社会保険料控除は高所得者がまとめて適用を受けよう!

毎年、2月16日から3月15日までは所得税の確定申告期間です。
皆さん、確定申告をしたことがありますか?
会社員等で、年末調整で申告・納税が完了するようであれば、確定申告をする必要はありません。
一方で、確定申告をしなくてもよい場合でも、確定申告の適用の仕方1つで数万円、数十万円、所得税が変わるケースも多々あります。
今回は、給与所得者が上手に適用を受けることで、所得税(および住民税)の負担が大きく減る可能性がある社会保険料控除について説明します。
所得税は原則累進税率 所得金額が高い人に適用するほど節税効果大

所得税は、不動産や株式の譲渡所得など、一部を除き、課税所得金額に対して5%から45%の累進税率となっています。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
195万円以下 | 5% | - |
195万円超 330万円以下 | 10% | 97,500円 |
330万円超 695万円以下 | 20% | 427,500円 |
695万円超 900万円以下 | 23% | 636,000円 |
900万円超 1,800万円以下 | 33% | 1,536,000円 |
1,800万円超 4,000万円以下 | 40% | 2,796,000円 |
4,000万円超 | 45% | 4,796,000円 |
さらに別途、住民税が一率10%で課税されます。
所得税率が5%の人が適用を受けると、住民税と合わせて15%、
所得税率が20%の人が適用を受けると、住民税と合わせて30%
の負担となります。
社会保険料控除は全額控除のため節税効果大

社会保険料控除は、所得税の所得控除の1つで、納税者本人が、納税者本人、生計を一にする配偶者、親族にかかる社会保険料について支払ったものが対象になります。
課税される所得金額を求める際、給与所得や事業所得などの所得金額から差し引くことができるものの1つで、社会保険料控除は支払った「全額」を控除できます。
つまり、
所得税率が20%の人は支払った金額の30%の節税
所得税率が5%の人は支払った金額の15%の節税
となるため、課税される所得金額が多い人が適用を受けると有利となります。
生命保険料控除は各4万円または各5万円、
地震保険料控除は5万円の控除限度額があるのに対し、
社会保険料は100万円支払えば、100万円を所得金額から差し引くことができますので、課税される所得金額を小さくする効果は絶大です。
社会保険料控除の対象となるものには、
- 国民年金、国民年金基金、厚生年金、厚生年金基金
- 健康保険、国民健康保険、(公務員等の)共済、後期高齢者医療制度
- 雇用保険、介護保険
等の保険料、掛金があります。
また、社会保険料控除は支払った者が適用を受けることになります。
- 給与から源泉徴収されている社会保険料は、給与所得者の社会保険料控除
- 口座振替、クレジットカードで支払う保険料は、口座(カード)名義人の社会保険料控除
- 年金から特別徴収されている保険料は、年金受給者の社会保険料控除
となります。
給与からの天引きは変更のしようがありませんが、その他については一定の対策を立てることで、節税効果を高めることができます。
社会保険料を年金からの特別徴収、所得が低い者の口座での口座振替をやめる

- 所得が低いまたはゼロである者の口座振替で支払うと、節税効果は小さいまたはゼロ
- 年金受給者の所得が低いまたはゼロである場合、節税効果は小さいまたはゼロ
となります。
言い換えれば、生計を一にすることを前提としますが、
- 所得が高い者の口座振替(カード)で支払う
- コンビニ払い(納付書払い)を利用する(1年を終えて一番所得が多い人が適用を受ける)ことで、所得税・住民税の負担を減らすことができます。
具体的には
- 国民年金保険料(1人あたり年間約20万円)について、所得が最も多い人の口座振替で支払う、カード払いを利用するまたはコンビニ払いを利用する(家族で所得が一番高い人が支払ったことにする)
- 65歳以上の年金受給者の年金から差し引かれている国民健康保険、後期高齢者医療制度の保険料を年金天引きから、現役世代等、所得が一番高い人の口座振替に切り替える
等の方法が考えられます。
国民年金20万円について所得がゼロの人の節税効果はゼロですが、
所得税率が5%の人は約3万円(20万円×15%)の節税
所得税率が20%の人は約6万円(20万円×30%)の節税
となります。
また、国民健康保険や後期高齢者医療制度の保険料も所得がゼロである高齢者が支払っても節税効果はゼロですが、所得が多い人が支払うことで、所得税・住民税の節税効果の恩恵を高めることができます。
社会保険料控除は、制度上、年末調整も控除を受けられますし、毎年発生します。
加えて、支払った全額が控除対象となるため、上手に活用するか否かによって年間で数万円、一生では数十万円、数百万円異なる可能性もあります。
物価の上昇や年金の減額等、家計の負担が増えるなかで、税制を上手に活用して、手取額を増やすことは、実践しやすい1つの手段です。
個別具体的な税務相談は税理士または税務署にお問い合わせをいただくことになりますが、制度については詳しくご説明できますので、是非、私たちFPをご活用ください。