面倒がらずに活用したい「医療費控除」
2018.11.19
ドラッグストアはインバウンドの観光客の土産店としてだけではなく、
生活者にとってもコンビニやスーパーと並ぶ重要なインフラとなっています。
ドラッグストアのレジに並んでいて気になるのは、意外と多くの領収証、レシートが
レジ横のボックスに捨てられていくこと。
食料品や飲料は医療費控除の対象外ですが、
ドラッグストアで購入する医薬品の中には医療費控除の対象となるものも多く、
一定条件を満たせば、所得税や住民税を軽減することができます。
医療費控除は確定申告が必要となるため、少し面倒ではありますが、毎年ある程度の医療費を支払っているのであれば、毎年の恒例行事として確定申告をすることで、少しでも税金を取り戻すことができれば、家計も助かるのではないでしょうか?
今回は、従来からある医療費控除について解説します。
なお、2017年から2021年までの時限措置である「セルフメディケーション税制」は、
本稿では考慮しないものとします。
生計維持関係があれば対象に! かかった医療費ではなく、支払った医療費が対象
納税者または納税者と生計を一にする配偶者その他親族のために、年間に一定額以上の医療費を支払った場合に適用できます。
配偶者控除や扶養控除の適用があるか否かは関係なく、納税者と治療を受ける者に生計維持関係があれば適用できます。夫婦共働きで互いにある程度多くの所得がある場合でも互いに医療費控除を適用できますし、別居の親子関係であっても、定期的に仕送りがあるなど生計維持関係があれば適用できます。
生計維持関係は「治療を受けるとき」または「医療費を支払うとき」のいずれかで判定します。
見落としがちなのが支払時期。
医療費控除は支払った医療費が対象となるため、今年の医療費を翌年に支払った場合には、翌年の所得税の医療費控除の対象となります。
なお、クレジットカード払いで、今年カード決済をして、翌年の口座引き落としとなった場合、カード決済をした年の医療費控除の対象となります。
医療費控除の額は以下の計算式で求められます。
支払った医療費-保険金等で補てんされる金額-(10万円または総所得金額等の5%のいずれか低い方)
■支払った医療費
支払った医療費のうち、医療費控除対象となる医療費には以下のようなものがあります。
・医師による診療・治療の対価
・風邪薬等の治療のための医薬品
・電車・バス等の交通費
・先進医療
・出産費用・妊婦の定期健診費用
・人間ドックや健康診断の費用(異常が発見され引き続き治療をした場合)
・入院中に病院から提供される食事代
一方、以下の費用は医療費控除の対象外となります。
・自己都合の差額ベッド代
・ビタミン剤
・人間ドックや健康診断の費用(異常なしの場合)
・マイカーのガソリン代、駐車場代、有料道路の料金
「公的医療保険が適用されない治療費も医療費控除の対象外」と思い込んでいる人が多いようですが、セラミックの義歯等のように、公的医療保険の対象外であっても、医療費控除の対象となる場合があります。
詳細は税理士や税務署に相談したり、国税庁のホームページで確認することをお勧めします。
■保険金等で補てんされる金額
医療費補てん目的は引く、生活費補てん目的は引かない
生命保険・医療保険・がん保険・傷害保険等の入院給付金、手術給付金、通院給付金等
公的医療保険の出産育児一時金、高額療養費等
の医療費を補てんする目的で支払われた保険金等は医療費から差し引きます。
一方、
損害保険会社の所得補償保険の所得補償保険金等
公的医療保険の傷病手当金、出産手当金等
の生活費を補てんする目的で支払われた保険金等は医療費から差し引く必要はありません。
■通常は年間10万円超の医療費が対象。所得金額によっては10万円未満も対象に
総所得金額等が200万円以上の場合は10万円を超える医療費を支払った場合に適用でき、
総所得金額等が200万円未満の場合は総所得金額等の5%を超える医療費を支払った場合に適用できます。例えば、総所得金額等が100万円であれば、100万円×5%=5万円を超える部分の医療費が対象となります。
医療費控除は年間200万円が限度。限度額は治療を受ける人ごとではなく、納税者ごとですので、治療を受ける人が1人であっても、治療を複数人で負担した場合には、最高で、負担した人の数×200万円の金額まで、医療費控除を適用できます。
なお、医療費控除は「所得控除」ですので、
所得税率が10%(住民税は一律10%)であれば、
10万円(または総所得金額等の5%)を超える部分の医療費控除の節税効果は20%。
所得税率が20%(住民税は一律10%)であれば、
10万円(または総所得金額等の5%)を超える部分の医療費控除の節税効果は30%。
医療費控除は生計を維持する親族間であることを条件に、
所得金額が高い人が適用すると、税金の軽減効果は大きくなります。
高齢のご家族を扶養しているご家庭では今後、医療費の支払いが増えやすく、
持病をお持ちのご家族がいるご家庭は、医療費控除を利用するケースが増えることが予想されます。
筆者の主観ですが、少子高齢化が止まらない今後、医療保険財政を維持するための方策として、高齢者の医療費負担も現役により近い負担を求める方向に改定されると予想されます。
ご家族の年間医療費が10万円近くかかっているのであれば、
ドラッグストアのレシートを持ち帰る、病院や診療所で受け取る医療費の明細書、領収証を保存することから始め、医療費控除の適用を考えてみてはいかがでしょうか?
益山 真一(CFP ®認定者・1級FP技能士)
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