48歳の現役FPが実践中の老後資金レシピ
2019.07.29
金融審議会 市場ワーキンググループによる報告書のいわゆる「老後資金2,000万円問題」。私たちFPにとっては、公的年金はあくまで生活費の一部を賄うものであり、老後生活に向けて計画的な準備が必要であることは前提条件であり、その問題点を解決・改善するお手伝いをすることが仕事の1つです。
さらに言えば、私のような自営業者は、会社員・公務員の皆さんよりも老後の年金が少ないため、より計画的に準備を進めてきました。
今回は48歳の筆者が老後資金準備として取り組んできたことを20代、30代に取り組んできたことを紹介します。
20代の会社員時代は2つの仕組み作り
勤め始めたのは平成5年。数年前はバブル絶頂期で就職も圧倒的な売り手市場でしたが、
バブル経済が崩壊し、急激に景気が冷え込み、就職活動の頃から厳しさを感じていました。
そんなこともあり、まずは計画的に貯蓄を始めようと考え、会社員時代は給与天引きで毎月2.5万円、ボーナスからは10万円の財形貯蓄を開始。1年で50万円を貯める計画です。
さらに、会社員としてのキャリアに疑問を感じ始めたときに、自己投資を始めました。
20代後半で結婚した後は、ボーナスで住宅購入資金を積み立て始めました。
つまり、20代に取り組んだことは2つ。「貯める習慣」と「稼ぐ力」を作ること。
ただ、仕事とスキルアップに時間は惜しまず、健康も二の次で、体調を崩し、会社員生活をドロップアウトしたのは大きな反省点です。
30代の自営業者時代、無理のない範囲で一歩ずつ前へ
子どもができ、いずれマイホームを購入したいと考えていたため、引き続き物件価格の頭金2割を目標にコツコツと積み立てを継続。
そんな中、老後資金準備に手をつけ始めたのが31歳。主に自営業者が利用できる国民年金基金に夫婦で加入しました。予定利率が4%から3%に引き下げられるニュースを耳にしました。まだマイホームを購入する前でしたので、まだ早いかな・・・と思いつつ、利率4%であれば、少し無理をして加入する価値があると考え、夫婦合計掛金5万円を支払って加入しました。
65歳以降一生涯にわたり、夫婦でそれぞれ毎月10万円の年金をもらえる仕組みができました。
国民年金基金は掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減される点も魅力的。現在の予定利率は1.5%ですので、当時に比べれば魅力は劣りますが、定期預金に比べれば悪くありませんので、リスクをとる資産運用を嫌う方は検討の余地ありです。
その後、マイホームを33歳時に購入し、34歳時に、小規模企業の役員や個人事業主が利用できる小規模企業共済に加入しました。廃業後・老後の退職金作りのための制度です。
毎月の掛金は月額7万円まで支払うことができ、全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。
国民年金基金やiDeCoに比べてよい点として
・いつでもやめることができる
・事業資金や自宅リフォーム費用、治療費等を低利・無担保・無保証で借りられる
等が挙げられます。
国民年金基金と小規模企業共済の両方に加入できるのであれば、以上の点で小規模企業共済のほうが加入しやすいと思います。
事業を廃止するとき、または65歳以降に老齢給付を受け取ると退職所得控除や公的年金等控除等の税制優遇が受けられるのも魅力的です。
会社員には退職金はありますが、自営業にはありませんので・・・。
会社員の皆さんは是非iDeCoを!
ただし、公務員や会社員の皆さんは国民年金基金や小規模企業共済を利用できません。
会社員や公務員の皆さんにお勧めしたいのが個人型確定拠出年金(iDeCo)。
私も35歳から加入しています。
個人型確定拠出年金は個人が掛金を出して、自分の年金を自分で運用して準備する制度。
掛金の全額が所得控除の対象となり、所得税・住民税が軽減されます。
加えて、通常であれば運用益に対して課税される約20%の税金も非課税となり、
60歳以降に一時金・年金で受け取ると退職所得控除や公的年金等控除等の税制優遇が受けられます。
支払って節税、増やして非課税、もらうときも税制優遇あり、と税制面で大盤振る舞いです。
なお、掛金の限度額は加入する年金制度によって異なります。
自営業の私は国民年金基金と合わせて月額6.8万円相当まで加入できるため、
毎月4万円の掛金を支払い、4~5つの投資信託に分散して運用しています。
なお、運用のポイントは別コラム「ようこそ積立投資へ。失敗しないための3箇条」
をご覧ください。
その他、サラリーマンの皆さんに、是非利用いただきたいのが、つみたてNISA。
年間40万円まで投資でき、その投資から得た利益(分配金、売却益)は投資した年から20年間非課税となります。
2019年に始めた投資は2037年まで非課税。
新たな投資は2037年までできますので、
2037年に始めた投資は2056年まで非課税。
今年40歳であれば、
今年始めた投資は60歳まで非課税ですし、
58歳に始めた投資は、78歳まで非課税となります。
投資対象となる投資信託は相対的にローコストの投資信託のみ。
たとえば、分散投資効果が高いバランスファンドや市場平均に連動するインデックスファンドが挙げられます。
老後資金準備では、ご紹介した制度等を有効に活用いただきたいのですが、
健康づくりや自己投資も同様に重要ですし、
日常の家計や住宅資金、教育資金とのバランスも重要です。
まずは現状を把握して、今できることから1つずつ改善・解決に向けて取り組んでいきましょう。
文・益山 真一(ますやま しんいち)
1971年生まれ。早稲田大学政治経済学部経済学科卒業。
CFP認定者、消費生活アドバイザー、マンション管理士、
ダイエット検定1級、食生活アドバイザー2級
國學院大學経済学部非常勤講師(2003年から2017年まで15年間國學院大學経済学部非常勤講師)
航空系商社、FP会社勤務を経て、2001年よりフリー活動を開始。
人生の3大資金である教育資金、住宅資金、老後資金を効率的に手当てし、
人生を楽しむお金を生み出すことをテーマとして、日々、相談や執筆、講演活動を展開。
FP資格取得・継続教育、高校・大学の講義のほか、
金融機関等の社員研修、投資家向けセミナー、参議院や内閣官房内閣人事局人事局主催の
キャリアデザイン研修講師まで幅広く務め、セミナー・研修・講義は2019年6月時点で通算2935回。
長女も12歳3カ月でFP3級、16歳時受験でFP2級に合格するなど、わかりやすい伝え方に定評。
活動理念は「心、カラダ、キャリア、時間、お金」の5つの健康のバランスを考えた最適提案。
相談業務は、30代および40代の家計の見直し、教育・住宅・老後等の3大資金準備に対して、
お客様のライフプランや価値観に基づき、メリット・デメリット・リスク・注意点を伝えながら、
1つでも多く「改善できるヒント」を提供するべく活動している。
経験豊富なお金のプロがあなたの悩みを解決いたします。
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