40代FPが実践する老後資金準備 その2 小規模企業共済

2019年はつみたてNISAやiDeCoを使った老後資金準備を始めた人が増え、
2019年12月末に発表された税制改正大綱では、
投資利益が非課税となるNISAやつみたてNISAは期間延長、
節税効果を味方につけ、投資信託等を定期的に積み立てて老後資金を準備する
iDeCo(個人型確定拠出年金)やDC(企業型確定拠出年金)は加入期間延長や受取期間開始時期の選択肢拡大等、
老後資金準備に取り組む人を後押しする税制が整備される方向に動き始めました。
一方、新しいもの、変わるものばかりに目を向けるのではなく、従来からある老後資金準備制度も上手に活用したいものです。
今回は私も活用している、個人事業主や小規模企業の役員の老後資金準備で活用したい
小規模企業共済について解説します。
支払った全額が所得控除の対象となり、抜群の節税効果

小規模企業共済は独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する共済制度。
従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)である事業の個人事業主(および共同経営者2人を含む)および役員が加入できます。
掛金は個人負担となり、支払った全額が小規模企業共済等掛金控除の対象となり、
所得税、住民税が軽減されます。
支払うことができる上限額は月額7万円、年間84万円。
国民年金基金と確定拠出年金は合わせて月額6.8万円までですが、
小規模企業共済の掛金は別腹。
所得税率20%(別途住民税率10%)の事業主が毎月4万円(年間48万円)を支払う場合、
所得税と住民税を合わせて14.4万円(48万円×30%)軽減されます。
適用税率が高い人ほど、節税効果が大きくなります。
なお、利率は1%の利率変動型。預貯金に比べても悪くありません。
無担保・無保証で借入可

小規模企業共済の主な加入目的は老後資金準備という人が多いと思いますが、
支払った掛金に応じて、無担保・無保証で借り入れできるのも大きな特徴です。
事業の運転資金・設備投資資金、新規事業展開時のほか、自宅のバリアフリー工事費用、傷病治療費用、災害時にも利用できます。
貸付期間(最長5年)や返済方法(一括償還または6カ月ごと償還)は
資金の用途や借入額によって異なり年利は最高1.5%。
国民年金基金や確定拠出年金には資金貸付制度がないため、
自営業者や小規模企業の経営者等、資金調達ニーズが相対的に高い人にはとても便利です。
事業を続けていても退職金(共済金)を受取り可
一時金で受け取れば、退職所得税制を活用

個人事業であれば廃業、法人役員であれば退任すれば共済金を受け取ることができますが、掛金を180月以上支払っており65歳以上であれば、
個人事業を継続していても、役員を退任しなくても共済金を受け取ることができます。
共済金を一括で受け取る場合は退職所得扱い、分割払いで受け取る場合は雑所得扱い。
退職所得の場合、加入期間に応じて20年以下の部分は1年につき40万円、20年超の部分は1年につき70万円までは、所得税・住民税がかかりません。例えば、加入年数が25年である場合、40万円×20年+70万円×5年=1,150万円までは税金がかかりません。
一方、分割払いで受け取る場合は公的年金等の雑所得。
老齢基礎年金、老齢厚生年金と合わせて、収入金額に応じた公的年金等控除額(みなし経費)を差し引くことができます。65歳以降の公的年金等控除額は原則、最低110万円。長期にわたり受け取るほど、公的年金等控除を有効に活用できます。
個人事業の場合、会社からの退職金はありませんし、
小規模企業の役員も退職金制度がなければ、是非、小規模企業共済を活用して、
退職金を準備し、退職所得控除を効果的に活用しましょう。
なお、任意脱退する場合は一時所得扱い。50万円の特別控除は適用できますが、
脱退手当金から差し引く必要経費がないため、思わぬ税負担が発生する可能性もありますので、ご注意を。
私自身は34歳時から月額4万円、その後掛金を7万円に増額しています。
掛金が全額所得控除となり、個人事業主も退職所得税制を活用できることが大きな理由ですが、万一、資金の借り入れが必要となる場合にも対応できる安心感も。
老後に向けて、時間は確実に短くなっていきます。
できることをコツコツと準備を進めてはいかがでしょうか?
興味がある方は下記サイトから資料請求から。
(独立行政法人 中小企業基盤整備機構:https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/index.html )