だからこそ、「公的保障で何がカバーされるのか」「本当に必要な民間保険はどこまでか」を正確に知ることが大切です。この記事では、公的保障の仕組みから、医療保険が必要な人・不要な人の明確な線引き、そして無駄な保険料をカットして必要な保障だけを残す見直し手順まで、FPの視点で徹底的に解説します。

【医療保険はいらない?】高額療養費制度の仕組みと本当に必要な民間保険の選び方

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なぜ「医療保険はいらない」と言われるのか?公的保障の強力な仕組み

「医療保険はいらない」という主張の最大の根拠が、日本の公的医療保険制度の手厚さです。中でも、その中心にあるのが「高額療養費制度」です。この制度を正しく理解すると、「なぜ入りすぎになりやすいのか」が見えてきます。

「高額療養費制度」の基礎知識!自己負担額の上限はいくら?

高額療養費制度とは、1ヶ月(1日〜末日)の医療費の自己負担額が一定の上限を超えた場合、その超えた分が払い戻される(または支払わなくてよい)公的医療保険の制度です。健康保険に加入している人なら、誰でも利用できます。

具体例で見てみましょう。入院や手術で、1ヶ月の総医療費(10割)が100万円かかったとします。窓口では通常3割負担なので30万円を支払うことになりますが、高額療養費制度を使えば、年収370〜770万円の方なら、自己負担は月約9万円までで済みます。30万円との差額、約21万円は制度がカバーしてくれるのです。

「医療費が100万円かかっても、自分の負担は9万円程度」——この事実を知ると、「毎月高い医療保険料を払う必要が本当にあるのか」という疑問が湧いてくるはずです。これが、「医療保険はいらない」と言われる最大の根拠です。

年収別の自己負担上限額と「多数回該当」のルール

自己負担の上限額は、年齢と所得(年収)によって決まります。ここで重要な最新情報があります。2026年8月診療分から、高額療養費制度の自己負担限度額が引き上げられ、年間上限も新設されました。以下は、70歳未満の方の2026年8月以降の自己負担限度額の目安です。

年収の目安(70歳未満)1ヶ月の自己負担上限額(2026年8月〜)
約1,160万円〜259,500円+(医療費−865,000円)×1%
約770万〜1,160万円179,100円+(医療費−597,000円)×1%
約370万〜770万円85,800円+(医療費−286,000円)×1%
〜約370万円階層により定額(数万円台)
住民税非課税世帯35,400円

※2026年8月改正後の目安。制度は所得区分の細分化などが2027年8月にも予定されており、最新の正確な金額は厚生労働省や加入する健康保険の公表資料でご確認ください。

さらに知っておきたいのが「多数回該当」というルールです。直近12ヶ月の間に高額療養費の対象となる月が3回以上あった場合、4回目からは自己負担の上限額がさらに引き下げられます。長期にわたる治療が必要になっても、負担が青天井にならないよう配慮されているのです。がんの治療などで通院・入院が長引くケースでも、この多数回該当があることで、月々の負担は大きく抑えられます。

高額療養費制度で「対象外」になる出費(差額ベッド代・食事代・先進医療費など)

ここまで読むと「公的保障だけで十分では」と思えてきますが、注意が必要です。高額療養費制度は万能ではなく、対象外になる出費があります。 ここが、民間保険の必要性を考えるうえで最も重要なポイントです。

高額療養費制度の対象になるのは、あくまで「健康保険が適用される保険診療」の自己負担分だけです。以下のような費用は、制度の対象外となり、全額自己負担になります。

  • 差額ベッド代:個室や少人数部屋を希望した場合の追加費用。1日数千円〜数万円かかり、長期入院では大きな負担に。
  • 入院中の食事代:1食あたり定額の自己負担がかかります。
  • 先進医療の技術料:公的保険の対象外の先進的な治療。がんの重粒子線治療などは数百万円かかることも。
  • その他:入院時の日用品、家族の交通費、差額の見舞い費用など、雑多な出費。

また、高額療養費制度は「1ヶ月(暦月)単位」で判定されるため、入院や手術が月をまたぐと、それぞれの月で上限額が別々に計算され、結果的に自己負担が増えるという落とし穴もあります。「公的保障で医療費本体はかなりカバーされるが、それ以外の出費は自分で備える必要がある」——これが、民間保険を考える出発点です。

【会社員・公務員 VS 自営業】働き方で大きく変わる公的保障の手厚さ

実は、公的保障の手厚さは「働き方」によって大きく変わります。同じ日本人でも、会社員・公務員と、自営業・フリーランスとでは、いざというときに受けられる保障がまったく異なるのです。この違いを知らずに保険を考えると、判断を誤ります。

会社員・公務員には「傷病手当金」と「付加給付」がある

会社員・公務員が加入する健康保険には、高額療養費制度に加えて、非常に強力な保障があります。それが「傷病手当金」です。

傷病手当金とは、病気やケガで働けなくなり、給与が受けられない場合に、健康保険から給料の一部が支給される制度です。「治療費」ではなく「働けない間の生活費」を補ってくれるのが最大の特徴で、医療費の心配だけでなく、収入減への備えにもなります。これは、後述するクラスター記事でも詳しく解説しますが、会社員が「医療保険は最低限でいい」と言われる大きな理由です。

さらに、大企業の健康保険組合などでは、「付加給付」という独自の上乗せ給付があるケースもあります。これがあると、高額療養費制度の自己負担上限がさらに引き下げられ(月2万円程度で済む場合も)、医療費の負担が一段と軽くなります。自分の勤務先の健康保険に付加給付があるかどうかは、一度確認しておく価値があります。

自分の公的保障を正確に把握して保険を見直したい会社員の方は、ぜひあわせてお読みください。

自営業・フリーランス(国保)が医療保険を手厚くすべき理由

一方、自営業・フリーランスの方が加入する国民健康保険には、傷病手当金がありません(※コロナ禍での特例等を除く)。 つまり、病気やケガで働けなくなると、収入がその瞬間からゼロになるリスクがあるのです。高額療養費制度は使えますが、「働けない間の生活費」を補ってくれる公的な仕組みがない——ここが、会社員との決定的な違いです。

そのため、自営業・フリーランスの方は、会社員より民間保険で手厚く備える必要性が高くなります。特に、医療保険や就業不能保険で「働けない間の収入減」に備えることは、会社員以上に重要です。「医療保険はいらない」という一般論をそのまま自分に当てはめるのではなく、自分の働き方の公的保障がどうなっているかを踏まえて判断することが、何より大切です。

医療保険を「不要な人」と「必要な人」の明確な決定ライン

ここまでの内容を踏まえて、「結局、自分は医療保険がいるのか、いらないのか」の判断基準を明確にしましょう。ポイントは、「公的保障」と「貯蓄」の2つで、いざというときの出費をまかなえるかどうかです。

医療保険が「不要」な人の特徴

次のような方は、医療保険の必要性が低い、あるいは最低限でよいと考えられます。

  • 十分な生活防衛資金がある人:医療費の自己負担(月10万円前後)+対象外の出費に、貯蓄で対応できる。目安として、生活費の半年〜1年分+医療費用の予備費(50万〜100万円)がある方。
  • 会社員・公務員で健康保険の保障が手厚い人:傷病手当金があり、勤務先に付加給付があればなお安心。
  • 保険料を払うより、そのお金を貯蓄・運用に回したい人:自分で「医療費用の貯蓄」を確保できるなら、保険会社を通さないほうが効率的なケースも。

医療保険が「必要」な人の特徴

逆に、次のような方は、医療保険で備えておく価値が高いと言えます。

  • 貯蓄が少ない人:急な入院・手術の自己負担や、働けない間の生活費を貯蓄でまかなえない場合、保険が家計の防波堤になります。
  • 自営業・フリーランスの人:傷病手当金がないため、収入減への備えとして保険の必要性が高い。
  • 特定の疾病リスクに備えたい人:家族にがんの既往が多いなど、特定のリスクに手厚く備えたい場合。
  • 精神的な安心を優先したい人:「保険があると思うだけで安心して過ごせる」という価値も、立派な判断基準です。

大切なのは、「みんながこう言っているから」ではなく、自分の貯蓄・働き方・リスク許容度に照らして判断することです。医療保険は「ゼロか100か」ではなく、「必要な部分だけ最低限持つ」という選び方が、多くの方にとっての最適解になります。

本当に必要な民間保険・特約のスマートな選び方

「保険を最低限にする」といっても、何を残して何を削るかの判断は難しいものです。ここでは、限られた保険料の中で、優先的に備えるべきポイントをお伝えします。

手厚く備えるべきは「がん・三大疾病」と「長期療養」

公的保障が手厚い日本で、それでも民間保険で備える価値が高いのは、「治療が長期化し、公的保障だけではカバーしきれない出費が大きくなるリスク」です。その代表が、がんや三大疾病(がん・急性心筋梗塞・脳卒中)です。

これらの病気は、治療が長期にわたることが多く、入院・通院・手術・抗がん剤治療などが繰り返されます。高額療養費制度や多数回該当で医療費本体は抑えられますが、その間の収入減、差額ベッド代、通院の交通費、先進医療費などが積み重なると、経済的な負担は決して小さくありません。「短期の入院」より「長期の療養」にこそ、備える価値があるのです。

医療保険よりも「がん診断給付金」や「先進医療特約」を優先すべき理由

一般的な医療保険は「入院1日あたり◯円」という給付が中心ですが、近年は入院日数が短期化しており、この形の保障の価値は下がっています。それよりも優先度が高いのが、以下の保障です。

がん診断給付金は、がんと診断された時点でまとまった一時金(50万〜100万円など)が受け取れる保障です。使い道が自由なため、治療費にも生活費にも充てられ、長期療養の心強い支えになります。先進医療特約は、数百万円かかることもある先進医療の技術料をカバーする特約で、月々わずかな保険料(数百円程度)で付けられるため、コストパフォーマンスが高い保障です。

がんへの備えを具体的に検討したい方は、ぜひあわせてご確認ください。

保険を使った「貯蓄・教育資金づくり」の落とし穴と最新の選択肢

保険には「保障」だけでなく「貯蓄」を兼ねた商品があります。学資保険や養老保険、終身保険などです。「保障もついて貯蓄もできてお得」と思われがちですが、ここには見落とされがちな落とし穴があります。

学資保険や積み立て型保険(養老・終身)は本当に「得」なのか?

学資保険や貯蓄型保険の返戻率(払い込んだ保険料に対して戻ってくる割合)は、現在の低金利下では多くの商品で100〜105%程度にとどまります。18年間かけて払い込んでも、増えるのはわずか数%。しかも、2026年現在のようにインフレ(物価上昇)が進む局面では、固定された返戻金の実質的な価値は目減りしていきます。 「元本保証で少し増える」という安心感の裏で、インフレに負けているリスクがあるのです。

さらに、貯蓄型保険は保障と貯蓄がセットになっているため、コスト構造が見えにくく、途中解約すると元本割れするリスクもあります。「保障」と「貯蓄」を1つの商品でまとめることの効率の悪さは、FPの視点から見ると無視できません。

インフレ時代における「新NISAによる教育資金準備」との使い分け

教育資金の準備手段として、近年注目されているのが新NISAです。大学入学まで10年以上の期間があるなら、新NISAのつみたて投資枠でインデックスファンドを積み立てるほうが、学資保険よりも高いリターンが期待でき、インフレにも対応しやすくなります(運用リスクはあります)。

保険で貯蓄することの是非を根本から考えたい方は、あわせてお読みください。

アルファ・ファイナンシャルプランナーズが提案する「保険の見直し&最適化ステップ」

ここまでの内容を踏まえて、実際に保険を見直す具体的な手順を3ステップでお伝えします。独立系FPとして、保険単体ではなく「家計全体の最適化」という視点で解説します。

ステップ①:現在の公的保障と会社の福利厚生を確認する

保険を見直す前に、まず「自分がすでに持っている保障」を把握します。高額療養費制度の自分の年収区分での上限額、会社員なら傷病手当金の有無、勤務先の健康保険に付加給付があるか——これらを確認することで、「民間保険で追加すべき部分」が明確になります。多くの方が、自分の公的保障を過小評価して、必要以上の保険に入っています。まず足元の保障を正確に知ることが、見直しの出発点です。

ステップ②:毎月の「固定費としての保険料」を適正化し、浮いたお金を資産運用へ回す

公的保障で足りる部分の過剰な保険を削ると、毎月の保険料が下がります。相談現場では、見直しによって月1万〜3万円の保険料削減につながるケースも珍しくありません。この浮いたお金を、ただ消費するのではなく、新NISAなどの資産運用に回すことで、「保障の最適化」と「資産形成」を同時に進められます。保険料は固定費です。一度見直せば、その効果は毎月・毎年続きます。

ステップ③:家計全体のバランスを踏まえたライフプランニング

保険の見直しは、単独で行うものではありません。「どこまで貯蓄で備え、どこから保険で備えるか」の最適なバランスは、家計の状況・年齢・家族構成・将来のライフイベントによって変わります。教育費・住宅ローン・老後資金といった大きな支出も踏まえて、家計全体のキャッシュフローの中で保障を設計することが、本当に無駄のない保険選びにつながります。特定の保険会社に属さない独立系FPは、この「家計全体の最適化」を中立な立場で提案できます。

まとめと次の一歩:無駄な保険料をカットして我が家に最適な保障を作ろう

この記事の要点を整理します。日本には高額療養費制度や傷病手当金といった手厚い公的医療保険があり、多くのご家庭は民間保険に「入りすぎ」の傾向があります。ただし、高額療養費制度には差額ベッド代・先進医療費などの対象外の出費があり、働き方(会社員か自営業か)によって公的保障の手厚さも大きく変わります。

医療保険が必要かどうかは、「公的保障」と「貯蓄」でいざというときの出費をまかなえるかで判断します。そして、備えるなら「入院日額」より「がん診断給付金」や「先進医療特約」を優先し、教育資金や貯蓄は保険ではなく新NISAなどの効率的な手段を活用する——このメリハリが、無駄なく必要な保障だけを持つコツです。

我が家に本当に必要な保障を見極めるには、将来の医療費リスクと家計の状況を可視化するのが一番です。まずはマネソルで、我が家の将来の医療費リスクと資産推移をシミュレーションしてみましょう。アルファ・ファイナンシャルプランナーズが開発した特許取得済みライフプランシミュレーションアプリ「マネソル」なら、「もし大きな病気になったら家計はどうなるか」「保険を見直して浮いたお金を運用に回すと、将来の資産がどう変わるか」を数分で可視化できます。漠然とした不安が、具体的な数字に基づく安心に変わります。

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よくある質問

Q. 「医療保険はいらない」と聞いて解約しようと思いますが、持病がある場合でも後から入り直せますか?

A. 基本的に、健康状態に問題が生じた後や特定の病歴がついた後は、通常の医療保険への再加入が厳しくなります。引受基準緩和型の保険もありますが、保険料が高く設定されるため注意が必要です。

Q. 高額療養費制度の限度額適用認定証は、事前にもらっておいた方がいいのでしょうか?

A. 入院や高額な治療が決まった段階で、事前に加入している健康保険(協会けんぽや健康保険組合など)に申請して「限度額適用認定証」を発行してもらうことを強く推奨します。窓口での支払いが最初から自己負担上限額までに抑えられます。

Q. 会社員ですが、会社の団体保険と個人の民間医療保険はどちらを優先すべきですか?

A. 会社の団体保険は、スケールメリットにより個人で加入するよりも保険料が割安(数%〜数十%割引)に設定されていることが多く、コスト面では非常に有利です。

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この記事の監修者

代表取締役/田中佑輝
アルファ・ファイナンシャルプランナーズ 代表取締役/田中佑輝

アジア金融の中心地であるシンガポールに10年間滞在し、グローバルな金融リテラシーを培う。外資系銀行にてプライベートバンカー、セールスマネジャーなどを経て株式会社アルファ・ファイナンシャルプランナーズを創業。実務の傍ら、Bond University大学院にて経営学修士(MBA)を取得。現場での豊富な実務経験と理論に基づき、単なる運用益にとらわれない「一生涯お金に困らないための資産形成」を提唱。富裕層から一般層まで自身で2,000件以上、代表を務める同社全体ではのべ3万件以上の資産運用のアドバイス実績を持つ。

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