生活費を把握し、タラレバに備えよう! ~新型コロナウイルス騒動を教訓に~
2020.03.09
2019年の年末に、中国河南省武漢で新型コロナウイルスが発見されたと報道されてから、あっという間に世界に広がりました。日本国内ではウイルス拡大を防ぐため、テレワークの推進、小中高の一斉休校、各種施設の臨時休業等、日常生活が激変しています。
正規社員は在宅ワーク、自宅待機でも一定の給料が補償されますが、
時給制の派遣社員やパート、アルバイト等の非正規社員は働く時間が減れば、
収入も減ってしまい、家計も大きな影響を受けてしまいます。
私たちFPは、
資産運用に取り組むお客様には、
「当面の生活資金に必要な資金として換金性の高い資産を確保し、残りの資金は、安全性と収益性のバランスを考えて運用しましょう」とご提案したり、
マイホーム購入において、購入予算や住宅ローンと頭金の割合を考えるお客様には、
「当面の生活費○カ月分程度を確保しておきましょう」とご提案します。
今回は、会社員・公務員の生活費の把握方法について考えてみましょう。
「足す」より「引く」ほうがより正確
毎月の生活費を足し合わせて把握するのは極めて困難です。
把握しようにも、使ったけれど覚えていない、レシートや領収証がない、ということが多いからです。
一方、毎月財形貯蓄などで貯蓄している人、iDeCo(個人型確定拠出年金)等で老後資金を積み立てている人は、毎月の貯蓄額や掛金はほとんどの人が把握しています。
ですので、支出を全部足すよりも、手取収入から毎月の積立貯蓄・投資額で把握するほうがより正確に近いといえるのです。
毎月の生活費≒毎月の手取収入-毎月の積立貯蓄・投資額(±貯蓄残高の増減)
手取額は、額面収入から「自由に使えない支出」を引いて求める
手取額は給与明細の振込金額を確認するのも1つの方法です。
なぜなら振込額はまさに「手取額」だからです。
ただし、給与から財形貯蓄や確定拠出年金(DC,iDeCo)の掛金を支払っていたり、生命保険の保険料を差し引かれている場合もありますので、実は正確ではありません。
できれば、自分が自分の意思で、自由に使える金額を把握した方が正確です。
つまり、額面収入から支払い義務のある税金と社会保険料を差し引いた金額が、自分の意思で自由に使うことができる金額、手取り収入となります。
給与明細をみて、
収入から給料から差し引かれている所得税・住民税・社会保険料を差し引いてみましょう。
毎月の手取り収入=額面収入-所得税・住民税・社会保険料等
給与明細を見ると、所得税、住民税はそのまま記載されていますが、社会保険料はそれぞれ別に記載されています。
会社員の場合、厚生年金保険料、健康保険料、介護保険料、雇用保険料等、
公務員の場合、厚生年金保険料、共済掛金、介護保険料等が該当します。
なお、会社・団体によっては組合費、互助会、共済会等の費用が引かれていますが、これらも自分の意思とは関係なく差し引かれるものとして社会保険料「等」と扱ってもよいでしょう。
では、具体的に毎月の支出額を把握してみましょう。
額面収入 36万円
所得税 9,000円
住民税 18,000円
厚生年金保険料 33,000円
健康保険料 18,000円
介護保険料 3,000円
雇用保険 1,000円
財形住宅貯蓄 10,000円
iDeCo掛金 10,000円
生命保険天引き 20,000円
手取り収入
=360,000円-(9,000円+18,000円+33,000円+18,000円+3,000円+1,000円)=278,000円となります。
額面収入は36万円ですが、自分の意思で自由に使うことができるのは28万円弱。
額面収入36万円をもとに家計のやりくりを考え、毎月の支出が30万円だと、毎月6万円貯金できそうですが、実際には2万円の赤字。家計のやりくりは、額面収入ではなく、手取り収入をもとに家計を考えることが基本です。
手取り収入は、税金や社会保険でも異なりますが、概ね額面収入の75%~80%程度と考えてもよいと思います。
毎月の貯蓄・投資額は、
マイホーム購入資金の頭金として貯めている財形住宅貯蓄10,000円と
老後資金準備を目的に積み立てているiDeCo掛金10,000円の20,000円です。
ですので、毎月の支出額(生命保険料を含む)は、278,000円-20,000円=258,000円となります。
実際には、支出が多く貯蓄を取り崩すケース、
支出が少なく、積立貯蓄とは別に貯蓄が増えるケースもあると思いますが、
毎月の積立て貯蓄・投資額を別にした場合の貯蓄が概ね変わらない場合、
毎月の支出額は258,000円、概ね約26万円と把握できます。
できれば生活費の6カ月分を確保
今回の新型コロナウイルスの感染の拡大により、
働く時間が減り、残業代がない
パートタイム・非正規雇用のため、休業期間の収入がない
等、家計のやりくりのバランスを崩してしまっているご家庭も多いと思います。
そんなときのために、生活費の3カ月分、できれば6カ月分程度の予備資金を確保しておきましょう。
上記の事例では、3カ月分なら258,000円×3カ月=774,000円、
6カ月分なら258,000円×6カ月=1,548,000円。
何事もなければ、ある意味、ムダな手元資金に見えますが、
パパ・ママが病気やけがで働けなくなった
祖父・祖母が要介護状態により、介護に関わるため、働く時間が減った
地震・台風・集中豪雨等の自然災害により自宅や事業所が被害を受けた
等、アクシデントが起きたときに、これらの資金が役立ちます。
やみくもに貯蓄するより、生活費を把握して貯蓄したほうが、不安は小さくできます。
アクシデントに備える資金は、いつでも使えるように確保し、
マイホーム購入、子どもの進学、老後資金準備等の中長期的に準備する資金は少しでも、
有利な運用方法を選択したいものです。
より安心できる家計運営のためにも、
毎月の支出額の把握、生活費の数カ月分の確保等に取り組んでみてはいかがでしょうか?
文・益山 真一(ますやま しんいち)
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
CFP認定者、消費生活アドバイザー、マンション管理士、
ダイエット検定1級、食生活アドバイザー2級
國學院大學経済学部非常勤講師(2003年から2017年まで15年間國學院大學経済学部非常勤講師)
航空系商社、FP会社勤務を経て、2001年よりフリー活動を開始。
人生の3大資金である教育資金、住宅資金、老後資金を効率的に手当てし、
人生を楽しむお金を生み出すことをテーマとして、日々、相談や執筆、講演活動を展開。
FP資格取得・継続教育、高校・大学の講義のほか、
金融機関等の社員研修、投資家向けセミナー、参議院や内閣官房内閣人事局人事局主催の
キャリアデザイン研修講師まで幅広く務め、セミナー・研修・講義は2019年6月時点で通算2935回。
長女も12歳3カ月でFP3級、16歳時受験でFP2級に合格するなど、わかりやすい伝え方に定評。
活動理念は「心、カラダ、キャリア、時間、お金」の5つの健康のバランスを考えた最適提案。
相談業務は、30代および40代の家計の見直し、教育・住宅・老後等の3大資金準備に対して、
お客様のライフプランや価値観に基づき、メリット・デメリット・リスク・注意点を伝えながら、
1つでも多く「改善できるヒント」を提供するべく活動している。
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