Column

コラム
2022年2月17日 コラム
2022年度の年金は0.4%の減額、2023年度は物価上昇でも減る可能性大

2022年1月21日、2022年度の年金額の改定が発表されました。

物価変動率は▲0.2%、賃金変動率は▲0.4%でしたので、2021年度に比べて0.4%の減額となります。
実は2020年度までと2021年度以降では、年金額の改定ルールが大きく変わっています。
日本の公的年金制度は「賃金上昇率>物価上昇率」という前提条件で設計されています。

しかし、皆さんもお感じのとおり、物価は上昇しても、賃金がなかなか増えません。

「賃金変動率<物価上昇率」の感が強く、今後も物価が上昇し、賃金がさほど上昇しないと、年金制度の前提条件が根本から覆され、この状況が続くと2021年度以降の改定ルールが大きなダメージを与えます。

2020年度までは高齢者等の受給者優先、2021年度以降は負担者優先の改定

2020年度までは、年金受給者の生活レベルの維持に配慮をし、物価変動率▲0.2%、賃金変動率▲0.4%の場合、物価変動率に合わせた改定となり、0.2%の減少で済みました。

一方、2021年度以降は、現役世代の負担への配慮する制度に変わり、物価変動率▲0.2%、賃金変動率▲0.4%の場合、賃金変動率に合わせた改定となり、0.4%の減少となります。

仮に、数値を変えてみます。

物価変動率▲1%、賃金変動率▲3%の場合、2020年度までの制度では年金は1%の減少、2021年度以降は3%の減少となります。

2023年度は更に減る可能性とその背景

年金額の改定で重要となる「物価変動率」と「賃金変動率」について簡潔に説明します。

「物価変動率」は前年の物価変動率を使用します。つまり、2023年度の年金額では、2022年の物価変動率を使用します。

皆さんもお感じになっているとおり、2021年の後半から食料品、ガソリン代等を中心に、全般的に物価が上昇していることや、菅前首相の肝いり政策であった携帯電話料金の引き下げ効果がなくなる分、消費者物価の変動率は数値上、プラスになりやすいと(現段階では)予想されます。

つまり、物価変動率だけを見れば、2023年度の年金はある程度増えるのではないかと期待できます。

しかし、前述のとおり、物価上昇率が高くても、賃金上昇率が低い、または賃金が下がれば、賃金変動率に合わせた改定が行われます。

賃金変動率の計算における賃金は、ボーナスを含めた給与(標準報酬額等平均額)の前々年度以前3年間の平均数値を使用します。

つまり、2023年度の年金の計算では、2019年度から2021年度の給与を元に計算します。
新型コロナの影響がある2020年度、2021年度の賃金を含めて計算します。

リモートワークが増えたことによる通勤手当の減少、残業代の減少、ボーナスの減少等の影響を受けた賃金を元に計算するため、賃金の減少幅は2022年度よりも大きくなることが予想されます。

たとえば、物価変動率+3%でも、賃金変動率が▲2%であれば、年金額は2%の減額となります。ただし、生活実感は、物価上昇幅3%と年金減額2%の合計5%減額となると考えられます。

以上のとおり、現在のトレンドからみると、物価は上昇しても、賃金が下がる可能性が高く、2023年度は物価が上昇する一方で、年金はさらに減るという状況が予想されます。

仮に賃金変動率が上昇しても、0.3%以内であれば年金額は据え置きの可能性も

仮に、2023年度の年金額の計算で使用する賃金変動率が0.3%程度上昇した場合でも、年金受給者の増加、平均余命の伸びや、保険料を負担する現役世代の減少を考慮して、年金水準を調整(減額)するマクロ経済スライド率の適用により年金の増額は抑えられます。

2021年度、2022年度は年金額が減額改定であったため、この2年間で調整(減額)すべきであったマクロ経済スライド調整率0.3%分の適用は、2023年度以降に先送り(キャリーオーバー)されていますので、0.3%以内の賃金上昇であれば、年金は据え置きとなります。

現役世代は計画的な老後資金準備を! 年金受給者は思いきった家計の見直しを!

このトレンドは今後も続くと可能性が高いと考えた対策を立てましょう。

老後まで時間がある人は、できる範囲でiDeCoやつみたてNISAを利用して、コツコツ投資信託を積み立てることをお勧めします。

一方、年金を受け取っている世代の人は、積立投資に加えて、資産運用の家計支出の見直しの重要性がより高いといえます。

従来であれば、保険の見直し、住宅ローンの見直し、水道光熱費、通信費、車両費等、5大固定費の見直しを推奨していましたが、住宅ローンは十分に金利が低く、むしろ上昇する兆候もあり、住宅ローン利用者の7割が利用している変動金利型ローンの人にとっては、将来の負担増を想定しておいたほうがよさそうです。

また、光熱費は、ガソリン代や原油価格の上昇により、支出増を抑えるのが精一杯です。

以上のことを考えると節約よりも、ライフスタイルの見直しが必要かもしれません。

  • マイカーを手放してカーシェアに切り替え
  • 必要な保険の優先順位付けと見直し
  • 格安スマホ、格安SIMを利用した通信費の見直し

等を検討の土台に上げて検討してみましょう。
家計の見直しは家族内で話し合っても、上手くいかないケースが多々あります。
第三者の立場としての意見、家族間の調整役として、私たちFPをご活用ください。

文・益山 真一(ますやま しんいち)

1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
1級FP技能士、CFP認定者
マンション管理士、宅地建物取引士、消費生活アドバイザー、ダイエット検定1級、食生活アドバイザー2級、健康管理能力検定2級
2003年から2017年まで15年にわたり、國學院大學経済学部非常勤講師

人生を楽しむお金を生み出すことを目的とした執筆、講演活動を展開。
主なテーマは「資産形成・老後資金準備と家計管理」。
FPの資格取得・継続教育、宅建の資格取得研修、高校・大学の講義のほか、投資家向けセミナー、内閣官房内閣人事局主催のキャリアデザイン研修講師、ファイナンシャルアカデミーのお金の教養講座・経済入門スクール等、セミナー・研修・講義は2021年3月時点で3113回。
活動理念は「心、カラダ、キャリア、時間、お金」の5つの健康のバランスを考えた最適提案。