投資信託を選ぶときの着眼点 (3)シャープレシオ
2020.01.14
投資信託のタイプから選ぶとき、
損失を抑えたいと考えてバランスファンドを選ぶと、
各資産クラスへの分散効果により、相対的にリスクが小さくなりますが、リターンも低くなります。
一方、騰落率ランキング上位の商品は、直近の値上がり幅は大きいかもしれませんが、
大きなリスクテイクによるリターンである場合も考えられ、
相場環境が反対方向に変わると大きな損失を被ることにもなりかねません。
投資初心者の人、長期安定志向の人にとっては、リスクはできるだけ抑えつつ、その中で
大きなリターンを狙いたいことと思います。
今回は、リスクテイクに対するリターンの割合を示す「シャープレシオ」の見方と活用法について解説します。
安定的に数値が大きいほどよいパフォーマンス
シャープレシオは、ウィリアム・シャープさんが考え出した指標であり、
リスクに対するリスクに応じたリターンの割合を示し、
「超過収益率÷標準偏差」により求められます。
超過収益率とは「無リスク資産の利子率を超える割合」、つまりリスクテイクに応じたリターンのことを超過収益率といいます。
例えば、無リスク資産利子率が1%、収益率が5%である場合、超過収益率は5%-1%=4%となります。つまり、
今の日本の現状では、預貯金や国債は金利がほとんどつきませんので、無リスク資産の利子率はほぼゼロ%と考えてもよいでしょう。
言い換えれば、リスクテイクをしないとリターンがない状態です。
標準偏差とは散らばりの度合いをいい、数値が大きい場合、経済状況の変動に応じて、
収益率も大きく変わることを意味します。
超過収益率を標準偏差で割ると、リスク(標準偏差)に対するリスクに応じたリターン(超過収益率)の割合を求めることができ、この数値が高いほど、よいパフォーマンスであることを意味します。
例えば、以下の2つの投資信託を比較してみましょう。
収益率 | 標準偏差 | 無リスク資産利子率 | |
投資信託A | 10% | 12% | 0.1% |
投資信託B | 5% | 4% |
収益率のみを比較すると、投資信託Aのほうが大きな利益を上げており、魅力的に見えます。
しかし、シャープレシオで比較すると、投資信託Aは(10-0.1)÷12=0.825、
投資信託Bは(5-0.1)÷4=1.225となり、投資信託Bのシャープレシオのほうが高く、
より少ないリスクを抱えて、高いパフォーマンスを上げていることが分かります。
シャープレシオが安定的に高く、リターン年率も安定的に高い投資信託は、
より小さなリスクで大きなリターンを安定的にあげていると評価できますので、
損失を嫌う人は、シャープレシオとリターン年率の両方が安定的に高い投資信託を選ぶと、
安心して長期保有しやすいのではないでしょうか?
ただし、世界的にリスクオンモード(政治・経済・社会リスクの懸念材料が少なく、リスクとって、リターンを追い求めたくなるような景気に追い風が吹いている局面)では、
高いリスクをとって、高いリターンを狙いにいくほうがよいパフォーマンスを上げることができる局面もあります。高いリスクをとって、高いリターンを得た場合のシャープレシオは小さくなりますので、シャープレシオとリターン年率が安定的に高いことが、必ずベストの選択とは言い切れません。
しかし、投資による損失をできるだけ小さくしつつ、より高い安定的なリターンを求める人には、シャープレシオは役立つ物差しとなるのではないでしょうか。
シャープレシオは、カタカナで、難しそうという先入観をお持ちの人も多いと思いますが、是非、効果的に活用してください。
投資信託のシャープレシオは投資信託の商品説明のサイトで確認できます。
例「モーニングスター:バランスファンドのシャープレシオ(10年)ランキング」
http://www.morningstar.co.jp/FundData/FundRankingSharpRatio.do
文・益山 真一(ますやま しんいち)
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
CFP認定者、消費生活アドバイザー、マンション管理士、
ダイエット検定1級、食生活アドバイザー2級
國學院大學経済学部非常勤講師(2003年から2017年まで15年間國學院大學経済学部非常勤講師)
航空系商社、FP会社勤務を経て、2001年よりフリー活動を開始。
人生の3大資金である教育資金、住宅資金、老後資金を効率的に手当てし、
人生を楽しむお金を生み出すことをテーマとして、日々、相談や執筆、講演活動を展開。
FP資格取得・継続教育、高校・大学の講義のほか、
金融機関等の社員研修、投資家向けセミナー、参議院や内閣官房内閣人事局人事局主催の
キャリアデザイン研修講師まで幅広く務め、セミナー・研修・講義は2019年6月時点で通算2935回。
長女も12歳3カ月でFP3級、16歳時受験でFP2級に合格するなど、わかりやすい伝え方に定評。
活動理念は「心、カラダ、キャリア、時間、お金」の5つの健康のバランスを考えた最適提案。
相談業務は、30代および40代の家計の見直し、教育・住宅・老後等の3大資金準備に対して、
お客様のライフプランや価値観に基づき、メリット・デメリット・リスク・注意点を伝えながら、
1つでも多く「改善できるヒント」を提供するべく活動している。
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