金(きん)を持とう!

2022年2月24日、ロシアがウクライナに侵攻を始めました。
2022年が明けてからのロシアの動きを受けて、株価や為替は大きく動きました。
一刻も早く、この侵攻が止まることを祈るばかりですが、残念ながら、今後もこのような紛争や侵攻が起こる可能性はあると考えられます。今後のこのような出来事に対して、資産を守るために強いとされるのが「金」。
今回は、金に投資する方法やその課税の違い、注意点について紹介します。
地政学的リスク、信用不安に強い金
金は利息も付きませんし、配当もありません。
その点では、預貯金や株式に比べて魅力で劣ります。
しかし、預貯金(通貨)や株式になくて、金にあるのが実物としての価値です。
預貯金や株式は、その裏付けである「信用」があれば、価値を持ち、信用が高まれば、価値も高まります。一方、「信用」を失えば、その通貨や株式の価値は失われます。
したがって、通貨の金利が高いとき、株価が上昇する局面では、通貨や株式で保有する方が魅力的であるため、金の価格は下がりやすくなります。
一方、リーマンショック後の株価が下落する局面や、新型コロナウイルス感染の当初拡大局面においては、金の価格が大きく上昇しました。
つまり、通貨、株式と金に分散投資することで、資産全体の価値の変動を小さく抑えることができます。
金に投資する方法には
- 金に投資するETF(上場投資信託)を持つ
- (非上場の)投資信託に投資する
- 金実物を購入する
等の方法があります。
金に投資するETF(上場投資信託 即時取引でき、税金も株式等と同じ扱い

最も手軽に投資する方法は、証券会社で金に投資するETFを取引する方法です。
証券会社で特定口座を開設すれば、上場株式と同じように取引できます。
証券市場が開いている平日9時から15時までの間であれば、そのときの時価で売買できますので、買いたい価格、売りたい価格で取引できます(概ね、数千円から数万円)。
また、特定口座(源泉徴収口座)を開設していれば、金ETFの売却益は約20%の課税、売却損が発生すれば、他の上場株式等の配当所得、譲渡益と損益通算できます。
なお、NISA口座で取引をすれば利益は非課税となります。
デメリットとしては、次に説明する、上場していない投資信託とは異なり、定期的な積立投資をする仕組みことができない(証券会社が多い)点が上げられます。
ETFは安いときに購入し、高いときに売り抜けるようなスタンスを好み、実践できる方に適しています。
金に投資する非上場の投資信託を購入する、積立投資に利点

金に投資する投資信託は、証券会社のほか、投資信託を取扱う銀行や信用金庫等でも取引できます。一般的に1万円から(証券会社によっては、より少額から)投資できます。
ETFと同様、特定口座(源泉徴収口座)を開設していれば、金ETFの売却益は約20%の課税、売却損が発生すれば、他の上場株式等の配当所得、譲渡益と損益通算できます。
NISA口座で取引をすれば利益は非課税となります。
ETFと異なる点で、よい点は、一般に1,000円以上の一定金額を設定して、定期的な積立投資できること。
無理のない範囲で、毎月、毎週、毎営業日等でコツコツ購入することで、地政学的リスクや信用リスクが高まったときのリターンを高めることができます。
一方、気をつける点は、買いたい価格、売りたい価格で取引できるわけではなく、翌営業日の基準価額での取引となることです。つまり、取引したいタイミングより少し出遅れます。
非上場の投資信託は、コツコツ積立投資に取り組み、利益の最大化よりも、リスクを抑えながら、中長期的スタンスでリターンを求める方に適していると考えます。
金に現物投資 年間50万円以下の売却益なら税金はかからない

貴金属商、地金商や一部の証券会社で取引できます。
なお、貴金属商、地金商では、一定の重さ単位ごとのインゴット(金塊)のほか、金貨も取引できます(金額は、インゴットはグラム単位。金貨は額面等により異なる)。
多くの場合、毎月積立投資(一般に3,000円以上1,000円単位)することができる点で、
金に投資する非上場の投資信託と似ています。
現物に投資するため、金を売却するほか、現物を引き取ることもできる点が魅力です。
だからこそ、信用できる業者と取引することが絶対条件となります。
取引先によって、金の取引価格が異なりますし、年会費、積立投資における購入時手数料、現物引き出しの手数料等も異なります。
売却益は、年間の売却益が50万円以下であれば、税金がかからず、所有期間が5年であれば50万円差し引き後の金額が課税対象、5年を超える場合には、50万円を超える部分の2分の1が課税対象(所得税・住民税を合わせて15%~55%)となります。
したがって、売却益が年間50万円以内になるように、分けて売却をすれば、実質的に税金がかかりません。
一方、金の現物取引の損失は給与所得や上場株式の譲渡益と損益通算できませんので、この点で、ETFや非上場の投資信託よりも不利と考えられます。
金現物投資は、金融資産としての魅力よりも、実物資産としての魅力を感じる方に適しています。
金・ETF | 金・非上場投資信託 | 金現物 | |
取引先 | 証券会社 | 証券会社、銀行等 | 貴金属商、地金商、一部の証券会社等 |
買いたい(売りたい)値段で取引できる? | できる | できない 翌営業日基準価額 | できない 業者提示価格 |
自動的に 積立投資できるか? | 一般にできない | できる | できる |
特定口座取引 NISA口座取引 | できる 通常、約20%課税 | できる 通常、約20%課税 | できない 年間50万円控除有 累進税率 (15%~55%) |
損失を損益通算 できるか? | 上場株式等の譲渡益との範囲内でできる | 上場株式等の譲渡益との範囲内でできる | できない |
縁の下の力持ちとしての「金」

金は、その取引だけで大きな利益を狙うよりも、株式や通貨等と分散投資することで、地政学的リスク、信用リスクが高まったときに、資産の目減りを下支えする役割として保有すことをお勧めします。
金は執筆日現在で、小売価格が至上初めて1グラム8,000円を突破した金。
世界に平和が戻れば、価格が下がることが予想されますが、今後の信用不安に備えて、量に限りがあり、実物資産としての価値を持つ金への積立投資を考えてみてはいかがでしょうか?
金投資を始めようとお考えの方、ご相談したい方は、私たちFPをご活用ください。