住宅ローンを組む際、団体信用生命保険に加入するなら、健康状態や過去の病歴を伝え、審査を受ける必要があります。
持病がある人の中には「自分の持病は団信に入れない病気に該当しないだろうか…」と心配になっている人もいるはずです。
また「自分は健康だから大丈夫」と思っている人でも加入できない場合があるので、団信の加入条件は正確に理解しておかなければなりません。
この記事では、団体信用生命保険の審査基準や、加入できない病気について解説します。
フラット35などの審査に落ちた場合の対処法もご紹介しますので、使える方法がないかぜひ確認してください。
団体信用生命保険の審査基準は?
団体信用生命保険は「住宅ローンの返済期間中に契約者が亡くなったり、高度障害状態になった場合に保険金が給付される保険」です。
略して団信と呼ばれることが多く、給付条件に該当するとその時点のローン返済残高と同額の保険金が支払われます。
仮に、ローンの返済中に契約者が死亡しても、団信に加入していれば家族が代わりに返済義務を負うことがなくなるので安心です。
ただし、誰でも無条件に加入できるわけではなく、死亡直前に加入して高額な保険金を受け取るといったことはできません。
入れない病気の種類など詳細な条件は保険商品ごとに違いますが、加入するには基本的に以下2つの条件を満たす必要があります。
- 年齢
- 健康状態
一般の団信の加入条件
団信の加入条件は一般の団信と、三大疾病保障などの特約付団信(または一般の団信に特約を付けて加入する場合)で異なります。
一般の団信は特約付団信より審査基準は緩くなりますが、それでも以下に記載する年齢・健康状態の要件は満たさなければなりません。
加入条件①:年齢
団信に加入できる年齢の制限は保険商品によって異なりますが、下限を20歳、上限を70歳前後で設定しているケースが多く見られます。
ただし、フラット35の新機構団信のように満15歳以上で加入できるものもあり、保険商品ごとに規定が異なりますので個別に確認が必要です。
加入条件②:健康状態
死亡時に保険金が支払われる死亡保険では、健康状態が悪い人や一定期間内に大きな病気にかかった人は加入できません。
住宅ローンを組む際に加入する団体信用生命保険も、契約者が死亡すると保険金が給付される死亡保険の一つです。
そのため、団信に入る場合には、告知事項に回答して保険会社の審査に通る必要があります。
団信に加入できない病気の詳しい内容は後述しますが、現在の健康状態や過去の病歴次第では団信に入れないことがあります。
団信に特約を付ける場合の加入条件
一般の団信では契約者が死亡または高度障害状態になった場合が、保険金の給付対象です。
特約を付けると保険料は上がりますが、他の特定のケースでも保険金を受け取ることができます。
ガンや三大疾病にかかった場合も給付対象になるガン保障特約や三大疾病保障特約(ガン・急性脳梗塞・脳卒中が対象)が代表的な特約となります。
なお、一般の団信では保障の対象にならない重い病気をカバーするため、特約の加入条件は一般の団信より基本的に厳しくなります。
加入条件①:年齢
特約の場合は加入年齢の上限が50歳前後になっていることが多く、一般団信のように70歳前後でも入れるわけではありません。
年齢制限の規定は保険会社によって違いますが、一般的に50歳を過ぎると団信加入時に特約を付けるのは難しくなります。
加入条件②:健康状態
年齢だけでなく健康状態に関する条件でも、特約は一般団信より厳しくなることがあります。
たとえば、ガン特約であれば、一般団信の加入条件に加えて「過去にガンと診断されていないこと」と追加で条件が付くのが一般的です。
後述するように、一般団信の審査では3年以内の病歴を確認されますが、ガン特約では期間を問われることはほとんどありません。
今までに一度でもガンにかかっていれば基本的にガン特約は付けられなくなります。
住宅ローンを組むときの団体信用生命保険の告知事項
告知とは「保険に加入する際に保険会社に健康状態や過去の病歴などを報告すること」です。
一般的に、死亡保険では保険会社が顧客に対して告知義務を課しています。
告知事項の内容は細かい部分では保険会社ごとに違いますが、回答を求められる事項は基本的に以下の3点です。
- 最近3ヵ月以内に医師の治療(指示・指導を含みます。)・投薬を受けたことがありますか。
- 過去3年以内に以下の病気で、手術を受けたことまたは2週間以上にわたり医師の治療(指示・指導を含みます。)・投薬を受けたことがありますか。
- 手・足の欠損または機能に障害がありますか。または、背骨(脊柱)・視力・聴力・言語・そしゃく機能に障害がありますか。
引用元:日本私立学校振興・共済事業団|団体信用生命保険申込書兼告知書(だんしん告知書)
直近にかぜを引いて治療を受けていると告知対象になる反面、手術を伴う大きな病気でも3年より前であれば告知の対象外です。
団体信用生命保険に入れない可能性がある病気
告知事項の1つである「3年以内に手術を受けた、または2週間以上医師の治療・投薬を受けた病気」とは主に以下の病気です。
該当する病気にかかったことがあると団体信用生命保険に入れない可能性があります。
心臓・血圧 | 狭心症、心筋こうそく、心臓弁膜症、先天性心臓病、心筋症、高血圧症、不整脈、その他の心臓病 |
脳 | 脳卒中(脳出血・脳こうそく・くも膜下出血)、脳動脈硬化症、その他の脳の病気 |
精神・神経 | 精神病、うつ病、神経症、てんかん、自律神経失調症、アルコール依存症、薬物依存症、知的障害、認知症 |
肺・気管支 | ぜんそく、慢性気管支炎、肺結核、肺気腫、気管支拡張症 |
胃・腸 | 胃かいよう、十二指腸かいよう、潰瘍性大腸炎、クローン病 |
肝臓・すい臓 | 肝炎、肝硬変、肝機能障がい、すい臓炎 |
腎臓 | 腎炎、ネフローゼ、腎不全 |
目 | 緑内障、網膜の病気、角膜の病気 |
がん・しゅよう | がん、肉腫、白血病、しゅよう、ポリープ |
その他の病気 | 糖尿病、リウマチ、こうげん病、貧血症、紫斑病 |
女性にのみ告知いただきたい病気 | 子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣嚢腫、乳腺症 |
引用元:日本私立学校振興・共済事業団|団体信用生命保険申込書兼告知書(だんしん告知書)
ただし、上記の病気に該当するからといって絶対に団信に入れないわけではありません。
診断書など追加で書類の提出を求められて、保険会社が総合的に判断して審査に通る場合もあります。
また、上記の病気の一覧はあくまで一例であり、団信の告知対象となる病気は保険会社ごとに異なる点にも注意が必要です。
持病のある人が団信の審査に落ちた場合でも、病気の種類によっては、他の保険会社では告知対象外で加入できることがあります。
団体信用生命保険の審査に落ちた場合の7つの対処法
団信に入れない病気に該当して審査に落ちた場合でも、住宅ローンを組むための方法がいくつかあります。
審査に落ちても団信加入を諦める必要はありませんし、そもそも持病がある人が住宅ローンを全く組めないわけではありません。
ここでは、団信の審査に落ちた場合の7つの対処法を紹介するので、実際に使える方法がないか確認してみてください。
- 審査が通りやすい団信に申し込む
- 加入条件が緩いワイド団信への加入を検討する
- 団信加入が必要ないフラット35でローンを組む
- フラット35と一般の生命保険を組み合わせる
- 配偶者の名義で住宅ローンを組む
- 告知対象期間を経過するまで待つ
- 住宅ローン審査時の頭金を増やす
①審査が通りやすい団信に申し込む
どの保険会社の団信に加入する場合でも、過去の病歴を確認されるなど告知事項の内容は大枠としてはほとんど同じです。
団信の審査基準はあくまで各保険会社が決めているので、細かい部分では違いがあり、まったく同じわけではありません。
そのため、一度審査に落ちた人でも他の団信に申込むと審査に通る場合があります。
同じ病気でも他の団信ではそもそも告知対象外で入れるケースもあるので、審査が通りやすい団信を探して申込みを検討してみましょう。
②加入条件が緩いワイド団信への加入を検討する
ワイド団信は一般の団信よりも審査基準が緩和された団信です。
一般の団信では加入できない病気でもワイド団信であれば審査を通って加入できる場合があります。
万が一の場合には住宅ローン残高分の保険金が支払われるので、加入後の保障内容としては基本的に一般の団信と変わりません。
ただし、一般の団信よりも金利が高く、実質の返済額が増える点に注意が必要です。
加入年齢の上限は50歳前後で設定されている商品が多く、通常は加入条件が一般の団信より厳しくなります。
③団信加入が必要ないフラット35でローンを組む
住宅ローンを組むには団信加入が必須条件であることが多いものの、フラット35では団信に加入しなくてもローンを組めます。
そのため条件の緩いワイド団信でも落ちた場合には、フラット35でローンを組む方法を検討してみてください。
なお、フラット35Sは省エネや耐震性に優れた住宅に対して、フラット35より低い金利で住宅ローンの借り入れができます。
フラット35は住宅金融支援機構と民間金融機関が提携して扱う固定金利型の住宅ローンです。
団信に加入するタイプと加入しないタイプ、2種類のフラット35があります。
健康上の理由で団信に加入できない人でも、団信加入を要しない後者のタイプのフラット35であれば利用が可能です。
例えば、住信SBI銀行のフラット35はあらゆる疾病への保障が付いており、症状に応じてローンが減額または免除されます。
団信に通らない、スムーズに住宅ローンを組みたい方は「フラット35」を早々に検討してみることをおすすめします!
引用元:フラット35|住信SBI銀行

④フラット35と一般の生命保険を組み合わせる
団信に入れない病気に該当する場合でも、フラット35と一般の生命保険を併用する方法があります。
死亡保険金が支給される一般の生命保険のうち、引受基準緩和型や無選択型の保険に加入する方法です。
死亡保障性の生命保険では通常告知が必要ですが、引受基準緩和型では加入条件が緩く、無選択型では告知は必要ありません。
無選択型であれば健康状態を保険会社に伝える必要がなく、団信の審査に落ちた人でも加入できます。
フラット35(団信加入なし)でローンを組み、万が一への備えは一般の生命保険でカバーするのも一つの方法です。
なお、引受基準緩和型や無選択型は通常の生命保険より保険料が高くなる点には注意してください。
ARUHIのフラット35は全期間固定(21~35年)が団信なしであっても金利は年0.86%なので、資金を金利に費やす割合が低く、一般生命保険の費用に充当しやすいでしょう。
引用元:フラット35|ARUHI
⑤配偶者の名義で住宅ローンを組む
住宅ローンを組もうと考えていた人が健康上の理由で審査に落ちた場合でも、配偶者の名義で住宅ローンを組む方法が考えられます。
ただし、配偶者に一定の年収があって住宅ローンの審査を通り、団信に入れない病気に該当せず加入条件を満たすことが必要です。
なお、配偶者名義で住宅ローンを組み、実際の返済は名義人ではない配偶者が行う場合には贈与税に気を付けてください。
年間の贈与額が一定額を超えると贈与税がかかりますが、借金の肩代わりは実質的な贈与と見なされて、贈与税がかかる場合があります。
⑥告知対象期間を経過するまで待つ
団信に加入する際に告知を求められるのは直近3ヵ月以内や過去3年以内の病歴です。
健康状態が回復する見込みがあれば3ヵ月や3年を経過するまで待っても良いでしょう。
ただし3年経過するまでには時間がかかりますし、経過するまでの間に病気が再発すれば再び3年間待たなければなりません。
団信に加入する方法として必ずしも確実な対処法とは言えない点には留意が必要です。
団信に入れない病気に該当する場合でも、ここまでに紹介した対処法が使えれば住宅ローンを組むことができます。
ただし、一般の団信に加入する通常のケースに比べると、それぞれの対処法にはデメリットがあることも事実です。
たとえば、フラット35(団信加入なし)では万が一への備えができず、無選択型の生命保険に入る場合には保険料が高くなります。
保険料負担が重くなれば、かえってご自身や家族が普段の生活で苦しむことにもなりかねません。
ご自身の状況によっては、住宅ローンを組むことを諦める選択も必要になります。
健康上の理由がある場合には、住宅ローンを組むべきかどうかを今一度検討するようにしてください。

⑦住宅ローン審査時の頭金を増やす
最後の手段として「頭金を増やす」という方法があります。
住宅ローンを通す場合には、支払い能力の審査が入りますが「すでに資産をもっている」「頭金が多い」場合には与信枠が増える可能性が高いです。
本来融資などは「支払見込可能金額の◯倍」で計算することが多いのですが、住宅ローンもその例に漏れないですから、少しでも審査に不安のある方は頭金を増やすことをおすすめします。
「定期預金などを行い、実績を積みながら貯金する」なんて方法もありますよ。
住宅ローンを組むときの団体信用生命保険の告知書の書き方
団信の告知書では告知の対象となる病気が一覧で記載され、3年以内にかかった病気がないかどうかを回答します。
該当する病気がある場合には病名や治療期間なども回答しますが、記入自体は簡単で量も多くないので難しくありません。
ただし、告知事項に回答する際には、「事実を正確に記入することの重要性」を理解してから告知書に記入することが大切です。
団信に入れない病気があるからという理由で虚偽報告をしてもリスクしかありませんし、告知義務違反は絶対にしてはいけません。
虚偽の告知をすると告知義務違反や契約解除になるので要注意
告知書で事実と違う内容を記載したり、事実そのものを伝えなかった場合、告知義務違反になって保険契約を解除される可能性があります。
契約解除になった場合、契約者が死亡したり高度障害状態になっても保険金が支払われず、万が一の場合でもローンを返済できません。
加入申込みをする際には、告知義務違反をした場合のリスクやデメリットを十分に理解しておくことが大切です。
団信には不測の事態への備えとして安心を得るために加入するので、逆に虚偽報告でリスクや不安を抱えることだけは避けるようにしてください。
団信に加入するためには告知書に事実を素直に記入することが大切
持病がある人の中には「告知事項に正直に回答したせいで審査に落ちたらどうしよう…」と不安に感じる人もいるかもしれません。
しかし、実際に審査を受けてみないと結果は分かりませんし、虚偽の報告をするリスクのほうがはるかに大きいです。
リスクをおかしてまで加入して、ご自身や家族を危険にさらすより、正直に回答して審査に落ちるほうがむしろ正しいといえます。
告知書には事実を素直に記入するようにしてください。
団体信用生命保険に入れない病気がある人は他の方法も検討しよう!
住宅ローンを組むために団体信用生命保険に入る場合、健康状態や過去の病歴を保険会社に伝える告知が必要になります。
団信に入れない病気に該当すると審査で落ちることはありますが、住宅ローンを組む方法は他にもあるので諦める必要はありません。
団信の審査で落ちた方は、今回この記事で紹介した対処法で使えるものがないかどうか今一度チェックしてみましょう。
ワイド団信やフラット35など気になるプランがある場合には、資料を取り寄せるなど詳細な内容をぜひ確認してください。