小規模事業者が老後資金を準備しながら、緊急時の資金も確保できる小規模企業共済

新型コロナウイルスの感染拡大を受けた臨時休校で、2月27日から3月31日までに小学校など(幼稚園、保育所に通う児童、特別支援学校を含む)に通う子を持つ保護者が仕事を休んだ際の賃金を、日額8,330円を上限に全額補償するそうです。
年次有給休暇とは別に、従業員に有給で休暇を取らせる企業が対象であり、正規、非正規を問わず、従業員、パート、アルバイトが対象となります。
一方、自営業者は対象外となっています(3月3日執筆時点)。
自営業者や役員は労働者ではなく、経営者として扱うため、ある意味、然るべき措置ともいえますが、自営業者や役員も、新型コロナウイルスによる混乱により、事業の継続、家計の運営に影響を受ける人も少なくありません。
今回は、自営業者や小規模企業の役員が老後資金を準備しながら、緊急時の資金を確保できる小規模企業共済の概要と貸付制度を紹介します。
個人事業主のみでなく、共同経営者も加入できる
小規模企業共済は中小企業基盤整備機構が運営する共済制度で、従業員数が20人以下(商業・サービス業は5人以下)である自営業者(共同経営者2人を含めて合計3人まで)や小規模企業の役員が加入できます。なお、加入後、事業規模が大きくなっても継続して加入できます。
掛金は個人負担で、毎月1,000円から70,000円までの500円刻みで設定でき、支払った掛金は全額が所得控除の対象となるため、所得税、住民税の節税効果は抜群です。
廃業・退任のほか、事業継続中でも「退職金」としての共済金をもらえる場合も

積み立てた掛金は、将来、役員を退任したとき、個人事業を廃業したときなどに、退職金としての共済金受け取ることができます。
支給額は支給事由により異なりますが、以下の表の事由に該当した場合には、掛金を下回ることはありません。また、15年(180月)以上にわたり掛金を払い込んだ場合は65歳以上であれば、個人事業主や共同経営者は事業を継続していても、役員は退任しなくても共済金Bを受け取ることができます。
なお、掛金納付期間が20年未満(240月未満)の場合の任意解約では、解約手当金は掛金を下回ることもあります。
掛金月額1万円を支払った場合の共済金の支給事由と支給額(一括受取り)の例

共済金の受取方は「一括受取り」のほか、「分割受取り」「一括受取りと分割受取りの併用」を選択できますが、併用には一定の条件があります。
低利・無担保・無保証で資金借り入れできる

なお、掛金の節税効果を味方につけながら、老後資金を準備できるだけでなく、一時的に資金が必要になった場合、掛金を担保に資金を借入れることができます。
自営業者が老後資金準備で利用できる国民年金基金、iDeCo(個人型確定拠出年金)には貸付制度はありません。その点、小規模企業共済は万一の際の資金繰りが心配な人にとって心強い制度です。
中小企業基盤整備機構または商工組合中央金庫の本支店に申し込むことで、
掛金の7割~9割(掛金納付月数により異なる)を担保にして、資金を借り入れできます。たとえば、売上が一時的に減少している場合の事業資金が必要な場合は緊急経営安定貸付け、自然災害により被害を受けた場合の事業資金が必要な場合は、傷病災害時貸付けを利用できます。
最長借入期間は融資限度額によって異なりますが最長5年、
貸付利率は、一般貸付は年利1.5%、その他の貸付けは年利0.9%と低利。
掛金の積み立てが少なければ、借入限度額も少なくなりますが、節税効果を味方につけて老後資金をコツコツ積み立て、低利・無担保・無保証で資金調達できる点は、小事業事業者にとっては大きな安心といえます。
<主な貸付け制度の概要>

1990年代前半はバブル崩壊、
1990年代後半はアジア通貨危機&大手金融機関の相次ぐ破綻、
2000年代前半はITバブル崩壊&大手金融機関の破綻
2000年代後半はサブプライムローン問題&リーマンショック
2010年代前半は東日本大震災
2010年代後半はチャイナショック、台風や地震による自然災害
そして2020年は新型コロナウイルス。
長期間事業を行っていると、不景気や想定外の災害・アクシデントは起こるものであり、
今後も、事業継続の安定を揺るがすような災害・アクシデントが起こることは想像に難くありません。
今後もアクシデントを想定し、
老後資金をコツコツと準備しつつ、低利・無担保・無保証で資金調達できる制度の利用を
検討してみてはいかがでしょうか?