今後、ホントに年金は増えにくくなる!2つの理由と対処法

皆さんは毎年誕生月に送られてくる「ねんきん定期便」はご覧になっていますか?
私たちFPは、老後資金のご相談だけでなく、死亡保障や医療保障のご相談でも多くの
情報を仕入れることができる、とっても重宝な資料です。ぜひ、大切に保管しましょう!
ねんきん定期便には、50歳未満の人は現時点までの払込実績に応じた年金額が記載されており、50歳以上では現時点の状況が60歳に達するまで続く見込みとしての年金額が記載されています。
その年金額ですが、
2018年度から増えにくくなり、
2021年度から減りやすい制度に改定されたことをご存知でしょうか?
今回は、公的年金が増えにくく、減りやすくなる制度改正の内容と
皆さんができる対処法のキーワードをご紹介します。
2018年度からマクロ経済スライドのキャリーオーバー適用に

皆さん、マクロ経済スライドって言葉、聞いたことがありますか?
現役世代の減少と平均余命の伸びに応じて、年金の支給水準を調整することをいいます。
実はこの制度は2004年度から存在していたのですが、殆ど適用されることはなく、
適用しきれない部分は切り捨てとなり、翌年度以降に繰り越されることはありませんでした。この制度が、2018年度以降、適用しきれない分を翌年以降に繰り越すこととなりました。
例えば、2019年10月に予定されている消費税率10%への引き上げにより、
物価も上昇しやすくなるため、本来であれば年金の支給水準も上昇するのですが、
2018年度に適用しきれなかったスライド率の分が、
2019年度、2020年度に繰り越されるため、
今後、物価上昇があっても、年金の額面は増えにくくなります。
従来、物価水準に合わせて改定されてきた年金ですが、いよいよ物価水準からの
切り下がりが始まったといえます。
2021年度から物価上昇率>賃金上昇率の場合には、賃金に合わせて年金改定

日本の年金制度は、「賃金上昇率>物価上昇率」を前提として設計されており、
賃金上昇率>物価上昇率の場合、67歳までは賃金上昇率で改定、68歳以降は物価変動率で改定されます。この点は2021年度以降も変わりありません。
しかし、皆さんもご存知のとおり、2010年代中盤までの約20年は物価も上がりにくかったですが、それ以上に賃金が上がらない時代でした。
そんな局面では、現在は現在受給している方の給付水準を下げないことを優先して
以下のように見直されてきました。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>年金改定率
賃金変動率+1% 物価変動率+3% → +1%(賃金に合わせる)
賃金変動率▲1% 物価変動率 +1% → ゼロ (賃金に合わせるが、減らさない)
賃金変動率▲3% 物価変動率▲1% ▲1%(物価に合わせて、減らす)
この年金改定率が2021年度以降、いずれも賃金に合わせて改定となります。
>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>>年金改定率
賃金変動率+1% 物価変動率+3% → +1%(賃金に合わせる)
賃金変動率▲1% 物価変動率 +1% → ▲1%(賃金に合わせる)
賃金変動率▲3% 物価変動率▲1% ▲3%(賃金に合わせる)
つまり、今後は物価が高くなっても、賃金変動率に応じて変動するため、賃金変動率によっては伸び悩み、減る可能性があります。
今後、給与が伸びない場合には、年金受給者の生活も更に厳しくなることが予想されます。ただし、現在の受給者の給付水準を切り下げることで、将来の受給者の給付水準の切り下げを小さくするため、世代間の公平性を維持するための1つの方法であることも否定できません。
このように、今後、増えにくく、減りやすくなった年金制度に対して、
できる手段を考えてみましょう。
まずは、ベタですが、自営業も会社員も長く働くことが最も現実的な手段と考えられます。
働くことで安定収入を確保でき、貯蓄の減り方を遅くすることができます。
仮に60歳以降75歳まで月々15万円の給与収入がある場合、額面で2,700万円の収入。
手取りでも2,000万円以上は得られますので、住宅ローンの返済、教育資金準備で精一杯であり、老後資金準備になかなか手が回らない人には、手堅い手段です。
そのためにも、働くモチベーションのほか、働ける場所、働けるスキル、働ける仲間、
働ける健康も貴重な財産です。
次に、iDeCoやNISA等の税制優遇を活用した老後資金準備。
時間を味方につけて、できるだけローリスク、ローコストの投資信託をコツコツと積み立てることが基本となります。
さらに、自営業者では国民年金基金、小規模企業共済、付加年金の活用なども考えられます。

年金が増えにくくなり、減りやすくなったというニュースは
マスコミではほとんど取り上げられていませんが、私たちの老後生活準備にとっては大きな問題です。この記事を読んだ皆さんは少しでも早く老後資金準備に向けて、一歩を踏み出してくださいね。